キャンペーン・リプレイ

第 二十一話 「 彼 の 者 達 の 起 源 」    平成11年12月5日(日)

12345

 翌日。無事に夜を過ごした一行は、アファエルが見つけた昇降機を伝って地下に降りることにした。その深さはおよそ10リート。先の[技]を用いても降りられる距離ではない。一行はアファエルの結んだ命綱と昇降機のワイヤーを利用してその深き地下へと降り始めた。
 まず、最初に降りたのはセフィロスだった。セフィロスは昨日とは打って変わって見事に着地した。続いてはゼロ。ワイヤーを伝ってするすると降り始める。が、途中で手が滑りそのまま落下!。何とか中程で落下を止め、とりあえずは着地することができた。その後、クサナギが降りたが、ゼロとは逆に着地寸前に落下!。操手用の防具のおかげで軽減されたものの、手痛い打撃を受けて負傷した。
 阿修羅はおもむろに辺りを捜した。そして、小さな金属片を見つけると、それに向かって[気]を注ぎ込んだ。[金操功]でフックを作ろうというのだ。そしてフックは出来上がり、阿修羅はそれを利用してワイヤーを降りようとした。が、その金属片が脆かったのか、突然パキン!と折れ、そのまま落下した!!。幸い途中でワイヤーに捕まり、速度は軽減したものの、落下の衝撃を諸に受けてしまった。
 そしてイーリスは危なげながらも無事に着地、それに続いてアファエル、アルバート、メリアも難なく降りてきた。もともと木々の生い茂る場所で暮らし、さらに盗賊としての身のこなしが身に付いたアファエルや、冒険家としてあちこちの遺跡や秘境を探検してきた兄妹にとって、このような行為は何の苦でもなかったのだ。
 怪我の治療を終えた一行は、昇降機の出口を抉じ開けて中へと入り込んだ。そして一行は目の前の光景に驚愕した。そこは真っ直ぐ伸びた通路で、しかも天井には光源不明の明かりが煌々と照らしてある。その時、イーリスは通路の奥のほうから、何か機械のようなものが唸りを上げている音が聞こえてくることに気付いた。どうやらこの施設はいまだ機能が生きているようだ。一行は先に進んでみることにした。その通路は地上部分と同じ材質で出来ているらしく、朽ちている様子は全くなかった。そして床などの様子から、今の今まで全く誰も侵入した形跡がないことも明らかだった。
 その時、先頭を歩いていたアファエルが通路の両側の壁に妙な穴が開いているのを見つけた。その穴は、対になるように数箇所ずつ開けられている。アファエルの盗賊としての勘が、それが罠だと判断したのだ。阿修羅が十三節棍を穴の前に通過させる。すると、その穴の間に強烈な電撃が流れた。もし、この間を通過していたら今頃は黒焦げになっていたであろう。
 アファエルは解除する方法を捜した。そして程なくして、途中の壁に何か開く仕掛けのありそうな小さな四角の継ぎ目を見つけた。が、それは電撃の向こう側だった。意を決した阿修羅は、床と電撃のわずかな隙間を潜って向こう側に行くことを試みた。が、それは魅力的な体をもつ阿修羅にとってはとても苦しい行為だった。それでも阿修羅は、その豊満な胸部を床に窮屈そうに押しつけながらも何とか電撃の壁を越えて、ようやくの思いで継ぎ目の前に立った。
 苦労の末に継ぎ目の前に来た阿修羅だが、ここに来てその動きが止まった。この継ぎ目が扉らしいのはわかるのだが、どうやって開けたらよいかわからなかったのだ。取っ手もノブもなく、その側を見ても釦のようなものもない。盗賊や探検家としての技術や知識の乏しい阿修羅では、どうしたらよいかわからないのだ。
 阿修羅は、ここで突然気を練り出した。[気闘法]で威力を高めた拳を扉の前に繰り出し、その衝撃で開こうというのだ。そして、その気の衝撃を受けた扉は、少し奥に押されてその後にゆっくりと開いた。何のことはない。この扉は右側を少し押せば開く仕掛けになっていたのだ。呆気にとられた阿修羅は、がっくりと肩を落としながら中のスイッチを切った。
 電撃を解除した一行は、さらに通路の奥へと進んだ。そしてその途中、左右に分かれる通路にぶつかった。用心しながらそれぞれの通路を見てみると、右のほうは少し進んで扉となっており、左のほうはだんだん広くなり、奥のほうに大きな扉があった。イーリスが聞いた機械音は、どうやら左の大きな扉から聞こえてくるようだ。一行は考えて、まずは右の扉に進むことにした。
 さて、扉の前まで来た一行だが、その扉はやはりノブも取っ手もなかった。今度は操兵もモ・エギもいないので破壊しようにも手段がない。アファエルはその扉の周囲を捜した。すると、扉の横に小さな箱が取りつけられていることに気付いた。工具を使って解体してみると、その中には回路のようなものが入っていた。どうやら、これが扉を開けるカラクリらしい。
 だが、妖精族であるアファエルに機械のことが解る訳がなかった。そこでクサナギの出番となった。操兵の部品の中にはこのような細かい回路を含んだものもある。その知識を応用して開けることを試みようというのだ。クサナギも操兵乗りの端くれ。ミオほどではないものの、操兵の構造についてはそこそこ熟知している。クサナギは落ち着いて回路を繋ぎ直す。そして、配線を繋ぎ終えると、扉は開いた。
 扉の中は少し広めの部屋だった。そこには地上の部屋よりはましな状態で書類や道具などの瓦落多が散乱していた。そして、その壁一面に先ほど地上で見た例の奇面が大量に掛けられていた。しかもそのうちの一つは、明らかに操兵用と思われる大きさだったのだ。
 一行は部屋中を探索した。そしてこの奇面について書かれていると思われる資料と、金属性の小さな箱を発見した。その資料に書かれている文章はやはり読むことは出来なかったが、それに付属している図面には、何やら操兵ほどの大きさの[巨人]が記されていた。どうやら、これがこの施設で研究されているものの本命らしい。
 箱の中身は64個の小さな宝石のようだった。クサナギが見たところ、どうやらこれは[聖刻石]と呼ばれるものらしい。
「〜あのぉ〜[セイコクセキ]って、何ですかぁ〜?」
 アファエルの問いにクサナギは、この意思が操兵の動力源であるとともに[心]の源だと説明した。
「〜要するに、[マショウセキ]のようなものですかぁ〜」
 自分なりの解釈をするアファエル。だが、実はこの聖刻石の本当の存在意味は、クサナギはおろかここにいる全員が知らないのだ。本当は、まだクサナギたちは実際に目にしたことはないが、[練法]と呼ばれる秘術などの不可思議な[力]の発生源であることをはじめとして、この[世界]の根幹に関わるほどの重大なものなのだが。
 その時、先ほど入ってきた扉のほうから何かがこちらに向かってくる足音が聞こえてきた。それは、重い感じではあるが、明らかに素足で歩いてくる音だった。ゼロが様子を見ると、大きな扉のある通路から、何やら人影のようなものがこちらに向かってくるのが見えた。一行はとりあえず部屋のあちこちに隠れることにした。
 やがてその人影がこの部屋に入ってきた。それは、身長が1リート弱、胴体にめり込むような頭部を持つ緑色の肌をした[巨人]だった。そしてもっとも興味深いのは、その巨人の顔に、あの奇面が埋め込まれていたのだ。この巨人は、先ほど見つけた図面に記されているものと同一のものであることは明らかだった。
 部屋に入った巨人は、辺りを見回した。どうやら、一行が仕掛けを壊して入ってきたことを感知したようだ。そして巨人は、部屋の片隅に不自然に[立っている]奇面を見つけた。その奇面は、何やら異様な[気配]を漂わせている。巨人はその奇面に向かって歩き出した。
 その奇面の裏には阿修羅が隠れていた。阿修羅は隠れるついでに[気]を練っていた。が、それがまずかった。いくら隠れても[気闘法]は辺りの空気の質を変えるほどの闘気を発するのだ。これでは[頭隠して何とやら]だ。
 巨人が阿修羅の前に迫ったその時、机の下に隠れていたゼロが飛び出し、巨人に斬り掛かった!。それに続いてセフィロス、イーリスも飛び出し攻撃する。その攻撃に怯む巨人。その隙をついて奇面の裏から阿修羅が踊り出て[気]の一撃を与える。そしてクサナギがボルトアクションで、アファエルが短弓でそれぞれ攻撃を加え、さすがの巨人も倒れ、動かなくなった。
 以外にあっさり倒された巨人に一行は拍子抜けした。アファエルは巨人に刺さった矢を抜く。その時、彼女は異変に気付いた。巨人から矢を抜いた時にその傷が塞がってしまったのだ。見ると、今の攻撃で受けた傷がどんどん消えてゆくではないか!。そう、この巨人は死してなお再生するのだ!!。
 一行は焦った。これではいくら攻撃しても無意味だ。仮面が弱点だろうと予想した一行は、巨人が立ち上がる前にその顔に埋め込まれた仮面に攻撃を加えた。が、仮面は簡単には壊れてくれなかった。しかも操兵と違って、衝撃を受けても混乱を起こすこともないようなのだ。だが、やはり仮面そのものには再生能力はないようで、結局は立ち上がる前に仮面は砕けた。[生命の源]を絶たれた巨人は、今度こそ動かなくなり、そしてその体はどろどろに溶け、完全に骨格だけとなった。
 その時、施設中に警報が鳴り響いた。巨人が倒されたのを感知したらしい。大きな扉から聞こえていた機械音もさらに大きくなる。どうやら、この施設全体が再活性化したようだ。もはや時間はない。一行は急いで大きな扉に向かった。
 扉の前に着いた一行。アファエルが先の要領で扉を開け、すぐさま中に飛び込むとそこは、とてつもなく広い部屋だった。両脇には培養槽と思われる大きな硝子管が立ち並び、その中には緑の巨人が不完全なまま眠っていた。そして部屋の中央には、操兵ほどの大きさの異形の巨人が、胎児のように丸くなっていた。その巨人は天井から伸びる沢山の管に繋がれており、その顔には例の奇面が着けられていた。
 一行が入るや否や、眠っていた巨人たちが一斉に目を覚ました。そしてその内の2体が培養槽から出てきた。さらに、中央の巨人も天井の管を繋いだまま目を覚ました。まだ皮膚も構成されておらず、組織が剥き出しのままの巨人は、一行にその目を向けた。