キャンペーン・リプレイ

第 二十八話 「 温 泉 郷 に 少 女 は 舞 う 」 平成12年7月16日(日)

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 温泉郷ラルテア。ライバから北のリベ山を経由して三日ほど離れた人口千人程度のこの町は、十年ほど前に開拓されたばかりの土地である。最大の特徴はノウラをも凌ぐ温泉湖で、その存在ゆえに樹界に面する森に位置する場所でありながら、大勢の人々が訪れるという、有数の保養所である。
 現在、春を迎えたこの町は他同様に春祭りの準備に大わらわで、保養の為に訪れた旅人やそれらを見越した行商人、隊商、そして様々な芸人達が仕事や商売の為に沢山訪れていた。
 だが、その芸人の中でも別格の者達がいた。旅の歌劇団[アドリアーノ一座]がそれである。この劇団は[龍の女神]を讃える伝統舞踊[龍の女神の舞]を伝承、披露する数少ない歌劇団なのであった。それ故に、この春祭りの神事に舞を奉納する為にわざわざこの町の有力者から招かれていたのだ。
 [龍の女神]とは、この都市国家郡に古くから伝わる民間信仰の一つで、その中でももっとも広く信仰されているものである。その起源はプレ・クメーラ文明時代の伝説の古操兵[ファルメス]の長である[ファルメス・ドラグレーア]であるとも云われているが、実際のところ定かではない。ちなみに、以前クサナギ達と戦い、破れた[竜の教祖]をはじめとするいわゆる[龍信仰]や[竜信仰]とは全く関係はない。
 劇団の天幕の中では、二日後の本番に向けての稽古が今日も行われていた。この[龍の女神の舞]は、六人の踊り子達によって演じられる。その構成は、一人が主役となり、残る五人が周りで踊る。そして後半、山場となる部分では主役一人が舞台中央で舞うというものである。上記したように、この舞は単なる芸事ではなく、町の神事への奉納舞である。よって、その稽古もひときわ厳しいものであった。
 そして、主役であるアニタ・アドリアーノの周りで踊る踊り子達の中にアリスの姿があった。アリスはこの練習の間、可能な限り技術を学ぼうとしていた。確かに周りで踊るもの達も主役の動きを知っておかねばならない。だが、アリスは実践こそはしてはいないが、主役であるアニタの踊りそのものを覚え込もうとしていた。
 が、アリスはその練習の途中、回転する部分で余計に回ってしまい、主役のアニタとものの見事に衝突してしまった!。実際、この部分は回転の動きが以外と微妙で、つい余計に回ってしまうことがあるのだ。アリスは慌ててアニタを助け起こして謝った。
「アニタさん、ごめんなさい……」
 それに対してアニタは優しく微笑んだ。
「いいのよ、気にしなくて。それよりも、あなたこそ怪我はない?」
 だが、アリスはまだ気にしているようだ。
「でも、私の不注意でアニタさんの踊りを邪魔したようで……」
 その時、座長が二人の会話に割り込んだ。
「両方だ!!」
 と言って。そう、今の部分で余計に回ったのはアリスだけでなく、アニタもだったのだ。座長は二人をこっぴどく叱った。が、それは踊りの失敗ではなく、あくまで二人の怪我を心配してのものであった。
 アニタはここにいる踊り子達の中では一番年長で年の頃は十九。それ故に落ち着いた性格で、後輩の面倒見も良い。アニタが主役に選ばれたのは、別に座長であるテシウム・アドリアーノの一人娘だからではない。踊り、演技に関する技術は明らかに劇団一であり、実際劇団の中でこの[龍の女神の舞]を踊れるのは、アニタと、その技術を本気で学ぼうとしているアリスくらいなものであった。
 一方、座長であるテシウム・アドリアーノはこの手の劇団をまとめる人物としては珍しく、営利主義とは程遠い男であった。彼が劇団を率いるのは[人々に夢と希望を与える為]だそうで、それ故にこの劇団は時折採算を無視して小さな村や集落で公演することもあるという。
 やがて今日の稽古が終わった。そして踊り子の一人がアリスを温泉湖に誘った。他の劇団と違って町からの招聘を受けたこの一座は、温泉を無料で入ることができるのだ。が、アリスは先のことを気にしてか、 
「もう少し、練習してる……」
 と、呟いた。

 そのころ。町に入ったクサナギとモ・エギはエルグラーテと戦鎧を貸しガレージに預け、町の中へと赴いた。少し町を散策した後、モ・エギはクサナギに話しかけた。
「クサナギさん、一緒に温泉にでも浸かりませんか……?」
 それを聞いたクサナギはさすがに焦った。種族が違うとはいえ、モ・エギは明らかに(それもとびきり美しい)少女であった。そしてこの温泉湖は、その広さゆえに仕切ることができない為に[混浴]となっている。クサナギはこういうことには全くうぶで、女性と一緒に風呂などに入るなど、考えただけで恥ずかしくなってしまうのだ。
「い……いや……その……私は、また、あ、後で……」
 しどろもどろに返事をするクサナギに、モ・エギは少し微笑んで、
「じゃあ、せめて後で……」
 と、一人で温泉湖に向かっていった。その表情は少し寂しそうだった。
 モ・エギには一つの考えがあった。もし、クサナギと一緒に温泉に入れたら、その時こそ思いを告白しようと……だが、というよりやはりクサナギはモ・エギが女性であることを意識してなかなか一緒には入ってはくれなかった……もっとも、こういう事態に簡単に頷くような男では、モ・エギはその思いを撤回してしまうかもしれなかったが。そう、モ・エギにとってはクサナギのそのうぶで純真なところもまた魅力の一つなのだ。
 そんなモ・エギをの様子を、ミオは駐機場のワークマンデの上から双眼鏡で眺めていた。が、クサナギが一緒ではないことを知るや、「チッ!」と残念そうに舌打ちした。
「これじゃ、せっかくの迷彩塗装が役に立たないじゃない……!」
 ミオは仕方なく操兵を降り、クサナギがいるであろう宿に向かった。

 一座の天幕では、アリスがいまだに一人で練習していた。さっきの回転部分がどうしてもうまくいかないのだ。彼女は何としてもこの舞を習得したかった。そのままでは他所では演じることはできないが、この舞には様々な踊り、演技の要素が含まれている。応用すれば、自分の技術向上に非常に役に立つのだ。
 アリスが練習に励んでいると、そこにアニタが訪ねてきた。
「がんばっているわね……やっぱりあなたも、どうしてもその部分が気になるのね……?」 
 アニタは、アリスに微笑みを向けた。
「でも、頑張りなさい……正直言って、今回応援に来てくれた踊り子の中であなたが一番素質があるわ……最初に来た時からそう思っていた」
「そ……そんな……」
 顔を赤らめるアリスに、アニタは親しみのこもった笑みを向けて、
「じゃ、もう少し一緒に練習しましょう……。この部分は一番難しいところだから……」
 二人は再び稽古に入った。そしてしばらく汗をかいた後、今度はアニタに温泉に誘われた。

 一方、宿では主人の勧めにもかかわらずクサナギがいまだに温泉湖に入ることを渋っていた。今入ればモ・エギのみならず、他の入浴している女性客とばったり遭ってしまうからだ。
「こんなことをイヴルに知れたら、また何を言われるかわからんな……」
 そんなクサナギの様子をミオは入口側から覗き込んでいた。そして、
「煮えきらんやっちゃなぁ……!」
 と、その不甲斐なさに呆れ返っていた。その時、不意にクサナギの目がミオのほうを向いた。様々な戦いを経て鍛え上げられた感覚が、ミオの気配を察知したのだ。思わずクサナギと目が合ってしまい、ミオは慌てて笑って誤魔化し、店に入ってきた。
「ミオ!。どうしてそなたがここにいるのだ……!!。まさかそなた……!!!」
 そんなクサナギを無視してミオは記帳を済ませ、白々しくも「ここにいい温泉があるって聞いたんだけど……」と、何とかその場を乗り切ろうとした。それを聞いた宿の主人はクサナギとミオの事情を知ってか知らずか、
「あぁ、今夜あたりは月も出て、気持ちいいだろうさ……」
 と、再び温泉湖の宣伝をした。
「で、そなたは何でここにいる……!!」
 クサナギが再度詰め寄ってもミオの態度は変わらず、
「そ……そぉ……月夜の温泉湖っていいわよねぇ……どぉ、そこの煮えきらないお兄さんもご一緒しない……?」
 と、温泉湖に入ることを持ちかけた。それを聞いたクサナギは「いや、ちょっと……」とやはり躊躇した。それを見たミオは面白がって、
「行きなさいって……[お連れさん]も悲しむよ……!!」
 と、クサナギをからかった。
「(全く、あんたが煮えきらないから見つかったじゃないの……)」
 と、ミオは心の中で開き直り、毒づいていた。

 すっかり日が暮れたころ、アニタとアリスは温泉湖に向かっていた。町の中はモ・エギの噂で持ちきりだった。ここは樹界のほとり。何が出ても不思議ではない。実のところ今までも湖で巨獣などの目撃例もあった。中には御仁と思われる巨大な人影も確認されている。だが、これまでこちら側にまでは来たことがなく、逆に人間の姿を見ただけで逃走してしまうので、特に気にされてはいなかったのだ。
「でも……まさかこっち側から来るとは……しかも温泉にちゃんと料金を払って……」
 街道沿いから、御仁が堂々と現れるなどと、町の人々は想像だにしなかったこの出来事に戸惑っていた。
 その話からアリスには、それがおそらくモ・エギであろうことが簡単に予想できた。それを聞いたアニタは驚いて、
「あの[ライバの御仁姫]と知り合いだったの……?!」
 と、訪ねてきた。それに対してアリスは、
「うん……一緒に旅したこともあったし……。御仁ってモ・エギさんと逢うまでは、とっても気難しいって聞いていたけど……」
「気難しい、なんてものじゃないわよ……だって、樹界に住む怖い巨人だっていうじゃない……!」
 やはりアニタには昔話から来る偏見が伝わっていたようだ。もっとも、二本以下の角しか持たない御仁は本当に恐ろしいだけの怪物には違いないのだが……。
 そうこうしているうちに二人は温泉湖の受付にたどり着いた。そこでアリスは、思わぬ顔と再会した。煮えきらないクサナギを置いてきたミオであった。もともとクサナギと一緒に行く気など更々なかった彼女は、先に入ったモ・エギを拠点にいいポジションを得ようとしていた。その手には双眼鏡が握られていた。
 アリスの姿を確認したミオはすぐさま走り寄ってきた。が、最初に出た言葉は、ミオらしく、「どお!。最近カムナ元気に動かしている……?!」
 であった。アリスが一週間動かしていない、と言うと一瞬ムッとしたが、野晒しになってはいないことを知るととりあえずはほっとした。そしてようやく気がついたかのようにアニタに向き直った。
「あ……アタシ、アリスと[スッタモンダした仲]のミオといいます。ところで……」
「なんでしょう?」
 アニタは次のミオの言葉に思わず言葉を失った。
「アリスはカムナ……ちゃんと動かしてますか……?!」
 (操兵キチガイ……)……アニタは正直、そう思った。
 何だかんだで合流した三人は、とりあえず温泉湖に入ることにした。受付を済ませ、中に入ってみると、そこはまるで渚だった。聞いた話によると、深い場所では深度1リート以上あると云う。通常は浜辺付近の加工された場所で浸かるのだが、人によってはその奥の中洲島まで行くこともある。その為、監視員が時折巡視船を出して見回りなどもしているという……。また、アニタの話では深い場所が意外と良い湯加減らしく、息継ぎさえしっかりしていれば、とても良い気分になれるということだ。
 ここには先にモ・エギが来ているはずである。そう考えたミオがその痕跡を捜すと、それはすぐに見つかった。砂浜になっているところに巨大な女性の足跡がくっきりと残っていたのだ。そして監視小屋の屋根にはモ・エギの衣服が畳んで置いてあった。
 ミオはここで、用意した双眼鏡で湖畔を覗いてみた。が、すぐにしまってしまった。そう、ここは温泉湖。湯煙がひどくて先が全く見えないのだ。しかも、双眼鏡は拭いた先からレンズが曇り、全く役に立たなかったのだ。
三人はとりあえず湯に浸かることにした。

 同じころ。いまだ煮えきらぬクサナギに、宿の主人が再び温泉湖に行くことを勧めた。
「煮えきらん男だのぉ……ここでは男女が同じ[風呂]に入るのは避けられないんじゃ……。どうじゃ。ここいらで腹を決めんか……でなきゃいつまでも温泉湖には入れんぞ……[話も先に進まない]し……」
 主人の訳の分からない理屈にこれまた何故か納得したクサナギは、「仕方がない……」といいながら温泉湖に向かっていった。それを見送った主人は自分の言った言葉に首を傾げていた。
「[話]って……何じゃ……?」
 そのころ、湯に浸かった三人は、アリスの勧めで中洲島まで行ってみることにした。そこは、ミオよりも先にこの町に来ていたアリス、アニタもまだ行ったことがなかったのだ。三人は早速その島まで泳ぎ始めた。
 その直後、クサナギがおどおどしながら入ってきた。そしてその湖の(温泉としての)広さに圧倒されながらも、周りに女性客がいないような場所を選んで湯に浸かった。そんなクサナギを見た他の男性客が話しかけてきた。
「ここは夜は月が、そして昼にはお日様が天辺に上った時に遠くで間欠泉が勢いよく噴き出すんだ……まさに自然の驚異って奴だな……そのころは、お湯も補充されて、いい湯になるんだ……」
 そんな話を聞きながらクサナギは、その身を湯に委ねた。それは、すべてを忘れたくなるほど気持ちよかった。
「ここよりも、奥のほうが結構いい湯加減だぞ……行ってみたらどうだ……」
「そうしよう……」
 クサナギは上の空で返事をしつつ、そのまま流されるように奥のほうへと行った。

 一方、 中州に泳いでいった三人は、途中で船に乗っている男を見かけた。それは、自分で持ち込んだ物のようだ。中にはこの男のように船を持ち込んで、その上で酒などを嗜む者もいる。岸のほうを見てみると、大きな永久ランプが灯台として灯されており、方角を見失う心配はないようだ。
 やがて中洲島が見えてきた。が、この時三人は、島で何か巨大なモノが寄りかかっているのを見つけた。それは、明らかに人の上半身をかたどっていた。モ・エギだろうか……。アリスがそう判断して静かに接近してみる。その姿は濃い湯煙に包まれてよくは見えなかった。
 だが、接近していくうちにミオは何か違和感を感じた。その理由は、その人影が手にしている酒樽であった。おそらく、コップ代わりにしているのだろうか、漂ってくる香りからその中身は間違いなく酒であった。モ・エギが樽ごと買ってきたのだろうか……。
「モ・エギが……酒なんて嗜むかな……?」
 確かにモ・エギはノウラでの飲み会で酒を勧められて飲んでいたので、苦手にしているわけではない。だが、普段から酒などを買っているところは見たことがなかったのだ。それとも、クサナギが一緒に入らなかったので酒でも飲んで気を紛らわしているのだろうか……。そんな憶測をしているうちに、その人影にアリスが接近していく。アニタはミオにすがるように、
「知り合い……なんですよね……」
 と呟き、それと同時にアリスが巨大な人影に声を掛けた。
「モ・エギさん……?」
 その時、ミオはその影が明らかにモ・エギではないことに気付いた。影から判断できる髪型が明らかに違ったのだ。しかし、それをアリスに伝える前にその影のほうが先に動いた。

 声を掛けたアリスは、突如何かに持ち上げられる感覚に襲われた。いや、実際に巨大な手で持ち上げられたのだ。突然の出来事に言葉を失うアリス。だが、本当に驚くのはこれからだった。その手はアリスを自分の顔に近づけていく。が、ようやく全容が見えたその姿は、モ・エギではなかったのだ……!。
 それは、確かに御仁の女性だった。が、どこか幼さの残っているモ・エギの人なつっこい顔と違って、どこか人間離れした美しさをもっていた。その髪は金色に輝き、その長く切れた目の中の瞳もわずかに金色に輝いてみえた。そしてこちらに向けた笑みもどこか艶やかさを感じ取らせるものであった。だが、アリスとミオを驚かせたのは、その角の数であった。前方に見えるだけでも軽く七本は越えていたのだ!。
 モ・エギに聞いた話を思い出してみると、確か御仁の[強さ]は角の数が影響していると聞いたことがある。そしてモ・エギはその中でも殆どいないと云う[五本角]の御仁であり、それ故に[御仁姫]の称号をもっているのだという。だとすると、目の前の七本以上と思われる角を持つこの御仁はいったい……。
 だが、今のアリスにそんなことを考えている余裕はなかった。モ・エギ以外の御仁が人間に対してどういった感情を持っているか全く分からないゆえに、何をされるか予想ができないのだ。そうこうしているうちに、その金色の御仁はアリスを自分の口もとまで近づけた。その唇は艶やかで、女性であるアリスが見ても美しかった。そしてその唇はアリスを安心させるかのように小声でこう言った。
「あなた……モ・エギを知っていらっしゃるの……?」
 アリスは二、三秒硬直してから、ようやく声を絞り出した。
「モ……モ・エギさんを知っているんですか……?」
 金色の御仁は笑みを崩さずに言った。
「えぇ……モ・エギは[私の部族]の御仁姫だもの……」
 [私の]ということは、おそらく彼女は御仁族の部族の長かそれに近い地位の者であろう……だが、いったい何でこんな[大物]がこんなところに、とミオは考えた。
 そんな考えを呼んだのか、金色の御仁はミオとアニタにその金の瞳を向けた。そして左手と[動く頭髪]でミオとアニタを掴み上げ、自分のところに手繰り寄せた。驚いてあたふたしている二人はろくに抵抗できぬまま捕まった。その時、ミオはその手がモ・エギの手よりも大きい、ということを実感した。そしてもっと驚いたのは、その髪が一組ではなく、全部で四組(あるいはそれ以上)動くということであった。
 モ・エギすら見たことないアニタは、失神しそうになるのをこらえながらミオに訪ねた。
「こ……この御仁さん……知り合いじゃないんですか……?」
「違うみたい……」
 口をぱくぱくしながら驚いている三人を見た金色の御仁は、しばらくその様子を楽しんだ後、再び口を開いた。
「人間、てすごいわね……たった五十年来ない間にここに町なんか作っちゃって……」
 ようやく落ち着きを取り戻したミオは、彼女がなぜここにいるのかを訪ねた。
「ここは私の隠れ家みたいなところだったの。樹界からも人里からも程よく離れ、他の獣や御仁、人間も寄ってこない丁度いい場所だったから。でも、これからは慎重に来なくちゃね……」
 そしてアリスもようやく落ち着いて、こんなことを訪ねた。
「ところで……モ・エギさんがここにいることは知っているんですか……?」
「えぇ、知っているわよ。モ・エギのほうは私がいることは知らないみたいだけど……何でも、最近[人間の少年]に恋をしたっていう話を聞いたから、ついでにその少年の顔も見ておこうと思って……」
 それがクサナギのことを言っているであろうことは、ミオとアリスには見当がついた。
 金色の御仁がそう笑って答えた時、島の反対側で何かが動いた。それは巨大な人影だった。それを見た金色の御仁は突如動き出した。思わず落ちそうになりながらミオは「な……何が……?!」と訪ねようとしたが、彼女はその言葉を制すると、にっこりと微笑んでこう言った。
「静かに。これから面白い物が見られるかも……よ……」