キャンペーン・リプレイ

第 二十四話 「 荒 野 の 諸 々 」       平成12年2月27日(日)

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 かくして、成り行き上ザクネーンの依頼を受けることになった一行は、早速マートの案内でパルク鉄工所に向かった。そこは小さな町工場で、主に農機具や生活に必要な小物などを製作しているという。外には木炭を燃やす小さな台があり、路上でも簡単な修理を行うことができる、工場というよりは鍛冶屋に近い、小さな建物であった。が、その煙突には煙がなく、どうやら炉に火が入ってはいないようだ。
 一行が工場の入口をくぐると、中からエメリアが出てきて一行を出迎えた。最初彼女は一行を客であると思い、こう言った。
「あの……申しわけありませんけど、父が不在のために工場はお休みなんです」
 その言葉を聞いたホセは思わず、「閉まった(しまった)!!」と叫んだ。
 ……………荒野に四度空っ風が吹いた……。
 気を取り直した一行がエメリアに自分たちが事件解決を引き受けたことを伝えると、彼女は戸惑いながらも感謝した。そして一行に、より詳しい話を聞かせた。それによると、父ロバートが行方不明になったのは一週間前、そしてその二日後にダルコス家の子息であるエリックが借用書を持ってきたのだという。それを聞いたロキアは、ゼノアにその借用書を見てもらうことにしてもらった。公証人であるゼノアが見ればそれが偽物かどうかがわかるであろうと考えたからだ。元よりそのつもりで来ていたゼノアはその申し出を承諾した。
 その時、工場の入口に豪華な、というよりは悪趣味な馬車が停まった。そして中から、四人の人物が降りてきた。一人はいかにもな銃士、といった出立ちの男、二人目はその大きな体格をマントで隠した戦士、三人目は鞭を持った化粧の濃い女……いや、どうやら男のようだ。そして最後に降りてきたのは、明らかに[お坊っちゃん]といった感じの青年であった。どうやら、この男達がダルコス家の跡取り息子エリックとその取り巻きのようだ。
 門の前にやってきたエリックは、一行には目も暮れずにエメリアに話しかけた。
「マイハニーエメリア!。この前の返事、聞かせてもらいに来たよぉ!!」
 そしてようやく一行の前に向き直って、こう宣言した。
「どういうつもりかは知らんが、これはエメリアと僕との問題だ。他所者は引っ込んでもらおうか!!」
 それに対してクサナギは、そのエリックの顔を見据えて言い返した。
「そなたか……。謂れもない借金をでっち上げてこの少女を無理やり嫁にしようとしているのは……!」
 それを聞いたエリックは天を仰ぐような仕種でこう言った。
「なんて事だエメリア……。僕の本当の愛にも気付かずに、こんな悪党共を雇うなんて。いいか、この工場の社長が借金をしたのは確かな事実なんだ。ここにその証拠がある!!」
 エリックは懐から一枚の紙切れを取り出し、一行の前に突き出した。
「これがある限り、正義は僕たちの元にあるんだ。下手な口出しはしないでもらおう!!」
 それを聞いたホセが、こう呟いた。
「ワルの口上は、工場だけに[工場になっちゃいねぇな](口上になっちゃいねぇな)。借金の話なら、[借金]聞いたよ(さっき聞いたよ)」
 ……………荒野に五度、そして六度空っ風が吹いた……。この一言で一瞬全員が沈黙したが、真っ先に立ち直った銃士がホセを睨つけた。
「あんた、よっぽど死にてぇようだな……!!」
「てめぇも荒野に、死ににい[荒野](行こうや)」
 ……………荒野に七度空っ風が吹いた……。その一言で銃士は再び言葉を失った……。
 その時、ゼノアが唐突にエリックに詰め寄った。
「その証拠とやらを見せてもらいましょうか!」
「なんだあんたは。そんな権利があるのか!!」
 ゼノアは笑みを崩さずにこう言った。
「私、工房都市組合から派遣されてきた、公証人のゼノアと申します。このエメリアさんの依頼で、その証文が本物かどうかを確かめさせていただきます。いいですね!!」
 この町では威張っていられるダルコス家でも、工房都市組合を名乗る人物に真っ向から逆らう気はなかったようで、エリックは渋々ゼノアに借用書を見せた。借用書を受け取ったゼノアはそれをじっくりと観察した。もしそれに何らかの落ち度があれば、そこからこの借金を突き崩せると思ったからだ。
 だが、その借用書には何の落ち度もなかった。確かにその署名は(エメリアの確認もあり)ロバートのものであるらしい事もはっきりした。どうやらこの借用書からはこの借金を御破算にすることは出来ないようだ。それでもゼノアは只では引き下がらなかった。
「でも、この署名が確かにロバートによるものかどうか、ぜひとも本人に確認してもらいたいですねぇ!!」
 ゼノアが意味有りげな笑みを浮かべてそう言うと、エリックは返す言葉を失った。どうやらやはり、ダルコス家がロバート行方不明に関わっているのは確かなようだ。だが、それをさらに追求する証拠は何も無かった。
 その時、辺りに操兵の駆動音が響いたかと思うと、昨日の黒い操兵が姿を現した。操兵はまたも少年の声でこう言った。
「そんな面倒な話合いなんて止めて、この工場ごとこいつ等を潰してしまおうよ!!」
 そこにモ・エギこと御仁姫紅葉武雷が駆け付けてきた。
「止めなさい!。それ以上やるって言うのなら、私が相手よ!!」
 その言葉に黒い操兵はモ・エギに向き直った。それと同時に他の用心棒もそれぞれ武器を構える。
「……もう止めて!!」
 突然この場にエメリアの悲鳴にも似た叫びが響いた。
「エリック、いい加減にして!。返事は後でしますから、今日のところは帰って!!」
 そのエメリアの申し出にエリックはとりあえずは応じた。
「OKマイハニー。次に来るときは良い返事を待っているよぉ!……行くぞ!!」
 エリックはそう言い放つと、馬車にさっさと乗り込んだ。それに倣って他の用心棒達も馬車に乗り込み、そして逃げるようにその場を去った。黒い操兵は暫くモ・エギと睨み合っていたが、馬車がこの場を離れると、「つまらない」といって馬車に倣ってその場を去った。
 とりあえずの危機は去った。走り去る馬車を見送りながらマートが悔しそうに呟く。
「畜生……悔しいよ……僕に銃が有ったら、あんな奴等……」
 それを聞いたホセが突然マートの頬を殴り突けた!。
「ホセ!何をするんだ!!」
 クサナギの静止も聞かずにホセはマートにこう言い放った。
「銃は強いものが持つんじゃない……弱い奴が……勇気がない奴が持つもんなんだ!!。いいかマート。普通の生活を営み、それを守るって事は、とても勇気がいることなんだ。憶病な俺にはとても出来ねぇ」
 それは、ふだんの[駄洒落魔王]からはとても想像の出来ない真剣な表情のホセであった。そんな彼を見てクサナギは、ホセという人物を見直した。
 その後、落ち着いた一行は情報を集めるために、工場と姉弟の警護をゼノアとモ・エギに任せてそれぞれ町に聞き込みに出かけた。
 クサナギはロバートが本当に町の外に出たかどうかを確かめるために、この町の門番を訪ねた。この町の門番である初老の老人はクサナギを胡散臭そうに見た。が、
「御老人。一週間前に、ロバートという人がここを通ったはずであるが、覚えていておいでか」
 と、まるで王族のような、それでいて真っ直ぐな目でものを尋ねてくるクサナギの姿に呆気にとられた。この老人は確かにロバートがここを通ったのを見ており、さらにその後の顛末も知っていた。が、それを話せばダルコス家の奴等にどんな目に合わされるかわからないので出来れば知らない振りを通そうとした。
 しかし、クサナギのどこか人を引き付ける天性の魅力に引かれた老人は、つい本当に自分が見たことを話してしまった。
「……あ、あぁ。確かにロバートなら馬車でこの町から出てったよ。だが、その後をダルコス家の取り巻き達が追いかけてな、その後、その取り巻きがロバートの馬車に乗って帰ってきたよ。荷台に、人ひとり入るほどの袋を乗せて、な……」
 そこまで聞いたクサナギは、ロバートがダルコス家にさらわれたであろうことを確信した。そして老人の手を握り「有り難う!」と爽やかな笑顔で礼を言って去って行った。そんなクサナギを見送りながら、老人はこう呟いた。
「未だに、あんな清々しい若者が居たんだなぁ……」
 一方ロキアは、町の商店に赴いた。そしてそのうちの総菜屋に立ち寄り、ロバートの評判を聞いた。それによると、ロバートは真面目で堅実、子供思いの父親で、工場の経営から言っても借金などするはずがない、という。
「真面目な人だよ、ロバートは……。何でも、この町に来る前は鉄砲か何かを作ってたらしいんだけど、この町に来てからは、もう人殺しの道具は作らないって……それで、普通の工房を開いたんだとさ……大体、あのダルコス家だって、大した家系じゃないのよ。もともとは成り上がりの商人だったんだし……」
 ロキアがダルコス家についてさらに訪ねると、店番の中年女性は小声で話した。
「確か、この町に来る前はマザで商人をしていたって聞いているけど。何でも、一代で貴族様に伸し上がったとか……。まあ、今はその当主が死んじまって、奥様のクーメルダ様が仕切っていらっしゃるけれど」
「エリックは跡取りとしてはどうなんだ?」
 中年女性は溜め息をついた。
「それがひどいもんだよ、あの道楽息子は……。毎日怪しい取り巻き連れて遊び歩いて、ロクなもんじゃない!。そのことをクーメルダ様も叱るわけでなし、どうしようもないよ!!」
 それを聞いたロキアは、話の礼に櫛肉を一つ買うと、余計に代金を払った。
「マートが来たら、これで何かやってくれ」
 そして商店街を廻り、自分たちの食料を買い込むと、パルク鉄工所に帰っていった。
 同じころ、ホセは花盛り亭で、意外な人物に出会った。それは、あのダルコス家に雇われている銃士であった。彼はホセを見ても慌てる様子はなく、ただカウンターに腰かけ、メスカルをちびちびと飲んでいた。
「隣、開いてるか……」
 ホセはその男のとなりに座り、自分もスコッチを注文した。
「スコッチを[スコッチ](少し)」
 ……………荒野に八度空っ風が吹いた……。気を取り直した男はホセに、こんなことを尋ねてきた。
「しかしまた、何だってこんな仕事請けたんだ?」
「そう言うお前はどうなんだ?」
 ホセが聞き返すと、男はグラスを傾けながら答えた。
「……俺は別にあの[マザコン坊ちゃん]がどうなろうと知ったことじゃない。俺が雇われたのは、あの工場にあるはずの[幻の名銃]だ」
「……名銃……?!」
「そうだ。あのパルク鉄工所のロバートは、俺の調べじゃかつて[コスモ社]って言う銃工房にいたらしいんだ。そしてその工房が経営難で閉鎖が決まった際、そのうちの一丁を持ち出したらしいんだ。だが、俺がその銃を譲ってくれって頼んでも、頑として首を縦にふらねぇ。その時、ダルコス家の連中が、事がうまく運んだらどの道工場は自分たちのものになるから、協力すれば銃が手に入るって持ちかけてきたんだ」
 そして男はホセに向き直った。
「俺は何としてでも[あの銃]が欲しい。あんたがあくまで俺の邪魔をするって言うんなら、俺はあんたを……殺す!!」
 それに対して、ホセもグラスを持ったまま呟いた。
「酒飲みながら……だから、[酒]られない(避けられない)」
 ……………荒野に九度空っ風が吹いた……。男はその風に負けぬように言い放った。
「その時が来たら、手加減は無しだ」
 そして男はホセにあえて背を向けたまま立ち去ろうとした。ホセは男に訪ねた。
「帰る前に一つだけ聞かせてくれ。あんた、ロバートがどうなったか知っているか……」
 男は意味有りげな笑みを浮かべて、こう答えた。
「おそらく、あのマザコン坊ちゃんと工場の娘さんが結婚式でも挙げりゃあ、帰ってくるだろうぜ……」
 男が去った後、ホセはグラスのスコッチを空け、そして愚痴をこぼす主人に一杯傲って店を後にした。
 最初に工場に戻ってきたのはロキアだった。その両手いっぱいに食料品を抱えたロキアは、改めてエメリアに「しばらく世話になる」と言った。実のところロキアは、あまりこの件には関わりたくない、といった感じが見受けられた。もし、ロバートが実際に借金を負っていた場合、それはこの工場とダルコス家の間のみの問題となるからだ。
 ところが、どうやらこの借金がでっち上げだ、ということがわかり、しかもゼノアの工事、引いてはこの町のためにもなる、と感じたロキアはここに来てやる気が出たようであった。
 その次にクサナギが帰った来た。クサナギは自分の知りえた情報を話し、ロバートが確かにダルコス家に連れ去られていることを伝えた。ロキアもまた、ダルコス家の情勢を話した。
「あのエリックって奴は、かなりのどら息子らしいな」
「ついでに相当な[マザコン]らしいぞ……!」
 ホセも戻ってきた。
「まあ、あの状態じゃ、俺たちが何もしなくてもそのうち潰れるんじゃないのか」
 笑いながら言うロキアにクサナギが真剣な表情で抗議した。
「だが、それまでに数多くの悲劇が生まれるのだ!。放っておくことなど出来るものか……!!」
 とりあえず落ち着いた一行は、改めてそれぞれの情報を交換した。その中でホセは、あの銃士の話したことを聞かせた。
「とりあえず、ロバートがダルコス家に囚われ、そして無事でいることは確実ですね……後はどうやって助け出すかですが……」
 そう言ってゼノアは考え込んだ。
「そういや、ロバートは昔銃を作ってたんだってな」
 ホセが急に思い出したかのようにそのことを話すと、エメリアはロバートの部屋から一つの木箱を取り出してきた。おそらくはその銃が入っているのだろう。だが、その大きさが中途半端であった。拳銃にしては長く、長銃にしては短すぎるのだ。
「……これが、父の作った銃です……」
 エメリアがためらいながらその箱の蓋を取ると、中から一丁の拳銃が姿を現した。それを見た一行は、その銃の特異さに驚愕した。それは確かに拳銃であった。が、その銃身が異様に長いのだ。普通の銃はその銃身の長さは大体2リット強から長くても5リット弱である(1リット=約4cm)。だが、この銃はその銃身が軽く7リットを超えているのだ。
「[コスモ・ドラグレーア・バントラインカスタム]……」
 その銃を見たゼノアが思わず呟いた。コスモ・ドラグレーアとは、銃工房[コスモ社]が製造していた拳銃で、一部の銃士の間では伝説となっている名銃である。ただし、この銃は性能が良い分作りが不安定で、それ故その能力を発揮するにはそれ相応の技量を要する、まさに使い手を選ぶ銃でもあるのだ。
 そして今、目の前にあるドラグレーアはその中でも特別な存在で、本来パーカッションが主力商品であったコスモ社が、閉鎖する間際に少量だけ製作したメタルカートリッチの銃の一つで、その上銃身を通常の銃よりも延長していわゆるバントラインカスタムとしたまさに幻と呼ぶべき銃なのである。
「父が、工房をやめる際に持ち出したものです。何でも、自分が作り上げた中でも最高傑作だそうで、決して誰にも渡さない、と言ってました……」 
 その銃をマートは食い入るように眺めていた。
(……この銃が……この銃があれば父さんを……姉さんを助けられる!!)
「ところでホセ。そなた、どうしてこの銃のことを知っていたんだ?」
「奴の……あの銃士の戦う理由は、この銃を手に入れることだって、言ってた。できりゃ戦いは避けたかったが、ものが[ガン]だけに、[ガン]としてゆずらねぇ(頑としてゆずらねぇ)」
 ……………荒野に十度空っ風が吹いた……。クサナギはホセという人物がまたわからなくなった。こんな状況になってまで駄洒落が出るとは、果たして余裕なのか、天性なのか……。
 その後一行は、ロバート救出のための作戦を立てるべく話し合った。そしてとりあえず妥当なのは、連中をどうにかして町から引き離すことである、という結論に達した。こうすれば、町への被害は免れるからだ。問題は、どうやってダルコス家の一味を町の外におびき出すかである。戦力に関しては問題ない。確かに人数では圧倒的な差があるが、操兵に関しては別であった。敵の操兵はせいぜい二、三機。それもあの黒い操兵以外は雑魚と考えて良い。ましてエルグラーテは、ドラ・ログ・メーアとの戦闘の教訓に基づいてミオによって不足していた膂力と装甲に強化改造を施してあるのだ。そして操兵と戦えるもう一人の味方であるモ・エギもいるのだ。まず、負けることはないだろう。そう、こちらが操兵戦に勝利すれば、人数の差など問題でなくなるのだ。
「ゼノア。あの黒い操兵を見て何か気づいたか?」
 ロキアの問いにゼノアは考え込み、そしてこう答えた。
「そうですね……。どうやら武装は左手首の鉄斬爪くらいですかね……ただ、今までの動作を見たところ、右手首が全く動かなかったのが気になります。おそらくは、何かが仕込まれているかもしれませんね。後は、性能そのものはおそらくはエルグラーテに匹敵するんじゃないかと思われますが……」
 そこまでを聞いてロキアは、ゼノアのその観察力に舌を巻いた。まさか短い時間でそこまで見ていたとは思わなかったのだ。最初は唯の呑気な公証人としか思ってなかったロキアは、ゼノアに対する認識を改めた。
 そこにクサナギが口を挟んだ。
「だが、私が見たところ、あの少年の操縦の技量は大したものではない。あれは間違いなく操兵の性能に頼っている。先の戦いも、おそらくはエルグラーテであれば、負けることはなかっただろう……!」
 クサナギはこの前の戦いを思い返して拳を握った。
 その時、クサナギは一瞬何かが動いたような気配を感じた。が、その時は気のせいと思って放っておいた。
 しばらくして、ロキアは小腹が空いたので、台所までちょっとした軽い食事を取りに行った。その時、マートの部屋が開いたままになっていることに気づき、その扉を閉めに行った。そこでロキアは、その部屋からマートがいなくなっていることに気付いた。
 ロキアは大急ぎでエメリアを起こした。ロキアから話を聞いたエメリアは、思い当たることがあったのかすぐにロバートの部屋に向かった。そしてその部屋の隠し扉を開けた。そこには、先ほど一行に見せたバントラインがしまってあるはずなのだ。ところが、そこにあった木箱の中身は空であった。
「……まさかあの子、あの銃をもってダルコス家の屋敷にいったんじゃぁ……?!」
 ロキアは外で見張りをしていたモ・エギにマートを見なかったかどうかを訪ねた。が、モ・エギはそれらしいものが出ていったことに気付かなかったようだ。無理もない。モ・エギは外から来るものを見張ることに神経を使っていたおり、まさか中から出てくるとは思っても見なかったのだ。しかも、裏口のほうから出て行ったとすれば、体の大きいモ・エギでは、気付くことのほうが無理というものであろう。
 エメリアの予感は当たっていた。そのころマートは、ドラグレーアを手にしてダルコス家の屋敷の壁際にいた。そして、その銃を見つめて呟いた。
「これがあれば……この最強の銃があれば僕にだって、やれるんだ……!!」
 そしてマートは、その壁をよじ登って屋敷の中に入り込んでしまった。