キャンペーン・リプレイ

第 二十三話 「 貴 婦 人 は 虹 色 の 蛇 身 」 平成12年2月6日(日)

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 [闇と自由の法]団の事件から一週間が過ぎた。ライバの街は年明けのお祭り騒ぎが去って再び日常の生活に戻っていた。そんな中、クサナギ、ミオ、アファエルは、久方振りに姿を見せたセフィロス、イーリスとともに竜の牙亭で暇を持て余していた。
 その中でミオは、一人自棄酒をあおっていた。
「せっかくの年明けだってぇのに……なぁんで変な宗教に関わるなきゃいけないのよ……やってらんないわホントに……」
 そう嘆くミオの側にはゼロの置き手紙があった。それには、[ここにいてもつまらないから師匠捜しに行ってくる」とだけ書かれていた。どうやら、ミオが荒れているのはこの手紙のせいでもあるようだ。
 そんなミオの自棄酒をクサナギはたしなめ、イーリスは逆にけしかけた。アファエルとセフィロスはそれぞれにくつろいでいる。この街は今は平和であった。
 先の手紙にあったように、ゼロはこの街を出て師匠である剣聖ニーツ・カークを捜す旅に出ていた。が、それは名目に過ぎず、実際にはこの平和な街に飽きた、というところであろうか。また、現在阿修羅もこの街を後にしていた。姉のヴィシュヌに依頼された[奇面衆に関する調査]のためであったが、これもまた名目だけのようなもので、これまた実際のところかねてより苦手としている姉の元から離れたかった、というところだろう。
 暇を持て余していた一行を見た店の主人は、渡世人斡旋所に赴くことを促した。既に年明けの祭りが終わり、通常の業務に戻っているはずの斡旋所ならば、何かしらの仕事が入っているであろうから、と。だが、それでも一行は億劫なのか全く動こうとはしなかった。ミオなどは「明けましてぇおめれとぉ〜」とすっかり出来上がっていいる始末である。
 だが、この都市国家郡において渡世人は、殆どの仕事を渡世人斡旋所で依頼される。従ってこの竜の牙亭にいたところで仕事が転がりこんでくる、ということなどそうはないのだが。 
 その時、竜の牙亭の入口をルシャーナが入ってきた。彼女は軽く手を上げて挨拶すると、空いているカウンターの席に腰を下ろした。イーリスが「ムワトロはどうしたのか」と訪ねると、ルシャーナは「休暇を与えた」とだけ答えた。
 ミオはルシャーナの顔を見た途端機嫌がさらに悪くなった。何せこの前、[闇と自由の法]団に関わったのはそもそもルシャーナの一言だったのだ。あのとき彼女は関わるな、とも言ったのだが、どう考えてもあれは[焚き付けに来た]としか思えないのだ。
 ルシャーナはそんなミオの視線を全く気にせず、またも一行の興味を引くような話を始めた。
「この前妙な噂を聞いた。ノウラの側にあるタナルという開拓村で、去年新しい領主を迎えた〜何でも、ノウラの領主、ワールモン伯爵の子息で名は、ラクトーサという〜その領主が着任と同時に妻を娶ったのだが、その妻が実は人間ではなく、噂によると[虹色に輝く大蛇の半身をもつ魔物の女]だと言うのだ」
 それを聞いた一行は特に目立った反応は示さなかった。魔物、という言葉にピン、と来ることはなかった、ということもあるが、まあ、魔物だろうと当人同士が愛し合っているのなら問題ない、と思ったのだ。
 それについてはルシャーナも同意見のようだ。
「まあ、愛し合っているとは言っても、種族の違いの壁は厚い。果たしてうまく行くかどうか……もっとも」
 ルシャーナはおもむろにクサナギのほうを見て意味有りげな笑いを浮かべた。
「そなたとモ・エギを見ていたら、そんな考え事態が馬鹿馬鹿しいというものであろうか。初日の出の夜のお主等、あれは見物であったぞ」
「あ、あれはその……つまり……だな……」
 クサナギはしどろもどろに返事を返す。ルシャーナが言っているのは、初日の出を見に行ったときに、リダーヤ聖騎士であるリーン卿がモ・エギに戦いを挑もうとしたときのことである。このときクサナギは単身ファルラーテに挑み、モ・エギをかばったことで彼女に感謝され、抱きつかれた、というよりは抱き抱えられたのだ。公衆の面前で……。
「私はただ、モ・エギがあのように言われるのを黙ってみていることが出来なかったのだ」
 そんなクサナギの動揺に対してルシャーナは笑っていたが、やがて真剣な表情に戻って先の話の続きを語った。
「だが、同じタナル村では、最近旅の商隊が襲われる、という話も聞くようになった。しかも、商隊を襲っているのはどうやら、[魔物]らしいのだ。しかもその魔物、先に話した[領主の花嫁]とよく似ている、と云う……」
 アファエルはルシャーナの話から、その魔物は自分がもと居た[剣の世界]に生息する魔獣[ラミア]ではないか、と推測した。ラミアの上半身は美しい女性だが、その下半身は虹色に輝く大蛇のものであるという。そして、最大の特徴は[生きるためには人間の血が必要]であると言うことだ。それ故、ラミアはアファエルたちの世界でも恐るべき魔物として恐れられていると云う。だが、アファエルの話ではラミアのすべてが邪悪ではなく、中には心優しいものもいる。そういったラミアは、自分の理解者の人間とひっそりと暮らしているということである。
 もし、商隊を襲ったのがその[ラミア]だとしたら、それは[領主の花嫁]と同一の魔物であるのだろうか。もしそうであったら、果たして領主はその事実を知っているのだろうか。
 その時、店の外で何か大きな鳥が翼を羽ばたかせて着陸してくる音が聞こえてきた。いや、それは鳥ではなかった。店に入ってきたのは、一人のツバサビトの少女であった。首から提げている鞄には、郵便配達員の印がついていた。それを見たアファエルは、このツバサビトを[ハーピー]と呼び、それに対してツバサビトの少女は「何それ?」と首をかしげた。
「あ、そうだ。こんなことしている場合じゃないんだ。」
 ツバサビトはそう言って、手羽先の指で鞄から一通の手紙を取り出した。
「えっとミオ・ポ……何とかさん、て、ここにいる筈なんですけど……」
 それを聞いたミオは、辛うじて残っていた意識を総動員して起き上がり、そしてその手紙を引ったくるように受取った。ツバサビトの少女はそのミオの表情にたじろぎながら受領書に署名を求めた。そして、まるで糸屑が絡まったような署名を受け取ると、少女は逃げるようにその場を去り、再び空へと飛び立っていった。
 その手紙は、元[奇面衆]の少女ラマーナからの手紙であった。彼女は[王朝結社の乱]の後、ライバでの侍女見習いを終えてノウラへと旅立っていったのだ。
 とても字など読める状態でないミオに変わってイーリスがその手紙を代読した。その内容は一行の興味を引くものであった。何とラマーナは現在、先ほど話の出たタナル村の領主であるラクトーサの元で侍女をしているというのだ。そしてその手紙には、近況報告のほかに、村では現在問題が起きている、とも書かれていたのだ。おそらくは例の[魔物]騒ぎであろうことは予想できる。
 ミオはここで全員に、ラマーナのいるタナル村へと行くことを提案した。これに対してラマーナに対してあまりよい感情を持たないセフィロスが反対した。なぜ、自分たちがいかなければならないのか、と。だがこのとき、ミオはセフィロスの視線に気づいた。それは明らかに、(本当は行きたいんだ!)ということを訴えかけている視線であった。
 それに気づいたミオはクサナギに是非に行くように呼びかけた。クサナギは「困っているのなら助けなければ」と、二つ返事で承諾した。それを見て「クサナギが行くのならば仕様がないか」と、内心喜々として承諾するセフィロス。
 そのミオの提案に特にすることもなかったイーリスも賛成した。そして「私は?」と自分を指さすアファエルの袖をミオはむんず、と掴んだ。どうやらこれで、全員が行くことになったようだ。
「やあ、皆さんおそろいで」
 またもこの店に来客が訪れた。ゼノアであった。彼は一行を見渡すとこんな話を切り出した。
「実はですね、ノウラの近くのタナル村でこんな話を聞いたのですが……」
「それは、[領主の花嫁が実は魔物であった]というものか?」
 クサナギのその言葉にゼノアは返す言葉がなかった。