キャンペーン・リプレイ

第 九 話 「 激 突 ! 王 子 と 皇 帝 」  平成10年8月30日(日)

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 翌日。第二回戦の第一試合、クサナギとメリエンヌの試合が始まった。この試合はかなりの激戦が予想された。何せ、観客席で見ていたゼロの見立てでは、メリエンヌの剣の腕前はわずかながら自分たちを上回っているのだ。それに加えて、彼女の操兵のマリアローズは高い機動性を誇る特注の機体。観客の予想も「3:7でメリエンヌ優勢」というものだった。
 だが、いざ蓋を開けてみると試合は一方的な展開となった。試合が始まると同時に、武繰使いもかくや、と思える鋭い剣さばきでグラーテに迫るマリアローズ。しかし、クサナギはその剣撃を難なく受け流した。クサナギは昨日の試合の時点で見抜いていた。彼女が自らの剣の腕におごり、そして頼りきって操手としての技術をおろそかにしていることを。
 クサナギは繰り出されるマリアローズの剣をグラーテに受け流させ、爆砕槍で牽制しつつ大太刀による攻撃を浴びせかけた。それに耐え切れず、マリアローズは崩れるように倒れた。
 操手槽から出てきたメリエンヌはグラーテを睨つける。何せ今まで見下していた相手に一太刀も与えられずに負けたのだ。その悔しさは並みではない。
「そなたの剣の腕は私よりも優れている。だが、それだけでは操兵は扱えない!」
 クサナギのこの言葉にメリエンヌは、
「……修行を積んで、次は必ず勝つ……」
 とだけ答えた。
 第二試合はザクネーンがブルガインを破って勝利した。そしてその後第三試合、アリスとルシャーナの試合が始まろうとしていた。その時、観客席で試合を見守っていたクサナギの元にアーロア・イランド博士がやってきた。博士はクサナギに、ルシャーナの操兵、68式の正体を告げた。あの機体は北東の大陸[トランバキア帝国]の試作操兵である、というのだ。なぜ、商人であるはずの彼らがそんな機体を……。どうやらイランド博士はルシャーナについても何か知っているようだ。だが、それについては語らなかった。
 試合が始まった。アリスはカムナを操り、繰り出される68式の攻撃を何とかかわして反撃しようとする。だが、いかんせん実力の差か、先手を取れず防戦一方となった。
第2回戦の2試合目、愛機カムナで68式に切りかかるアリス。しかし力及ばず・・・

「……攻撃に積極性がない。これではだめだ……」
 その言葉に触発されたか、カムナの剣が68式に一撃を与えたが、大した打撃には至らなかった。ルシャーナは68式の剣をカムナの剣にたたきつけ、鍔競り合いに持ち込んだ。そしてアリスにこんな言葉を投げかけた。
「そなたはなぜ、操兵に乗っているのだ?」
 結局、アリスはカムナの損傷が激しくなった時点で降参した。
「これが戦士とそうでないものの差だ」
 アリスはルシャーナの言葉を噛み締めた。
 Aグループの最終試合。紅蓮は相変わらず残虐さを見せつけた。対戦相手の操兵[マクシマス]を、イリューディアの右肩部の盾に内蔵された鉄斬爪を装備した複腕で掴みあげ、いたぶる様に破壊したのだ。観客は紅蓮に罵声を浴びせた。
 そんな中、イリューディアを見てイランド博士は驚愕した。
「……ヴァルパス・ヒラニプラ……間違いない、あれは[ヴァルパス・ヒラニプラ]だ!」
 博士の話によると、あの機体もまた、ファルメス・グラーテ同様三千年間生き残ってきたプレ・クメーラ文明の操兵。しかも、グラーテと反対の、ヴァルパスの陣営の操兵である、というのだ。
「外装にかなり手を加えられてはいるが、間違いない。あの両肩のセラミック製の盾と、それを支える複腕が何よりの証拠だ」
 一方、Bグループの試合のほうでも色々なことが起きていた。ゼロたちもそんな事件の一つに巻き込まれていた。
 傭兵隊長ザクネーンの妹、ルイーザの操兵[一式リグバイン]が何者かに細工され、機体の調子がおかしくなってしまったのだ。クサナギに言われて他の陣営のガレージを覗いていたミオが気づき、ザクネーンに声をかけてすかさず修理を試みる。ところが、慌てて修理したためか故障がかえってひどくなり、右腕全体が動かなくなってしまったのだ。
 ザクネーンに短剣を投げつけられて謝りながら逃げるミオ。ルイーザは仕方なく右腕の動かなくなったその機体で出場した。そしてやはり、全力を出し切れぬままもろくも敗れ去った。
 その外のBグループの試合はやはりぱっとしなかった。ただ一つ、レオンナールの駆るファルメス・ロードレイの華麗なる勝利を除いて……。
 だが、クサナギは見逃さなかった。対戦相手の機体の動きに異常が見られたことを。どうやら、何か細工されているようだ……。
 その夜、クサナギとアリスはレオンナールの明日の対戦相手である閃光のカールに忠告しようと整備場を訪れた。が、今日の試合で竜の教祖を破ったカールは、妙にとろとろと作業をしている整備員に苛々していてとても取り合ってくれそうになかった。
 その時、仕方なく引き上げるクサナギの前に、あのサイラスが現れた。クサナギはサイラスに詰め寄った。
「そなたたちはこの大会を利用して何を企んでいる!」
「我々は純粋に出場者としてこの大会に参加しているだけだ。それを貴様は、ただ我々に対する憎しみだけでそのように言っている……。今の貴様に正義はない!」
 確かに今はまだ証拠がなく、クサナギは何も言い返せなかった……。