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街に戻り、残党を役人に引き渡した一行は、ゼノア達と合流した。ゼノアは部下を通じて竜魔王の情報を仕入れていた。それによると、やはり西のほうにある遺跡を陣取っており、そこで捕らえた人々を働かせて、その遺跡に眠るという、[伝説の龍操兵]を発掘させているという。それを聞いたクサナギは、 「……[王家の操兵]の次は[龍操兵]……全く、どうしてこうも、[伝説の操兵]なるものが出てくるのだ……」 と、自分のエルグラーテを棚に上げて呆れていた。 「……ま、[伝説の操兵]などというものは、すぐには戦力にはならないものですよ。数週間から数ヵ月くらい掛けて徹底修復しないと、動かすことすら出来ませんからね」 それは事実だ。伝説の操兵といっても所詮は機械。何百年、何千年もの間整備もされずに放置されていれば、朽ち果ててしまうのは目に見えている。それでも修復すれば動ける、という程度で済むのは、その操兵を封印する際に施された古代の[保存措置]が優れているからだった。だが、それにも限界はある。実際、クサナギのファルメス・グラーテは長い年月、そしてここ最近のたび重なる破損によって何度も改修を受けて既に別機体(エルグラーテ)と化しているし、[王家の操兵]ファルメス・エンペラーゼも、発見当初はとても起動できる状態ではなく、短期間で修理できたのは複製機であるファルメス・ロードレイの部品を流用したからであった。だが、遺跡には他にも財宝などがあり、このまま放っておけばそれらを売り払って得た資金で、何をしでかすか分からない。 「敵は遺跡から少し離れたところに集落を作って、そこに捕らえた人々を住まわせているようです。ここは、二手に分かれて救出と敵の撃滅を同時に行いたいのですが……」 ゼノアの主張に一行は特に反論しなかった。実際、ゼノアの調べによると敵の戦力は操兵がドラ・ログ・メーアを含めて三機。そして傭兵もかなりの数に上るのだ。そしてそれらの殆どは、その集落のほうに集中しているという。それに対してこちらの戦力はクサナギのエルグラーテとモ・エギ、ゼロ、セフィロス。そして阿修羅とホセ、ゼノアの部下六名。本来なら二手に分かれるべきではないのだが、捕われた人々が人質にされるのを阻止するためにどうしても、同時に襲撃する必要があるのだ。 作戦は決まった。ゼノアと部下達、そしてモ・エギと阿修羅、ホセが先に集落を襲撃、続いてクサナギとゼロ、セフィロスが遺跡を強襲するというものだった。善は急げとばかりに一行は、早速行動を開始した。 クサナギ達と別れたゼノア達は、作戦通り集落の側までやってきた。そして部下達を村に派遣した。もともと工房都市組合の工作員である彼らには潜入行動はお手の物である。そして村に潜入した彼らはゼノアの指示通り集落のあちこちに煙幕弾を仕掛けて回った。戦力差を奇襲作戦で補おうというのだ。 幸いモ・エギ、そして彼女の戦鎧[紅葉武雷]はその特異な形状、機能にかかわらず操兵の感応石には反応しない。それを利用すれば、おそらくはこの奇襲作戦は成功するであろうとゼノアは踏んでいた。そして、煙幕弾が炸裂し、作戦の開始を告げた。 一方、クサナギとゼロ、セフィロスは敵の陣取っている遺跡が一望できる高台に来ていた。そしてそこから、敵の様子を伺っていた。望遠鏡で覗いてみると、遺跡の前にはリガーブと竜の教祖、そして彼の操兵であるドラ・ログ・メーア、そして傭兵達がいた。その傭兵達の中に、ひときわ目立ったものが二人いた。一人は身長半リートを越える巨人で、これまた巨大な鉄球を鎖でつないだものを武器としていた。そしてもう一人は、かつてリナラの御前試合でイーリスと戦い、破れた鎖鎌使いのシシドだった。 彼らの前には、労働のために駆り出された人々がいた。竜の教祖はそれらの人々を前に演説をしていた。 「いよいよ、我らがリガーブ様が、真の[竜魔帝王]となられる時が来たのだ!。これにより、我らは新たな理想郷[竜魔帝国]の誕生を迎えることとなったのだ!!」 その言葉に傭兵達が拍手し、そして脅されるように人々も拍手を送った。それに答えるようにリガーブが剣を掲げて叫んだ。その剣は紛れもなく、あのサイラスがもっていた[魔剣]だった。 「オレ様はこれより、最後の[儀式]に入る……。そしてこの遺跡から出てきた時、オレ様は[竜魔帝王]としてお前達の前に降臨するだろう……!!」 その時、集落のほうから煙が上がった。クサナギ達はすぐさま行動を開始した。高台を駆け降り、エルグラーテがリガーブ達の前に立ちはだかった。 「我が名はクサナギ!。そなた達の野望、ここまでだ!!」 それを聞いたリガーブは、エルグラーテに一瞥をくれると、余裕の表情で答えた。 「ふん!。また貴様か……。他の奴等はどうした。特に、あのゼロとかいうガキは……!!」 そのころゼロとセフィロスは、敵の目がエルグラーテに向いている間に、敵の集団の側面に回り込み、その周辺の草むらに潜んでいた。だがリガーブは、それを見抜いているようだ。だが、 「どうせ、そこいらへんに隠れているのだろう!」 と言ったまでは良かったが、指さした場所は、見当違いの反対方向だった。とりあえずゼロとセフィロスは、潜んだままでいた。 「……まあ良い。本来ならば、このオレ様自らの手で引導を渡してやりたいところだが、あいにくオレ様は忙しい。お前達のような[小さきもの]など、相手にしている暇はないのだ……!」 そしてリガーブは、お気に入りのトレンチコートを翻して遺跡の中に入っていった。 「待て!!」 クサナギはエルグラーテを前進させる。が、操手が乗っていないはずのドラ・ログ・メーアが突如起動、エルグラーテの前に立ち塞がった!。そしてその竜を形どった操兵は両腕の鉄斬爪を突き出し、「あんぎゃー」と声を上げてエルグラーテに襲いかかった!。その足下では、竜の教祖が声を上げていた。 「やれぃ!ドラ・ログ・メーア。[竜魔帝王]様に逆らう愚かな敵を、スクラップに変えてしまえぇぃ……!!」 ドラ・ログ・メーアはあくまで特注の機体であって、伝説の操兵ではない。それゆえに一人で動くことなどないのだ。おそらくは別の操手が乗り込んでいるのだろう。 一方、ゼロとセフィロスも攻撃を開始した。まずは手近な傭兵に切り掛かり、沈黙させる。そして反撃の銃弾を受けながらも、続け様に剣と槍を振るってすべての傭兵を沈黙させた。残りは巨人とシシドだけであった。 |