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レムの街。妖精族とビョウとのいざこざを解決したクサナギとゼロは、阿修羅、ホセとともに今の依頼主である、ルクサル商会のこの街での商売が終わるのを待っていた。この街にはゼノアとモ・エギも来ていた。が、ゼノアは今は部下とともにどこかに行っているらしい。 ゼロがクサナギを相手に[技]の練習をしているその時、セフィロスがアリシアを連れてやってきた。それに気づいたゼロはセフィロスにすかさずこう声をかけた。 「セフィロス……[浮気]はいけないんだぞ?」 「だ……誰が[浮気]だ……!!」 慌ててセフィロスは二人に事情を説明する。[龍のような操兵]に襲われたこと、それが[竜魔王リガーブ]の手の者らしいこと、そして[竜魔王]の剣が[サイラスの剣]に似ていたことなど……。クサナギとゼロは、竜の形をした操兵については見覚えがあった。その機体は、ライバの操兵武闘大会に出場した[竜の教祖]の[ドラ・ログ・メーア]だった。クサナギとは対戦していないが、第二戦まで勝ち残り、そしてヘイステイドに飾りの尾を踏まれてすっ転び、破れ去ったのを覚えていた。 そして[竜魔王の剣]については、クサナギの記憶も一致した。確かに話の剣は、サイラスの物に間違いないだろう。だがゼロは、なぜかそれを思い出すことができなかった。 一方、セフィロスのなぜこの街にいるのかという問いに対してクサナギとゼロは、今まで関わっていた妖精族とビョウとのいざこざを話して聞かせた。セフィロスは[魔族]だの[妖精族]だの[ゴーレム]だの、訳の分からない話を聞いて困惑していた。特にゼロは、妖精族の族長であるウインシアが700才であることを強調した。 「見た目はあんなに若いのに……。[まとも]じゃないんだぞ。ま、モ・エギも以外に[オバサン]だったけど」 その時、ゼロの頭上を巨大な人影が覆った。 「誰が……オバサンですってぇー!!」 いつの間にかゼロの後ろにモ・エギが迫っていた。その御仁族特有の[動く頭髪]がゼロの体を包み、そして締めつけた。 「ほ、ほんとのこと言っただけだろうがぁー!」 「私はオバサンじゃないわよ!!」 どうやら、年齢の数字を気にしないモ・エギでも、[オバサン]と言われるのはやはり嫌なようだ。まあ、無理もない。モ・エギは御仁族では年頃の少女なのだ。 その時、アリシアが悲鳴を上げた。どうやら、御仁であるモ・エギを見て恐怖したらしい。モ・エギはとりあえずゼロを放り出してアリシアをなだめた。 アリシアが落ち着きを取り戻したころ、ゼノアが一行の前に姿を現した。彼はどうやら、何か情報を仕入れてきたようだ。 「どうやら、この近くで王朝結社の残党が何かを企んでいるようなのです」 一行はアリシアの話をゼノアにも聞かせた。するとゼノアは、西のほうに連中が陣取っているという遺跡がある、と告げた。その遺跡には何でも、この辺りに伝わる[伝説の龍操兵]が眠っており、アリシア達をさらったのはおそらくそれを発掘させるためだろう。実際、盗賊組合で得た情報では最近明らかに遺跡から発掘されたものと思われる骨董品や宝物などが大量に売却されたという。遺跡周辺の詳細については、今ゼノアの部下達が偵察に出て調査しているという。 アリシアは一行に言った。 「お願い、あいつ等をやっつけて!。私のほかに捕まっている人達を助けて!!」 ゼノアも一行に支援を依頼した。幸いルクサルも商売の都合でまだこの街に滞在するという。一行はその申し出を受けることにした。 一行はとりあえずアリシアをナウル村まで送ることにした。ゼノアの部下が帰ってくるまでは何も出来ないからだ。村にはクサナギとゼロ、そしてセフィロスが向かうことにし、あとの者は報告待ちのためにレムの街に残った。 ナウル村は十年前にできた開拓村で、このレムの街から北に進んだ樹界のほとりにある村だ。一行はこの村に続く森の中を進んでいた。 その時、一行は街道の両脇に殺気じみたものを感じ取った。クサナギがエルグラーテの感応石の感度を上げて調べてみると、操兵の姿も二機程確認できた。追いはぎだろうか。だがその気配は、一行に襲いかかる様子はなかった。一行はとりあえず、そのまま放っておくことにした。 その日の夕方のうちに一行はナウル村に着くことができた。アリシアの姿を確認した村人達は一行を歓迎し、村長の家に招いた。そして村人総出の感謝の宴が開かれた。ゼロは、こんなはずでは、と困惑していた。 その夜。ゼロは宴を抜け出して村の広場に来ていた。そして、有り合わせの材料で[鳴子]を作り村の周囲に仕掛けて回った。昼間の集団が、きっと村を襲うであろうと踏んだからだ。そのころクサナギは、エルグラーテのところにいた。別にゼロほど考えたわけではなかったが、やはり何か胸騒ぎがしたのだろう。そしてセフィロスは……ぐっすりと寝ていた。 不意に鳴子がカラカラと鳴った。連中は大胆にも村の正面から攻めてきたようだ。突然操兵の駆動音も聞こえ始めた。どうやら連中は、発覚を防ぐために機体を荷車か何かで運んだのだろう。それらの音を聞いてクサナギはエルグラーテを起動、セフィロスも飛び起きて広場にやってきた。そして村人達も手に手に武器を持ち、そして作業用操兵レストアールを引っ張り出して広場に集結した。 敵は銃を持った兵士が六人、レストアール型が二機だった。数的には全く問題はないのだが、武器を持っているとは言えズブの素人である村人を背負っての戦闘だ。早めに決着をつけなければ、彼らにも被害が出るのは必至だった。 クサナギの前には二機のレストアールが迫ってきた。が、作業用の操兵など新造古操兵ファルメス・エルグラーテの前ではポンコツ同然だ。余裕のクサナギは先制攻撃を掛けるためにエルグラーテを前進させようとした。が、ここに至ってクサナギの不運ぶりが発揮され、たび重なる操縦ミスによりエルグラーテはその場から一歩も前進できずにいた。 その間にも敵の操兵はエルグラーテと村の操兵に迫ってきた。そしてエルグラーテが動く前にレストアール同士の戦闘が始まった。その足下では、兵士達がそれぞれ前進を開始していた。 兵士のうち三人が、セフィロスにその銃口を向けた。さしもの武繰も銃弾を正面から受け止めることは出来ない。セフィロスは[技]を用いて瞬時に敵の背後まで駆け抜けようとした。が、その前に兵士の銃撃がセフィロスを捕らえた!。が、その一撃を耐え切ると、まさに風のような速さで兵士達の背後に回り込み、そして瞬く間にそのうちの二人を攻撃、ものの見事に倒した。残った兵士はやけくそじみた奇声を上げながら、銃剣を突き出してセフィロスに突撃した。セフィロスはそれを安々と交わし、反撃の槍を突き出す。その一撃で、また一人兵士が倒れた。 一方ゼロは、銃を持つ兵士に対して果敢にも拳銃で立ち向かった。が、コスモ・ドラグレーアではなく、リボルバーシングルだ。ドラグレーアは使いこなせれば確かに最強の拳銃だろう。が、その力を引き出すためにはかなりの熟練が必要なのだった。だが不慣れな武器ではやはり思うようには行かず、やはり敵の銃弾を受けてしまった!。が、駆けつけたセフィロスと村人達のフリントロック銃の援護もあって、その場を切り抜けたゼロは、反撃のリボルバーを撃ち、その兵士を撃退した。 クサナギは焦っていた。何とか敵の攻撃をかわしてはいるが、このままでは何もしないうちにやられてしまう。奏効しているうちに、村のレストアールは敵レストアールの槍の一撃でバラバラに破壊されてしまった。レストアールはもともと再生部品で造られた為、構造的には脆弱なのだ。 ようやくの思いでエルグラーテを動かしたクサナギは、反撃とばかりにエルグラーテの肩部に装備された96式回転機関銃をせりだし、レストアールに向けて発射しようとした。これが決まれば作業用操兵など、粉々に砕け散るはずだった。が、この後に及んで不発!。ガトリングガンは弾詰まりを起こした。 仕方なくクサナギは、エルグラーテに大太刀を構えさせると、右から迫る敵に叩きつけた。その攻撃を受けたレストアールは、瞬く間に地に伏した。クサナギは、今度は左腕部の盾に装備された爆砕槍を作動させ、もう一機のレストアールに向けて射出した。二股の槍はものの見事にレストアールを粉砕した。 戦闘が終わり、とりあえずの手当を終えたセロとセフィロスは、クサナギとともに捕らえた敵を訊問し、正体を聞き出そうとした。それに対し彼らはあっさりと、自分達が王朝結社の残党であることを明かした。 彼らは一ヵ月前のライバ攻防戦に間に合わず、破れたことを知って落胆しているところをあのリガーブに拾われたのだという。そして皇帝とサイラスを助け出すのに協力する、という条件で竜魔帝国に従っているという。村を襲った理由は、発掘作業のための人材確保のためのようだ。 どうやら彼ら自身はリガーブに完全に恭順しているわけではないようで、自分達が知る限りのことは素直に答えた。だが、王朝結社に対する忠誠そのものは失ってはいないようだ。ゼロがクサナギを指して「誰だかわかるか?」と問うと、彼らは悔しげに、 「クサナギだろう……貴様のせいで皇帝陛下は……。何で、そんな[へぼ]操手に[王家の操兵]が負けたんだ……」 と、さっきの戦いぶりを思い出して呟いた、これには、クサナギも何も言えなかった。 ゼロは彼らに[真実]を伝えるために、サイラスの[現在の]状態を似顔絵にして描こうとした。が、出来上がったのは、どこが狂ったのか、何故か[全盛期]のサイラスだった。それを見た残党達はますます闘志を燃やした。半ばやけくそになったゼロは、彼ら残党に希望をもたせるように振る舞った。 その翌日。一行はレムの町に戻ることにした。その際、連中が使用していた荷車を利用して残党を一緒に護送することになった。ちなみに操兵の残骸、そして仮面は、村に寄付することにした。自分の失態で守り切ることができなかった、クサナギの詫びの印だった。 |