キャンペーン・リプレイ

第 十五話 「 そ の 名 は エ ル グ ラ ー テ 」平成11年4月18日(日)

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 クサナギはグラーテに大太刀を振るわせ、サイラスに止めの一撃を食らわせる。その一撃に耐え切れずサイラスは、巨大な石像に姿を変え、完全に動かなくなった……死んだのだろうか?
「そなた如きに使うのはもったいないが……」
 はっきり聞こえるようにそう呟いたクサナギは、爆砕槍の充填に入った。そして、槍の先を石像に向けると、爆砕槍の射出桿を引いた!。旋回する二股の槍が石像を粉々に破壊した。するとその残骸の中から、サイラス本人が転がり出てきた。
 尻もちをついて地面に落ちたサイラスは、剣に向かってしきりに叫び出した。
「けけけけけ、剣よおぉぉぉ、再びぃ、我にぃぃ……力を与えよおぉぉ……」
 その様は、とても今まで威厳に満ちていたサイラスとは思えないほど取り乱していた。そして自分を倒したグラーテを見上げると、
「ひいぃぃぃぃ……!!」
 と、世にも情けない悲鳴を上げて、転がるように逃げ出した。
 ゼロとセフィロス、そしてクサナギと阿修羅はそんなサイラスを捕らえようとした。しかしその時、一行の周囲にロケット弾の雨が降りそそいだ。発射されたほうを見ると、そこにいたのは紅蓮の狩人デュークの操兵、イリューディアことヴァルパス・ヒラニプラだった。デュークはヒラニプラをサイラスの側へと移動させた。
 クサナギはそうはさせまいと、再びロケットモーターを始動させようとする。が、いきなりの連続使用がたたったのか、正常に作動できずに、デュークに遅れを取った。デュークはその隙をついて、ヒラニプラをグラーテにぶつけた。
「何故だ。何故そなたはこんな者を助けようとする!!」
 デュークはそれに対し、拡声器を使わずにクサナギに答えた。
「……すまない。もう少しだけ我慢してくれ……」
 グラーテをつき飛ばしたヒラニプラは、脅えるサイラスを抱えあげると、辺り中に煙幕弾を乱射して、一行の視界を遮った。そしてその隙に、イーリス共々この場から消え失せた。
 戦闘は終わった。あとに残されたのは、大勢の囚人たちと、逃げ損ねた看守たちだった。所長を含む看守たちは捕虜として扱われ、レジスタンスを含めた囚人たちは、大多数が協力を約束した。
 あまり活躍できなくて地面と所長に八つ当たりしている阿修羅をよそに、一行はクサナギとの再会を果たした。
「そなたがゼロだったとは……なぜ、死んだ振りなどしたのだ!」
 クサナギはゼロが生きていたことを喜ぶ反面、死んだ振りをしたことに対して少し腹を立てていた。あれがなければ、イーリスも狂気に支配されずに済んだろうに。クサナギはイーリスのことが気になった。サイラスのあんな姿を見てまで連中につくつもりなのだろうか?。そしてもう一つ、デュークのことも気になる。彼が言った「もう少し我慢してくれ」とは……。
 逃走したイーリスとサイラス、そしてデュークは朝日に照らされながら、ライバの街への帰路に着いていた。ヒラニプラの腕に抱えられたサイラスは落ち着きを取り戻していたものの、すっかり気落ちしているようだ。ゼロの生存に憑きものの落ちたイーリスはそんなことお構いなしのようだ。だが、狂気に支配されていたとはいえ、誤解を抱えたままのイーリスはいったい今後どうするつもりなのだろうか?
 とにかく、クサナギおよびその他囚人たちの救出は成功した。囚人たちはとりあえずノウラの街についてくるという。だが、ミオは何か考えがあるようで、囚人たちの一部に何やら話しかけていた。モ・エギはクサナギの元に来ると、新グラーテの開発の経緯を話した。
「クサナギさん。グラーテも新しくなったんだから、新しい名前をつけてあげたらどう?」
 モ・エギのその提案を受けたクサナギは、この操兵の盾が、かつてクサナギとグラーテに[フィールミウムの石]を託してくれた[ファルメス・エルブレイブ]のものであることを聞いて、この新しいグラーテにエルブレイブの一字を取って名づけることにした。
 その名は、操兵[ファルメス・エルグラーテ]。

 そのころ、聖剣売ります隊がどうなったか。工房都市カスールへと続く街道沿いで、情報を聞きつけたクメーラ皇軍が自分たちの象徴を取り戻すべく派遣した選りすぐりの精鋭部隊に、襲撃を受けていた。
 ゼノア率いる聖剣売ります隊は、ザクネーン隊が中心となって必死に抵抗した。だが、執念に燃えるクメーラ皇軍の猛攻はやがて、ゼノアやザクネーンを追い詰めていった。もはやここまでと判断したゼノアは、ミオとの予てからの打ち合わせ通り、自爆の準備をした。聖剣を敵に渡すくらいなら……ということだ。
 準備を終えたゼノアは馬車の外に出ると、クメーラ皇軍に向かって大見栄を切った。
「この剣を貴方方に渡すくらいなら、ここで派手に吹き飛ばしてあげましょう!!」
 ゼノアはそう叫ぶと、大急ぎでその場から避難した。それに習ってザクネーン隊もその場から離れたが、残されたクメーラ皇軍は躊躇した。確かに感応石には、馬車から聖剣の発する力場の反応が捕らえられている。が、さすがに自爆しようとしている馬車に突っ込むほど度胸のあるものもいなかった。
 ゼノアらが退避を終えた頃、馬車は大音響を立てて爆発四散した。クメーラ皇軍はその馬車の残骸を見て呆然とした。聖剣はなく、代わりにそこにあったのは、操兵の仮面の残骸だった…。
 ノウラの街の地下工場。ライバ王とワールモンが、工場の奥深くに隠されていた大きな包みの一部を開けた。そこには、運ばれていったはずの聖剣ファーラスが横たわっていた。この作戦は最初から、敵の気を引いておくためだけのもので、最初から聖剣を売るつもりなどなかったのだ。これもすべてミオの計画だった。
 二人の[タヌキおやぢ]は顔を見合わせて、ミオのことをこう言った。
 「……どっちが[タヌキ]だ……」