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そして戦闘が始まった。敵の操兵一機はエルグラーテに、もう一機はモ・エギこと紅葉武雷に向かって行く。が、その前に二人が同時に反応し、それぞれを迎え撃った。エルグラーテの大太刀はアルキュイルをものの見事に捕らえ、その一撃を受けた操兵は骨格を砕かれ、そのまま両断されて地面に倒れた。中に乗っていた操手は自分の身に何が起こったのか全く気付かないまま気絶した。 「そのくらいじゃなければ、僕の相手はつとまらないさ」 クロウの減らず口が聞こえてきた。 相棒が破壊されたのを見たもう一機の操兵は自棄になってそのままモ・エギに突進した。が、それより早く茂みに隠れていたミオがワークマンデで突撃を敢行した。そしてその鉄棍の一撃は見事に命中し、アムイードの伝達系を切断してそのまま起動不能に追い込んだ。 「う……動けぇ……!!」 操手は自棄になったまま必死に操縦桿を動かしたが、機体はもはや立ち上がる事はできなかった。 だが、仲間が倒されてもクロウは慌てる事はなかった。ディノジェイラはゆっくりと前進し、エルグラーテからある程度距離を取ったところで停止した。その後その赤い機体に信じられない事が起こった。何と変形を開始したのだ。前方の装甲が頭部ごと降下して操手槽が露出、鉄斬爪が装着された両腕が胴体の脇に畳まれ、脚部の後方に補助脚が装着された。そして最後に背部の巨大な突起物が機体上方に移動した。それは、一門の3リット砲と二門のマシンキャノンだった。 「これがディノジェイラの本当の姿だ!クサナギ……以前の君には[運が味方した]が、今度はそうはいかない。この[僕の力]、今度こそ思い知らせてやる!!」 そのころ、祠の前で見張っているアファエルと静夜の側にも危機が迫っていた。ゼリスが側まで来ていたのだ。 「どうやら、私のこの完璧な偽装に気付いてはいないようですね……それでは早速、目的の宝珠をいただくとしますか」 ゼリスは一人呟くと、両手に小枝を手にしただけの[完璧な]偽装を施したままゆっくりと二人に忍び寄った。だが、アファエルと静夜に迫っている危機とはゼリスの事ではない。その後ろの方からゆっくりと近づいているのだ。 「クサナギの件はある程度予想していたが……あのような得体の知れない[まぞく]なるものは思わぬ拾い物かもしれぬ……」 そして奇面で顔を隠した大男と小男はそのゼリスの後ろからこちらは[完璧な]偽装で尾行していた。 ディノジェイラの変形と武装を目の当たりにしたミオはとりあえず様子見、とばかりに少しずつ間合を近づけていく。が、クロウはそんなミオに構わずそのすべての火器をエルグラーテに向けていた。一方、そのクサナギのエルグラーテの前には残る一機のアルキュイルが立ちはだかっていた。仲間を失ったその操手はやはり自棄になって目の前の重操兵に躍りかかる。 が、クサナギはその操兵に構わず背部のロケットモーターを作動させ、エルグラーテをその場から飛翔させた。ディノジェイラの砲がこちらを向いている事に気付いたからだ。本来であればこのまま射撃させてその瞬間に飛び立つのが一番なのだが、それでは流れ弾が妖精郷に飛び込んでしまう可能性もあった。そしてもし、それを庇って攻撃を受けたとしたら、どれだけの損害を受けるのかもわからなかった。 エルグラーテが空中に飛び上がったのを見たクロウは、ディノジェイラのすべての砲をエルグラーテに向けて発射した。だが、空中にいるものが相手では自慢の3リット速射砲も二門のマシンキャノンも簡単には命中するものではない。クサナギはロケットを巧みに操作し、それらの攻撃をすべて回避した。だが、ディノジェイラの武器はそれだけではなかった。 すべての攻撃がかわされたクロウだが、すぐに別の兵装を展開させた。それは、ディノジェイラの背部に隠された2リットロケット砲だった。そして六発のロケット弾が空中のエルグラーテに向けて発射された。すべての攻撃を回避したと思ったクサナギは油断し、よりにもよってその六発のロケットすべてを受けてしまった!幸い空中での制御は失わなかったものの、駆動系と装甲に手ひどい被害を受けてしまった。 それでもクサナギは自機をディノジェイラの側まで着地させた。接敵すれば3リット砲もロケット砲もほとんどその威力を発揮できない筈である。そしてミオの見立てではこのディノジェイラは下半身は完全に固定されている。要するに唯の砲台なのだ。近づいてしまえばそれまでの筈であった。 モ・エギも残る一機のアルキュイルをその七枝刀でたたき伏せ、すぐさまクサナギと合流すべくディノジェイラに向けて駆け寄ってきた。さらにミオもディノジェイラに向けて突撃をかけようとしている。そしてエルグラーテを着地させたクサナギはディノジェイラに向けて自らも両肩部の96式輪回機関銃を展開させてディノジェイラに向けて突進させた。動けぬこの赤い狂操兵はこれらの攻撃を回避できない筈だった。 だが、その動けぬ筈のディノジェイラの全身から急に蒸気が噴き出した。そしてそれと同時にその機体がものすごい速度で突如後方へと移動したのだ!それは、[蒸気輪]と呼ばれる緊急移動装置で、溜め込んだ蒸気の力で脚部に仕掛けられた鉄輪を回転させて一時的に操兵に陸上での高機動を与える事ができるのだ。どうやらこの機体の設計者は同時に弱点を克服させる手段をも与えていたようだ。 「何という奴だ……!!」 クサナギが毒つく中、ディノジェイラはそのまま後退し、商人達の乗っている馬車を挽き潰した。 「よ、他所でやれーっ!!」 という抗議の声をあげるラルゼスにクロウはただ、 「邪魔だ!」 とだけ呟いた。どうやら彼にとってはもはや依頼人などどうでもいいようだ。 「僕はただ、強い奴と戦えれば、それでいいんだから!!」 一方、祠の前でも動きがあった。アファエルが忍び寄ってきているゼリスに気付いたのだ。この辺りとは種類の違う葉っぱを手にしていたこの[上級魔族]はアファエルと目が合うと、 「ばれちゃいましたね」 と呟き、立ち上がって何やら呪文のようなものを唱え始めた。 それに気付いた静夜は、すぐさまゼリスに向けて歩み寄った。アファエルは、その速度が通常の人間の数倍はあった事に驚愕した。それもその筈、彼女は今、自分の家に伝わる武繰[南雲流護身術]の技の一つ、神速の歩法・[呼打真]を使用したのだ。だが、この技はこれで終わりではなかった。間合を詰めるやいなや、静夜はこれまた信じられない速度で拳を下からすくい上げるように繰り出した!その一撃はゼリスの顎を直撃し、彼はそのまま吹っ飛んだ。が、何とか持ちこたえ、気絶は免れた。 その光景にアファエルとマリンは目を丸くした。今まで唯の[ねぼすけお姉さん]だと思っていたのが、まさかここまで凄まじい拳士だったなんて。 そんな二人に静夜は笑顔で振り返り、こんな事を言った。 「……しゃべったら、[怒ります]よー、他の方々には内緒にしておいてくださいねー……」 そして、その後ゼリスにアファエルがすかさず複合弓による攻撃を加えた。だが、その攻撃はゼリスに既に読まれていたのか、すべて回避されてしまった。どうやら、[上級魔族]の意地がまだ残っていたようだ。それでも、これでゼリスの術の準備は完全に阻止する事ができた。 そんなゼリスの不甲斐なさに業を煮やした大男と小男の奇面衆は潜んでいた叢から起き上がり、アファエルと静夜、ゼリスの前にその全容を現した。身の丈半リート強の大男は全身埴輪のような甲冑に身を包み、巨大な鉄棍を軽々と振り回していた。そしてもう一人の小男は、鏡獅子のような鬘をつけ、その両手には大型の鉄の爪を装備していた。そして言うまでもなく、二人そろって奇面が顔を覆っていた。 「……[魔族]とかいうから、どれだけ使えるのかと思ったら……結局は役に立たなかったか!」 アファエルはその奇面衆に見覚えがあった。グノーシスでの吸血鬼騒動の際に最後に現れた奇面衆であった。あの時は連中に利が無い、と彼ら自身が判断し、その場を引き上げたが、今度はどうやら一戦交えなければならないようだ。 だが、奇面衆を見た事がない静夜はその異様な姿に困惑していた。そしてそれが隙となり、ゼリスに立ち直るきっかけを与えてしまった。さすが魔族だけあってゼリスは気絶寸前の被害を被っているにもかかわらず、まだその笑みを崩していなかった。 蒸気輪でその場から離れたディノジェイラだが、それほど距離を開けたわけではない。それを見たミオは、3リット砲の次弾装填を阻止すべく、今度は鉄棍による攻撃を掛けようとした。が、それに対してクロウは「なら、最初は君だ!」と叫びながらその砲身を向かってくるワークマンデに向けた。それを見たモ・エギはミオを援護しようと自分も突進したが間に合いそうもなかった。 だが、それより早くクサナギが動いた。エルグラーテは素早くディノジェイラに接敵すると御仁の太刀と爆砕槍による二段攻撃でその砲身を攻撃、使用不能に追い込んだ。しかし、ロケット発射を阻止する事はできず、直撃を受けたワークマンデはその増加装甲すべてを失ってしまった! ミオは反撃とばかりにワークマンデの棍をディノジェイラに叩き込んだ。が、その一撃は赤い装甲に阻まれ、全く打撃を与える事ができなかった。 「そんな棒切れで、何をしようというんだい?」 ワークマンデとディノジェイラは互いに開放型操兵であるため、ミオは今のクロウの侮蔑を含んだ笑いとまともに顔があってしまい、思わず「ムカッ!」となってしまった。が、次の赤い操兵のマシンキャノンを受けてそれが悲鳴に変わった。その直撃はワークマンデの骨格部分にまともに被害を与え、この作業用操兵はそのまま地面に倒れ、動かなくなってしまったのだ。 アファエルと静夜の傍でも悲劇が起きた。立ち直ったゼリスに対して静夜は流派で奥義とされる技の一つ、[奥の捌・散弾脚]を仕掛けた。が、この技は実戦に使用するのは初めてでしかも命中精度がやや悪いときた。そして案の定、回し蹴り、後ろ回し蹴り、同足による蹴りと、三回繰り出された蹴りはすべて回避され、代わりにゼリスの起死回生の拳銃による抜き打ちをまともに浴びてしまい、そのまま気を失ってしまった……!! 「は……は……ははははは……!」 ゼリスの笑いが異様に乾いていた。それもその筈である。上級魔族である彼としてはできれば銃にだけは頼りたくなかった。が、新たな力として会得した招霊衡法が破られた今、目の前の敵を阻止するにはこの[忌むべき道具]に頼るしかなかったのだ。 その光景にアファエルとマリンは声も出なかった。が、こちらはこちらでやはり危機が迫っていた。奇面の大男がアファエル目がけて突進しようとしていたのだ。アファエルは矢を番え、その巨人目がけて解き放った!その矢は吸い込まれるように大男の胸目がけて飛んでいき、そのまま貫……かなかった。その頑強な甲冑に弾かれてしまったのだ! それを見たアファエルは攻撃方法を変える事にした。あの巨体の側に寄って足を攻撃、倒れたところで止めを刺そうと考えたのだ。が、アファエルは大事な事を思い出した。大男の側には常に小男が寄り添っているのだ。アファエルが側に近づけばおそらく小男はカバーに入るであろう。そう、この大男と小男は一緒にいる事でそれぞれの欠点を補い合っているのだ。 大男はアファエルと一定距離を保ったままその動きを止めた。どうやら動きの早さでは勝てない事を悟り、向かってくるまで様子を見ようという事のようだ。その代わり、一撃の元で静夜を倒したゼリスが今度はアファエルにその銃を向けた。 「次はあなたの番ですよ……!」 だが、その引き金は引かれる事はなかった。その前にアファエルの矢の方が早かったのだ!この妖精族伝来の複合弓は非常に軽いため、命中精度を犠牲にして半分の時間で速射できるのだ。その意表を突いた速射をゼリスは回避し切れず、さすがの上級魔族もその矢を受けて地面に倒れた。 残りは奇面衆二人だけである。が、この勝負、静夜が気絶している故にアファエルにとっては非常に分が悪かった。 その時。 「アファエル、空飛びたい?!」 マリンの急な問いかけにアファエルは一瞬戸惑った。マリンはアファエルの答えを待たずにその背にしがみついた。そして、アファエルはこの小さな妖精に持ち上げられるように空中に飛び上がった!それを見た二人の奇面は驚愕したようだ。そしてそれは、形勢逆転の象徴でもあった。何せ、二人の奇面は飛び道具の類いを全く所持していなかったのだ。 アファエルは空中から大男目がけて再び矢を放った!! 操兵戦も佳境に差しかかっていた。ミオは倒れる寸前にワークマンデで最後の攻撃を加え、その執念の一撃はディノジェイラの筋肉筒と装甲を砕いていた。が、それでもこの操兵は動きを止める事はなかった。クロウはそのマシンキャノンを止める事なく、今度はモ・エギに向けて乱射した! 「きゃあぁぁぁ!!」 その弾丸の雨は容赦無く御仁姫の全身に浴びせかけられた。幸い紅葉武雷の装甲で防がれたものの、その衝撃はかなりのもので、モ・エギは思わず悲鳴をあげた。 「次はお前だ!」 クロウはそのマシンキャノンを今度はエルグラーテに向けた。が、その視界からはもっとも憎むべき敵は既に消え失せていた。そう、クサナギは既にエルグラーテを上空に飛翔させ、ディノジェイラの後方に回り込ませていたのだ。そしてそのまま落下運動と機体重量を乗せた御仁の太刀の一撃は赤い狂操兵の装甲を砕き、その機体を一気に破壊した!! そこに立ち直ったモ・エギの七枝刀の攻撃が加わった。その仕返しの一撃はディノジェイラの伝達系を寸断し、その機動性をかなり低下させた。が、それでもこの操兵は止まる事はなかった。 しかし、戦闘不能に追い込まれた事には変わりはない。クロウは悔し涙を流して座席下のレバーを引いた。 「これで勝ったと思うなあぁぁぁ!!」 そう叫んだ後のディノジェイラの行動にクサナギ、モ・エギ、そして倒れたワークマンデから這い出てきたミオは驚愕を隠せなかった。何とこの狂操兵が轟音とともに空中に舞い上がったのだ……!!どうやらそれはエルグラーテのロケットモーターとは違い、大型固体ロケットを束ねたもののようだが、それでもディノジェイラをこの場から離脱させるには十分のようだ。 「壊し逃げすんじゃないよバカァ!!」 やっとの思いで操兵から出てきたミオは大空の狂操兵に向かってむなしく叫んだ。 「ここまで来て、逃がすものか!!」 クサナギは蒸気兵装への充填を開始、そしてそれが十分になった時点で最後の勝負に出た。クサナギはエルグラーテを飛び去ろうとしているディノジェイラに向けて飛翔させた。既に何回か飛んでいるため燃料には限界があった。もし、ここで逃せばもはやあとはない。 「頼むエルグラーテ……どうにか持ちこたえてくれ!!」 「な……何だとぉーっ?!」 クサナギの思いを受け取ったエルグラーテは空中のディノジェイラにどうにか追いつく事ができた。クサナギはエルグラーテの左腕部のセラミック盾を赤い狂操兵に向け、その先端の白い槍を突き出し、射出レバーを引いた。回旋しながら射出された爆砕槍はディノジェイラを粉々に粉砕した!! その光景はアファエルと交戦状態の二人の奇面にも見えていた。 「……状況が不利だ。撤収する」 大男がそう呟くと、小男が透かさず腰から煙玉を取り出して地面に投げた。そして辺りは一面煙に包まれ、その視界がほとんど遮られてしまった。が、既に空中に飛んでいたアファエルとマリンにはそれほど影響しなかった。アファエルは構わず弓を大男に向けて、再びその必殺の矢を放った! その矢は今度こそ大男の甲冑を貫いた。その一撃を受けた奇面は苦悶の声をあげた。が、それでも大した被害では無さそうだ。やはり頑丈な鎧と頑強な生命力は伊達ではないらしい。 アファエルはそのまま空中から矢を放ち続けた。が、そのほとんどが頑丈な甲冑に弾かれ、結局それ以上の被害を与える事ができなかった。やがて二人の奇面は森の中へと消えていった。マリンの飛行付与能力も限界が来ており、さすがにこれ以上の追跡は不可能であった。 戦闘は終了した。他のラルザス一味は混乱の隙を突いた妖精達の攻撃を受けて降伏していた。いくら小さいといっても、数人の手勢では大勢の妖精相手ではどうする事もできなかったのであろう。 その中でミオは、そのラルザスの所に行った。 「畜生……なんて奴を雇っちまったんだ……!」 クロウを雇った事を後悔しているラルザスは、逆手に銃を構えたミオを見て恐怖した。 「ま……待てっ!話せばわ……」 ボグッ!!銃把はものの見事に闇商人の頭に命中し、彼はそのまま伸びてしまった。その光景に満足したミオは、今度は村の方に向かった。 村ではアファエルが静夜を介抱していた。彼女は戦闘の最中[点穴]を突いてその怪我をある程度治療していた。幸運だったのは、至近距離で銃撃を受けていたため、その銃弾が体を貫通していた事だった。(武繰以外の)事の顛末を聞いたミオはすごい剣幕で静夜に迫った。 「こらっ!静夜さん何で前に出たの……!!」 「〜相手の銃の腕がよかったんですよぉ〜」 と、アファエルがフォローにならないフォローを入れつつ、その静夜を撃ったゼリスを見た。すると不思議な事にその魔族の体が少しずつ、まるで溶けるように消えていき、やがて完全に消滅してしまった。だが、この性悪魔族が簡単に終わるのだろうか。 その後静夜は妖精達から貰った軟膏でさらに体を癒し、今度は今まで敵対していた筈の傭兵達にも治療を施した。やはり医者として怪我人は見逃せないのだろう。だが…… 「……金貨一枚……」 静夜は柔らかな笑みを浮かべつつ、傭兵の前に掌を差し出した。 ミオは足を投げ出している自機ワークマンデを見上げていた。幸い機体は完全には破壊されてはおらず、応急修理をすればとりあえずはライバの街まではもつだろう。ミオはその自機を破壊した狂操兵が落下した方角を見た。 そこにはクサナギのエルグラーテが立っていた。クサナギは側に寄ってきたモ・エギに優しく声をかけた。 「大丈夫かモ・エギ?怪我はまだ痛むか……?!」 「平気よ……もう塞がったから。それより……」 クサナギは地面に散らばる操兵の部品を指さした。どうやらディノジェイラの機体は爆砕槍の攻撃と地面への激突によって完全に破壊されてしまったようだ。だが、その中に仮面と操手のクロウの姿はなかった。 「彼がこれで終わる筈はない」 クサナギはとりあえず機体を回収した。もはや部品としては使えないが、ゼノアに調査してもらう事で製作者を特定するためだった。 すべての後片付けが終わったところで、長が改めて一行に礼を述べた。 「本当に何と礼を言ったらよいか……私たちはそなた達に何もしてやれないが、よかったらいつでもここに来てくれ。私たちはいつでも、そなた達を歓迎しよう」 そしてマリンはアファエルにこんな事を言った。 「ねぇアファエル……これからもずっと、一緒にいていい?」 なんて物好きな……と思ったミオを他所に、アファエルは「うん〜」と二つ返事で承諾した。 「良いのか……また狙われるぞ?」 クサナギが心配そうに言うと、マリンは笑顔でこう言った。 「でも……やっつけてくれたでしょ」 そこに静夜が割り込んだ。 「……大丈夫ですよー。ハニ丸様がいれば何とでもなりますってー……」 「だから私はハニ丸ではない……!」 そんな一行にマリンは微笑みながらその小さな手を差し出した。 「じゃあ、これからよろしくね」 その言葉に全員が笑顔で頷き、その手に指を載せた。まぁ、この大きさの差では握手といってもこんなものであろう。 「よろしくね」 最後にモ・エギが指を差し出すと、マリンはその上にちょこん、と腰かけた。 「よろしくね。でも、くしゃみで私を吹き飛ばさないでね……!」 その言葉にモ・エギ、そして一行は苦笑した。 かくして、新たな仲間を加えた一行は、小妖精達に見送られながらライバの街へと帰っていった。その際、それぞれの操兵の背に鹵獲した敵操兵の部品を背負っているのはあまり様にならないがそれは致し方ないだろう。 その一行を木陰から一人の女性が見送っていた。傍らにはディノジェイラの仮面とクロウが横たわっている。いかなる方法かは知らないが、どうやら彼女が助け出したようだ。 「ま……仮面を外した以上[機体]はもう長くは保たないでしょうね。この子と仮面を回収できた事だけでもよしとしましょうか……でも……」 女性の視線は何故かワークマンデ上のミオに注がれていた。 そんな一行の抱えていたディノジェイラの部品にも、以前のディノガウラ同様の異変が起きた。腕の一本が突如痙攣し、まるで生き返ったかのように空を掴んだのだ!そしてその直後、腕はまるで何事もなかったかのように、不気味な異臭を放ち完全に壊死した。 果たしてこれほどの操兵をいったい誰が、何のために製造したのか……そしてともにいた奇面衆との関係は……謎は深まるばかりだった。 |