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城の中では、ゼロとセフィロス、阿修羅とジョウが、破壊工作を続けながらサイラスを捜していた。その時、ゼロはイーリスの声が聞こえたような気がした。一行は声がしたという、上の階へと急いだ。 上の階に出てみるとそこには、サイラスとイーリスが戦っているのが見えた。状況を理解した一行はイーリスと合流、サイラスと対峙した。 サイラスは完全に錯乱していた。一行を目にしたサイラスは大声でわめき散らした。 「すべてが順調に進んでいたのに……貴様達が現れてからだ……すべてが狂い始めたのは……貴様達さえ……貴様達さえいなければぁ……!!」 サイラスは狂ったように剣を振るった。一行も負けじと反撃する。だが、正気を失ったとはいえ、サイラスは強敵だった。イーリスの攻撃を難なくかわし、セフィロスの突きを見切って反撃の一撃を食らわせ、ゼロの斬撃にも耐えた。サイラスは戦いの中でも叫び続けた。 「……私は勇者になる……歴史に名を残す英雄となるのだぁ……!!」 サイラスはその歪んだ思いをこの場の全員に叩きつけるかのように剣を振り回した。その勢いはとどまるところを知らなかった。 が、やはり多勢に無勢か……。さしものサイラスも疲れが見えてきたのか、だんだん壁際のほうに追い詰められて行く。だが、それは持てる技をすべて駆使して戦うゼロとセフィロス、そしてイーリスも同じであった。特に、先の戦闘で体力を使い果たしていたイーリスと、サイラスの一撃で重傷を負ったセフィロスはもはや限界だった。このままでは、またサイラスが押し返してくる。 その時、意外な隠し玉がサイラスを襲った。この戦闘の間ずっと[気]を練っていた阿修羅が、とんでもない術を用いてサイラスを攻撃したのだ。[裂帛功]。気の力を相手の精神に直接ぶつけることで打撃を与えるこの技は、サイラスの魔剣をもってしても防ぎ切れるものではなかった。さしものサイラスも、この攻撃だけは応えたようだ。 サイラスはそれでも倒れなかった。この男、悪運だけはとても強かった。この運があったからこそ、かつての遺跡探索の際、魔剣の攻撃を退け、それを認められて剣の主に選ばれたのだから。 だが、一行の隠し玉はそれだけではなかった。この戦闘の間ずっと、部屋の隅でおびえていたネズミ仮面ジョウが、まるですべてをふっきったようにサイラスに向かっていった。そして、手にした出刃包丁をサイラスに向けて投げつけたのだ!。サイラスはそのすべての運を乗せたような攻撃を、これまた悪運を磨り減らすようにかわす。だが、サイラスの運もここまでだった。 サイラスは突如マントを広げた。そしてその裏側にあるものを見た一行は言葉を失った。マントの裏には、手投げ弾が大量に結びつけられていたのだ!。 「……ふふふ……そうだ……英雄は劇的な最期を遂げるものだ……そして、死体が見つからなければ、私が死んだかどうかなんて、誰にもわからない……そして、私は伝説となる……そう、良しきにしろ、悪しきにしろ……私は人々の心の中で生きる……私は……英雄になるのだ!!」 その叫びを聞いたゼロは、そうはさせまいと最後の気力を振り絞ってサイラスに[技]を仕掛けた。[闇風]。鍛えられた瞬発力によりゼロの体が風となり、サイラス目がけて飛んでいった。そして、サイラスが爆弾を起爆させる直前に鞘に納めたままの剣の先を叩きつけた!。その一撃を受けたサイラスはテラスの壁に激突、そしてそのまま動かなくなった。 だが、サイラスの剣はまるで意思があるかのようにテラスの外に飛び出た。そしてそのまま、城の外に落下していった……。 しかし、それを見逃さないものがいた。クサナギだった。先のエンペラーゼとの戦いのあと、ようやく城にたどり着いたのだ!。クサナギは落ちてくる剣を確認すると、エルグラーテの腕を伸ばして剣を受け止めさせようとする。が、剣はまるで生きているかのようにエルグラーテの手をすり抜けた。そしてそのまま茂みの中に消えた。 操兵を降りて捜すクサナギ。だが、剣は出てこなかった。クサナギの周りにデュークのヒラニプラ、メリエンヌのマリアローズ、ルシャーナの68式、そしてモ・エギとアリスが集まってきた。彼女等の手を借りて捜すも、とうとう剣は見つからなかった。 テラスでは、動かなくなったサイラスをゼロが手当をしていた。−出来れば生かしたまま捕らえてくれ−ライバ王からそう、頼まれていたのだ。もし、サイラスが死んでいた場合、すべての罪はレオンナールが一人で背負うことになってしまうからだ。 やがて、すべての戦闘が終了した。反抗を続けた王朝結社の兵士達は、ライバ王の軍勢とライバ市民達によって制圧された。そしてライバ王は市民や兵士達の歓声の中、城門をくぐり凱旋した。 王はクサナギ達のいる城の側までやってきた。そして、今までの戦闘で疲れ切った一行を激励した。その時、突き出されたまるで別人のようなサイラスを見て、こういった。 「……誰……?」 一命は取り留めたものの、剣を失ったサイラスはもはや別人のようだった。長い銀髪の髪はすっかり白髪に変化しており、体も一回り縮んだように見える。そして何より、先ほどまで満ちあふれていた闘志と狂気、生きる気力そのものが失われているようだった。 今までの戦いの間ずっと、王朝結社についており、そして土壇場になって味方に戻ったイーリスは、ここぞとばかりに王に掛け合い、自分の手柄を主張した。だが、王はそれを軽く受け流した。王にとってはただ、敵の一人が寝返ったとしか考えておらず、イーリスの主張は唯の言い訳にしか聞こえなかったのだ。 イーリスはその後、一行に対しても色々と言い訳をした。一行はこの件に関しては思うところがあるようで、セフィロスやミオなどは、散々文句を言った。そして、クサナギなどは、カストール牢獄での出来事もあってか、イーリスに対してこう言った。 「ようやく、正気に戻ったようだな!」 市街では、人々が手を取り合って、この勝利を喜んでいた。自分達が、自分達の手で勝ち得た勝利に対して……。 この光景を見た王は、寂しげにこう呟いた。 「……明日は我が身、か……」 王は皆に薦められて城のテラスに立った。そして、見守る市民達に向かって、高らかに勝利宣言をした。 「本来、この場所に立って勝利宣言をするのは、私ではない……この戦いの勝利は、諸君等自身で掴んだものだ……!。そう、諸君等は、自らの手で、自由と開放の勝利をものにしたのだ!!」 この宣言に人々の歓声はさらに高まった。そして、兵士、市民ともにこの喜びを分かち合った。人々の群れの中には、ミリ−アの姿も見える。もはや、身分も階級も関係はなかった。 この光景を、トシロウとニーツは、城壁の一角から酒を酌み交わしながら眺めていた。 「……終わったな、ニーツ……」 「……ああ……」 ニーツは、思うところがあるのか、浮かない顔で答えた。そして、トシロウの注いだ酒をぐっと、あおった。 「どうした?お前らしくもない……」 トシロウの問いに、ニーツは浮かぬ顔のまま、答えた。 「……クサナギの言う通りだ……。俺の剣は、結局何もしなかった……」 トシロウは、黙って酒を注いだ。ニーツもまた、何も言わずにその酒をあおった。 そして、城の歓声は、倒れたままのエンペラーゼの中にいるレオンナールの元にも届いた。レオンナールはその声を聞き、すべてを振り切ったように微笑んでいた。 そのレオンナールに、ゼノアが話しかけた。いつもの笑みを浮かべながら。 「ようやく、お会いできましたね……私にとっては、五年は長かったですよ……」 レオンナールは、開いたままの操手槽から、空を眺めながら話を聞いた。 「……工房都市組合からの使者か……」 「私が貴方達を追い続けていたのは、組合からの命令ばかりではありません。これは、私個人のこともあるのだ……」 ゼノアは笑みを崩さず、言葉を続けた。 「貴方達は、私の友人をはじめとする、多くの人々を人狩りに捕らえさせ、売りさばいて資金をかき集めた。しかも、その資金でさらに多くの人々をテロ行為で傷つけ、殺害した。そんな中私は、貴方達と戦うクサナギさん達と出会い、彼らを助けることにした……」 「……彼らを……利用したのか……」 「どう、思われても、結構です。ですが、私自身は彼らを利用したつもりはありません。もとより戦う力のなかった私は、私の出来ることをして彼らを助けることで、貴方達と戦うことにしたのです……」 ゼノアの声が徐々に高ぶってきた。 「……戦いは我々の勝利に終わりました。が、貴方のために戦ったものも含めて、大勢の人達がこの戦いで命を落としました。指導者たるもの、責任は取らなければならないでしょうに、どうして……」 ゼノアからいつもの笑みが消え、今まで見せたことのない憤怒の表情が現れた。 「……どうして自決しなかったんですか!!」 レオンナールは、相変わらず空を眺めていた。城のほうからは、いまだ歓声が聞こえてきていた。 「……もう少し……聞いていたかったから……この声を……」 |