ノン・プレイヤーキャラクター紹介

”背信者”アナキン


 人気の無い路地裏で、月光をあびたコインから朧ろな映像が浮かび上がった。
 その幼い少女の幻の眼前に、ローブ姿の青年が恭しく頭を下げる。
「マイ メンター(我が師よ)、次なる任務は……?」
「アナキン、我が弟子よ。此度は奈落に堕ちたる男の魂を救済してもらわねばならぬ……」
 そう、彼女は”青の”シェルリィ――半不老の古代種族アルフの中でも長老格であり、青年が所属する「世界を蝕む異空間”奈落”と戦う組織」エクスカリバーの導師であった。
「”救済”、ですか……」
 頭を足れたまま復唱する弟子に、シェルリィが哀しげに頷く。奈落に汚染された者は最早まともには戻れない……”魂の救済“とは、速やかな抹殺を意味していた。
「かの者は帝国軍の新造空中戦艦の艦長になっておる。くれぐれも油断するでないぞ……シャードの導きがあらんことを」
 連絡を終えて導師の姿が消えた後。ようやく頭を上げた青年は、何故か嘲るような笑みを浮かべていた。
「奈落に染まった者を殺すことしか能が無い……そう、これがエクスカリバーの限界なのですね、師よ」
 通信に使う特殊なコインをしまいながら、一人呟く青年。
「まだ疑われてはならないから、任務は忠実に果しましょう。しかし導師ご自身が油断なさったその時は……」
 月光を浴びるその表情は、彼こそ「奈落に堕ちた」と呼びうる狂気に染まっていた。

アナキン
システム:アルシャード
種族:人間性別:男年齢:25歳
瞳の色:青髪の色:金肌の色:白
キャラクタークラス1ウィザード(アカデミーの賢者)
キャラクタークラス2ホワイトメイジ(白魔術師)
キャラクタークラス3ブラックマジシャン(黒魔術師)

 このキャラは某コンベンションでの「アルシャード」セッションにプレイヤーとして参加した時の、れっきとした「プレイヤーキャラクター(以下PC)」です。それをなぜ、「ノン・プレイヤーキャラクター(以下NPC)」の方で紹介するかというと……

 キャラメイク時に、データはルールブック記載のサンプルキャラクター「ウィザード」をそのまま使用しました(なので、データ類は書きません)。

 GMから渡されたシナリオ・ハンドアウト(各々のPCに与えられる初期設定)によれば、このキャラは「奈落(と呼ばれる世界を蝕む異空間)と戦う組織エクスカリバーの一員」とのこと。「高齢の導師に導かれる」だの「この組織は昔、一度奈落の騎士の手で壊滅されかかった」だのという説明を受け、「スターウォーズのジェダイ騎士」みたいな存在で、かつ「賢者」だから仲間をサポートする……オビ=ワンでもやるのだろうかと見当を付けました。
 しかしキャラメイクの「キモ」であるライフパスを決める際、「ライフパス表はダイス一発振りで決まった方が楽しいよね」とのGMの甘言に乗ったばかりに……

ライフパス1「出自」……キャラの生まれを決めます
「商人」の家に生まれるキャラの得る特徴:財力(初期所持金が多い)
作成時の感想
商家の跡取り?なるほど、金の力でアカデミーに入ったと(笑)

ライフパス2「境遇」……キャラの過去の出来事を決めます
「渇望」、つまり何かを切望し、それを得る為の力を欲する(汗)キャラに課せられるクエスト:世界征服(!)
作成時の感想
ええっ、PCは一応”良いもん”でしょう?こんな大望(←こら)持っていいんですか?

ライフパス3「邂逅」……ルールブック記載の有名NPCとの関係を決めます
「保護者」、ってことで相手を兄姉か父母のように慕うキャラが結ぶコネクション:”月の魔女”グナーデ
作成時の感想
たしかこの方は奈落の使徒で、このPCの所属組織とは不倶戴天のお人では……彼女を”母のように”慕うコイツって?(大汗)

 さあ、この結果を踏まえて造ったキャラ設定は
 アナキンは幼い頃に豪商の養子となり、成長してその聡明さと家の財力でアカデミーに入学、優秀な成績を修めた。
 在学時から”奈落”の危険性を訴えていた彼は、卒業して賢者となった後にエクスカリバーを探して各地を放浪し、「奇跡的に」その本拠地を見つけだした。そして自分の熱意を語ってシェルリィに弟子入りし、対”奈落”の困難な任務を授かるようになる。
 だが誰も知らない。かつて幼い彼を豪商の元に預けた女が月の満ち欠けに応じて姿を変えることを。そして彼が女を母と慕い、その望みをかなえる事こそを喜びとしていることを……

 となりました(笑)。  いやあ、他のPC達、

 帝国の新造空中戦艦の破壊を命じられたエージェント(工作員)ICE−ROCK
 かつての上司であるこの空中戦艦の艦長と戦うパンツァーリッター(装甲騎兵)ジェルダ
 帝国軍に攫われたレジスタンスのヒロイン救出に挑むハンター(戦士)アルク
 ハンターに手を貸すヴァグランツ(放浪者)エステル

 といった面々が、 「いつアナキンが裏切るか?!」  と身構えて、ピリピリと緊張感あるセッションでしたね。ああも期待されるなら、本当に裏切るべきだったでしょうか?(邪笑)。
 結局、各人の懸念をよそに(笑)、空中戦艦は破壊されてラスボスは倒れ、ヒロインを救出して無事に全員が生還しました。そして各々のエンディングを迎えたのですが、アナキンの場合は……

「マイ メンター。御下命を受けましたる、かの者の”救済”、確かに成し遂げました」
 相変わらず頭を上げずに報告する弟子の口調に何を感じたか、立体映像の少女の表情が曇る。
「……此度の男のように、力を求める者に奈落は誘惑の手を伸ばす。ゆめ油断するでないぞ、我が弟子よ」
 訓戒を残して師匠の姿が消え、薄笑いを隠さずに連絡用の特殊なコインを拾うアナキンの背後から声が掛かった。
「”青の導師”を甘く見ないことね、”坊や”」
 死のように甘く、聞くものを破滅させる魔の魅惑に満ちた声、だが彼にとっては。
(そう言えば今夜は満月だったな……)
 合点しつつ振りかえり、先ほどとは比較にならない敬意と思慕を滲ませて、一礼する。
 月光に照らしだされた美しき魔女に。
「今回のような”奈落の力”に振りまわされただけの小物と比べないでくださいよ。私は貴方の期待を決して裏切りません……”ははうえ”」

[初出:平成14年9月28日「ヴァルフィッシュ」]