キャンペーン・リプレイ

第 二 話 「 ケ モ ノ ビ ト の 戦 」  平成10年2月15日(日)

 農業国フラウに到着してから数日が過ぎた。そんなある日、クサナギは操兵による決闘を挑まれた。相手の名はゴルワン。背中に取りつけられた起重機、それにぶら下げられた巨大な鉄球が特徴的な機体だ。
 無責任な賭が始まり、暇していたゼロまで賭に加わったこの決闘は、わずか二撃でグラーテの勝利に終わった。一撃目で鉄球のワイヤーを切り、二撃目で止めを刺したのだ。クサナギは敗者から何も取らずにその場を去った。 
 翌日、クサナギ、ゼロ、アリスの三人は仕事を求めて斡旋所にやって来た。するとそこでは、クサナギ達を指名した仕事の依頼が来ていた。昨日の決闘で見せたクサナギの腕を買ってのことらしい。
 依頼主の名はダラー。ブクブクと太ったこの街の有力者は三人を蔑んだ目で見回してこう言った。
「そち達か、わが命を受ける卑しき者共とは……」
 三人はこのダラーの態度に腹を立てたが、報酬はかなりの額が保証されている、と言うので話だけは聞くことにした。彼の依頼は、この街のそばの北の森に住む[獣人]達の集落を襲撃する、と言うもの。このフラウでは、最近獣人達が商隊や旅人を集団で襲う事件が続いている。そこでダラーが、「この街のために自ら資金を出して討伐隊を出す」のでこれに参加せよ、と言うのだ。
 三人はこの場では結論を出せなかった。獣人に対するダラーの偏見に満ちた口調、そして金の音で人を誘うやり方が気に入らなかったからである。結局、返事は後日ということでその日は別れた。
 その日のうちに三人は、酒場で獣人、[ケモノビト]に関する意外な話を聞いた。このフラウの町は元々、フラウ王の先祖がケモノビト達〜このフラウの北の森には、狼(ロウ)と猫(ビョウ)の二種類の部族が暮らしている〜との盟約によって得た土地に築かれたものだというのだ。
 そもそもケモノビトとは、人間の体に獣の特徴を備えた特殊な存在ではあるが、決して魔物の類いではない。彼らは今でも原始的な狩猟、農耕生活を営んでいるが、文化そのものは高く、むやみに人を襲うような野蛮人ではない。
 そして今でも町と彼らとの間では交易が行われており、特に彼らの栽培する香辛料や薬草などは貴重で、この街の特産品の一つになっている。また、中には彼らと直接取引をしている旅商人もいるという。あのウラノ商会もその一つだそうだ。
 そのウラノ商隊が北側の門から出ていった、と門兵から聞いたゼロは、クサナギとアリスを引っ張って後を追った。どうやら商隊は、ケモノビトの村に向かったらしいのだ。
 夕暮れ頃、戻ってきた商隊と鉢合った。馬車は傷だらけだ。どうやら獣人達に襲われたようだ。だが、襲われた等のウラノ本人は様子が変だ、と言う。あれはケモノビト、と言うよりは獣人の扮装をした人間ではないか、と言うのだ。
 さらに商隊は奇妙な客を連れていた。ビョウの少女、ルピアだった。商隊が襲われる少し前、傷だらけで倒れているのを保護した、と言う。彼女はロウの戦士達が、村を襲ったことに対する報復として街に攻めようとしていることを知らせるためにここまで来る途中、[ケモノビトじゃないケモノビト]に襲われたそうだ。彼女の話では元々一ヵ月ぐらい前に人間達がロウの村を襲ったことが始まりであり、そもそもロウもビョウも唯の一度も人間を襲ったことはない、と言う。翌日、商隊と三人は、真偽を確かめるためにケモノビトの村に行くことにした。
 一行が村への道を進むその途中、突然謎の煙に包まれた。そして、それと同時に獣人(らしきもの)と巨大な四本腕の熊(らしきもの)が襲いかかってきた。が、三人の反撃で連中はあっけなく退散し、煙に紛れて逃走した。
 後を追った三人は別の、と言うよりは本物のケモノビト、ロウの戦士達と出会う。彼らは皆森の獣達に跨り、中でも戦士長バーツは巨大な四つ手熊を従えていた。彼らは人間への報復を誓い、街を目指していた。何とか思い止まらせようとするが、人間を信用しない彼らは耳を貸そうとしない。だが、丸腰で四つ手熊の鋭い爪の前に身をさらすゼロとクサナギの命がけの行為が彼らの心を開き、そして事態の解決への協力を約束した。
 三人はいったん街に戻った。その足で斡旋所に赴いたクサナギは、そこで数十枚の銀貨と引換に以前ダラーに雇われた操兵乗りバザックを紹介された。彼の話によると、最初にケモノビトの村を襲ったのはやはりダラーの差し金で、自分もその一人だったが嫌気がさしてやめたそうだ。
 どうやらダラーの目的はケモノビトの村を占領し、香辛料の生産を一人占めにして大儲けしようとしているらしい。偽獣人を使って商隊を襲ったのはこの国の王に対して大義名文を示すためだった。
 そのダラーが動き始めていた。雇い入れた私兵や操兵を引き連れて村を襲撃するつもりのようだ。三人も声をかけられたが、答えは既に決まっていた。
 三人はダラーより早く街を出て、急いでロウの戦士達の元に向かった。討伐隊が村に到着する前に撃退しなければならない。
 三人が戦士達と合流して共同戦線を張り、迎え撃つ準備を整えたとき、討伐隊が現れた。ダラー自ら指揮を取り、続く数十人の兵士と三機の操兵を従えて村を目指して進軍してくる。クサナギ達が一応説得を試みるが、奴等は耳を貸そうともせず武器を構えて戦いの姿勢を見せる。ただ一人、先日クサナギに決闘を挑み破れた、操兵乗りゴルワンを除いて……。
 戦闘が始まった。雄叫びを挙げて攻め込んで行くロウの戦士達に交ざってゼロがダラーの乗る豪華な馬車に突撃する。だが、その前に[雷](いかづち)を名乗る剣士が立ちはだかった。どうやらゼロと同じ幻の[武繰]使いのようだ。
 一方、操兵戦も熾烈を極めた。クサナギのファルメス・グラーテは傭兵ハインリッヒの駆る操兵パラディンセイバーの盾にその太刀を防がれ、四つ手熊はあとから参戦した偽四つ手熊と死闘を繰り広げる。アリスのユニホーン・カムナは傭兵グルンバートの操る操兵シルバークロウの鉄斬爪にその装甲をえぐり取られ窮地に。しかし、クサナギの説得によってダラーを裏切ったゴルワンがシルバークロウを背後から攻撃、それをきっかけにカムナが反撃し、シルバークロウを倒した。
 逆転を計るクサナギは賭に出た。爆砕槍の操作弁を切り替えて、蒸気を溜める。
 (……この手段なら確実に相手を倒せる。しかし、一撃で仕留められなければ、こちらがやられる……)
 覚悟を決めたクサナギは一心にレバーを引いた。グラーテの盾から射出された二股の槍にさらに高速回転が加わる。それはパラディンセイバーを盾ごと粉砕するだけの威力をもっていた。蒸気式旋回爆砕槍だ。
 そのころ、ゼロは雷と剣を交えていた。激突する二人の技と技。互いに超人的な速度で剣を繰り出し、互いに傷だらけになる。そして、最後に立っていたのは、ゼロだった。雷は死の間際にこう言った。「楽しかったぜ……」と。その顔は笑っていた……。
 四つ手熊が偽四つ手熊の残骸の上に乗り勝利の咆哮をあげた。そして、部下を失ったダラーは降伏した。
 クサナギ、ゼロ、アリスの三人はロウ、ビョウの両部族合同の宴に招かれ、歓迎された。そしてフラウの街からもケモノビト達との衝突を回避したことに対して感謝された。おそらくここ数日は英雄扱いされるだろう。
 ちなみに、その後ダラーは身分、財産を剥奪されて強制労働所に送られ、そして最後にクサナギ達の味方をしたゴルワンは、傭兵として一年間働くことでこの街の市民権を取得できる、と言うことになったそうだ。