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戦闘は終わった。だが、村人たち総出の捜索にもかかわらずゴーグル男と五人ほどの傭兵の行方は依然としてわからない。逃げたのだろうか……いや、そう簡単にあきらめるとは思えない。一行は奪われるのを防ぐためにすべての操兵の仮面を隠した。そして奴が現れるであろう、[御神体]の祭られている祠の中に潜み、待つことにした。 やがて朝日が昇ろうとする少し前、決戦の時が訪れた。祠の屋根の上で待っていたミオの背後に、あのゴーグル男と五人の傭兵が音もなく忍び寄る。そしてゴーグル男はミオをつき飛ばした!しかし何とかこらえてミオは落ちずに済んだ。ゴーグル男はそのまま屋根を渡り祠の入口へと降りようとする。 その時、ゴーグル男の足もとの瓦が吹き飛び、大きな穴が開いた!中に潜んでいたファルスが散弾銃で打ち抜いたのだ。ファルスは銃に弾を込めて再び構える。それを見たゴーグル男はファルスに拳銃を向ける。かつてファルスを裏切ったときと同じ四つの銃口……そしてぞっとするあの不気味な笑み……。二人のすぐ側では、クサナギ、メルルが傭兵たちと銃撃戦を繰り広げていた。が、今の二人にはその光景は眼中になかった……。 先にゴーグル男の銃が火を吹いた!銃弾は狙いたがわずファルスの脇腹に食い込む。だが、ファルスはその激痛に耐え、散弾銃の引き金を引いた。反撃の、無数の鉛玉が男を貫き、そのまま男はファルスの側に落下した!そしてそのまま動かなかった……。死んだのだろうか……。 いや、まだ死んではいなかった。ファルスが近づくと男は不意にカッと目を見開き拳銃をファルスに向けた。反射的にファルスも足もとに倒れている男に銃を向ける。ファルス―ラルク・ロイドとゴーグル男―ファルス・ラップウィードの銃が同時に火を吹いた!そして今、すべてに決着がついた……。 もはや虫の息のゴーグル男の回りに全員が集った。ゴーグル男はゆっくりと口を開いた。 「……やったな、ラルク……だが、私を殺したところで何も終わらんぞ……。いいことを教えてやろう。君の故郷、ラザの村の病気な、あれは私がやったんだよ……井戸に毒を入れて、な……」 「何故だ?!何故そんなことを……」 「頼まれたんだよ……あの連中にな……クサナギとかいったか、お前さんがよく知っている奴等だよ……」 クサナギは息をのんだ。王朝結社、いったい奴等は何故……。 ファルス・ラップウィードはそのまま息絶えた。ひとまずの戦いは終わった。そしてファルス=ラルク・ロイドの戦いも……。どっちの名で呼んだらよいか、という問いに彼はこう答えた。 「……ファルスで、いい」 と……。 あと片付けを一通り終えたメルカがファルスのところにやってきた。そして、ためらいながらもファルスにこう、言った。 「……ファルス……もし、あなたがよかったら、もう一度……この村で……暮らさない……?」 メルカが潤んだ瞳でファルスを見つめる。ファルスは答えに迷った。 「何うだうだしているのよ!ここはビシっと決めちゃいなさいよ!」 ミオがファルスをあおる。 「…………」 メルルが後ろからファルスをメルカのほうに黙って押し出す。 「角はこの村に預けとくわ……。その代わり、この集落を必ず幸せにしてあげて、ファルス……」 モ・エギが大きな手でファルスの背中を叩く。思わず吹っ飛ぶファルス。 「ファルス。二人で、お幸せに……」 クサナギが真顔で言う。この朴念人の青年に限って決して冗談はありえない。 「アーわかったよ!残りゃいいんだろ!残りゃ!」 ファルスのヤケッパチの声がすがすがしい朝の空に響く。 「うれしい……ありがとうファルス……!」 「やったあ!ファルス兄ちゃん!」 メルカとタクマ、そして村人全員が大いに喜んだ。 その日の夜は円楼の勝利、そして一行への感謝の気持ちを込めて宴が催された。円楼の外で皆が輪になって歌い、踊る。モ・エギの正体も成り行き上ばれてしまったが、だれもモ・エギが御仁であることを気にしてはいなかった。そしてモ・エギもまた、子供たちを手に乗せたりして遊んであげていた。 その翌日、一行はファルスとメルカ、そしてタクマや村の人々に見送られながら円楼をあとにした。戦いの際に破損してしまったロケットモーターのことで悩むゼノアを横目で見ながらライバに戻る一行。 そんな中、モ・エギはクサナギを両手で抱き上げて自分の顔に近づける。そしてクサナギに囁いた。 「……私、まだ森には帰らない。もっともっと人間やこの世界のことが知りたい……だから、まだ旅を続けようと思うの。クサナギさん……これからもよろしくね……」 モ・エギはクサナギをそっと、自分の頬に寄せた。 |