キャンペーン・リプレイ

第 九 話 「 激 突 ! 王 子 と 皇 帝 」  平成10年8月30日(日)

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 試合当日。ライバ主催の操兵武闘大会は、国王レイ・ライバ十六世の開催宣言と、参加操兵全機による盾を用いたどつき合いで始まった。この大会は参加操兵32機で争われる。操兵はA・Bのグループに分けられ、トーナメント方式による試合を行う。大会一日目には一回戦16試合、二日目には二回戦8試合が行われ、そして決勝はそれぞれのグループの勝者で争われる。
 クサナギとアリス、そしてモ・エギはそろってAグループにいた。二人はAグループの他のメンツを見て驚愕した。何と、あの紅蓮をはじめとしてメリエンヌやザクネーン、果てはルシャーナまで、強豪と思われる面々のほとんどがAグループに集中しているのだ。これはおそらく偶然ではあるまい。
 巨大な闘技場は大勢の観客でにぎわっていた。この大会では賭博が認められており、街が用意した賭札売場や個人の胴元などの前には賭札を求めて長蛇の列ができていた。その中には、ゼロ、イーリス、ファルス、メルルの姿もあった……。
 一回戦、第一試合はクサナギと、アルキュイルの改造型を駆る流れの操兵乗りアディスの試合。クサナギはグラーテを巧みに操り、アルキュイルの星球棍や鉄斬爪の攻撃をかわして大太刀で反撃、アルキュイルを倒した。アディスは星球棍をおいて、悔しげに闘技場を後にした。
 無傷で勝利したクサナギとグラーテは観客の喝采を浴びた。その中でゼロ達は、今後の賭の配当が悪くなると騒いでいた。
 第二試合ではメリエンヌの操兵[マリアローズ]が高い機動力を駆使して圧倒的な勝利を収め、第三試合は重操兵[ブルガイン]がバグ・カーペンタを下した。
 第四試合。操兵に化けた御仁姫紅葉ことモ・エギと、傭兵隊長ザクネーンの駆る操兵[リグバイン2式]との試合。モ・エギは大鉈を振るい、リグバインの重増加装甲を砕く。対するザクネーンはリグバインの腕に装備された鋼線射出器を発射してモ・エギの鉈を封じる。
 だが、ザクネーンはモ・エギの動きを不審に思った。
(あのなめらか過ぎる動き……本当に操兵なのかよ?)
 ザクネーンはリグバインをモ・エギに接敵させ、右腕の小剣でモ・エギの頭部−兜−をねらう。そうはさせまいとその攻撃を回避するモ・エギ。だが、健闘空しくモ・エギの兜は弾き飛ばされ、御仁であることがばれてしまった。
「クサナギさん、アリスさん、後はお願いします〜〜〜」
 呆気にとられるザクネーンや観客をよそに、モ・エギは警備隊の操兵に引きずられるように連れていかれてしまった。
 第五試合はルシャーナの試合だった。ルシャーナの操兵[68式装甲操兵]の性能、そしてルシャーナ自身の操手としての腕はかなりのもので、ゴワンザの操兵[ムグラン]をいとも簡単に倒してしまった。一度だけムグランの攻撃を受けたが、それも「自操兵の装甲を試すため」わざと受けたようだ。
 第六試合。アリスは、ネーウェルというキザな男の駆る操兵[リムナンテ]と戦った。試合直前にまでアリスをナンパしていた彼だが、いざ試合となると、細身の機体を操り細剣で鋭い攻撃を仕掛けてくる。アリスはその攻撃を何とかかわし、苦戦しながらも勝利した。ネーウェルは、操兵の残がいと一緒に運ばれながらも最後までアリスを食事に誘っていた。
 そして第七試合が終わり、本日最後の第八試合、紅蓮の狩人デューク・フリーディオの試合が始まった。紅蓮のイリューディアはノウラの漁師さん操る四脚操兵[クラブラン]を圧倒的な強さで打ち破った。
 だが、紅蓮はそこで終わりにはしなかった。観客が見ている中、紅蓮のイリューディアは既に沈黙しているクラブランの操手槽に手にした斬槍剣をつき立てた!……が、幸い操手は無事だった。
「……外したか……」
 拡声器から漏れる紅蓮の呟きに観客は怒号をあげた。この試合は真剣勝負のため、場合によっては操手が死亡してしまう場合もある。だが、既に倒れた相手に、しかも操手を狙って刃を刺すなど言語道断だ。
 だが、クサナギとアリスは気づいていた。あれはわざと操手を狙ったのではなく、わざと操手への狙いを外したのだ、と。あれはおそらく、わざわざ自分の残虐性を観客に見せつけ、演出しているのだ。だが、何のために?
 その後始まったBグループの試合には、ザクネーンの妹ルイーザや、竜型の改造操兵を駆る自称[竜の教祖]など変わった面々がそろっていたが、特に目立った実力者は見受けられなかった。ただ一人を除いて。
 その操兵の名は[ファルメス・ロードレイ]。グラーテと同じファルメスを名乗るその操兵は紅蓮同様、圧倒的な力で操兵[ザスカール]を倒し、初戦をものにする。
 しかも彼は紅蓮と違い、倒した相手に手を差し伸べるなど、紳士的な振る舞いを見せて観客の人気をさらった。その操手の名は、レオンナール・ロクセイア。受付のときにクサナギが見た、王朝結社に関係があると思われるあの馬車の青年だった。

 その夜、竜の牙亭にいるクサナギとアリスの元にルシャーナが訪ねてきた。三人は酒を酌み交わしながら、今日の試合を語る。
「それにしても、明日の試合は強敵が多い……」
 クサナギのその言葉にルシャーナは、
「私にとってはそなたもその一人なのだがな」
 と、苦笑する。
 そこに、初戦を見事に勝ち抜いたメリエンヌがやってきた。彼女は明日対戦するはずのクサナギを無視して、ルシャーナの元に歩み寄る。
「ルシャーナ。以前の御前試合でつかなかった決着、この大会でつけてあげるわ」
 どうやらクサナギのことなど眼中に無いようだ。
 言いたいことだけ言ってとっとと帰ったメリエンヌと入れ違いで、今度はゼノアがやってきた。彼はクサナギに、レオンナールの操兵ロードレイの正体を告げた。そう、あの操兵こそ、連中が仮面を所持していると主張する王家の操兵ファルメス・エンペラーゼの複製機なのだ。と、いうことはその機体に乗るレオンナールの正体は……。
 その後三人は、この日の試合の流れから王朝結社のこの大会における企みを推測した。Aグループで圧倒的な強さと残虐さを見せる紅蓮、それと対照的に紳士ぶりを見せるレオンナール……。おそらく連中は紅蓮を悪役に、そしてレオンナールを英雄に仕立てあげ、決勝で二人を戦わせるつもりだろう。そしてその戦いでレオンナールが勝利し、観客の人気を集めたところで身分を明かし、この都市国家郡中に王朝結社の名を宣伝するつもりなのだろう。
 もし、この推測が正しければおそらく連中は二人を勝たせるためになんらかの裏工作を仕掛けてくるだろう。だが、それに対してこちらは受け身で構えるしかない。何せ、役人に話したところで証拠がない。現段階でこちらが出来ることは紅蓮、またはレオンナールの勝利を阻止すること。しかしレオンナールはBグループ。クサナギらは、まず間違い無く勝ち残ってくるだろう紅蓮を食い止めねばならない……。 ちなみに、街の衛兵に拘束されたモ・エギはゼノアの働きかけでとりあえずは身柄を預かることができた。もしものときはいつでも加勢できるそうだ。