キャンペーン・リプレイ

第 十四話 「 剣 は 抜 か れ た 」   平成11年3月28日(日)

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 街の中では、奇面衆が[聖剣]を捜して行動していた。巧みに陰に潜みつつ探索を続けていた彼らの姿もやがて、数名の衛士に目撃された。発見された奇面達は攻撃を開始。城の中でも乱戦状態になった。
 奇面衆出現の知らせは、地下で作業を続けていたミオにも伝わった。停滞する戦闘の逆転を計るために次々と起動するブルガインを見送りながら、ミオは助手の技師達とともに防戦の用意を始めた。まだ、この地下工場への入口は発見されていないが、見つかるのも時間の問題だった。
 ブルガインが出撃していった街の外への秘密通路を封鎖して、入口をスクラップ置き場から通じる通路一ヵ所にする。そして、その一ヵ所しかない入口を狙い、ルシャーナから譲り受けた96式回転機関銃を設置、万全の防御態勢を整えた。
 外では、セフィロスとイーリスが対峙していた。敵同士として……。
「何故だ!。何故、こいつ等と、しかもよりにもよって、奇面衆なんかと……」
 セフィロスが怒りに任せて叫ぶ。それに対し、イーリスは落ち着き払って答えた。
「手紙に書いてあったでしょう?目的があるって。決してあなた方を裏切ったわけじゃ……」
「奇面と一緒にいるってことはやっぱり……問答無用!!」
 ……聞いちゃ、いなかった……。だが、イーリスに向けられた破斬槍はイーリス本人ではなく、彼女の穂先刃を叩き落としていた。やはりセフィロスは心のどこかではまだ、イーリスを信じていたのだろう。
 ところが、武器を落としてようやくまともな話ができると思ったら、今までただ、くっついていただけのウモンとサモンがセフィロスに攻撃を仕掛けてきたのだ。まるで旧知の仲間のようにイーリスに話しかける二人の奇面に、セフィロスの誤解はますます強くなっていった。
 そんな時、城壁の上に一人の、まだ少年の面影を残した青年が立っていた。青年は状況を確認すると、連れていたドウドウ鳥にまたがった。
「……行くぞ、[ピジョット]!!」
 セフィロスはイーリスの前に立ちふさがったウモン、サモンと戦っていた。二人の攻撃はそれほど鋭いとは思えなかったが、相手が奇面衆である以上、その刃にはおそらく毒が塗ってあるだろう。かすり傷でも受けたら厄介なことになる。
 イーリスは何とかセフィロスと会話をしようと試みた。だが、当のセフィロスとの間にはウモン、サモンがいて思うように行かない。おそらくこの二人、最初からこれが目的でセフィロスとイーリスの間にいるのだろう……。
 そのころ地下では、ミオと助手達が敵の襲来をじっと待っていた。室内の明かりをすべて消し、暗闇に慣れておく。その時、不意に入口が開いた。入ってきたのは、赤い光を放つ一つ目の仮面をつけた奇面衆だった。地上の操兵工場に聖剣がなかったので、スクラップ置き場を捜すうちにここの入口を発見したのだろう。暗闇の中でも平気なのは、その奇面のわずかな光でも増幅するカラクリのおかげだ。が、それは彼らにとって逆に命取りとなった。
 ミオはすかさず手にした長銃を集団の中心に撃ち込んだ。室内にものすごい閃光が走る。そう、わずかな光を増幅する奇面は、強烈な光を浴びると逆にその視界をつぶしてしまうのだ。
 悶え苦しむ奇面衆、しかしミオは躊躇すること無く助手達に合図を送り、襲撃者にガトリングガンの雨が降りそそいだ……。
 セフィロスとイーリスが戦っていたころ、一部の奇面衆はノウラの城に侵入しようとしていた。聖剣が工場にないと知って、スクラップ置き場とは別に、こちらにも数名ほど差し向けたのだ。だが、彼らの目の前に、先のドウドウ鳥を連れた青年が立ちふさがった。
 身構える奇面衆に対し、青年も破斬剣を抜いた。その剣は、ゼロが所持していたセラミック製の剣だった。そして、その直後に青年が奇面衆を倒した際にはなった[技]は、まさにゼロと同じ流派の技だった。
 一方、操兵戦のほうは不利な状況に陥っていた。何せ、守りの要のはずの城門が、逆に味方の障害となってしまっていたのだ。アリスもユニホーン・カムナで敵のク・ランザンを倒したが、その残骸が邪魔になり、門の外に出ることができない。
「……圧倒的じゃないか、我が軍は……」
 ライル将軍は思わずほくそ笑んだ。だが、彼の優越感は、ここまでであった。
 もうすぐ城門の守りを崩せると思ったその時、突如あらぬ方向から重武装のブルガイン型操兵が出現、クメーラ軍の操兵を後方から強襲したのだ。形勢は一気に逆転した。
 ノウラ軍は一気に反撃を開始した。ブルガインの崩したところから敵の陣を切り崩し、クメーラ軍は一気に総崩れとなった。その中でアリスは、ブルガインから聞こえてくる歓声に驚いた。何と、この戦いの間ずっと、起動しなかった操兵に乗っていたはずの操兵乗りだったのだ。そう、彼らはロイゼル卿の依頼でブルガインに乗り、街の外に通じる秘密通路から出撃、敵の後方から襲撃したのだ。
 外の状況の不利を悟った奇面衆は撤退を開始した。ウモンとサモンはイーリスにも撤退を促す。だが、セフィロスがそれを許さなかった。怒りに燃える必殺の槍がサモンを突いた。しかし、それは致命的な打撃にはならず、結局ウモンが投げた煙幕で視界を奪われ、イーリスを含む全員に逃げられてしまった。
 戦闘は終わったころ、セフィロスの元に先の青年がやってきた。
「久しぶりだな、セフィロス!」
 セフィロスは困惑した。こいつ誰だ?。セフィロスが青年の正体に気づくまでには少々時間がかかった。
「……ゼロ……なのか?」
 そう、その青年はゼロだった。背丈こそ一回り大きくなっていたが、この青年、いや、少年には確かにゼロの面影があったのだ。
 そこに、アリスとモ・エギ、そしてミオがやってきた。そのミオの元に、一匹のドウドウ鳥がやってきた。その鳥は、少し大きくなっていたが、確かにピジョンだった。
「ピジョンがここにいるって事は……あんた!ゼロはどうしたの!!」
 ピジョンは怒鳴るミオの袖をくわえてセフィロスと話しているゼロの元に連れていった。やはりミオはゼロのことがわからなかった。
「やあ、ミオ。少し、背が縮んだ?」
「……ゼロ……なの……?」
 しばし茫然とするミオ。そして、唐突に怒鳴り出す。
「あんた!人を散々心配させといて……しかも、いきなりこんなに大きくなって……あんたなんか……!!」
 そういってミオはゼロをひっぱたこうと……しなかった。そのままゼロにもたれて泣き出したのだ。困惑するゼロ。その光景を見たモ・エギも、思わず貰い涙を流す。
「……なんか、私、弟思い出しちゃった……」
 ひとしきり泣いて落ち着いたところでミオは、ゼロに話しかけた。
「……正義君、見つかった?」
 ゼロは表情を変えずに答えた。
「正義君、いなかったよ。要するに、自分が正しいと思ったことをするしかないんだ」
「ようやく、答えを見出したか」
 唐突に後ろから、どこか威厳と迫力のこもった声が聞こえてきた。振り向くとそこには、ゼロの師匠にして、最強と噂される剣聖ニーツ・カークが白い重厚なマントをたなびかせてそこに立っていたのだ。
「……だが、あのクサナギという青年は、また違うことをいうだろうな……」
 そこに、レイ・ライバがやってきた。
「クサナギといえば、ミオ。ファルメス・グラーテのほうは、今どうなっておるのだ?」
 地下工場では、今までミオが全員に極秘で建造を進めていた[新グラーテ]がほぼ完成し、クサナギの帰りを待っているかのようにたたずんでいた。そのシルエットは、今までよりも一回り大きな機体であることを物語っていた。 
 だがクサナギが捕らえられたままのこの状態では、せっかく新グラーテが完成しても、何の意味もない。だが、ライバの城は警備が厳しく、とても手が出ない。そして何より、クサナギが本当にそこにいるのかは全く保証がないのだ。
「クサナギなら、とっくに城から移送されましたぜ」
 ナバールが唐突に話しかけてきた。
「それはまことか!いったい、どこに……」
「それがですね……あの[カストール牢獄]なんです」
 そのころ、ライバに戻ったイーリスは、サイラスの怒りの視線を浴びていた。
「な、何ということだ……三年前の[操兵強奪事件]は、すべてこういう事態に備えての芝居だったとは!。これは厄介ですぞ。おそらくは滞納していた税金も、この日のために手付かずで残っているでしょうから、相手の軍資金も馬鹿にならない。その上で、ブルガイン型が数機……これは簡単には落とせませんぞ?!」
 愚痴をこぼす軍師リナールをよそに、イーリスは自分に奇面衆をつけるのをやめてもらうように嘆願した。彼らと行動を共にすることはもう、イーリスの精神状態では耐えられそうになかった。サイラスはその申し出を承諾した。
 結局、作戦の失敗の責任はライル一人に押しつけられ、ライルは解任された。そして、代わりにヒースという、はげ頭のやせた老人が、ライルの後任として将軍職に就いた。

 そのころ、クサナギはカストール牢獄で強制労働に従事させられていた。労働は辛いものだったが、決して耐えられないものではなかった。レオンナールはクサナギをここに入れることによって王子としての誇りをずたずたにしようと考えていた。が、もともと小さな国で民とともに鍬をふるっていたクサナギは、大して堪える様子はなかった。
 労働を終えて、雑穀を煮ただけの粗末な食事を取るクサナギに、一人の囚人が話しかけた。
「おめぇ、元王子だってな…にしちゃあ、結構タフじゃネェか。ここんとこ入ってくる、政治犯共は口ばっかりで、すぐへばっちまうんだがな。おめぇ、ホントに、元王子なのか…?」
 クサナギは笑って答えた。
「私の国は小さく、貧しかった。王子といっても、人がいうような贅沢な暮らしなど、考えたこともなかったし、羨ましいと思ったこともない。それに私は、どんな状況でも決して希望は捨てない。私は必ずここを出る。決して、王朝結社になど、負けはしない……!」