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――「きみ」という孤独を全て理解はしてあげられないけれど、痛みをできるだけ他のエネルギーに転換させる手伝いはしてあげたい。
「憎しみ」と「絶望」しか知らない瞳。
「猫憑き」とはこんなに切ないものだと改めて思い知ったのは、まだ無垢という時期の子供が「喜び」と「幸せ」に浸る夢さえ見せてもらえない一一現実。
深い闇に吸い込まれるような瞳は、私を引き付けて止まない。
一一祖父の孤独も深かった一一。
死に至る表情は開放感に満ちあふれていた。彼もまた、長い間「孤独」に魅入られていた。一一哀しむ家族がまるで目に入らないほど。
呪いは根拠なく草摩家を襲い、個々を苦しめていく。それが血の為せる技なのか。
鋭い、真っ直ぐな瞳が私を捕らえる。
「強くあろう」
私といる時は、多少鋭さがゆるくなる瞳。草摩の呪いは他人との触れ合いさえ奪う。事情を知っていてさえ、あまり心を開いてはくれない。だが、夾は私に心を開いてくれた。
呪文のように何度も、私の口から零れる言葉に「聞き飽きた」とも云わず毎回頷く。
「もっと、強くなりたいな」
「夾ならなれるよ」
私は願う。夾が望む武力の「強さ」よりいつか己の心に勝てる「強さ」を手に入れることを。
そうするには私は知り過ぎてしまった。
私とこうしていることが「傷の嘗め合い」のような馴れ合いに過ぎないことに、夾は気付いていない。
武力だけでは足りないのだ。「技」を教えることは出来ても私はもう、「心の強さ」を教えることはもう出来ない。
時は過ぎていき、このようになった今、後悔より万に1つに近い可能性を探していた。
――彼を受け入れる「第3者」を。
そうして祖父には生涯現れることのなかったその人物がいることを知った時、賭けてみようと思った。
失敗したら、私さえ拒絶して祖父より深い「孤独」を生きることになるであろう危険な賭けに。
願いは、1つ。祖父の孤独を知った時から、ずっとひそやかに命題になった。
「猫憑き」でも、倖せになれるよう一一。
祈りが彼女に届いて、彼女が夾に示す道が彼にとっての光になればいい。
我ながら自分勝手な考えで、私は彼女に云った。
「今夜…私に時間を、貸して頂けませんか?」
握りしめていた手が汗でしめり、かすかに震えている自分を、私は感じていた一一。
END
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