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先の囚人が打ち上げた信号弾の光を確認したミオとモ・エギは行動を開始した。ミオは新グラーテの背中に装備されたロケットモーターを作動させた。一気に露天掘りの真ん中に移動するつもりなのだ。二基のロケットが勢いよく火を吹くと、新グラーテは空中へと飛び立った。特殊な媒体を用いて水を水素と酸素に分け、再混合させて燃焼するこのロケットは、以前取りつけたものとは比べものにならない性能だった。 外に出たクサナギはその光景を見て驚愕、そして歓喜した。新グラーテが鉱山の真ん中に着地すると、クサナギは迷わず新しい姿となった自分の操兵に駆け寄った。 一方。官舎に入ったセフィロスは、とんでもない敵と鉢合わせしてしまった。二階への階段の途中で、サイラスと遭遇してしまったのだ。セフィロスは槍を構えて戦う態勢に入る。 「確か、セフィロスと言ったか……だが、この私に貴様如きがかなうと思ったか?」 サイラスはゆっくりと腰の破斬剣を抜いた。セフィロスは腰だめに槍を構えると、勢いよく必殺の技を繰り出した。が、サイラスはわずかに体をひねってそれを簡単にかわす。いくらセフィロスが階段の下のほうにいるからといっても、サイラスの回避力はかなりのものだった。 そのころ、露天掘りの外では超重操兵メーアドレッドが起動しようとしていた。突如飛来してきた操兵に対して、アグナストロング砲で一気にけりをつけようというのだろう。だが、機動力の無さがたたり、射撃可能位置につくまでかなりの時間が必要のようだ。 叩くなら今しかない。新グラーテを着陸させたミオはクサナギを捜した。そして程なく、駆け寄ってくるクサナギとゼロを発見した。ミオは操手槽を開けてクサナギに向かって叫んだ。 「……[グラーテの最後の部品]めっけ!!」 ひどい言葉だが、これはミオにとって最大の褒め言葉だった。だがやはり、言われて気持ちのよい言葉ではない。しかし意外にも、その言葉に怒りを感じたのはグラーテ自身だった。やはり、主を部品呼ばわりされるのは操兵でも嫌なのだろう。グラーテは機体を左右に揺らしてミオを振り落とした。思わず落ちるミオ。グラーテはそれを左手で受け止めた。 「……ファルメス・グラーテ!!」 クサナギが駆け寄ると、新グラーテは右手を差し出した。それにクサナギが乗ると、新グラーテは操手槽まで持ち上げた。クサナギは操手槽に乗り込んだ。そして、決意を新たにその扉を閉め、操縦桿を握った。 「クサナギさん、パス!!」 聞こえた声から御仁姫紅葉武頼の中身がモ・エギであることを理解したクサナギは、新グラーテにミオを彼女に向かって投げさせた。モ・エギがミオを受け止めるのを確認したクサナギはロケットモーターを始動、新グラーテをメーアドレッドに向かって飛翔させた。空中に飛び出した新グラーテは、今にも動かんとしているメーアドレッドの後方に着地した。 グラーテに投げられたミオは、「パスはないでしょー!」と受け止めたモ・エギに文句を言いながら、近くのレストアールに自分を乗せるように頼んだ。だが、慌てたモ・エギはそのレストアールに向かってまたもミオを放り投げた!。モ・エギはそれでも、そっと投げたつもりだったが、ミオはレストアールの操手槽に頭から突っ込んだ。 しこたま体を打ったミオは、それでも何とか立ち直り、レストアールの起動準備に入った。だが、ここでもミオは不幸に襲われた。仮面同調を行おうとしたところ、仮面の[抵抗]を受けたのだ。本来このレストアールにはもっとも格の低い再生仮面が使用されており、通常では仮面同調は素人でも失敗することはない。だが、いきなり落ちてきて、頭から突っ込んできたミオに仮面が過剰に反応してしまったのだろう。 その様子を見ていたイーリスは、レストアールの操手槽でもがいているミオの元に向かおうとした。その時、イーリスの前にゼロが立ちふさがった。 さしものイーリスもその正体がゼロだとは気づかず、刀を構えて身構えた。それに対しゼロは、コスモ・ドラグレイアをホルスダーから抜き放ち、イーリス目がけて撃ち放った。その弾丸は、イーリスの顔の側をかすめた。イーリスは銃に関する知識はない。だが、独特のフォルムを持つこの銃をイーリスは忘れるはずもなかった。 「……ゼロ……?」 その名を呼ばれたレイ=ゼロはイーリスに向かって笑みを浮かべた。 一方、及ばずながらも奮戦しているセフィロスをいい加減しつこく感じたサイラスは、剣を頭上に掲げた。[巨大化]して一気にけりをつけようというのだ。その意図に気づいたセフィロスだが、時既に遅く、サイラスの体が眩い光に包まれ、官舎を破壊しながら神々しい巨大な姿へと変化していった。 セフィロスはその官舎の残がいに紛れて何とか脱出した。が、目の前には身長2リートを越える巨人と化したサイラスが待ち構えていた。どうするセフィロス!。 そのころ、クサナギと新グラーテはメーアドレッドに攻撃を仕掛けていた。このメーアドレッドは前面の装甲は厚く、通常の攻撃では容易に破壊することはできない。たとえ爆砕槍を使用しても、簡単には行かないだろう。だが、後方の腰部の装甲は、7リット砲の俯角を取るために可動範囲が広く、その部分は装甲が全く無いのだ。 だがそれは、この超重操兵を操縦する乗組員たちも十分わかっていた。この機体には、機動力の無さを補うために、脚部に蒸気式走輪装置が装備されているのだ。操縦者は早速、始動準備をする。 しかし、その前に新グラーテの爆砕槍が炸裂した。復活した二股の槍が狙いたがわずメーアドレッドの腰駆動部を貫くと、この超重操兵は前方に倒れ込み、そのまま動かなくなった。完全に機能を沈黙させたようだ。 カストール牢獄は完全に修羅場と化していた。囚人たちは至る所で看守たちと戦っていた。装備で劣るものの圧倒的な数で迫る囚人たちに、看守たちは押されぎみだった。 だが、一部では看守たちが押しているところもある。阿修羅はそんな囚人たちを援護するべく[気]を練り始めた。そして、看守の一人に飛びかかり、練り上げた気をそそぎ込んだ。阿修羅がかけた術は、そそぎ込んだ気を通じて、人間を眠らせてしまうものだった。術を受けた看守はそのまま眠る、はずだったが……。どうやら、術を耐え切ってしまったようだ。 その囚人たちの戦いは、ゼロとイーリスのところにも広がっていった。数人の囚人たちが無謀にもイーリスに戦いを挑もうとしていた。イーリスはそれに対し、反射的に[技]で応戦しようとした。ゼロはその意図に気づき、イーリスに対しやはり[技]を仕掛けた。それはイーリスをその場からつき飛ばすのに十分なものだった。 巨大化したサイラスは、足下のセフィロスを無視して、起動しようとしているミオのレストアールのほうに向かい合った。思わず踏みつぶされそうになったセフィロスは、悔しさを噛み締めながらこの場から撤退した。 そのサイラスの目の前に、クサナギと新グラーテが立ちふさがった。 「陛下には、後で詫びを入れる。クサナギヒコ。貴様を、その死に損ないの操兵もろとも葬ってくれる…!」 「死に損ないではない!。操兵ファルメス・グラーテは、生まれ変わったのだ!!」 サイラスはゆっくりと新グラーテに歩み寄った。その様はまるで、威厳と畏怖を回りに振りまいているかのようだ。だが今のクサナギには、その神々しくもまがまがしい姿のサイラスが唯の愚鈍な巨人にしか見えなかった。 新グラーテと巨人が激しくぶつかった。サイラスは鋭い剣檄で新グラーテを貫こうとする。が、クサナギは軽い操作でグラーテを操って巧みにかわす。全く相手にならなかった。そう、確かにサイラスの剣裁きは鋭かった。だが、それは人間サイズでの話だ。サイラスの巨大化は、ただ大きくなっただけで、感覚は人間のまま。まるっきり愚鈍になるのは当たり前だ。 それに対し操兵は、機体の性能に加え、操縦者の能力が諸に影響する。これまでの戦いで成長したクサナギは、グラーテの本来の性能を越えた力を引き出すまでに至っている。もはや、勝負は目に見えていた。トシロウやティコ爺が見抜いた巨人の本質とは、このことだったのだ。二撃、三撃と刃を受けた哀れな巨人は、息も絶え絶えに呟いた。 「ちゃんとした操兵が、これほどまでに強いとは……」 クサナギは、それに追い打ちをかけるように叫んだ。 「どうした。そなたの[偉大なる力]とやらは、その程度なのか!!」 「……んおぉのぉぉれえぇぇぇ……!!」 サイラスはグラーテにガムシャラに切りかかる。その執念はすさまじく、ついにグラーテに一太刀を当てることができた。しかしその一撃も、新たに装備されたセラミック盾と、重装甲化された装甲の前に完全に防がれた。 |