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一行は戦闘体制を取った。ゼロ、セフィロス、イーリスは緑の巨人に、クサナギ、アファエル、阿修羅は異形の巨人にそれぞれ立ち向かった。その時、クサナギは背中に背負ったエルグラーテの仮面が、一瞬暖かい[波動]を放つのを感じた。 ゼロはイーリス、セフィロスと連携を組んで巨人と戦おうとした。最初にゼロが巨人を転ばせ、その後に二人が仮面を叩く、という作戦だ。が、その連携がうまく行かず、ゼロだけが先行してしまうことになった。しかも巨人はそれを読んでか、一定位置で止まってしまい、攻撃の機会を狂わされる形となった。どうやらこの巨人は唯の愚鈍な木偶の坊ではなく、それなりの判断能力がありそうだ。 クサナギ、アファエル、阿修羅はそれぞれ銃と短弓で巨人の仮面を攻撃した。その巨人には皮膚がなく、心臓などの内部組織も丸出しなのだが、どうせ再生してしまうならそこを狙っても意味がないのだ。だが、さすがに操兵級の仮面は頑強で、クサナギが撃つボルトアクションの会心の一撃を受けても一時的に動きを鈍らせるだけで、効果的な打撃を与えることは出来なかった。 そうこうしているうちにもう一体の巨人が近づいてきた。仕方なく阿修羅はそれを迎え撃つために、宗派伝来の手甲で突撃をかけた。が、それを読んだ巨人はその拳で阿修羅を迎え撃つ。が、阿修羅の動きに着いて行けずに巨人の拳は空を切る。しかし、阿修羅もまた、肝心なところ出足を滑らせて攻撃をはずしてしまった。 その頃、ようやく足踏みのそろったゼロとセフィロス、イーリスが巨人に攻撃を掛けていた。先の作戦通りゼロは巨人の足を剣で斬り付け、転ばせる。そこをセフィロスとイーリスが仮面を狙ってそれぞれ穂先刃と破斬槍で打撃を加える。だが巨人もその長い腕でセフィロスとゼロを攻撃し、必死に反撃する。が、三人の猛攻に仮面を割られ、ついに力尽きて溶けてしまった。 クサナギとアファエルは必死に異形の巨人を攻撃した。いくら頑強とはいえ、相手は仮面だ。この集中攻撃にはそうは耐えられないはずだった。だが、この異形の巨人も黙って攻撃を受け続けるつもりはなかった。巨人の口元に何か光の粒子のようなものが集まってきた。そして光が一ヵ所に集中すると、それはクサナギ、そして直線上にいるアファエルを狙って発射された!!。 その光は一筋の光線となり、空気を斬る轟音とともに地面をえぐりながらクサナギとアファエルを焼きつくさんと襲ってきた!。それが危険であることを感じたクサナギはとっさに回避!。地面を転がり難を逃れた。が、その後ろにいたアファエルは何が起きたか理解できずに立ち尽くしてしまった!!。そして、光線が彼女の目の前に迫った。 その時、地上でも異変が起きていた。 「ちょっとエルグラーテ、あなた仮面もないのにどこ行くのよ!」 クサナギが仮面を外していたはずのエルグラーテが突如起動し、どこかに向かって歩き出したのだ。モ・エギが慌てて追いかけるが、操手を乗せていないはずの機体は一向にその歩みを止める様子がない。 エルグラーテの歩みは、建物から離れたところで突如止まった。モ・エギには知るよしもないが、ちょうどここは、一行が巨人達と戦闘を繰り広げているところの真上に当たる場所だ。 エルグラーテに追いついたその時、モ・エギは不意に足下に違和感を感じた。 が、そう感じた時には既に遅かった。突然地面が二つに割れたのだ!。 「きゃぁぁぁぁぁ!!」 エルグラーテとモ・エギは成す統べもなく、その中に落ちていった。 同じ頃。巨人達を止めるために制御盤と格闘していたアルバートとメリアも異変を感じていた。 「お兄様、釦が勝手に……!」 触れてもいないはずの釦やレバーが勝手に動いているのだ。それと同時に天井の一角が内側に開いていくのが見える。そして、そこからエルグラーテの機体が悲鳴を上げるモ・エギと一緒に落ちてきたのだ!。エルグラーテは今にもアファエルに届かんとしている光線の前に落下した。そして偶然だろうか、エルグラーテの左腕部に装備されたセラミック製の盾がその光線を受け止めた!。 床に落下したエルグラーテは特に被害もなくゆっくりと立ち上がった。だが、仮面の無いこのままでは、ただ動くだけの木偶の坊だ。モ・エギもこの状況を把握し、すぐさま戦闘体制を取る。クサナギはエルグラーテに乗り込もうと機体の元に向かった。その時、背負っていたエルグラーテの仮面がクサナギの元を離れ、ひとりでに機体に装着されたのだ!。クサナギは大急ぎで機体を完全起動させた。 そのすぐ横では阿修羅が緑の巨人相手に苦戦していた。先の突撃失敗の影響で、防御に致命的な隙が生じていたのだ。そこに巨人の二つの拳が襲いかかる!。が、防具によって辛くも防がれた。すぐさま態勢を立て直した阿修羅は反撃に出た。しかし相手は身長1リート弱の巨人、しかも仮面を破壊しないと再生してしまうという厄介な相手だ。だがその身長ゆえに肝心な仮面には攻撃が届かないのだ。 そこに、先ほど巨人を倒したゼロが加勢した。ゼロは後ろから奇襲を掛けて巨人の膝関節に斬り付ける。その攻撃で体勢を崩した巨人は阿修羅の攻撃で仮面を割られ、そして無に帰っていった。 残るは異形の巨人だけだ。エルグラーテを起動させ、巨人と対峙したクサナギは、脳裏に別の[思考]が流れ込んでくるのを感じた。 (……アノ巨人ノ光線ニ現在ノ装甲デハ対抗デキナイ。せらみっくノ盾ダケガ頼リダ……) それはおそらくエルグラーテの思考だろう。クサナギはそれに従い、エルグラーテに盾を構えさせる。どうやらエルグラーテはこの巨人が何物か知っているようだ。だがエルグラーテはこれ以上語りかけてくることはなかった。いや、おそらく出来ないのだろう。 エルグラーテの突然の出現に戸惑った巨人は次の光線の発射体制を取った。クサナギはそうはさせまいと両肩部のガトリングガンを展開して乱射!。牽制して光線発射を阻止する。 その時、その銃弾の雨の中をゼロが無謀にも[跳んで]来た!!。[天竜]。この技も流派に伝わるもので、[紅牙]と[天翔]の効果を併せ持ち、[気]の力で斜め方向に上昇することができるのだ。が、ゼロはタイミングを見誤り、エルグラーテがガトリングガンを斉射したと同時に[跳んで]しまったのだ!!。 ゼロの決死の攻撃は巨人の後頭部に命中した。大きさの差もありさすがに大打撃、というわけには行かないが、少なくとも巨人を怯ませることくらいは出来たようだ。だがそれでも光の粒子は衰えることはなかった。 そこにモ・エギが体当たりをかけ、巨人を床に倒してそのまま押さえ込んだ。巨人は立ち上がろうとしてもがくが、[戦鎧紅葉武雷]によって強化されたモ・エギの膂力により身動きが出来ない。だがそれでも、巨人は顔を上げた。その口元には光が既に集中していた。 その瞬間をアファエルが見逃さなかった。彼女の短弓から放たれた矢は放物線を描いて巨人の仮面に吸い込まれるように命中した。そして、クサナギが先のボルトアクションによる攻撃で与えた傷に見事に突き刺さり、そこから亀裂が広がった仮面はそのまま砕け散った!。 仮面を砕かれた巨人はその動きを止めた。だが、安心するのも束の間、巨人は突如手足をバラバラに動かして暴れ出したのだ!。それは、今までとは打って変わって無秩序な行動だった。おそらく、他の巨人と違ってこの巨人は、仮面によって制御されていただけであり、それが破壊されたことでその制御が失われてしまったのだろう。 だが、巨人の最後の抵抗もここまでだった。 「お兄様、このレバーでしょうか?」 メリアがレバーを引くと、巨人は糸が切れた操り人形のようにぐったりとなって停止した。どうやら最後に引いたレバーが、巨人に養分を供給していた[胎盤]を停止させ、命を絶ったようだ。そして異形の巨人もまた、体組織が溶けて骨格だけとなった。 「クサナギ〜怖かったぞ〜」 エルグラーテから降りてきたクサナギにゼロが食ってかかる。クサナギとしてはまさかあの瞬間にゼロが飛び出てくるとは思わなかったのだ。 「グラーテ〜!」 クサナギにいなされて、今度はエルグラーテに突っ掛かるゼロ。だがエルグラーテは何の反応も示さなかった。 「今更[モノ]の振りかぁ!!」 戦闘は終わった。一行は残っていたすべての培養槽を破壊した。そして辺りは、その中で眠っていた巨人達の骨が散らばるだけとなった。一行はそれを気味悪がっていたが、アルバートからこれが特殊セラミック製の人工物だと聞いた途端、目の色を変えて集め出した。もっとも、セラミックが何だかわからないアファエルはその光景を見て困惑していたが。 一行は骨格を集めている時に気づいたのだが、この骨格は奇妙なことにすべての関節が繋がったままなのだ。軟骨に当たる部分には樹脂のようなもので作られたヒンジが取りつけられており、これによって骨格が繋げられているようだ。 とりあえず一行はこの場を去ることにした。一行はエルグラーテのロケットモーターとアルバートの操兵のウィンチを利用して、天井の出口から脱出した。そしてすぐさまこの地を離れた。 一行が樹界から抜けるまでの間、何故か危険な生き物とは遭遇しなかった。そして一行は、無事に樹界を抜けた。ゼロはこのことを、[忌まわしきもの]を退治したことに対する[ケモノの主]からの報酬だろう、と思った。 ライバの街に戻った一行。門の警備の衛士にどちらに行かれたのか、と問われたクサナギは樹界だと答えた。衛士はそれを[樹界に面する森]と誤解した。まあ、普通それでもかなりの覚悟が要るのだが。 「ああ、あの樹界側の森ですか、それは大変な冒険でしたね。あそこは巨獣の類いが出没しますから、よく無事に……」 「いや、我々の行ったのは、その奥の[樹界]そのものだ」 「……」 クサナギの言葉を聞いた衛士は言葉を失った。その衛士にイーリスは、駄目押しとばかりに数本の銀色の糸を見せびらかした。それは、[ケモノの主]の残した体毛だった。イーリスは幸運にも主がいた場所でこれを見つけることができたのだ。 街に入った一行は、とりあえず竜の牙亭に戻った。 「今回は大変な冒険だったけど、あなた方のおかげで無事に終えることができました」 「ええ本当に!有り難うございました」 アルバートとメリアが一行に礼を述べた。確かにこの兄妹にとって今回の[冒険]は有意義なものだったであろう。だが一行にとっては、[奇面衆の起源]らしきものを垣間見ることになったものの、結局新たな謎が残るだけとなってしまった。果たして、あのいにしえの巨人達と奇面衆にはどのような関係があるのだろうか。 その後ゼロは、ライバの王城へと赴いた。以前ライバ王に頼んでおいた懐中時計を受け取ると同時に、遺跡で見つけた資料を王に提示して、その解読を依頼するためだ。先の王朝結社との戦い以来クサナギ達一行は特別扱いされており、ゼロの王への面会はすんなりと許可され、しかも謁見の間でなく応接間へと通された。 応接間に現れた王はゼロに懐中時計を手渡した。ちなみにその時計の蓋の裏には、[ライバ開放記念]と書かれていた。そしてゼロから樹界での出来事を聞き、そして入手した様々な資料を見聞した。 「これは、調査する価値がありそうだ。時間は掛かるかもしれないが、文書係に解読させてみよう」 王はそう言って、側にいた部下に指示を出した。 その頃、クサナギ達は手に入れたセラミック製の骨格を武器屋に持ち込んでいた。これを加工して武具を製作してもらうためだった。が、この特殊セラミックの加工には高度な技術が必要で、工房都市でなければ無理であろう、と言われて断られた。 一行は仕方なく店を後にし、今度はゼノアを捜した。セラミックの加工を依頼するのと同時に、手に入れた聖刻石の価値を調べてもらうためだ。聖刻石はその特殊性ゆえに普通の宝石商では鑑定できない。やはり工房都市でなければ鑑定することができないのだ。 だが、ゼノアは何かしらの用事のためにこの街を留守にしているらしく、この日は逢うことは出来なかった。仕方なく一行は宿に戻り、とりあえず旅の疲れを癒すことにした。 結局、すべての謎は解けぬままとなってしまった。だが、これがクサナギ達一行と奇面衆との戦いの再開を告げるものらしい事は確かなようだ。 |