キャンペーン・リプレイ

第 九 話 「 激 突 ! 王 子 と 皇 帝 」  平成10年8月30日(日)

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 クサナギは悔しさを噛み締めながら宿に戻ってきた。するとそこでは、デューク・フリーディオが待っていた。
 彼はグラスの酒を飲み干すと、クサナギにこう言って立ち去った。
「おれの明日の対戦相手、確かルシャーナとか言ったか……。あの女が相手では、さすがのおれも無傷で勝つ、という訳にはいきそうにないな、このままではな……」
 ルシャーナが危ない!沿う感じた二人は、急いでラゾレ商会の借りた整備場へと向かった。幸い、そこはまだ無事のようだった。
 整備場の入口ではラゾレが二人の話を聞き、ルシャーナの機体整備は自分たちの部下が行っているので大丈夫、と説明する。それを聞いてクサナギとアリスは安心した。
 が、そこにムワトロが、
「うちの殿……ルシャーナ……を、見かけなかったですかい?」
 と、問いかけてきた。そういえば、今夜はまだ会っていない。一体、どうしたというのだろうか?
 その心配は、現実のものとなった。ルシャーナが何者かに襲われ、腕にひどい傷を負って帰ってきたのだ。
「殿下!」
 ラゾレとムワトロが、クサナギとアリスの目の前であることを忘れてルシャーナに駆け寄る。医術の心得のあるアリスが傷を手当てしたが、怪我は思ったよりもひどく、明日の試合出場は絶望的であった。
「……油断した……」
 ルシャーナは力なく苦笑した。
 傷の手当を続けるアリスに、ムワトロが不意に、こんなことを持ちかけた。
「アリスさん。怪我を見てくださったついでに、その……なんですかね……殿下の代わりに、うちの操兵に乗ってくれませんかね」
 アリスは突然のこの提案に戸惑った。そして少し考えた後、その頼みを承諾することにした。
 一方、クサナギはグラーテのことが心配になり、ミオとグラーテのいるガレージに急いで向かった。そして、その嫌な予感は的中した。
 そう、そこには既に敵の手が回っていたのだ。ミオは猿ぐつわと縄で縛られ、グラーテには三人の黒装束の男が取りついていた。
 クサナギは腰の大太刀を抜いて男たちに戦いを挑んだ。黒装束も短剣で反撃する。クサナギはその短剣を軽々とかわし、大太刀で男たちを攻撃し、一人逃がしたものの、二人を無力化して捕らえることができた。
 クサナギはミオを開放した。そして、捕らえた二人になぜグラーテに細工をしようとしたのか問いただした。すると男は、貴様の次の対戦相手に頼まれた、とあっさりと自供した。次の対戦相手と言えば、あの傭兵隊長ザクネーン。確かにあの手の男ならこういうこともやりかねない。が、こうも簡単に自供するというのも、あまりにも怪しすぎた……。
 そして準々決勝当日の第一試合。クサナギとグラーテの相手は、モ・エギを敗った(?)リグバイン二式を駆るザクネーン。
 試合開始。小剣を巧みに操り執拗な攻撃をくり返すリグバインに対し、クサナギはグラーテに大太刀でその攻撃を受け流させると、隙を見て大太刀の一撃を与え、増加装甲を粉砕した。続く射出チェーンによる攻撃も軽く受け流してカウンターでリグバインの腕を破壊、使用不能に追い込む。
 頭に来たザクネーン。だが、何とかグラーテより先手を取ろうとして慌てた為か操縦を誤り、左腕部に装備した破砕鎚が暴発、自機を見事に貫き粉砕……そして、リグバインは沈黙した。
 試合後にクサナギは、昨夜の襲撃のことをザクネーンに問いただした。すると
「……そうか……その手があったかあぁぁぁ……!」
 ……どうやら違うようだ……。
 第二試合。アリスはカムナの仮面を装着した68式の操手槽の中にいた。仮面がカムナのもので慣れているとはいえ、全く不慣れな、しかも操作がカムナより複雑な機体。しかも相手はあの紅蓮……
 試合開始のサイレンが鳴り、それと同時にイリューディアが動いた。その速度に圧倒され、68式は防戦一方だった。やはりこの機体は、今のアリスには荷が重すぎたのだ。
「動きに昨日までの切れがない……怪我でもしているのか?」
 デュークの呟きにアリスは答えず、ただ沈黙した。
「……いや、違うな……」
 デュークはイリューディアに腹部のウィンチのワイヤーロープを引き出させると、それを68式の機体に巻きつけ、その動きを封じた。そしてそのまま68式に組みつき、胸部装甲を引きはがし、操手槽をこじ開けた。
「無駄だ。あんたでは俺には勝てん……。もちろん、次に戦うクサナギにもな……。だからどの道、あんた等ではあいつ等のたくらみは阻止することはできん。坊やの試合に、乱入でもしない限りはな……」
 アリスは、ただ黙っているしかなかった……。
 ここはデュークの言う通り、レオンナールの試合に乱入するしかない。アリスの話を聞いてそう判断したクサナギは、アリス、ムロトワ、ゼノア、そしてモ・エギとイランド博士、ミオと、乱入のための作戦を立てた。
 結局、作戦は簡単なものとなった。まず、クサナギとアリスがグラーテとカムナで先日捕らえた破壊工作員を連れて乱入し、イランド博士とミオが対戦相手の操兵の機体を点検する。敵の妨害はゼノア、ラゾレ商会のそれぞれの部隊、そしてモ・エギが阻止する……一同は早速、準備に取りかかった。だが、クサナギは、デュークがなぜそんなことをわざわざアリスに話したのか、その理由を考えていた……。
 やがて、Bグループの第一試合が終了し、いよいよレオンナールのファルメス・ロードレイと閃光のカールの操兵[ヘイステイド]による本日最後の試合が行われようとしていた。
 その時、妙に動きのぎこちないヘイステイドを押し退けるようにして操兵ファルメス・グラーテ改が闘技場の中心に進み出た。アリスの操兵ユニホーン・カムナが二人の工作員をぶら下げてそれに続く。
 ざわめく観客。それを黙らせるかのようにクサナギが叫ぶ。
「この試合待て!そのカールの操兵、あらためさせてもらう!」
 静まり返った観客席からサイラスが立ち上がり、叫び返す。
「何の権限あっての乱入か!先日言ったはずだ。今の貴様に正義はないと!」
「この試合には不正がある。証拠はここにいる二人の破壊工作員だ。そして、操兵をあらためればわかることだ!」
 クサナギは茫然と立ちつくしているカールの操兵を指さす。サイラスはいきり立ち、
「貴様にその権利はない。早々にここから立ち去れ!」
 だが、主賓席からライバ国王、レイ・ライバ16世が立ち上がった。
「待て。不正があるとは聞き捨てならん。よい。クサナギとやら、そなたの言い分を聞こう」
 サイラスは渋い顔をした。が、結局王には逆らえなかった。
 打ち合わせ通りイランド博士とミオがヘイステイドに向かう。が、その時クサナギ達が入ってきた入口と反対方向の入口から別の整備員が現れ、我々があらためるといって二人を阻む。
 だが、博士は怯まず、
「この、アーロア・イランドが見るといっているのだ、不服か?」
「……あの、イランド博士が見るのならば確かであろう……。よかろう。見てみるがよい」
 博士の威厳と王の一言で整備員はたじろいだ。こいつら大方、王朝結社の手のものだろう。その隙にミオがヘイステイドによじ登って機体の点検をする。すると……。
「あ〜〜〜。膝関節の駆動部に詰め物……筋肉筒も劣化してる、こりゃ不良品だわ……」
 そのころ、観客席にいたゼロ、イーリス、ファルス、そしてメルルは、自分達の周辺でも異常が起きていることに気づいた。事の成り行きに注目していた観客を後目に、数人の男達が観客席の周辺に何か筒のようなものを仕掛けて回っているのだ。
 誰何すると、その男達は小剣を抜いた。どうやらこいつらも王朝結社の手の者のようだ……。ゼロ達の動きも見据え、クサナギは観客席のサイラスに向かって叫んだ。
「これを見よ!これがそなたら王朝結社の正義か!!」