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遺跡の中は然したる迷宮にはなってはいなかった。もし、三人の中に建築物に関する知識があるものがいれば、今いる上部の建造物が、どうやら実際に操兵が埋葬されてからかなり後(おそらくは100年くらい)に建築されたものであることがわかったであろう。 遺跡の各部屋の中にはリガーブ達が持ち出し損ねた財宝らしき長箱が、まだいくつか残されていた。ゼロはそれに興味を持つが、今はかまってはいられないので、後回しにするほかなく、三人はそのまま中央の通路を進んだ。 通路の奥には、かつては隠されていたであろう地下へと続く階段が伸びていた。三人は先ほどの戦闘において倒した傭兵からガメた永久ランプを照らし、その階段の奥へと進んだ。そして、その奥にある操兵が出入りできるほどの巨大な扉の前に来ると、クサナギはボルトアクションを、ゼロはセラミック剣を、そしてセフィロスは自慢の長槍を構えなおした。そして、その扉に手をかけ、ゆっくりと押し開いた。 そこは、天井の高い広間だった。おそらくはこの墓の主だろうものの玄室らしく、中央には柩らしいものがある。そして、その柩の向こう側に巨大な人の影が玉座のようなものに鎮座していた。どうやらこれが、[伝説の龍操兵]らしい……。その外観は、先ほどのドラ・ログ・メーアとは違い、人型の機体に龍を模した装飾の施された見事なものだった。だが、かつては業物だったであろうその操兵は、今ではその飾り立てられた装甲はすっかり朽ち果て、間接の隙間から覗く駆動用の筋肉筒は殆どが木乃伊化していた。もはやこの操兵は完全に[死ん]でいたのだ。 だが、肝心のリガーブの姿はどこにもない。三人は油断なく部屋を見渡した。その時、朽ちた龍操兵の中から竜魔王の御声が部屋中に轟いた。 「……魔剣が[操兵の力]を知らなかった故にサイラスは破れた……。ならば、今度は魔剣が、その[操兵の力]を取り入れればよい。それも、伝説に詠われる最強の操兵の力を……!」 突如、龍操兵が振動した。三人は思わず身構える。そしてその目の前で、動かぬはずの操兵は、間接を軋ませながらゆっくりと立ち上がった。 「……そう、オレ様はこの[龍操兵アグナ・セレスレイド]と融合し、真の[竜魔帝王]となったのだぁ……!!」 その叫びと同時に、アグナ・セレスレイドと呼ばれた操兵の仮面に亀裂が入り、いきなり砕け散った!。そして、その仮面の裏側に何と、巨大化した[リガーブの顔]が出現した!!。どうやら魔剣は、サイラスが操兵に負けた時のことを教訓に、リガーブをただ巨大化させるのではなく、操兵との融合によってその力を取り入れることを考えついたようだ。やはり魔剣には、独自の知性があるらしい。 リガーブは三人に向かって歩み始めた。地響きが部屋を揺らし、壁の漆喰が崩れ始める。さすがに操兵(サイズの巨人)を生身で相手にするのはちと辛い。三人は一目散に逃げ出した。それを追ってリガーブも遺跡の外に出ようとする。先に説明した通り、上部の遺跡は操兵を埋葬したあとに建築されており、操兵が通れるほどの大きさはない。が、リガーブはそれに構わず建物を崩壊させながらも三人を追いかけた!。 三人は遺跡が完全に崩れさる直前に何とか飛び出した。クサナギはすぐさまエルグラーテを起動、崩れた遺跡から出現した巨大リガーブと対峙した。リガーブはエルグラーテを見るや、アグナ・セレスレイドの背部に取りつけられた蝙蝠のような翼を広げて威嚇した。 「……ふ、もはや竜魔帝王となったこのオレ様の前に、そんなスクラップなど、何の役に立つ……!」 翼を広げ、魔剣を構えたリガーブはゆっくりと、エルグラーテに歩み寄る。それに対し、クサナギはガトリングガンを始動、リガーブに向けて雨のような銃弾を浴びせかけた。その攻撃をリガーブは余裕で受けた……と、いうより、まるで避けられなかった。銃弾はアグナ・セレスレイドの朽ちた装甲を確実に砕いてゆく。 「……そんな馬鹿な!。体が重い……!!。これじゃ唯の重てぇ甲冑じゃねぇか!!」 そうなのだ。リガーブ、そして魔剣にはとんでもない誤算があった。操兵を乗っ取ったとはいっても、このアグナ・セレスレイドは機体、仮面ともに完全に[死んだ]操兵であり、魔剣がどんなに魔力を注ぎ込んでもその機能は決して回復することはない。もっとも、仮に操兵の仮面が[生きて]いた場合、その仮面の[意思]が抵抗するので、決して魔剣に乗っ取られることはなかったのだが。従って、今のリガーブにとってこの操兵は唯の錘でしかなく、かつて巨大化したサイラスよりも酷い状態にあるのだ。 それに気づいたクサナギは、ここぞとばかりにガトリングガンを叩き込む!。銃弾はことごとく命中し、アグナ・セレスレイドをあっという間に瓦落多に変えようとしている。が、あと少しというところで弾詰まり……。仕方なくクサナギは、エルグラーテに大太刀を抜かせて、リガーブに向かわせる。 自棄になったリガーブは、向かってきたエルグラーテに手にした魔剣で斬りつけた!。が、やはりエルグラーテの機動性について行けず、その攻撃は命中することはない。まれに命中するものの、その重装甲とセラミック製の盾に阻まれ、決定打を与えることができない。逆にエルグラーテの大太刀はリガーブを確実に追い詰めていた。 相手が唯のでくの坊だとわかったゼロとセフィロスは、それぞれに攻撃を開始した。ゼロは[指弾]で、セフィロスは長弓でそれぞれ間接の隙間などを狙い、確実にリガーブに打撃を与えていく。そして、二人の攻撃と、エルグラーテの大太刀、そして生きているほうのガトリングガンによってアグナ・セレスレイドはバラバラに砕け散った。 かつては伝説の龍操兵であったアグナ・セレスレイドはもはや原型を留めぬままに破壊されていた。果たして、リガーブは……あの魔剣はどうなったのだろうか。セフィロスは操兵の残骸を掻き分け、魔剣を捜し出そうとした。 その時、残骸を散らしながらリガーブが立ち上がり、セフィロスに奇襲をかけた!。とっさに避けるセフィロス。リガーブも魔剣も健在だったのだ。それを見たゼロもすぐさま駆けつける。そしてクサナギもエルグラーテから身を乗り出し、ボルトアクション銃で狙いを定めた。おそらく、これが最後の戦いであろう。 リガーブの攻撃を辛うじてかわしたセフィロスは、正面から突き掛かる。が、[魔剣の力]で強化されたリガーブはそれを難なくかわす。ゼロも背後から攻撃しようとするが、魔剣の柄の部分にある[目]のようなものがそれを感知、奇襲を許さない。唯一効果的に攻撃できそうなのは、クサナギのボルトアクション銃だった。が、この銃は威力は大きいが連射性に乏しいため、援護以上の効果が上げられない。 その間にもリガーブは狂ったように魔剣を振るいセフィロスに襲いかかる。三人がリガーブにてこずるのは当然だ。この魔剣はもともとは実力など皆無であったはずのサイラスにでさえ、超人的な戦闘能力を与えるのだ。ましてリガーブは全く実力がないわけではない。それが魔剣によって強化されたのだから、おそらく戦闘能力はサイラス以上だろう。だが……。 「……ふ、ふ、ふ……貴様等に……貴様等如きに邪魔などさせん……オレ様は……オレ様は最強の竜魔帝王なのだぁぁ……!!」 既にその目は狂気の色を帯びていた。どうやらリガーブの精神はサイラスの時と同様、巨大化能力が失われたショックで一時的に狂気に陥ってしまったようだ。 そんな状態で攻撃を続けるものだから、リガーブの疲労は心身ともに極限に達していた。今が最後の機会と判断した三人は、一気にリガーブを攻めた。クサナギのボルトアクションが火を吹き、リガーブを弱らせ、ゼロがしかけた[闇風]は空をきるものの決定的な隙を作った。そして最後に繰り出されたセフィロスの槍が止めとなって、竜魔帝王と名乗った身の程知らずはその手の魔剣を取り落とし、地に伏した。 |