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そのころ、クサナギは当てもなく町をさまよっていた。当てどころか、本当に何をすれば良いかも思いつかなかったのだ。ここのところクサナギは何故か元気がなかった。自分でもわからないのだが、どうも調子が出ないのだ。そこで気分転換に町にでも出てみようと思ったのだが。 だが、やはりそこはクサナギであった。彼がこんなときに町に出ると必ず何かしらの騒動に巻き込まれるのだ。そして案の定路地裏から女の子らしい悲鳴が聞こえてきた。 「……やめてくださいっ!。私今からご主人様のところに戻らなければならないんですぅっ!!」 「そんな硬いこと言いわねぇでさぁ……俺たちといいことして遊ぼうぜ!」 クサナギが声をたどって路地裏に来てみると、そこで数人の男達が一人の侍女服を着た少女を取り囲み、執拗に言い寄っているのが見えた。これを放っておけるクサナギではなかった。 「やめろ!。その娘は嫌がっているではないか……それ以上やるのなら、この私が相手だ!!」 クサナギの叫びに男達は一斉に振り返った。 「ほぅ、何だ手前ぇは……たった一人で何カッコつけてんだ!」 男達は一斉にクサナギに飛びかかった。だが、やはりチンピラ、その攻撃は大したことはなく、クサナギはそれを軽く受け流し、リーダー格と思われる男に反撃の拳を振るった。今までのクサナギは素手での戦いはあまり得意なほうではなかった。だが、ここの所この手の事件でチンピラと殴り合う機会が増え、徐々にではあるが素手戦闘の技術も磨かれつつあったのだ!。クサナギの拳は男の一人を確実に捕らえ、その顔に痣を作った!!。 結局、自らの不利を悟ったチンピラは捨て台詞を残してその場を去った。 「怪我はないようだな」 クサナギが少女に話しかける。すると少女はパッと元気を取り戻し、クサナギに礼を述べた。「はいっ!。助けていただいて有り難うございますぅっ!!」 このとき、クサナギは初めてこの少女に違和感を持った。その違和感の正体は少女の姿にあった。黒い侍女服に買い物袋……人形のような瞳と顔立ちに見合わない感情たっぷりの笑み……そして何より、耳全体を覆うその奇妙な耳飾り。いったいこの少女は何者なのだろうか。クサナギがその疑問を口にすると、少女はやはり元気に、 「はいっ!。私、今日はご主人様の用事で隣のグノーシスからこの町に来たんですっ!!」 と答えた。本当にこの娘一人で来たのだろうか。クサナギが「送ろうか?」と言っても少女は、 「大丈夫ですっ!。それより、いつか改めてこのお礼がしたいので、あなたのお名前を聞かせて下さいっ!!。私はマルティアと言いますっ!!!」 と言ってきた。クサナギが「名乗るほどのものではない」と答えると、マルティアは困った顔をして、 「え〜それは困りますぅ。それに、"相手が名乗ったら自分も名乗り返せっ"てご主人様もおっしゃっていますよぉ!」 といってゴネたので、クサナギは仕方なく「クサナギでいい」と名乗った。それを聞いたマルティアは安心して笑顔に戻り、クサナギに再び礼を言ってその場を後にした。 マルティアが何となく印象に残ったクサナギは、せめて彼女が町から出るまでは見守ってやろうと思い、そのまま後についていってみることにして自分も路地裏から出た。が、その時クサナギは突如巨大な手に掴まれ、1リート半ほどの空中に持ち上げられた。モ・エギであった。モ・エギはゆっくりとクサナギを自分の顔に近づけた。その表情は笑みを浮かべていたが、クサナギにははっきりと、そのこめかみがヒクヒク痙攣しているのが見えた。どうやらモ・エギは、マルティアを追って出てきたクサナギを見て、またも何か勘違いをしているようだ。クサナギは必死の思いで弁解をした。その際クサナギは、モ・エギの手の中から町を出ようとしているマルティアの馬車を目撃した。 少女から話を聞いていたミオとアファエルは、何やら町が騒がしいことに気付いてその方角を見た。すると、人々がモ・エギを取り囲んで見物しているのが見える。側まで行ってみると、どうやらまたしてもモ・エギに掴まったクサナギが何か弁解をしている光景が目に入ってきた。その足もとではイヴルが余計なチャチャを入れている。結局この騒ぎは夕方まで続いた。 そのころアファエルは、ミオに頼まれてこの町の盗賊匠合を訪れていた。アファエルは浮浪者を装った見張りに案内されてようやく盗賊匠合を見つけると、盗賊特有の合い言葉を告げて中へと入れてもらった。顔役と面会したアファエルは、早速[紅玉の吸血鬼]に関する情報を求めた。ミオは[少女の血を吸う本物]のほかに、[人攫いの偽物]が存在すると考えていた。そこでこの盗賊匠合なら、それに関する情報を入手しているだろうと考えたのだ。 脳天気な会話で相手を煙に巻きつつアファエルは、顔役に情報の提供を依頼した。それに対して顔役は、 「……[誠意]を見せてもらおうか……」 といって、掌を上に向けて突き出した。アファエルがその上に金貨を数枚おくと、顔役は「よかろう」といって話し始めた。 「確かに、グノーシスじゃ何やら俺たちのしらねぇ組織が動いているようだ。何でも、こっちの仕入れた情報じゃ、事件の晩に何やら[変な面]をつけた連中がうろちょろしていたって話だ」 それを聞いたアファエルはおもむろに筆と紙を取り出し、以前[姫盗賊]の迷宮、そして樹界の研究所跡で遭遇した仮面の絵を描いて顔役に見せた。 「そうだよ……この仮面だよ……間違いない!」 それは、紛れもなく[奇面衆]の奇面であった。 だが、おそらくは情報はこれだけではないだろうと考えたアファエルは、もっと何か無いか、と訪ねた。すると顔役は「この金貨じゃここまでだな」といってそれ以上話そうとはしなかった。そこでアファエルは、 「そうですかぁ〜それでしたら、こっちにも取っておきの話があるんですけども〜」 と言って顔役に、[姫盗賊の迷宮]での体験談のさわりを聞かせた。[姫盗賊ジェンヌ]の伝説はこの町の盗賊達にも広く伝わっており、顔役はその時遭遇した奇面衆の情報共々関心を持って聞き入った。そして、その代わりとしてこんな話をアファエルに聞かせた。 「グノーシスの領主は何故か最近、二人の姉妹を養女として迎え入れた。だが、事件は二人が町に入ってから起きるようになった。こっちの仕入れた情報じゃ、奇面の連中との関係もあるらしいんだが……今のところわかってはいない」 アファエルは、顔役に礼を言って盗賊匠合を後にした。 そして。 「……本当にごめんなさい、クサナギさん……」 「……もうよいのだ……」 とりあえず落ち着いたモ・エギが掌の上に腰かけているクサナギに詫びを入れた。だが、このときモ・エギはクサナギにこんなことを言った。 「でも、最初あの女の子が出てきたとき、何となく不思議だったのよね」 「何がだ?」と問うクサナギにモ・エギはさらに言葉を続けた。 「何となく、[生き物]の気配がしなかったのよ……[物]というか[無気質]というか……?」 その時、イヴルが足もとから声をかけてきた。 「お〜い……いつまで[独占]しているつもりだ……」 その言葉を受けたモ・エギはようやくクサナギを掌から下ろした。そしてとりあえずクサナギは今日のところは宿に戻り、一行にマルティアのことを話した。するとそれを聞いたイプセンが、彼女を知っていると言ってきた。 「マルティアさんは、私の[お得意様]のところの侍女をしている娘ですよ」 それを聞いたミオは、再びイプセンに疑惑の目を向けた。 翌日。一行は朝も早いうちにグノーシスへと向けて出発した。そしてちょうど正午、一行は特に何事もなくグノーシスに到着することができた。いや、クサナギにとってはある意味緊張した一日であった。イヴルが何かにつけて昨日のマルティアのことでクサナギをからかい、その度にモ・エギの動く頭髪を収納した紅葉武雷の後頭部の腕がわなわなと怒りに震えていたのだから。 グノーシスの町は例の誘拐事件の所為か活気が少し失われているような気がした。一行が宿の主人に事件について訪ねると、主人はすっかり元気をなくした状態のまま答えた。 「あぁ、本当だ。ここの所数件起きている。この前も、どこかの家の小さな女の子が寝ている間に攫われた……安物の紅玉と引換にな……」 「安物だって!。そんなはずはない!!」 突然イプセンが主人に詰め寄った。それを見たミオは再びこの商人を問い詰めた。 「イプセンさん……だーかーら!あなたどうしてここまで[紅玉の吸血鬼]にこだわるんです!?」 その言葉によってミオが何を考えているか悟ったイプセンは、急にしどろもどろに言い訳を始めた。 「……いえ……ですね……私、この話のファンでして……」 「それは昨日も聞いたぞ……そういえば確か、この町に昨日のマルティアさんの主人、すなわち[お得意さん]も住んでいるんだよな?」 「どんな人なんです?それで何を売るんですか?ねえねえっ!」 イプセンはミオ、そしてイヴルの追求に、実は御禁制の薬草を売っている、などと言ってシラを切り続けたが、やがて観念してようやく真実を語り始めた。 実はイプセンは、あの[紅玉の吸血鬼]と知り合いだった。彼の家は代々商人で、三代前から[彼]に紅玉を格安で提供しているのだそうだ。そしてイプセン自身も、子供のときから父親とともに[彼]と逢っており、その人柄はよく知っているつもりであった。それゆえに、この度の[誘拐事件]はどうしても信じられないのだ。 「私はいつも上質の紅玉を[あの方]に提供し続けています。安物など、混ざっているはずがありません」 とりあえず、これで[紅玉の吸血鬼]と[誘拐事件]の犯人は別人、と云うことがはっきりした。だが、その正体となると、皆目見当もつかなかった。 「どうせ奇面衆の[人材集め]じゃないの?」 と言うミオの言葉も今のところしっくり来ないのだ。何故なら、その後に今まで黙っていたゼノアがおもむろに呟いた言葉が引っかかったからだ。 「そうでしょうか……あの奇面衆が、こんな[足の付く]ような人集めを堂々とするでしょうか?」 ゼノアはそれだけを言うと宿の外に出ていった。 その時、クサナギがこんなことをイプセンに訪ねた。 「[紅玉の吸血鬼]の正体はこれではっきりした……だが、それではあの[マルティア]とは何者なのだ」 そのクサナギの疑問にイプセンは苦笑しながら答えた。 「実は、私も[あの方]もよく知らないんです。かなり昔から[あの方]に仕えているようなのですが……いったいいつ頃からあの屋敷に仕えていらっしゃるのか……私も子供時分のころからお会いしているのですが、お姿がその頃とちっとも変わらないのですよ」 その後、ミオは再びアファエルに情報収集に赴いてもらうことにし、それを承知したアファエルは早速盗賊匠合に向かった。この事件真っ只中の町なら、かなり確実性の高い情報が得られることを期待したのだ。だが。 「何も話すことはねぇよ!帰った帰った!!」 この町の盗賊匠合の顔役は、アファエルが例の事件のことを口に出した途端に表情を変え、アファエルを入口まで押し出したのだ。その態度はアファエルが懐から金貨を取り出しても変わりはなかった。その代わり、アファエルは顔役が自分に向かって意味有りげな目配せをしていることに気付いた。 (……この町でそのことを訪ねたものは皆、ひでぇ目にあっている……俺たちじゃどうしようもねぇんだ。察してくれ……!!) その意図に気付いたアファエルはそれ以上追求することを諦めた。 「……とにかく、おれは何も知らねぇ……誘拐事件が奇面の連中の暗躍だとか、それに領主の養女姉妹が拘わっているかも知れねぇってことなんか、何にも知らねぇんだよ!!」 顔役はそれだけをアファエルに告げて扉を閉めた。 宿に戻ったアファエルの話を聞いたミオは、さらなる情報を求めてアファエルとセフィロスを連れて町へと繰り出した。そしてイヴルもクサナギと連れ立ってやはり情報を求めてこの町の酒場という酒場を梯子して廻ろうとした。だが、一行が町に繰り出すことの意図はそれだけではなかった。できれば深夜まで町をうろつき、あわよくば[敵]を誘い出そう、と言うのだ。 宿を出て町を方々に歩いたミオ、アファエル、セフィロス組と、酒場を梯子して廻ったイヴル、クサナギ組はそれぞれに情報を得た。そしてそれらを一つに統合すると、大体以下のようなものとなった。 「領主様夫妻は、この町の北のほうの遺跡発掘を視察に行かれた際に、二人の姉妹をお見初めになられて、養女になさった。ただ、そのお美しいお嬢さま達は、大変な虚弱体質だそうで、日光の下には出られないのだそうだ」 養女の姉妹の姉のほうは十七才くらいの少女で、妹のほうは十才くらいの幼女であるという。一行はそれぞれにその二人が怪しいことを確信した。が、特に証拠もない状態では面会すら困難であろう。 とりあえずの情報収集を終えたミオとアファエル、セフィロスは予てからの予定通り、深夜まで無防備な状態を装ってほっつき歩き、[敵]の出方を待つことにした。 その頃、領主の屋敷の中では、[奇面]をつけた小男が、影の中に潜む人影に頭を垂れ、何やら報告をしていた。そして一通りを聞き終えた人影は、少女の声でこう言った。 「クサナギ……なるほど、あなた方[奇面のもの]達がそれほどまでに警戒しているほどの渡世人なら、利用価値はかなりありそうね……それでは、彼らに[紅玉の吸血鬼退治]を依頼することにいたしましょう……」 一方、しばらく街の中を歩き廻り、そろそろ戻ろうか、と考えたミオ達の頭上に突如何か巨大なものが通過した。見るとそれは、人間ほどの大きさもある大きな蝙蝠であった。その蝙蝠は、足の爪で何かを掴んでいた。それはもがきながら必死に助けを求める幼い少女であった。 「……だれか助けてぇ〜!えぇ〜ん……!!」 泣き叫んで必死に助けを求める少女は、どこかの家から攫われてきたのは間違いなかった。その声はたまたま近くにいたクサナギとイヴルにも聞こえていた。二人は大急ぎでその声のする方向に急行した。 蝙蝠は一行に構わずそのまま飛び去ろうとした。だが、アファエルはそれを見逃さず、すぐに弓を取り出し、得意の矢を放った。それはものの見事に命中し、蝙蝠は少女を空中で離し、そのまま錐揉みしながら地面へと墜落した。そして空中に放り出された少女も、セフィロスが必死に追いついて無事に受け止めた。 蝙蝠は落下の衝撃を相当受けたにもかかわらず、再び飛び立とうとした。だが、そこにクサナギとイヴルが駆けつけた。クサナギは蝙蝠を見て驚いた。その生き物は、確かに翼こそは蝙蝠だが、全体的なその姿は異形の人間そのものであった。それでもクサナギはすぐに状況を把握し、ボルトアクション銃を構えて狙いを定め、その翼目がけて引き金を引いた!。銃弾は物の見事に翼に命中し、その生き物に致命的な大打撃を与えた……筈だった。 「ば……馬鹿な……」 クサナギ、そしてミオ、セフィロス、イヴル、アファエルは驚いた。その生き物は強力なボルトアクションの銃弾を受けたにも拘らず、平気な顔をしていた。いや、それどころかその生き物は銃弾を受けても傷一つ付いていなかったのだ。 今まで、このような相手と戦ったことがなかった一行は戸惑った。いったい、このような[化け物]とどうやって戦うのか。だが、その中でアファエルは一人落ち着いていた。そして再び弓に矢をつがえ、思い切り引き絞ってその蝙蝠に目がけて撃ちはなった!!。 「ギシャアァァァァァ!!」 その蝙蝠はその一撃に耐え切れず、その場で燃え上がって消滅した。クサナギがその後に調べたが、もはや何も残されてはいなかった。 一行はアファエルの弓を見て、またも驚いた。いったい何故、この弓は蝙蝠に打撃を与えることができたのだろうか。 そう、確かに吸血鬼、そしてその眷属は通常の武器では傷一つつけられない。だが、[聖別された武器]あるいは[魔力が付与された武器]なら話は別である。そしてアファエルの複合弓は、以前同族のエリファを助けた際に、その礼として譲り受けた[妖精族(彼女達の言葉では"えるふ")]の秘宝であり、さまざまな魔力を付与されているのだ。まさにこのような相手と戦うのに持ってこいの武器であった。 一行は少女の安否を確認した。その十才くらいの少女は最初混乱して泣きわめいていたが、やがて自分が助かったことを知ると、笑顔に戻って一行に礼を言った。少女の名はミルエラと云った。 「私ね……お部屋で寝ていたらいきなり変な蝙蝠に攫われちゃったの。その蝙蝠、"[紅玉の吸血鬼]様はお前の血がお望みだ"って言って、私を掴んで飛んだの!!」 ミルエラは先の光景を思い出し、再び泣き出した。その時、その声につられたかのように二人の人影がミルエラの名を叫んで走り寄ってきた。どうやら、彼女の両親のようだ。 「……ミルエラぁーっ!。無事だったかぁーっ!!」 「パパ……ママ……!!」 親子は互いに無事であったことを確認し、涙を流して喜び合い、包容を交わした。その光景にクサナギ、セフィロスはほっと胸をなでおろした。とりあえずこの晩は敵の目論見を防いだのだ。だが、その中でイヴル、ミオ、そしてアファエルは何か言い様のない違和感に襲われていた。その[親子の再会]までに至るこの件が、出来すぎているように思えたからだ。 ミオは両親に、おそらくは置いていったであろう[紅玉]を見せてくれるように頼んだ。もし、それがなければ、間違い無くこの事件の犯人が[紅玉の吸血鬼]でないことが明かとなる。そして、仮にあったとしても、その紅玉がミオの考えているようなものであったなら……。 両親はミオの求めに応じて蝙蝠が置いていった[紅玉]を見せた。ミオが再びアファエルに鑑定を頼むと、やはりそれはミオの推測通りに[安物]。屑同然の代物であった。 その後一行は親子を家まで送り届けた。その時ミオとイヴルは、ミルエラの部屋を見せてくれないかと頼んだ。そして承諾を得るとすぐに部屋の中に入った。だが、その部屋は二人の予想を裏切り、ごく普通の、そして確かに生活の跡のある[女の子の部屋]であったのだ。イヴルが窓の外を見ても、特にこの方向からでは何か目立つものが見える、と云うわけでもなかった。特に決め手となるものを見つけられなかったイヴルとミオは、仕方なく両親の「今夜はミルエラが疲れているので……」という懇願を聞いて部屋を出ることにした。そして、「お礼はまた改めて……」という感謝の言葉を受けて一行は、この晩は宿に戻った。 そして一行が去った[ミルエラの部屋]では。 「お疲れさま……もういいわよ……」 ミルエラの先と打って変わった妖艶な声を聞いた[両親]は、糸が切れた操り人形のように倒れ込んだ。 「これで、あの連中は[紅玉の吸血鬼]の元に[退治]に行ってくれる……突然押しかけて操ったりしてゴメンネ……でも、よかったでしょ……一時的にしろ[自分の娘が帰ってきた]夢を見れたんだもの」 ミルエラはそう言って、再び幼女に戻ったようにけらけらと笑い転げた。 |