キャンペーン・リプレイ

第 十三話 「 狂 気 の 剣  無 情 の 奇 面 」平成11年2月28日(日)

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 遺跡の中に突入したゼロとイーリス、セフィロスと阿修羅、そしてミオとメルルはほかの部隊と別れ、ラマーナの案内でさらに奥へと進んでいく。その途中、天井からぶら下がってきた奇面衆を倒し、壁に偽装した板ばさみの罠にかかりながらも一行は、一つの扉の前にたどり着いた。ラマーナの話では、中は大広間になっているという。何かあると睨んだ一行は中を覗き込むが、とりあえず何も見当たらない。中には遠くのほうに、さらに奥に続くと思われる扉、そして向かって右側の高いところにテラスのようなものがあるだけだ。
 立ち止まっていても仕方がない。一行は、その大広間の中へと進んだ。ただ一人、メルルだけが広間の入口に立って後ろを警戒した。その時、一行が通ってきた通路のほうから奇面の集団が大挙して攻めてきた。反撃しようと試みるメルルだが、連中は金属性の盾を装備しており効果的な打撃を与えられそうにない。やむ追えず、メルルも広間に飛び込む。それを見た連中は、その入口を閉じた。
 結局、これで全員が中に入ったことになった。やはり罠なのだろうか?。そう思った瞬間、広間中の明かりが消えた。一行の周辺は完全な闇に包まれた。
 一行の周りで何かが動く気配がした。おそらく、奇面衆が天井から降りてきたのだろう。十人くらいだろうか。厄介な状況だった。こちらは完全な闇の中で全く視界が取れない。対する奇面衆は、例の奇面のからくりで闇など全く影響しないときている。全くもって分が悪かった。
 一行はその場を動かずじっとしていた。下手に動けば連中の思う壺。ここは連携を取って対処するしかない。だが、こんな時に限ってゼロは敵が現れたと思った途端それしか眼中に入らず、しかも遅れて入ったメルルは一行から離れた位置にいる。これではとてもまともな作戦は期待できない。
 暗闇の中から何かが一行目がけて飛んできた。勘を頼りに回避したそれは、吹き矢の針だった。普通命中したところで大した被害はないが、おそらく連中のことだから毒を塗ってあるだろう。かすり傷でも受けたら厄介だ。どうやら連中は接近戦を挑んで来ないつもりのようだ。
 メルルは元来た入口に戻って広間から出ようとした。が、奇面衆が閉じた扉が当然開くはずもなかった。その隙を突いて二人ほどメルルに近づいてきた。銃は接敵されたらあまり有効ではない。敵はメルルに小剣で斬りつけた!。その一撃は大した打撃ではなかったが、体に激痛が走り動きが鈍った。毒が回ったのだ!。
 広間の中央では、連中は吹き矢の次に短剣を投げてきた。何とか回避しつつも反撃の機会をつかもうとする一行だが、敵の位置がわからないと動きようもない。だがセフィロスは落ち着いて、懐から小さな包みを取り出した。そう、その中には発掘品の半永久ランプが入っているのだ。セフィロスはその包みを開いて輝くランプをミオに手渡そうとする。
 だが、突如脇から伸びた小剣がそのランプを弾き飛ばした。ランプは地面に落ちて割れた。こんな近くに敵がいたのか?。そして明かりが消える瞬間、一行は見た。ラマーナの顔に、あの奇面が被せられているのを!。
「貴方達を殺せば私たちを開放してくれる、とあのお方が約束してくれたの、この仮面から……」
 ラマーナはそう呟いた。その声からは感情が一切消えていた。
「……貴様ー!!」
 セフィロスが怒りに任せて槍をふるう。ラマーナを最初は信用できなかったセフィロスだが、先ほど彼女がゼロを助けたのを見て、その疑いは晴れかけていたのだ。ところがここに来て裏切るとは……。そんなセフィロスを残してラマーナはその跳躍力で闇の中に消えていく。
 奇面衆は飛び道具がなくなると、今度は接近戦を挑んできた。イーリスの元に二人、ゼロの元に一人、そして阿修羅とセフィロスのところにもそれぞれ二人ずつ。連中は闇に紛れて顔や手など、防具の薄いところを確実に狙ってくる。その中で阿修羅が明かりをつけようと、火打ち石と松明を取り出したが、奇面に妨害され思うように行かない。阿修羅は火をつけるのをあきらめ、妨害してきた敵に攻撃を掛けた。が、やはり闇の中ではうまく命中しない。
 その時、ミオが長銃の弾丸を抜き、別の弾を装填し始めた。比較的長い付き合いのメルルにはそれが何を意味するのかがわかった。そう、照明弾を使って連中の目を潰そうというのだ。あの奇面はわずかな光を増幅して、暗闇を見通すカラクリだ。もし照明弾のような強烈な光を直に見てしまうと目が潰れるどころではないのだ。
 ミオのその行動に気づいた一行は照明弾装填の時間を稼ぐ。そして準備が整った時、メルルは大変なことに気づいた。そう、自分の側にいる二人の敵がミオのほうを向いていないのだ。メルルはミオが銃を撃つ瞬間を狙って、敵の間をすり抜けようと試みる。それは途中で阻まれるが、結果的には二人とも照明弾の範囲に入った。
 そして引き金が引かれ、まばゆい光が辺りを包んだ。その光をまともに直視した奇面衆は、あまりの眩しさにその場でのたうちまわる。もはや戦闘どころではない。
 ただその中で、ラマーナだけがゼロに向かって突撃を試みる。ゼロはその攻撃を真っ向から迎え撃った。
「……そんなに自由がほしけりゃ連れてってやるよ。[完全に自由な世界]ってやつになぁ!!」
 ゼロとラマーナ。二人は互いに防御を無視した構えで刃を突き出す。そして互いの刃が、互いの体を貫いた……。
 ラマーナはゼロに呟いた。
「……ごめんなさい……」
「……気にするな……」
 ゼロがそう返したと同時に二人は地に伏した。
 収まり切らないのはセフィロスだった。セフィロスはやりきれない思いをぶつけるように、もがき苦しむ奇面衆に槍を突き立てようとする。が、突然広間の明かりがつき、同時に銃声が響き渡った!。それはすべて奇面を狙ったものだった。その銃撃で彼らは全員死亡した。
「……見事な戦いぶりだったぞ、諸君……」
 テラスにサイラスが現れた。彼は周囲に奇面衆を数十人連れており、それぞれが銃を構えている。メルルが反射的に銃をサイラスに向ける。それに反応して何人かの奇面がメルルに銃を向ける。が、サイラスはそれを諫める。
「あの状況下で、よくもここまで戦えたものだ……特にゼロ、といったか?。その少年は、奇面を与えるにふさわしい。そう、こやつ等と同じ目をしている……」
 その言葉に、倒れていたゼロの体がピクリと反応した。
 なぜ奇面を殺したのか、という問いにサイラスは、
「役に立たぬものを生かしておく必要はない。だが貴様達は違う……どうだ、貴様達のその力をわが皇帝のために尽くしてはくれぬか……」
 と、一行に誘いをかける。
「既に貴様等のいたライバの街はわが手に落ちた。このままライバ王についていても、何の得もあるまい?。貴様達なら、すぐにでも皇帝直属の親衛隊に抜てきするのだが……」
 巧みに一行を誘うサイラス。だが一行は、特にセフィロスには以前のラシュアンのこともあり、容易に納得できるものではない。そんな中、イーリスはサイラスに、その戦いで一般の人々はどうしたのか、と問う。それに対しサイラスは、正義の戦いの中、多少の犠牲はやむ追えない、とあっさりと答えた。
 外では、クサナギにとって故郷を失った時に劣らぬ悲劇が起こっていた。操手槽から投げ出されたクサナギは、自分の操兵が砲弾やロケット弾の猛攻を受けているのを目の当たりにして、思わずグラーテ改に向けて走り出す。が、クサナギの前に数十名の奇面が現れてその周りをすっかり取り囲んだ。彼らはクサナギを最初から殺すつもりのようだ。全員が小剣を構え、一斉にクサナギに襲いかかる!。もはやクサナギには成す術も無かった。しかしその時、
「殺すな!。生け捕りにしろ。クサナギと戦うのはこの僕だ!。逆らうなら、全員踏み潰すぞ!」
 レオンナールが拡声器を通してそう叫ぶと、奇面達は戸惑いながらもクサナギから身を引いた。そして小剣を背中に突きつけてクサナギに歩け、と促す。
 その時、集中砲火を浴びて大破したはずのグラーテ改が再び起動して立ち上がった。クサナギが乗っていないにもかかわらず……。グラーテは駆動部をきしませながらクサナギの元に向かって歩き出す。思わずたじろぐ奇面。―奇跡だ―クサナギはそう思った。
 だが奇跡はそこまでだった。再び起動したグラーテ改に対してロケット弾による集中攻撃が再開されたのだ。それでもグラーテ改は、クサナギの元に向かって歩き続けた。だがその姿は、爆煙の中に崩れるように消えていった。
「……グラーテ!!」
 クサナギは煙の中に向かって叫んだ。だがもはや、操兵ファルメス・グラーテ改の駆動音は聞こえては来なかった……。
 この号音は広間にも伝わった。味方が大砲を配備したとは聞いてはいない。おそらく敵のものだろう……一行はそう推理した。
「ま、答えはすぐに出さなくともよい……。外の様子を見てから決めてもよいだろう」
 サイラスはそういうと、一行に背を向けて歩み去ろうとする。その時、ゼロが立ち上がった。その手には、コスモ・ドラグレイアを握っていた。
「……これが俺の返事だ!!」
 ゼロはそう叫ぶと、ドラグレイアの引き金を引く!。そして、それと同時にメルルも銃を撃った!。それはサイラスの両脇で跳弾した。奇面達が一行に銃を向ける。
「……止せ、今日はよい。引き上げるぞ……」
 表情も変えずに出口に消えるサイラス。だが一行は見逃さなかった。銃弾がはじけた時、サイラスに一瞬だけだが動揺が見られたことを。案外この男、実際は小者なのかも……。
 サイラスと奇面達が完全に立ち去ったあと、ゼロはラマーナを見た。死んだのだろうか?。ゼロからは、今までの冷徹な表情が消えていた。が、同時に覇気も失っていた。とりあえずゼロはラマーナを担ぎあげる。それをミオとイーリスが手伝う。
 サイラスの言葉が気になった一行は、大急ぎで外に出た。外は煙のためにほとんど視界が取れないが、辺りの静かな雰囲気から戦闘が既に終了していることを感じ取った。
 煙の中から操兵の足音が聞こえてきた。それはゆっくりと一行のほうに近づいてくる。音の方向を見ると、煙の一段と濃いところから一機の操兵の影が姿を現した。それは明らかにクサナギの操兵、ファルメス・グラーテ改の影だった……。