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ゼノア達やモ・エギと別れた一行は、やっとの思いでノウラの町に到着した。ノウラは、この先にある大都市ライバの統治下にある町で、主に鉄鉱石の鉱山と、温泉を利用した宿場町として栄えている。統治下にあるといっても、ライバに対する納税の義務があるだけで、自治権はあるのだが。 町にたどり着いた一行は別のルートで旅をして来たイーリスと合流し、破損の目立つ操兵カムナを修理に出して宿屋へと向かった。 同じころ、一人の渡世人が宿屋を兼ねた酒場のカウンターに腰を降ろした。まだ若いのに、その眉間には深い苦悩を思わせる皺が刻まれている。 三年前に失った記憶を求めてさすらう旅の戦士ファルス。 ファルスは酒場の中で、三人のチンピラに絡まれた貴族風の男を助けた。だが、邪魔をされた事に腹を立てたチンピラに今度は自分が喧嘩を吹っかけられてしまった。仕方なく外に出て迎え撃つが、その日に限って剣が冴えず、とうとう囲まれて危機に。 やはり何かの運命だろうか……。その時、たまたま宿に向かっていた一行は宿屋の前で三人のチンピラと戦っている戦士を見つけた。一人のチンピラが卑怯にも後ろから攻撃しようとしているのを見たクサナギ、ゼロ、セフィロス、イーリスはその戦闘に割って入り、チンピラ達を蹴散らした。チンピラは決まり文句を吐き捨てて逃げ去った。 貴族風の男はワールモンと名乗り、助けてくれた礼にと、一行とファルスに食事を振る舞うことを申し出た。全員がその誘いに乗り、宴が始まった。このワールモン、一介の商人を名乗ってはいるが実はとんでもない金持ちだった。イーリスやゼロ(!)が高価な酒や料理を大量に注文しても平然とその場で支払い、それどころか終いには、店の客全員に酒や料理を振る舞う気前の良さを見せた。元王族のクサナギは彼の仕草から、彼は商人ではなくやはり貴族ではないか、と考えた。 宴会は夜まで続いた。先に宴を抜け出したアリスが二階の客室で床に就こうとした時、外から振動が響いてきた。これは地震ではないようだ。外を見ると、まるでスクラップのような操兵がヨタヨタと宿屋に向かって歩いてくる。アリスはそれを知らせるために部屋を飛び出した。 そのころ、宴会場のヨッパライ共はそんなことも知らずに騒ぎ続けていた。そこに転がりこんできたアリス。 「みんな大変!……操兵が……」 アリスがその続きを言おうとした瞬間、ひときわ強烈な振動が宿屋を襲った。外には、一機のレストアールが立っていた。そしてその拡声器からは、昼間のチンピラの声。 「確かファルス、とかいったな!昼間の借りを返しに来たぜ!」 操兵の脚元を見ると、残りの二人も銃を構えて待ち構えている。操兵を後ろ楯にしたチンピラは自信たっぷりだ。 だが、勝負は呆気なく付いた。クサナギとファルスがレストアールの正面に出て連中の気を引き、その隙をついてゼロが物陰から飛び出して一瞬にして二人のチンピラをノした。怒ったチンピラ操兵乗りはレストアールで目の前の二人を踏み潰そうとするが、後ろに回ったアリスが操兵の脚部に長い鉄棒を差し込み、それに脚を取られてレストアールはそのまま転倒、本当のスクラップになった。 一行がチンピラを縛り上げていると、宿の主人が頭に怪我をして出て来た。訳を聞いてみると、今の戦闘の最中にワールモンが何者かに誘拐された、というのだ。 やがて、おっとり刀で町の役人がやってきた。一行が事の顛末を話すと、彼らはどよめいて一行を、役人と同行してきた貴族、ハラグ・ロイゼル卿に引き合わせた。卿の話では、実はワールモンは伯爵の称号をもち、ライバの王からこのノウラの統治を任されている市長でもある、というのだ。ただ問題は、政治の腕は良いのだが、怠け癖があり時々抜け出してお忍びで町に遊びに出てしまうのだ、とも言う。 ロイゼル卿は一行に、ワールモン伯爵の救出を依頼した。犯人の目星も付いており、おそらくは最近この町で悪さをしている愚連隊の連中(彼らは自分たちを[王朝結社]の一員だ、と名乗っているそうだ)ではないか、と言う。根拠は、一行が捕らえたチンピラが連中の仲間であること、そして先の戦闘が明らかに囮であること。そうでなければ、あんなにあっさりと攫っていけるはずがないから。 ロイゼル卿の屋敷で一泊した一行は、翌日連中のアジトがあると目される北の森に向かった。そして、半日ほど森を進んだ一行は、連中のアジトと思われる古い砦のあとを発見した。ゼロとイーリスが先行して偵察した結果、この砦の入口が一ヵ所であること、しかもその入口を一機の操兵が塞いでしまっていることがわかった。 だが、この操兵には見覚えがあった。以前、キャニオンハンターズのリーダーが使用していた見掛け倒しのポンコツ再生機[ギルダーム]だった。おそらく同型機だろう。これなら勝てる……。クサナギはそう判断した。今回、こちらの操兵はアリスのユニホーン・カムナが修理中のため、クサナギのファルメス・グラーテのみ。だが、このギルダームはグラーテの四分の一くらいの性能しかない。作戦は決まった。 グラーテがギルダームの前に出た。迎え撃つギルダーム。その間にイーリスとセフィロスが先行し、ゼロが側面から、そしてファルスとアリスが後方からそれぞれ砦に近づいた。セフィロスが槍で入口の破壊を試みる。その時、扉が突如爆発!間一髪かわした二人だが、今度は中から銃撃が二人を襲う。二人は[跳躍]して敵との間合を詰めた。が、イーリスが足を滑らせ銃弾をモロにうける。何とか敵を倒した二人だが、怪我のひどいイーリスが入口の外まで退却、ゼロと交代した。セフィロスはそのまま内部に突入、自分も銃撃を受けるものの奥の部屋に潜んでいた敵を槍で突き、残りの敵もゼロが倒した。 一方、クサナギは思わぬ苦戦を強いられていた。名乗りを上げようとしたクサナギより早く、ギルダームが信じられない機動性でグラーテに一撃を浴びせてきた。グラーテも太刀を振るい反撃するが、ギルダームはそれを難なくかわす。強敵だった。確かに相手の操兵はグラーテよりも格下だ。が、そのギルダームの操手は圧倒的なはずの性能差を見事な操縦技術で補っていた。いや、むしろ動きそのものは相手のほうが若干ながら上回っている。 (凄腕だ……。相手の腕は間違いなく自分よりも上だ……!) クサナギはそう思った。 だが、そうと知ったら余計負けることはできない。クサナギは必死にグラーテを操る。しかし、相手の動きはとても早く、攻撃がなかなか命中しない。ようやく一撃を与えても、例によって表面のハリボテを削るだけ。逆に、前回の戦闘で増加装甲を失ったグラーテは右肩と胸の一部の装甲と、さらに一部の筋肉筒までが破損した。 このままでは勝てない、とクサナギは爆砕槍のレバーを引き、蒸気の充填を始めた。そして攻撃を辛うじてかわすと、ギルダームに向けて槍の切っ先を突き出す。これを外せば後はない。クサナギは祈るように発射レバーを引く。形勢逆転の期待を託された爆砕槍は、旋回しながらギルダームの装甲を砕き、その動きを沈黙させた。ものすごい蒸気を噴き出しながら倒れるギルダーム。クサナギはグラーテを操兵の側に近づけた。どんな人物が乗っているのか確かめるために……。 その時、ギルダームの胸板装甲が開いて一人の男が身を乗り出し、対操兵用銃でグラーテに向けて発射した。銃弾はグラーテの仮面に命中、「仮面割り」をモロに受けたグラーテは機能を停止、クサナギも気絶こそは免れたものの、朦朧状態になった。 生身で操兵を沈黙させ、悠然と立つ男。兜とフードで顔を隠したその男に、イーリスは停戦を申し出た。「もともと雇われていただけ」と嘯く男はその提案を受け入れた。そして剣を構えるアリスに意も介さず、クサナギに再戦の予告をした。 「次は自分の操兵であんたと戦う………」 イーリスは立ち去る男に名前を訪ねた。男は一言ただ、[紅蓮]と名乗った……。 出発の際に支給された傷薬とアリス、ファルスの治療でとりあえず怪我を治した一行は、体制を立て直して砦の地下に通じる階段を下った。階段を下りた先のまっすぐ続く通路を進み、その先のT字路でどこかで見たような丸太の罠を回避して左に曲がる。そして少し進んだところで右へ直角に曲がる角の前で止まり、手鏡を突き出して奥を探る。 その時、突如銃声が響き手鏡が弾き飛ばされた。試しに松明を一本放ってみる。すると、やはり銃声が数回響いて空中で松明が踊り、そして落ちた。奥で弾を込める音がする。どうやら腕利きのガンマンがいるようだ。そのガンマンが名乗りを上げた。 「俺の名はバーン。ちょっとでも顔を出してみろ、俺の早撃ちで穴だらけにしてやるぜ!」 ゼロがバーンに向かって走り出す。小さい上にすばしっこければ当たりにくい、と判断したからだ。援護しようとクサナギがボルトアクションを構えて引き金を引く!が、不発……。銃が弾詰まりを起こしたようだ。ファルスが代わりに(見張りからガメてきた)銃で援護。バーンがゼロにてこずっている間にイーリスとセフィロスが近づき結局、数の暴力と自分の銃の暴発によってバーンはあえなく倒れた。 残るは親玉一人。そう思われた時、通路の奥のほうから親玉らしき男が縛られたワールモン伯爵を連れて現れた。 「ここから立ち去れ!いいか、ちょっとでも近づいてみろ、伯爵の命はないぞ!」 強気の親玉に対し、ワールモンはきっぱりと言い放った。 「私のことは構わぬ!こ奴をやっつけてくれ!」 「ええい、うるさい奴だ!お前は黙ってろ!」 もはや部下もいない親玉はかなりあせっていたようだ。そしてその一瞬の隙を突いて一行が動き、親玉はあっさりと倒れた。 ワールモンは少々怪我をしているものの無事だった。どうやら連中は、伯爵を人質にしてこのノウラを強請り、あわよくば乗っ取ってしまおうと企んでいたようだ。 「いや、なんにせよ助かった。このノウラを代表して礼を言わせてもらうよ。ここに残っているのはあと老人一人だけだし。奴は、連中に爆弾を提供した錬金術師らしいが……」 一行が部屋の奥を見ると、その片隅に一人の長衣を纏った老人がうずくまっている。そしてその手には火のついたライターと、黒い爆弾を一つ持っていた。老人は一言、こう呟いた。 「……もうだめだ……」 全員の顔が真っ青になった。この部屋にはまだ、ほかにも爆弾や火薬が大量にあるのだ。今、それが一斉に誘爆したら間違いなく全員助からない。ゼロ、イーリス、セフィロスが老人に斬りかかる。だが、老いた錬金術師は持てる運のすべてを使い果たすような勢いでそれらの攻撃をことごとく回避し、致命的な一撃にも耐え切った。そして続くファルスの攻撃も凌ぐ。 残ったクサナギは、老人に対抗するかのようにすべての運をつぎこんだような太刀を振るい、命中させる。しかし、あまり致命的な打撃ではない。だが、誰かの祈りでも通じたのか、その大したことのない一撃を受けて、老人は気絶した……。 最大の危機を脱した一行。だが、ふと気がつくと倒れたはずのバーンの姿が消えていることに気づいた。おそらく、今の騒ぎのどさくさに紛れて逃走したのだろう。ひょっとしたら、その内またどこかで会うことになるかも知れない……。 とにかく砦をあとにした一行は無事、街に帰りつくことができた。先の戦闘で倒れたものの生き残った親玉と手下、そして錬金術師は捕らえられ、あとで正式な裁判にかけられることになった。ちなみにゼロは奥の部屋にあった爆弾を欲しがったが、結局それらは全部証拠品として押収されてしまった。 一行は街を挙げて感謝された。しばらくの間はこの町ではちょっとした英雄として扱われるだろう。なお、この事件はそもそもワールモン伯爵のお忍び癖が原因で起きたということもあり、その為彼は数日間謹慎と相成った。 一方、破損がひどく修理が必要になったグラーテを操兵修理工場に持ち込んだクサナギは、この工場の設備ではグラーテの完全修理は期待できない、と聞かされて落ち込んだ。とりあえずの修理を依頼したものの、一週間はかかるという。どのみち一行はしばらくこの街に滞在することになりそうだった……。 |