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そのころ、ようやくの思いで老人を倒したセフィロス。その時、戦闘の混乱の中でラシュアンがライバ王を連れて建物の影に走っていくのを目撃した。王を守るためなのだろうか……。 「待て、ラシュアン!俺も行く!」 セフィロスはラシュアンを追いかけてやはり建物の影に入る。が、セフィロスはそこで信じられない光景を見た。何とラシュアンが長剣を引き抜いて、自らの主であるはずのライバ王にその剣を向けているのだ!。壁際に追い詰められた王は、自分の忠臣だったはずの男の変貌を信じられないような目で見ていた。 セフィロスは思わず叫んだ。 「ラシュアン!一体、どうしたというんだ!」 ラシュアンはゆっくりと振り返った。それを見たセフィロスは驚愕した。振り返ったその顔には、今までのラシュアンのすべてを否定し、覆い隠すようにあの奇面が被せられていたのだから。 「……思い出してしまったのだ……自分が、[奇面衆]の[草]であったことを……」 セフィロスがようやくの思いで口を開いた。 「……ラシュアン……お前ほどのものが、なぜ……」 「これが奴等の催眠技術だ。掛けられたことすら忘れ、時が来たらその刷り込まれた任務を果たす……こうなってしまったら、もはや拙者自身ではもう止められん……止めるには、拙者を……殺すしかない!」 仮面越しにラシュアンが呟く。その隙間から、滴が落ちる。それが何なのかは、今となってはわからない。 「……この姿をお主に見られたくなかった……お主とはこんな形ではなく、正々堂々と戦いたかった……」 「……ラシュアン……」 セフィロスとラシュアンの槍と剣……二つの刃が光を放った!。ラシュアンの神速の剣がセフィロスに繰り出された。セフィロスはそれをぎりぎりでかわしつつ破斬槍をふるう。槍と剣が火花と血しぶき、そして涙と命を散らした。 勝負はついた。最後に立っていたのは、セフィロスだった。その足もとで横たわるラシュアン。奇面をはずしたその素顔は、悪夢から解き放たれたかのように安らかなものだった。茫然としているセフィロスの側にライバ王が歩み寄った。 「……ラシュアンは、余の部下の中でもっとも優秀で忠義に厚い男であった……。それをここまで、暗殺者に仕立てあげるとは……哀れな……」 王はラシュアンの亡骸にそっと手を置くと、その死に顔をじっと見つめた。 「この者は余をかばって、敵の刃にかかって死んだ……そういうことにしておこう。そうすれば、残された家族にも迷惑はかかるまい。それに余も、そう思いたい……。そなたに戦いを挑む……それが、こ奴の精一杯の抵抗だったのであろう。余を自らの手に掛けないための……」 「……ありがとう……ございます……」 二人はラシュアンをあらためて見つめた。王の直命を果たしたかのように満足感に満ちている安らかな顔を……。 試合上は再び静けさを取り戻していた。任務失敗と判断した奇面衆の生き残りはすべて撤退した。阿修羅のからだの痺れも取れ、敵味方関係なく剣を振り回して暴れていたリガーブも衛兵十数人に取り押さえられていた。 クサナギとアリスは奇面衆に対し、強い怒りを覚えていた。トミィのような少年をあそこまで暗殺者に仕立てあげてしまう奴等に……。 ゼロは無表情のまま、取り押さえられているリガーブに近づいた。そして彼のそのふてぶてしい顔に拳銃コスモ・ドラグレーアを突きつける。そしてリガーブに自身と奇面衆との関係を問いただす。 「オレはあいつ等とは関係ねえ……。ただ、試合をオレに有利にしてくれるって言うから乗ってやっただけだ……」 積み重なった衛兵の山の下敷きになったままリガーブは、悪びれる素振りすら見せずに答える。ゼロはその顔の側で引き金を引いた!。龍の女神の横顔が刻印された拳銃が砲哮をあげ、その轟音に驚いた衛兵が蜘蛛の子を散らすように逃げ出す。そこに残されたのは、腰を抜かしたリガーブだけだった。 「……知らねえ!ホントにオレ知らねえんだよおぉぉぉ……」 情けない声を上げるリガーブ。こいつはやはり、唯の捨て石であったようだ。 そこにセフィロスとライバ王が帰ってきた。だがラシュアンの件に関しては、真実は伏せたままだった。 王は一行に、国を挙げての奇面衆調査を約束した。ゼノアの方も独自で調査を進めるという。 「何せ私の今までの調査によりますと、奇面衆の背後にどうも王朝結社の陰が見え隠れしているもので……」 また奴等か……一行の怒りがますます高まった。 その夜、この試合での不祥事の詫びとして試合に参加した者すべてを招いた宴が開かれた。だが、それはまるで通夜のように静かであった……。 |