キャンペーン・リプレイ

第 二十五話 「 姫 盗 賊  秘 宝 の 迷 宮 」  平成12年4月10日(日)

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 その翌日、一行は朝早く遺跡に向かって出発した。街を出て遺跡郡に入るとそこは巨大な岩山で、その山肌には沢山の遺跡、墳墓のようなものが存在していた。一行はカイラムの話にあった巨大な山肌の亀裂を捜した。
 程なくして一行は、めざす亀裂を見つけてその中に入った。そしてその峡谷を抜けると、そこには確かに荘厳な神殿を思わせる、巨大な石掘建造物の入口があった。一行が操兵諸共その遺跡に入ると、中は話の通りに広かった。そして話の通り端のほうには上部に上る階段があった。一行がその階段を無視して進むと、その一番奥に確かに、少女戦士の像が存在していた。
 一行は像の前まで来ると、早速その周辺を調べた。するとその像の裏側に、確かに隠し扉が開いていた。天井を見ると、丁度像の真上に太陽でも表したような文様も描かれている。気になったイヴルとアファエルがモ・エギに持ち上げてもらって天井の文様を調べたが、それ自体には何も仕掛は無さそうであった。
「ここでグズグズしている暇はない!急がないと、先に入った連中に先を越されてしまうぞ!!」
 リサームは求める遺跡を目の前にして興奮し、しかも競争相手のことが気になって苛々しているようだ。そしてさっさと隠し扉に入って行ってしまった。一行は操兵の番をモ・エギに任せて大急ぎで後を追った。
 隠し扉の中は天井の高い、長い下り階段の回廊となっていた。そしてその突き当たりに半リートほどの扉が開いていた。そしてその入口の上に碑文のようなものが書かれていた。それは古代クメーラ文字で書かれており、語学に通じるイヴルが解読すると、こんなことが書かれていた。[生まれること無き赤子、石の腹の中にて眠る。願わくば両手に抱えしこの願い、母の元に届かん。母と子を繋ぐ絆の道を通りて]
 一体、何を意味する言葉なのであろうか。
 一行は入口をくぐって中に入った。永久ランプの光を頼りに通路を進むとそこはまさに迷宮であった。通路と思えば部屋、部屋と思えばまた通路……。なるほど、これではじゃ探索しきれないなと、ミオが一人で納得していた。
 一行がさらに進むと最初の入口から左側に当たる方角の部屋から二人の男女の声が聞こえてきた。
「……お兄様、またこんなものが出てきましたわ!」
「……どれどれ、おぉっ!すごいぞメリア、これはまさに歴史に名を残す素晴らしい[宝]だぁっ!!」
 それを聞いたリサームは一行の静止も聞かずに走り出し、その声のする部屋に飛び込んだ!!
「宝は……宝はどこだぁぁ!!」
 リサームに続いて部屋に入った一行だが、そこで見たのは、いかにも学者風の青年とその妹らしい眼鏡をかけたおさげ髪の少女が、瓦落多にしか見えない陶器や金属製品を丁寧にかき集めている光景であった。クサナギとアファエルはその二人に見覚えがあった。以前樹界探検を彼らに依頼してきたアルバートとメリアの兄妹であった。
 クサナギが声をかけると二人は笑顔で挨拶を返した。一行が二人に何故こんなところにいるのかと訪ねると、アルバートは歴史調査のためです、と答えた。
「私たちは、クメーラ王朝時代の文化を調べるためにこの遺跡を調査しているんです。そんな[伝説の宝]なんて当てにならないものなんかに興味はありません。どの道、お金にはあまり困ってませんし……」
 それもそうである。アルバートはもともと実業家で、しかもそれなりに成功しているという。そして以前の樹界探検の研究成果と記録を記した書物が売れたとも聞き及んでいる。第一、彼らは知識を得ることにしか興味を示さないのだ。それはイヴルも同感であったらしく、彼らの今回の研究成果を後で教えてもらえないかと持ちかけた。
「だが、今確かに[宝]と叫んだぞ!!」
 そう主張するリサームだが、次のメリアの言葉と、彼女が見せた[宝]に一行は唖然となった。
「そうなんです。すごい[宝]でしょう。これはきっと、私たちの研究に、きっと役に立ちますわ……!」
 メリアがそう言って見せたのは、割れた陶器の破片と壊れた金属製の道具類などであった。この時代、考古学はあまり重要視されてはおらず、発掘品で喜ばれるのは、貴金属や宝石などの経済価値の高いものか、操兵や機械などの技術的価値の高いものがほとんどで、こういった[壊れもの]がいつ作られたかなどということにはあまり関心がないのだ。おそらくこの兄妹の価値観が評価されるのは数百年後のことであろう。
 一行は二人に、この迷宮に他に人が入っているかどうかを聞いた。するとメリアが、奥のほうで物音と人の声が聞こえたというのだ。どうやら、既にもう一グループは迷宮の奥を探索しているようだ。
 一行は二人と分かれて再び探索を開始した。とりあえず一行は、見せてもらった地図を頼りに迷宮を進み、まずは入口から見て左区間の不自然な部分を埋めていく作業を開始した。そして内一ヵ所、構造上明らかに部屋があると思われる場所に隠し扉を発見した。が、その中の部屋には何もなかった。
 だが、隠しておくからには何かある。そう踏んだ一行がこの隠し部屋を徹底的に調べると、やはりもう一つ隠し扉が現れた。そしてその中はまたもや部屋。だが、今度は別の扉がそこにあった。
 その扉の向こうはとても大きな広間であった。だが、特に何も見当たらない。しかし、今までの感じからおそらくはまたも隠し扉があると考えた一行はこの部屋を探索する。そして、部屋の二ヵ所の壁にそれぞれ隠し扉を見つけ、そのうち一つを開けた。
 その中は小さな部屋であった。そしてその壁にはまたもや碑文が刻まれていた。それは、[左に5回す]とだけ書かれてあった。
 とりあえず一行は他の手掛かりを求めてもう一つの隠し扉を開けた。その中は小さな部屋で、やはりその奥に扉があった。そしてその扉を開けるとやはり大広間。どうやらここは先ほどの部屋と全く作りが同じらしい。
 作りが同じということは、隠し扉も同じだろう。そう考えた一行は、先ほどと同じ所を中心に部屋を探索したが、今度は隠し扉は奥の一つだけであった。だが、何か見落としているような気がする。
 扉を開けてみると、そこはやはり小さな部屋で、そしてやはり碑文が書かれてあった。が、文字の一部が掠れていてうまく読めない。そこでイヴルが先ほどの部屋からアルバートを連れてきて、その字を読んでもらった。それによると今度は[右に8回し]とあった。先ほどの碑文といい、いったいどんな意味があるのだろうか。
 一行は迷宮の探索を続け、地図上にあるもう一つの怪しい地点を徹底的に調査した。もし、推測が正しければそこには、間違いなく通路が続いているはずなのだ。そしてあちらこちらの部屋を探索しているうちにようやく、その隠し扉を発見することができた。
 その扉を開けると推測通り通路が続いていた。一行はその通路を奥まで進む。通路は途中直角に曲がっており、そしてそのまま行き止まりとなっていた。一行はその地点を中心に通路を調べた。すると、その内の一ヵ所に隠し扉が見つかった。……それにしても隠し扉の多い迷宮である。
 その隠し扉を開けると、今度は短めの通路に出た。そしてその通路の向かって左側に、大きな両開きの扉があった。この迷宮で初めて見つかった大きな扉である。一行はその扉を開けようとするが、どうやら鍵がかかっているようで開きそうにもなかった。
 ここはアファエルの出番であった。彼女は背負い袋から[盗賊七つ道具]と呼ばれる道具の類いを取り出すと、早速その扉の鍵穴を開ける試みをした。が、その時アファエルはこの扉に仕掛けられた何らかの罠に気づいた。もし、この扉を強引にこじ開けた場合、部屋の中の何かの仕掛けが作動してしまう恐れがあった。
 アファエルは慎重に作業を進めた。本来の鍵で開ければ作動しない構造になっているのなら、この鍵開けも本来の鍵で開けたように細工すれば、おそらくは大丈夫なはずなのだ。そしてしばらくして、扉の鍵はカチャッと軽い音とともに解けた。
 一行は慎重に扉を開けた。特に何も起こらないところから、どうやら無事に仕掛けを解いたようだ。中は八角形の広間になっており、その奥には何か絵のようなものが掛けられていた。そしてその絵の下には、長い箱が二つと高価そうな陶器の類いが置いてあった。これが、ジェンヌの遺産なのだろうか。
 それを見たリサームが部屋に飛び込み、その宝箱を不用心にも何も調べもせずに片っ端から開けた。その中には金銀や色取り取りの宝石で飾られた宝飾品がたくさん姿を現した。これだけでもかなりの値打ちはありそうだ。だが、[伝説の財宝]と唄われている財宝にしてはあまりにも少なすぎる。おそらくこれも[囮]なのだろうか。
 一行がリサームに続いて部屋に入り、辺りを見渡す。すると天井に底の抜けた巨大な鳥籠がぶら下がっているのが見えた。その付け根のロープは滑車などで入口に繋がっている。どうやら強引に扉を開けるとこの鳥籠が落ちてきて侵入者を閉じ込めてしまうものであったようだ。そして一行は、今度は床に書かれている新たな碑文を見つけた。
[母は遺産への真の入口なり]
 とりあえず一行はこの場にある宝物をこの場からモ・エギのいるところまで運び出そうとした。そんな中ミオは壁に掛けられている絵を眺めた。その絵は、おそらくジェンヌであろう少女が屋根から屋根へと跳び移り、追いかけてくる木端役人を煙に巻いている絵であった。ミオの目で見てもその絵は決して名画とは言えず、構図も出たら目で、どこか人を馬鹿にしたような感じであった。
 ま、こんなものでも足しになるだろう、とミオがその絵を取り外すとその額の裏にはレバーが隠されていた。ミオがそれを引いてみると、壁の一部が動き、隠し扉が開いて通路が出現した。大した仕掛けである。
 宝物を運び終えた一行がその通路を進んで、突き当たりの扉を開けるとそこは大きな部屋であった。が、その部屋には隅のほうにもう一つ扉がある以外は何もなかった。一行が部屋を隈無く調べてみると、壁のうち一ヵ所に何か小さな穴のようなものが見つかった。その穴の中にはクランクかなにかを取りつけるためのダボのようなものがあった。おそらくこれを回せば隠し扉か何かが開くのだろう。
 だが、生憎と代わりになるような道具は発見されなかった。ミオもこのときに限って操兵整備のための工具を置いてきてしまっていた。仕方なく一行は部屋の隅の扉を開けた。
 扉の中は小さな部屋で、今入ってきた扉から向かって正面と右の隅に扉があった。一行は右の扉を開き、その中に入った。その中は小さな部屋が扉でいくつか繋がっていただけで何もなかった。が、その内の一ヵ所、部屋と部屋をつなぐ短い通路の突き当たりに隠し扉が見つかった。
 その扉を開けると中は短い通路となっており、その突き当たり、右の壁に扉があった。一行が慎重に開けてみるとそこは小さな部屋で、その部屋の隅には一つの長い箱が置いてあった。一行は慎重に部屋に入り、その宝箱に近づいた。そしてその箱を開けようとしたが、箱は何故かすべてが釘で打ち付けられており、とてもこの場では開けられそうになかった。
 仕方なく一行は箱をこの部屋から運び出そうとした。が、その時イヴルがその箱に何か仕掛けがあるのでは、と考えた。そしてロープを箱の取っ手に縛りつけ、部屋の外から引っ張り出すことを提案した。一行はその考えに同意し、早速その準備に取りかかった。
 程なくして準備を終えた一行は、部屋の外から宝箱を引っ張った。その箱は以外と重く、かなりの力が必要だった。それでも、その宝箱はゆっくりと動き始めた。が、ここで異変が起きた。箱が入口に近づいたところで突如、扉の部分の床から石の壁がせりだし、その部屋を塞いでしまったのだ!どうやら箱を一定位置より動かすと、それを錘にしていた仕掛けが作動し、部屋を封鎖する仕組みになっていたようだ。
 一行はその石の壁を取り除こうとしたが、全くの無駄であった。おそらくこの扉は宝箱を元の位置に戻すと開くのであろうことが予想できる。だが、全員が部屋の外にいる以上、この部屋を開けることはもはや不可能であった。一行は仕方なくその宝物を諦めた。 
 余談ではあるが、この部屋の宝箱は唯の囮で、その中にはただ、錘となる鉛の固まりが入っているだけであった。が、一行がそれを知る事はついになかった。
 一行は先ほどの部屋に戻り、次の扉を開けた。そこは細い通路となっており、突き当たりに扉があった。一行が油断なくその扉を開けると、そこは大きな広間であった。その広間は不思議なことに、一ヶ所の角が斜めに切り取られているような壁があった。
 一行がこの部屋に入り中を調べると、その床に錆びたクランクが落ちているのを発見し、入手した。そしてこの広間にあるもう一つの扉を開き、その通路の奥に入っていった。
 短い通路を抜けるとそこは小さな部屋であった。その部屋には入口から向かって正面と左側面にそれぞれ扉があった。一行は左側面の扉から開けることにし、そのノブに手を掛けた。が、その時異変が起きた。部屋全体が大きく揺れたのだ。その揺れはしばらく続き、そして何事もなく治まった。
 とりあえず一行はこの部屋から出ることにした。が、今の扉と奥の扉が開かない。仕方がないので元来た道に戻ろうとしたが、扉を開けてみるとそこは先ほどと違い、長い通路となっていた。一行がその通路に出ると、今来た部屋が突然上に向かって上昇を始めた。この部屋はどうやら、一種の昇降機になっていたようで、先のノブが作動レバーだったようだ。部屋のあったところを覗き込んでみると底無しの穴であった。そして、その奥からは大量の水の流れる音が聞こえてきた。どうやら、地下水脈のようだ。
 とにかく、ここがどこだかわからないからと言って立ち止まっている訳にも行かず、一行はその長い通路を進んだ。その通路は途中曲がったりもしたが、分岐するようなところは全く無く、一行はただ道なりに進むしかなかった。やがて通路は上に向かう階段につき当たった。
 一行がその階段を上り、そこにあった扉を開けると、そこは広い通路であった。その通路の真ん中には入口の回廊にあったものと同じ少女戦士の像があり、その横では巨大な少女が退屈そうに外を見ていた……モ・エギであった。見るとエルグラーテもダイ・ザッパーもある。要するに[振り出しに戻る]のようだ。
 脱力感に襲われた一行はとりあえず一休みして再び迷宮に入ることにした。その時イヴルとモ・エギは、回廊の入口に何かが立っているのを見た。それは人間ではなく、白い海月のような生き物であった。いや、唯の海月ではない。その[傘]にはまるで人間の目のような模様が描かれていたのだ!しかも瞳の光の反射を描いたと思われる部分二ヵ所に、一つ目の奇妙な[顔]が描かれているのだ!!
 それを見て茫然としているモ・エギに替わって、イヴルは他の一行にその生き物を絵に描いて見せた。それを見たクサナギとミオは驚愕した。それに描かれている[奇妙な顔]はまさに奇面衆そのものであったのだから……!!イヴルは[奇面衆]に関する情報は故郷の僧正から聞いていたので、クサナギとミオ、そしてモ・エギの様子を見て納得はした。が、アファエル、リサームは驚愕する三人を見てただ困惑するばかりであった。
 気を取り直した一行は、再び先の昇降機の部屋にやってきた。そして今度は奥の扉のノブに手を掛けた。この扉には仕掛けがないようで、その扉を開け、またも短めの通路を抜けると、そこは不可思議な長細い六角形の部屋であった。そしてその部屋の奥を開けると今度は三角の部屋。だが、その両方の部屋には何もなかった。
 気になった一行が、探索しながら埋めていった自作の地図上の[角の切れた大広間]、[昇降機の部屋]、[六角形]、[三角の部屋]を繋げてみてみると、それはまるで[人の横顔]のようでもあった。そして[右に〜]と[左に〜]の碑文があった部屋は小さな[腕]のようにも見えた。一行は、ひょっとして[生まれること無き赤子]とは、この迷宮のことを指しているのではないのか、と考えるようになっていた。
 一行はとりあえず[クランクの広間]に戻り、早速拾ったクランクを試してみることにした。[右に〜]と[左に〜]は多分このクランクを指していると考えたミオは、小さなダボにクランクを差し込み、碑文の通りに右に八回、左に五回ほど回してみた。が、最初の八回で隠し扉は開いたが、次の五回でその分閉じてしまった。どうやら関係ないようだ。ミオは仕方なくその扉を完全に開いた。
 扉の中の長い通路を進んだ一行がその奥の扉を開くと、そこは大広間であった。ここも扉から向かって正面の壁が斜めに切られているような部屋で、中には大量の武具が置いてあった。どうやらここは、万が一のための武具庫であったようだ。
 一行が武具を調べてみると、長い年月のためにすべてが劣化しており、価値はほとんど無かった。まぁ、鉄自体の質は良いので溶かして地金に戻せば、それなりには売れるのだが……。一行は武器をかき分け、他に何かないか捜すと、鎧掛けの後ろに一ヶ所、隠し扉を見つけることができた。
 その扉を抜けた一行は、そこから続くいくつもの部屋、通路を探索する。その途中、螺旋上に下る階段を発見したが、その奥の通路はどうやら最初の回廊に出るだけのようだ。おそらくは、敵に攻められたときの脱出路だったのだろう。
 一行はさらに探索を続け、この区間ではおそらく最後であろうと思われる隠し部屋を発見した。その中は大量の書物が隠されており、中には表紙に鍵まで掛けられた、一抱えもある大きなものもあった。そしてその部屋の天井にまたも碑文が書かれていた。[目印は天井にあり]。
 一行はとりあえず最初の回廊まで戻った。そしてイヴルは再びモ・エギとともに天井の[太陽の紋章]を調べてみた。が、紋章そのものは顔料で書かれた絵にしか過ぎず、それ自体がどうこうと云うわけではなかった。しかし、良く見るとその炎を表した部分がまるで定規で計ったかのように等間隔になっているのだ。どうやら、これは何かの目印のようだ。
 イヴルがさらに像そのものも調べ直してみると、右足の横の剣の柄が左右に動くことを発見した。が、動くだけで何も起こらない。どうやら何か別の手段が必要らしい。
 その時、像の周囲を調べていたアファエルは、像の台座の下から、先ほど地下で聞こえた水音が聞こえてくるのに気付いた。どうやら像の下に何かがあるのは確かなようだ。
 とりあえず一行は、像の謎を解くためにも迷宮の残り右半分を探索することにし、まずはカイラムの言っていた[謎の扉]に言ってみることにした。
 隠し扉と続く大広間を抜け、めざす部屋についた一行は、早速その部屋の奥の扉のノブに手を掛けた。すると、先ほどの昇降機の部屋と同じような振動が一行を襲った。ここに来て一行は、おそらくはこの部屋も[振り出しに戻る]なのだろう、と推測した。他の山師たちが腹を立てるのもわからないでもない。
 最初の回廊に戻った一行は再び迷宮の右側に挑んだ。そして地図の写しの通りに進み、先の[振り出しに戻る]の部屋の二つ隣の部屋に入ったとき、地図に載っていない扉が開いているのを発見した。どうやらもう一方の山師の集団が発見し、中に入り込んでいるようだ。
 一行は油断無くその隠し扉に入っていった。その通路の奥には部屋が二つ、扉で繋がっており、その奥の部屋には開かれた隠し扉があった。一行がさらに進んでもう一つの隠し扉に入るとそこは、大きな広間であった。この部屋の角のうち一ヶ所が斜めの壁であった。そしてその奥では、五人の山師が沢山の宝物を前にしてはしゃいでいた。
「……はーっはっはっは……宝だ宝だぁーっ!!」
「これで俺たちは、大金持ちだぁーっ!!」
 その声を聞いたリサームは、
「なにーっ!宝……まさか、[伝説の遺産]くあぁぁーっ!!」
 と言ってその男たちのもとに走り寄ろうとした。それを見た一行が慌てて彼を止めた。おそらく山師たちが見つけたものは[囮]であろうことが容易に予想できる。それゆえに、ここでの戦闘には何ら得はないと考えたのだ。そんな一行を見た山師たちは見つけた宝を横取りに来たと思い込み、一行に向けてそれぞれ武器を構えた。一行は戦闘態勢を取らず、彼らを刺激しないように近づいた。
「残念だったな……この宝は俺たちが先に見つけたんだ!!」
 山師たちはそう言いながら、沢山の金銀の細工物や宝飾品などを乱暴にズタ袋の中に放り込んでいく。それを見たイヴルは「もっと大事に扱え!」と叫んだが、宝を前にすっかり舞い上がっている彼らの耳には届かなかった。クサナギが山師たちにこの部屋に他のものはなかったかどうか訪ねると、彼らは警戒しながら何もなかったと答えた。
 宝を一通りまとめ終えた山師たちは、一行の様子を油断無く警戒しながらこの広間を出ていった。その時、ミオがわざとらしく悔しそうな顔を見せると、彼らは勝ち誇った笑みを浮かべた。おめでたい連中である。やがて彼らは広間から姿を消した。通路の方からはズタ袋を壁にぶつけてしまう音、価値ある陶器を落としてしまう音などが聞こえてきて、その度に一行は溜め息をついていた。
 山師がいなくなったあと一行は、改めてこの大広間を探索した。もし、このまま何も見つからなければ、おめでたいのは自分たちになってしまうからであった。やがて一行は、広間の隅に隠し扉を見つけることができた。その中には小さな部屋、そして碑文[右足の剣は最後に倒せ]があった。
 ここまで迷宮の地図を埋めてきた一行は、ここでようやく迷宮の全容をほぼ見ることができた。そう、この地下迷宮の全体像は、[腹の中の胎児]を表していたのである。そして碑文はそれぞれ、頭、胴体、右手、左手、そして右足の部分に隠されていたのだある。おそらく、[両手に抱えしこの願い]とは、この右腕と左腕の区間を指しているはずで、そしてさらに、左足に当たる部分があり、そこにも何かしらの碑文があることは容易に推測できた。
 では、[絆の道を通りて〜]とはどこの道なのか。それは当然、最初の細長い回廊である。その道はちょうど胎児の臍に当たる部分から伸びており、それが[臍の尾]を表しているのは間違い無いのだ。そして、その出口にある少女戦士の像こそが、[母]なのである。すなわち、その像の開いている左腕にこの迷宮の両腕の間にあると思われる隠し部屋にあるであろう[何か]を乗せ、碑文の通りの手順を踏めば、[姫盗賊の遺産]の本当の隠し場所にたどり着けると言うわけであった。
 そのことに気付いた一行は、早速残りの部屋を目ざして大広間を後にした。が、一人イヴルは改めて像を調べるために入口に戻って行った。