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真夜中。森の中を貫くように伸びている街道に、セフィロスはいた。道から少し離れたところで焚火の炎に照らされながら、一ヵ月前の事件を思い返す。すっかり平穏を取り戻したライバを離れたのは、レイムと顔を合わせたくないだけではないだろう……。 茂みの揺れる音がセフィロスを現実に引き戻す。そして槍を構えて音のする方向に向ける。こんな時間の来訪者は、大方飢えた獣か、追いはぎくらいだろうから。だが、その茂みの中から飛び出してきたのは、ぼろぼろの服を着た一人の少女だった。 セフィロスがその少女に誰何する。が、その時、地響きが二人を襲った。そして少女が逃げてきた方向から、とんでもないものが出現した。それは、伝説に名高い[龍]だった 。無論、セフィロスは本物の本物の龍など見たことはない。だが、今目の前にいるその操兵ほどもある巨大な、そして世にも恐るべき姿は紛れもなく、かつて物語の挿し絵などで見た龍そのものだった。 龍は夜目が効くのか、セフィロスのほうに頭を向けた。そして、世にも恐ろしいその姿の龍は、[まるで操兵の駆動音のような]音を立て、そして世にも[情けない]雄叫びを挙げてセフィロスと少女のほうに向かってきた!。 「あんぎゃー」 ……。セフィロスは頭の中が白くなってゆく気分だった。が、それを振り払い、冷静さを取り戻す。いくら情けないといっても相手は操兵程の大きさの龍だ。いや、どう見ても龍の形をした操兵なのだが……。どちらにしろ、生身で勝てる相手ではない。ここはひとまず、少女を連れて逃げ出すことにした。 その時、龍がセフィロスに向かってこう言った。 「……その少女を渡せ……。でなければ、きさまは地獄に落ちるであろう……」 もちろん、言うことを聞くセフィロスではない。少女を自分の後ろに庇いつつ、あの龍が何者なのかを彼女に尋ねた。 「あれは、[竜の教祖]の操兵です。私はあいつ等にさらわれたんです……」 だが、詳しい話を聞く前に竜の操兵が動き出した。セフィロスは自分のドウドウ鳥のヌクヌクに少女を乗せ、そのまま走らせた。そして自分は、わざと大きな音を立てて操兵の気を引いた。操兵はその誘いに乗ってセフィロスを追った。 セフィロスはなるべく木の多いところを選んで走った。この森の中では、操兵はさすがに動きが鈍ると考えたのだ。案の定、竜の操兵はセフィロスを見失って、その長い首をキョロキョロさせる。が、苛立ったのか、再び「あんぎゃー」と情けない声を上げた。そしてその口元をカチカチと鳴らした。その中で小さな火花が上がる。 いったい何をするつもりだろうか。そう思った時、突如操兵はその口から炎を吐き出した!。その炎は見た目よりも大したことはなく、その長い首から地面まで届かない、というこれまた情けないものではあったが……。竜の操兵はセフィロスと少女をあきらめたのか、律儀にも元来た道をたどって引き上げていった。 操兵が完全にいなくなったことを確認したセフィロスは、ヌクヌクを呼び寄せた。少女は、そのドウドウ鳥の背に無事に乗っていた。セフィロスは彼女に詳しい話を聞いた。 「私は、この街道をさらに進んだところにあるナウル村に住んでいる、アリシアといいます。村はずれで木の実を集めている時にあいつ等にさらわれました」 「あいつ等とは……?」 「……[竜魔王]が率いる[竜魔帝国]……」 セフィロスは[竜魔王]という言葉を聞いて、以前ウィンの村を襲ったリガーブがそう名乗っていたことを思い出した。アリシアの話によると、竜魔王は彼女のほかにもあちこちから人をさらい、この森にある[遺跡]で発掘作業を強制しているらしい。彼女は隙を見て逃げ出し、助けを求めようとしたのだという。 その話の中でセフィロスは、竜魔王が腰に下げているという剣の[柄]の形状を聞いて気になった。もし、自分の記憶が正しければそれは、あのサイラスがもっていた[魔剣]と同じものなのだから。確か剣は、一ヵ月前の戦いの際に行方不明となっていた。それがどういう経路かわからないが、おそらくリガーブだろう[竜魔王]の手に渡ったのだろう。 とにかく、この森の中にいては危険だ。セフィロスはアリシアをとりあえず村まで送ることにして、まずはレムの街へと向かった。 |