
|
それから一週間が過ぎた。一行はそれぞれ見つけた仕事をこなし、それぞれの生活をしていた。クサナギ、ゼロ、セフィロス、ファルスは機械発掘で汗を流し、アリスは、踊り子としての仕事に精を出す。 ミオは仕事と修行をしながら、イランド博士の図面を参考にグラーテとカムナの改造を行なった。それぞれの機体に余剰の出力をもたせて、それを用いて蒸気兵装に常に蒸気をため込む。この方法を用いれば、威力は半減するもののチャージしなくても使用が可能になるというものだ。もちろん、チャージを行なえば通常通りの威力を発揮する。さらにカムナには、アリスの要望で増加装甲が装備された。 このころ街では、こんな噂が流れていた。操兵の亡霊が、闇から生まれた獣を従えて商隊を襲い喰い散らした、というのだ。その場所は、ライバから隣の街のリナラとマザラに続く街道の別れ道辺りだという。 そんな噂を聞きながら、イーリスは[剣の刃亭]の用心棒として店の片隅で暇を持て余していた。用心棒といっても、役所に近いこの高級酒場はごろつきなどが来ることはめったになく、もっぱら喧嘩の仲裁などが主な仕事なのだが、それすらも稀なのだ。 その時、店の近くで爆発音が響き、イーリスは現場に向かった。彼女がそこで見たものは、無残にも爆破された役人の詰め所と、大怪我を負って運び出される役人達、そしてその爆発に巻き込まれて怪我をした街の人々の姿だった……。 事件の数日後、一行は再び斡旋所を訪れた。あの後契約が切れるなど様々な理由で仕事を失った一行は、先の爆弾テロの調査依頼でもきていないかと思ったからだ。 ところが、そこでは意外な仕事の依頼があった。[街道の亡霊退治]噂にあったあの、死操兵と闇の獣の退治だ。依頼人は、行商のラゾレ商会の主人、ラゾレ。彼は、斡旋所の二階で依頼を受けてくれる者を待っているという。一行は促されるまま階段を上った。 二階では恰幅の良い商人然とした男……ラゾレが番頭らしき男と用心棒と思われる女戦士を連れて一行を迎えた。ラゾレは挨拶を済ませると、一行に二人を紹介した。番頭はムワトロ、女戦士はルシャーナといった。早速ラゾレは、仕事内容の説明に入った。その内容はやはり、あの亡霊退治だった。商隊が今度その街道を通ることになったので、先に排除しておきたいということだ。なぜ、旅の護衛ではないのか、と一行が訪ねるとラゾレは、「どうせ対決は避けられないのだから、いっそ先に退治しておけば、自分だけでなくほかの同業者も安心して街道を通れるようになるから」と語る。 何か引っかかるところはあるものの、別口の仕事も無い一行はこの依頼を受けることにした。ラゾレは仕事の条件として、番頭のムワトロを一行に同行させることを要求した。ゼロは、 「こんなおっさんじゃなくそっちのネーチャンがいい!」 と、主張したが、それに対しルシャーナは、 「私は只の用心棒だ……。そこまでする義理はない……」 と、そっけなく答えた。その口調は、あまり用心棒のそれとは思えなかった。とりあえず一行は、その条件を呑むことにした。 ムロトワを交えた一行は作戦を立てるべく相談した。その結果、自分たちを商隊に見せかけて亡霊をおびき寄せ、奇襲をかける、ということになった。ひょっとしたら相手は亡霊に見せかけた新手の野盗では、という説も出た。だとすれば奴等は街で情報を集め、手頃な商隊を物色して襲っているのかもしれない。一行はそれを逆手に取ることにした。ムロトワの協力で商隊出発の噂を流し、ラゾレの用意した荷車にカムナを乗せて、荷物に偽装した。 次の日の朝、出発した一行はその日の夕方には最重要ポイントである街道の別れ道についた。ここはごつごつした大きな岩が沢山転がっている広い岩場だった。一行は、ここで野営をする振りをして様子を探ることにした。 やがて、完全に日が暮れたときにそれは現れた。それは蒸気を噴かずにこちらにゆっくり向かってくる全高2リート近い鋼の巨人だった。死操兵か?それとも、モ・エギの様に操兵に偽装した御仁か?だが、クサナギとアリス、ミオには、その巨人が静かだが確かに駆動音をたてていることに気がついた。では蒸気が出ないのは……。その答えもすぐにわかった。グラーテに新しく装備された赤外線視覚装置であの機体を見ると、機体の熱は背中の2本の筒から逃げているようだ。いったい、どんな仕掛けなのか?だが、これではっきりした。これは亡霊に見せかけた、新型機の試験らしい。 そうとわかれば恐れることはない。クサナギはグラーテを操兵に向かわせた。操兵もグラーテに向かって剣を振る。ぶつかる刀と剣!パワーは互角、強敵だ。 だが、敵は操兵だけではなかった。辺りが完全に闇に包まれたと同時に、一行を取り囲むように三匹の黒豹が現れた。どうやらこれが[闇の獣]の正体のようだ。さらに、岩壁をつき破って一機の操兵が出現した。その鳥脚操兵は、かつてマディが使用した[リグ・アーイン]と同型の機体だった。 |