キャンペーン・リプレイ

第 十八話 「 風 の 民 人 」          平成11年9月23日(木)

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 その轟音は城を出ようとしたクサナギ達にも聞こえた。そして阿修羅と合流した一行は大急ぎでレオンナールの部屋に戻った。
 部屋は地獄と化していた。重傷を負ったレオンナールが担架で運ばれていく。その部屋の中心では、レオンナールと同じ服を着た男が「……どうして……どうして……」と呟いていた。それを見たゼロとイーリスは状況を理解し、その男に怒りをぶつけた。だが男は上の空でとても話を聞ける状態ではなかった。
 衛士達に連行される間者を尻目にクサナギ達はレオンナールの様子を見に行った。彼は意識ははっきりしているものの火傷がひどく、このままでは危険な状態だった。医者も手を尽くしているがどうにもならず、火傷が相手ではゼロの武繰による[点穴]でもどうしようもない。
 だがここで、空かさず阿修羅が[気]による治療を試みた。今までの経験を通じてかなり高い域に達していた阿修羅の[気]はレオンナールの火傷を完全に消し去った。この光景を見た医者は目を丸くした。そう、レオンナールの体からは一切の火傷の跡が、まるで最初からなかったかのように消え去っていたのだ。後は、本人の気力次第だった。
 事態を重く見た一行は、自主的に警備を申し出た。そしてイーリスは、この場にいないセフィロスを呼びに行った。
 セフィロスを待つ間クサナギは、地下牢のサイラスに面会に行った。そこでクサナギは、阿修羅が見たものと同じ光景を目の当たりにした。クサナギの存在に気づきもせず、これが生涯唯一の楽しみ、といわんばかりに粥をすするかつての最大の敵の姿。クサナギは声をかけることができず、そのまま地下牢を後にした。
 そのころイーリスは、セフィロスを呼びに行った帰りにミオの元にも寄った。ミオは現在、後日の[試合]にむけてグラーテとヒラニプラの整備を徹夜で敢行していた。特にヒラニプラは一度はずした全武装を元通りにしなければならない。これはこれで手のかかる作業だった。ミオは体力、気力ともに限界に近づいていた。それ故……
「ミオー、グラーテの右腕の血管、どう繋いだ……?。これじゃ動かんぞ……!!」
「も、も一回やり直しますー」
 果たして、試合までに直るのだろうか。
 この場にはデュークも来ていた。やはり自分の機体の仕上がり具合が気になるのだろうか。イーリスは彼に声をかけたが、デュークは、話すことは何もないといわんばかりに軽く受け流した。
 一方、セフィロスが到着するころゼロは、現在この城で侍女見習いとして修行しているラマーナに逢うため、後宮の厨房に赴いた。彼女はそこで侍女としてのイロハを身に付け、そして近い内にノウラのワールモン伯爵の城で侍女として暮らす予定だった。やはりラマーナとしては今まで世話になったノウラの街のほうが居心地が良いのだろう。
「……でも、ここもとてもいいところよ。みんないい人達ばかりで、私に良くしてくれているわ」
 そう語るラマーナからはかつての暗い影は消え、おそらくこれがラマーナの本来の姿だろう明るい笑顔が輝いていた。ゼロは先の爆破事件もあってか、その光景を見てほっとする思いだった。
「……ラマーナ、いるー……?」
 その時、一人の少女がこの場に飛び込んできた。この城の主であるライバ王の娘、王女ミリ−アだ。おそらく、復旧現場の慰問が済み、自由時間ができたのだろう。彼女はラマーナをカードに誘った。どうやらこの姫様、以前この後宮にいた一人の侍女によってすっかり賭事にはまってしまっていたのだ。ミリーアはその場に居合わせたゼロを巻き込んでラマーナを自分の部屋に誘った。
 その王女を賭事に目覚めさせた張本人である、元侍女の女賭事師フェイは、小さな町の小さな酒場であいも変わらず賭事にいそしんでいる最中に、ライバ開放の知らせを耳にしていた。
「ふぅん、良かったじゃない。ま、今のあたしにゃどうでもいいことだけど……」
「そんなことより、そろそろ溜まった[負け]の分、きっちり払ってもらおうじゃねぇか……?」
 凄みのあるドスの聞いた声などどこ吹く風か、フェイは懐から財布の代わりに小型拳銃を取り出し、天井のシャンデリア目がけて撃ち放った!。酒場は大騒ぎになり、[ネズミ花火]の二つ名が健在であることを実証した。
 翌日早朝、ゼロはサイラスに面会するため地下牢に向かった。ゼロは昨日の爆破事件の裏にサイラスが絡んでいる、と睨んだのだ。が、阿修羅、そしてクサナギが見た通りの状態であるサイラスにそんな真似ができるはずもない。結局ゼロは、彼に散々恐怖を与えただけで無駄な時間を過ごしてしまった。
 そのころ、城の警備をしていたセフィロスは久しぶりにラシュアンの妹レイムと出会った。だが彼女はまるでセフィロスを避けるようにその場を立ち去った。その後、セフィロスは幾度となくこのようなレイムの行動を目にするようになった。
 (もしかしたら、[真実]に気づいたのだろうか……)。そんな考えが頭をよぎる。レイムの兄であり、このライバの近衛隊長だったラシュアンはセフィロスの良き友人だった。だが、奇面衆の洗脳を受け、リナラ御前仕合の際にライバ王を襲撃し、やむなくセフィロスが彼と戦い、そして倒したのだ。この事実は王とセフィロスとの間で秘密とされ、ラシュアンは王を守るために殉職したことになっていた。このことは、ある意味では事実なのだが……。
 一方レイムは、クサナギのところにやってきた。レイムはクサナギにリナラ御前仕合の時のラシュアンの最後について聞いてきた。事実を知らないクサナギがそのことを伝えると、レイムは礼を言ってその場を去った。
 更に一日が過ぎ、試合前日となったこの日、クサナギは自機ファルメス・エルグラーテの仕上がり具合を見にミオの元に向かった。エルグラーテはほぼ完全に仕上がっていた。ミオがだめにした右腕の血管も元どおりに修復され、あとはクサナギ自身の手による微調整のみとなっていた。そこにはデュークもヒラニプラの最終調整のために来ていた。
「本来なら、整備場を別にするのが筋なんだろうが……何やら妙な光景だな。明日、対戦するはずの二つの操兵が仲良く並んで整備を受けているなんてな……」
 デュークが笑みを浮かべながら呟く。かつては見られない光景だ。それに対し、クサナギも笑顔で答える。
「良いではないか……。戦いは明日。それまでは別に敵対心をもつ必要などはない。まして、明日の戦いは[憎しみ]など入る余地がないのだから……」
 その時、ゼノアとモ・エギが工房を訪れた。ゼノアはここのところライバを離れ、あちこちでこの事件の後始末、そして王朝結社残党や、事件終結以来全く動きを見せなくなった奇面衆の情報を集めていたのだ。
「……にしても、私がいない間に、面白いことになってますね」
 ゼノアとしては、この[試合]に自分が関われなかったのが少し悔しいようだ。