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クサナギの今の言葉に観客はざわめいた……。王朝結社と言えば、天下に名高いテロ組織として一般にその名が知れ渡っている。それ故、人々はあまり良い反応はしない。 「サイラス!これはどういうことなのか。僕はそんなことは命令してはいないぞ!」 拡声器を通してレオンナールが叫ぶ。 サイラスは沈黙した。その代わり、九機の操兵が闘技場に乱入し、グラーテとカムナを取り囲んだ。どうやらこれまで、と判断したようだ。中には、Bグループで試合を「演じた」機体もいる。 その時、グラーテが入ってきた入口から別の操兵の一団がモ・エギを先頭になだれ込んできた。今までの試合で敗れたものの機体を失わなかった者や不正のために破れ去った者達だ。ゼノアが話をつけてくれたのだ。 大乱闘が始まった。闘技場では操兵同士が、そして観客席ではゼロ、イーリス、そしてファルスとメルルが賊を相手に奮戦していた。 グラーテの回りにも、三機ほどの操兵が取り囲んだ。操兵は一斉にグラーテに襲いかかる!だが、今のクサナギにとっては敵ではなかった。クサナギはグラーテに太刀を構えさせると、迫る敵操兵二機を太刀と爆砕槍で同時に、そして返す太刀で一機をものの見事に粉砕した。 そこに、レオンナールのファルメス・ロードレイがグラーテの前に立ちふさがった。 「僕は不正などしなくとも十分戦える。かかってこい!」 グラーテをロードレイに向けてクサナギが叫んだ。 「クサナギヒコ・ディス・グラーテ!!そなた達王朝結社に滅ぼされしグラーテ王国の王子!」 「レオンナール・クメーラ・ロクセーア14世。王朝結社の首領にして、新生ク・メーラ王朝皇帝!」 レオンナールもロードレイに剣を構えさせる。 「そなたの国、グラーテ王国はかつて、我が王国についに従うことはなかった。だがらこの僕の手で、先祖に成り代わり屈伏させてみせよう!」 周囲ではモ・エギやカムナ、そしてマリアローズに一式リグバインなど様々な操兵が激戦を繰り広げていた。マリアローズは一機の操兵を掴むと、そのまま壁に激突させる。その余波は、観客席で戦っていた四人を混乱させた。 そんな中、王子と皇帝はついに剣を交えた。グラーテの大太刀とロードレイの長剣が激突し、火花を散らす。 ファルメスを名乗るだけあって、レオンナールのロードレイは確かに強かった。高い機動性を発揮し、鋭い剣撃を繰り出しグラーテを追い詰める。が、決して見極められない動きではない。今のクサナギにとってロードレイは然したる強敵ではなかった。 次々と繰り出される剣を軽く受け流すと、クサナギは隙を見て大太刀の一撃を確実に当てていく。その一撃で怯んだ隙にクサナギは爆砕槍のチャージレバーを引いた。そして、ロードレイの攻撃をかわして必殺の二股の槍をロードレイに向けて撃ち放った! だがその時、二機の操兵の間に大型の盾を両肩部に装備した濃紺の操兵が割り込んできた。紅蓮の狩人デュークの操兵イリューディア=ヴァルパス・ヒラニプラ。デュークはヒラニプラの左の盾の中から三本の筒状の鎚が飛び出た複腕を出すと、それを左手に掴ませて射出直前の爆砕槍に向けて突き出した!。 蒸気兵装[三連爆砕鎚]。それはヴァルパス・ヒラニプラの最大の武器。三本の鉄鎚が回転しながら交互に飛び出し、旋回しながら射出される爆砕槍の二股の槍に激突する!その衝撃でグラーテとヒラニプラは互いに弾き飛ばされた。 「何故だ!何故そなたのような人が王朝結社などに身を置くのだ!」 クサナギの悲痛な叫びにデュークは静かに答えた。 「……人には、いろいろ事情があるのだ……。クサナギ、あんたとはもう少し戦いたかったが、今日のところはこの坊やを守らなけりゃならないんでね……」 ヒラニプラは脚部の蓋をスライドさせた。そこには、六連装ロケット砲が隠されており、それが一斉に火を吹いた!発射されたロケットはでたらめに飛び回り、当たりを混乱させる。その中の一発は観客席に飛び込んで、賊と戦っていた四人をも吹き飛ばした!。が、幸い無事であった。 ヒラニプラはさらに、背中部の煙幕筒を乱射し、視界を遮って混乱をより悪化させた。そしてその隙に、ロードレイを担ぎ上げると足早に去っていった。 「放せデューク!僕はまだ負けてはいない!」 ロードレイの操手槽からレオンナールの叫びが聞こえる。 「クサナギヒコ!次は必ず本物のファルメス・エンペラーゼを見つけて、今度こそ決着をつけてやる。覚えていろ!」 混乱の中、サイラスは悠然と立ち去って行く。 「きさまがここまで我々に敵対するのなら、それもよかろう。だが、その報いは必ず受けてもらう。忘れるな……」 戦闘は終わった。そしてそこに残されたものは、操兵の残骸、壊れかけた闘技場、そして無情感……。 「……派手にやってくれたな、クサナギヒコとやら……」 立ちつくすクサナギの前に、ライバ王が近づいた。思わず跪くクサナギに王は、 「王家の人間が王に跪く必要はない。余は、そなたを罰することはしないが、礼も言わぬ。不正を見抜いたのは確かにそなただが、この惨状を招いたのも、そなたなのだからな……」 神妙な表情になるクサナギ。だが王は笑ってこう付け加えた。 「だが、個人的には礼を申すぞ。よくやってくれた」 王は、事件解決に貢献した者全員を晩餐会に招待する、と約束した。さらに、御仁族であるモ・エギにも事件解決の褒美として、このライバにおいての行動の自由が認められることとなった。 「クサナギ様!」 いまだ浮かぬ顔のクサナギの元にメリエンヌが駆け寄って跪いた。先日と違って彼女は、クサナギを尊敬の眼差しで見つめていた。 「クサナギ様……。貴方様が王族とは知らず、大変なご無礼を致しました……。私は貴方様の先の戦いを見て感服いたしました。もし、貴方様がリナラに立ち寄られるなら、ぜひとも私の屋敷にいらしてください……。そしてその操兵の技をご教授して頂きたいのです!」 その言葉にクサナギは戸惑った。さらに回りからは、当技場に残っていた観客からクサナギをたたえる声が聞こえる。 クサナギはどうしたら良いのかわからなかった。が、メリエンヌや観客の笑顔を見てクサナギは、この勝利をもう少し実感しても良いだろうと思った。何しろ、あのサイラスを、そして王朝結社を初めて本格的に打ち負かしたのだから……。 |