キャンペーン・リプレイ

第 十 話 「 遠 い 記 憶 の 呼 び 声 」  平成10年9月20日(日)

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「いざ行かん、正義の勇者よ!」
 馬車の屋根ではしゃぐゼノア。調子に乗って落っこち、モ・エギに助けられるがそれでも懲りず、ずうずうしくもそのままモ・エギの肩に居座ってしまった。そんなことをしながらも一行はあせる気持ちを抑えながら強行軍で進んだ。そして予定よりも半日も早くマザの街に到着することができた。
 このマザはライバほどではないが、それでもそこそこ大きな工業主体の街だ。目的の荷物を取りに出掛けたゼノアを待ちつつ一行は、強行軍で疲労した体を少しでも休めるために小さな宿に入った。その際ファルスはゴーグル男の情報がないか調べたが、特に何も得られなかった。どうやら連中は、この街には立ち寄らなかったようだ。
「みんな大変!」
 街のはずれで待機していたモ・エギが血相を変えて一行の宿にやってきた。そして掌を慌てて飛び出してきた一行に差し出す。その手にはぐったりした一人の少年を乗せていた。モ・エギの話ではこの街の入口近くに倒れていたということだ。ファルスはその少年を知っていた。かつてファルスが世話になった集落の長の息子だった。
「タクマ……タクマじゃないか!」
 気がついたタクマはファルスのほうを見るとうれしそうに叫び、抱きついた。
「ファルス兄ちゃん……会いたかったあぁぁ……!」
 落ち着きを取り戻したタクマは事情を話した。それによるとメークルは既に襲われていた。相手は傭兵軍団と五機もの操兵。しかしメークルにも自衛手段はないわけではない。雇った用心棒とともに何とか追い払った。が、用心棒は割が合わないといって逃げ出してしまった。次に奴等が来たら防ぎ切れない。
「ファルス兄ちゃん、メークルを守ってよ!おねえちゃんやみんなを守ってよ!」
 ファルスはタクマの両肩に手を置いた。
「大丈夫だ。俺は、そのために帰ってきたんだ!」
 ファルスの言葉に答えるようにクサナギ、ミオ、メルル、モ・エギ、そして戻ってきたゼノアが力強く頷いた。
 タクマの案内で一行はメークルに向かった。メークルはクゼンの山の麓にある五十人くらいの集落で、人々は[円楼]と呼ばれる建造物で暮らしている。円楼とは、この都市国家群の北の地方に見られる建造物で城壁のような円筒状の壁の内側にアパートのような部屋を設けて大勢の人が生活しているという。このメークルはこの辺りの円楼では大きいほうの部類に入る。
 円楼に到着した一行は最初敵と間違えられたものの、ファルスとタクマの説明で誤解が解けるやたちまち歓迎された。ちなみに集落の人々を驚かせないため、モ・エギの正体は伏せたままにして操兵の振りをし続けてもらうことにした。
「ファルス……帰ってきてくれたのね、ファルス!」
 一人の少女がファルスに抱きついてきた。このメークルの長の娘、そしてタクマの姉でもあるメルカだった。彼女は老いた長に変わって、戦う人々の指揮を取っていた。だが、その気丈に振る舞う彼女の顔にもかなりの疲労が伺える。無理をしていたのだろう。おそらくもう、限界だ。
 そんなメルカにファルスは、優しく声をかけた。
「俺はこのメークルを守るために来た。もう、大丈夫だ……」
 ファルスのその言葉に、メルカは笑顔で答えた。