キャンペーン・リプレイ

第 三十話 「 轟 砲 一 閃  怒 り の A Z 」平成12年9月10日(日)

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 その時、二人は遠くの方から操兵の駆動音が響いてくるのに気付いた。それは一機ではないようだ。その音で目が覚めたタフルとロム爺も窓からその方向を見た。
「何じゃいったい……こんな深夜、森の中に操兵なんざ来るわけはないが……?」
 その操兵の一団は、ゆっくりとではあるがどうやらこちらの方に近づいているようだ。クサナギ、ホセは警戒しながら外に出た。そしてホセはクサナギにこんな事を言って警戒を促した。
「外に何かいるぞ……そーとーな数(相当な数)に違いない……!そうか……総統(相当)自らおでましに違いない……!!奴等、そっと(総統)やってきたんだろう……」
 それに対してクサナギも、
「奴等、怒りのあまり総統閣下(相当カッカ)しているに違いない……!」
「総統くない(そう、遠くない)はずだ……!!」
 …………………………空っ風の嵐がここら一体に吹き荒れた。
「飲み過ぎたか……?」
「私にも、ホセが伝染ったかもしれんな……」
 そんな空っ風にもかかわらず、それでもその操兵の一団は明らかにこちらに近づいてきた。その肩口からは投光器の光が地面を照らしている。[奴等]は二人がこの地に潜んでいることを確信しているのだ。
「村一つ全滅させたとなると、この町も唯では済まないかもしれないな……」
 タフルの呟きにロム爺も同意する。
「そうじゃな……この町もたいした大きさじゃあないし、守備隊が居ることはいるが……騎士団なんぞに蹂躙されちゃあ、ひとたまりもないな……」
 そんな中クサナギとホセはそれぞれに銃を構えて応戦準備を整える。
「確かに奴等は既に村を一つ滅ぼしている。もはや許すことは出来ない!。私が叩き潰してやる……!!」

 そのうちに操兵の一団は一行のいるロム爺の店の前までやってきた。足もとには数名の兵士らしい者も随伴していた。その物音に気付いたモ・エギが地下工房から出てくると、操兵は立ち止まり、一斉に武器を構えた。が、とりあえず攻撃は仕掛けてはこなかった。その操兵の一団は、クサナギが前に逢った三機の操兵だった。
「間違いない……[奴等]だ……!!」
 窓から操兵を見たレティアスがホセにそう言った。ホセがそれを伝えると、クサナギは一人、その操兵の前に立ち塞がった。その姿と側に駐機してあるエルグラーテを見た隊長格の操兵がクサナギに話しかけてきた。
「そこにある操兵は……もしやそなたが昼間の若者か?」
 クサナギは何食わぬ顔でその操兵に声をかけた。
「昼間の方々か……これは奇遇。このような夜更けに何の用だ。何か捜し物か……?」
 その言葉を無視して裏の二機がモ・エギを見て慌てふためいた。
「た……隊長!。これはいったい……?!」 
 隊長はその部下を余裕の表情で嗜めた。
「狼狽えるな!……これが[御仁]というものだ……」
 そして再びクサナギの方に向いた。
「どうやら何もしてはこないようだな……そなたが飼い馴らしているのか……?」
「失礼な!……モ・エギはそなた達が考えているような獣とは違う!!」
 クサナギの抗議を隊長はあっさりと認め、謝罪した。どうやら礼儀と分別はあるようだ。「失礼した。本題に入ろう。我々は国の密命を受け、とある[罪人]を追っている。もし、ここにいるのなら速やかに引き渡してもらいたい……!」
 その言葉をクサナギは真っ向から否定した。
「私はそのような[罪人]など知らない!。そもそも、その者はどのような罪を犯したのだ……?!」
 隊長は操兵から顔を出すことなく、先と同じ口調のまま口を開いた。
「それをそなたに言う必要はない。ただ、それは国の威信を傷つけた大罪と言える、ということだけは言っておこう……!」
 クサナギはその言葉に怒りを覚えて思わず、彼らが村を滅ぼした件に触れた。
「その大罪とやらは、何の関係もない村を滅ぼしてでも守るものなのか……?!」
 その言葉に後ろの二機の操兵が動揺した。だが、隊長は落ち着き払って操兵に見事な大剣を引き抜かせ、それを正面に構えた。
「なるほど……知っておったか……やはりその小屋にいるのか!」
 その言葉が終わると同時にクサナギはエルグラーテに乗り込むべく行動を開始した。それを見た二機の操兵はそれぞれに剣を構え、操兵に乗る前のクサナギ目がけて襲いかかった!。
「クサナギさん危ない!!」
 モ・エギがその操兵に掴みかかり、クサナギへの攻撃を阻止しようとする。が、止められたのは一機のみ。もう一機は容赦なく生身のクサナギに容赦なく剣を降り下ろした!。が、今の彼にとって操兵とはいえ三下の攻撃などものともせず、難なく回避し、そしてエルグラーテに乗り込んだ!。
 それと同時にタフルとロム爺はその場を離れ、とりあえず安全圏まで逃れた。が、その時二人は店の周囲を銃を構えた兵士達が取り囲むのを見た。
 そのころ、ホセは店の中で入口に向かって銃を構えて敵が来るのを待っていた。レティアスとサライネはマリンとともに奥の物置に潜んでいた。表から来るにしても裏から来るにしてもホセのいる店を通らなければならない構造になっていた。
 店の中央の卓に座って悠然と敵を待っていたホセは、窓の外で敵の兵士が何かを投げ込もうとしているのに気付いた。ホセはその兵士より早く腰のドラグレーア・バントラインを抜き、そして兵士に向けて撃ち放った!。銃弾は窓を貫いて兵士に直撃、それを受けた兵士はそのまま昏倒した。
 このホセの銃[コスモ・ドラグレーア・バントラインカスタム]はレクサの町で元銃技師ロバートから譲り受けた物だ。このドラグレーアはゼロの持つ銃と同じ物で、その命中、威力は他の銃を圧倒するが、その分使用者にかなりの技量がなければ逆に銃に振り回されるといった代物だった。しかもこの銃は拳銃でありながらその銃身が7リットを越える長身なのだ。
 しかし、今のホセの技量はその銃を使いこなせる物となっていた。この銃は技量のない使用者が銃に振り回されてしまう代物なのだが、逆に使用者の技量が高いと本来の性能よりも高い能力を引き出してくれる、まさに[名銃]なのだ!。
 だが、店の裏口には既に数名の兵士達が押し寄せて来ていた。そしてさらにその裏からは彼らの隊長と思われる銃士の姿もあった。この男は感じからすると操兵の操手と違い生粋の傭兵のようだ。銃士は入口を蹴破り、中に入り込んだ。そしてホセのいる店に通じる戸に目がけて手にした散弾銃を撃ち放った!。
 戸がばらばらに吹き飛ぶと同時にホセは卓を立ててその後ろに身を隠した。散弾銃を構えた銃士はホセに向かってニヤリ、と笑って見せた。その笑みを見たホセは挑発、とばかりにその銃士に話しかけた。
「散弾銃か……[お前の腹]と一緒だな……」
 男は自分の腹を見て[三段腹]になっていないことを確認すると、
「俺はちゃんと毎日腹筋で鍛えているんでね……!」
 と、嘯いて見せた。
「鍛えているから良いってもんじゃないんだぜ……!!」
 ホセは男に向けてさらに言い返すと、そのままバントラインを構え直した。が、その時別の兵士がホセの銃撃で壊れた窓から何かを投げ込んだ。それはどうやら煙幕弾のようで、部屋の中に転がり込むと、ものすごい勢いで煙を吐き出し、忽ちの内にホセの視界を奪った。
 一方、エルグラーテを起動させたクサナギは向かってくる敵操兵に自機を向けた。相手が操兵に乗り込んだのを見た三機の操兵は一斉にその外套を脱ぎ捨てた。その機体は隊長が乗る操兵はいかにも重厚そうな騎士風の感じの誂え物、といった感じだが、残る二機の操兵は明らかに量産機と思われる物だった。が、その機体はクサナギが初めて目にする物だった。強いて言えば、アルキュイルに似ていなくもなかったが。
 そのアルキュイル似の操兵のうち一機がエルグラーテ目がけて剣を振るってきた!。が、それより早くクサナギはエルグラーテに御仁の太刀を引き抜かせ、同時にその操兵に斬り付けた!。その一撃は操兵を破壊するには至らなかったが、それでも相手を動揺させるには十分で、それによって鈍った攻撃をクサナギは余裕で回避することができた。
「隊長!。こいつ、出来る……!!」
 クサナギの高い操縦技術は隊長をも唸らせた。
「何ものだこの男?……唯の渡世人ではなさそうだ……!」
 見るとモ・エギの方の操兵もてこずっているようだ。何せ一切の甲冑を着装していないモ・エギは防御力が低下する反面、動きを束縛するものがないために非常に身軽で、並の操兵では(奇襲でもない限り)捕らえることができないのだ。が、逆に武器のないモ・エギも相手操兵に決定打を与えることができないでいるのだが。
「騎士としてはこのようなことは恥べきことなのだが……こうなっては致し方ないか……」 
 意を決した隊長は安全圏に離れているタフルとロム爺に目を付けると、自分の操兵を二人に向かって歩かせた。それに気付いた二人は何とかその場から逃れようとするが時遅く、操兵の剣が二人のいる地面に向けて降り下ろされた!。
「ロム爺!。危ねえ!!」
 タフルは咄嗟にロム爺をつき飛ばすが、自分は衝撃で吹き飛ばされ、倒れたところをその操兵の左手に掴まれてしまった。
「タフル!!」
 クサナギはなおも斬り掛かる操兵にもう一撃を与えると、タフルを掴んだ騎士風の操兵に向き直った。
「このような手段を用いるのは騎士としては不本意なのだが、今我が手にはそなたの仲間がいる。ここは一つ、その刀を収めてはくれぬか……」
 クサナギはその隊長の言葉に激しい怒りを覚えた。
「村を滅ぼしたばかりか、関係のない者まで人質にするとは……どこまでも卑劣な!!」
 その言葉に隊長は悲痛な表情を浮かべた。が、それを言葉には表さず、静かな声でクサナギに向けて話を続けた。
「悪く思うな……これも我が国の威信を守る為だ……」
(そう、それによって大勢の民も守れるのだ……)この言葉は決して口にされることはなかった。今それを言ったところで、クサナギには自らの罪悪を正当化するだけの見苦しい言い訳にしか聞こえなかったであろうから……この騎士セラディル・サラニスは騎士としての自分よりも今は、デリシアル王家の家臣としての任務を全うしなければ、と考えていた。
(……どんな犠牲を払ってでも……)
 セラディスは自分の心に広がる罪悪感を振り切ると、クサナギに先の言葉の返事を求めた。
「そなた等も王朝結社と一緒だな……!」
 クサナギはそう呟きながらエルグラーテに大太刀を捨てさせた。それをさっきまで戦っていた操兵が勝ち誇ったように拾い上げた。
「良い刀だ。こんな物、渡世人風情が持つには勿体ないな……!」
 店の中でも、その声を聞いた銃士がホセに対して降伏勧告をしていた。それに対してホセは、煙に包まれながらも余裕の表情で、
「あいにく俺の得物は銃だ。太刀じゃねぇ……!」
 と、嘯く。それを聞いた銃士はニヤリと笑って告げた。
「じゃあ、改めてその銃を捨ててもらおうか……!!」
 ホセが銃を捨てると同時にセラディスが再び口を開いた。
「もし、そなた達が[事実]を知らないのなら、この場で見逃してもよい。そして、出来れば二人をこちらに渡してもらいたい……」
「クサナギーっ!。俺のことは構うなっ!。こんな奴等やっつけちまえーっ!!」
 セラディスの操兵の腕の中からタフルが叫ぶ。
「明日の晩までにここより西にある砦跡に来い。この者は二人と交換だ……そなたも、刀がなければ三機もの操兵を相手にしては勝てぬ。ここは手荒な真似は避けることだ……!」
 それだけを呟いたセラディスは、手下を連れてその場を立ち去った。店でも銃士が撤退を始めた。
「ま、あんたとは正面から戦ってみたかったが、雇い主が帰るんでな。次の機会があったら勝負しようぜ。それまで命は預けといてやろう……」
 銃士は煙の向こうからそれだけを言うと、その場を後にした。悔しいが今の一行には、それを見送ることしか出来なかった。
「もう我慢できない!」
「落ち着いて、レティアス……!!」
 物置から事の顛末を聞いていたレティアスがサライネとマリンの静止を振り切って外に飛び出そうとした。それを見たホセがやはり彼を止める。
「まあ、落ち着け……今あんたが行ったところでどうなる!!」
「だが、これ以上あなた達を巻き込むわけには行かない……僕が行けばタフルさんは開放してもらえる……!」
 レティアスはそう言って、外で連中が去った方角を見つめているロム爺に目をやった。
「畜生……タフルを返せーっ!!」
 クサナギはロム爺にすまなそうに頭を下げた。
「すまない……私が不甲斐ないばかりに……」
 そんな光景を見たレティアスはますます焦りを募らせた。ホセは、そんなレティアスを嗜めた。
「いいかレティアス。戦いでは冷静さが重要だ。それは騎士も従者も変わらない筈だ。焦りは死を招く。奴等の思う壺だ……!」
 その言葉にレティアスはハッと我に返り、しかし口惜しげに項垂れた。