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バキノから南に下がったところにある小さな町テラーセに、一人の旅の女操兵乗りが流れついた。どこか育ちの良さを感じさせた女性は寂れた酒場のカウンターに腰かけると、ため息をついて自らの過去を振り返った。あれからもう、三年は経っているのだろうか……。 「嫌ですっ!。私の人生は私自身で決めますっ!」 少女はそう叫ぶと、見合いの話を切り出した父親に背を向けて操兵格納庫に飛び込んだ。そして家に伝わる操兵[ブラッティマリー]に乗り込むと、そのまま家を飛び出してしまったのだ!。その少女の名はヴァネッサ・クリスティアといった。 それから彼女は、三年間操兵乗りとして生きてきた。操兵の操縦技術はそれほどぱっとしないが、天性の戦闘センスと剣の才能によって用心棒などの荒事をこなしながら各地を旅してきたのだ。そしてその間にブラッティマリーも改造を施され、今ではガトリングガン三基を頭部と胸部二ヵ所に、四連装ロケット砲を両肩部と両脚部に四基搭載した実戦仕様の機体に仕上がっていた。 そんなヴァネッサはライバ周辺で一大紛争が起きた、という話を聞いた。都市国家郡では資源や土地を巡る紛争などは起きているが、国の興亡を賭けた一大決戦となると、ここのところ起きてはいなかった。そういう場なら自らの武者修行になると考えたヴァネッサはすぐさまライバに赴こうとした。 が、彼女がテラーセにたどり着いたころには既に王朝結社の乱が終結して半年が過ぎていた。そう、ヴァネッサがその噂を聞いたのはかなり後になってからのことだったのだ。その事実を知ったヴァネッサは、自分の修行の場を見失い、酒場で途方に暮れていたのだ。 「まぁ、操兵で稼ぐなら誰かに野試合でも挑むか、地道に土方でもやるかどっちかだな……」 女騎士のしょげっぷりを気の毒に思ったか、酒場の親父が助言してくる。 「野試合なんて、野蛮ですわ……でも、土方も私がすることじゃないし……」 だが、そうは言っても今の手持ちでは操兵で旅を続けるにはあまりにも心もとない。仕方なくヴァネッサは主人の勧めもあってこの町の渡世人斡旋所に行ってみることにした。 このテラーセの斡旋所は宿から少し離れたところにあった。ヴァネッサがそこに向かおうとした時、近くの路地の裏手から少年と思われる悲鳴が聞こえてきた。気になってその声のした方を見てみると、路地裏で三人の男達が一人の少年を追いかけ、追い詰めていた。 「小僧。痛い目に逢いたくなければその抱えている物を渡せ!」 「嫌だ!。誰がお前達のような者に渡すものかっ!!」 どうやら、三人のチンピラの目的は少年の抱えている小箱にあるようだ。さすがにこの光景を見逃せなかったヴァネッサは、男達に向けて叫んだ。 「ちょっと待った!。あなた達、大の大人が寄ってたかって、少年を追い回すなど、みっともないとは思いませんの?!」 その言葉を聞いたチンピラは、下品な口調でヴァネッサをからかい始めた。 「なんだネエちゃん。遊んでほしけりゃ後にしな。きれいな顔に傷が付けられたくなかったら、そこでおとなしく見てろっ!」 「なあ兄貴、顔は勿体無いんじゃないですかい……?」 その言葉にチンピラ達はどっと笑い出す。それを受けたヴァネッサの顔は怒りに染まっていた。 「いい加減にしないと、只では済みませんことよ!。ここでやめるなら見逃すけれど、これ以上やるというのなら……!!」 「どうなるっていうんだ?!」 ヴァネッサは両腕に隠しもっていた回旋鎚を一瞬で取り出し、瞬時に構えて見せた。それを見て武器の素姓に気付いたチンピラは、 「そんなものが手前ェに使いこなせるものか!」 と、自分も短剣を構え、そのままヴァネッサに向けて突撃した。ヴァネッサは特に慌てることなく回旋鎚を素早く回転させ、隙だらけの脇腹に一撃、そしてその攻撃で怯んだところの顎にもう一撃をお見舞いした。その鋭い先制を受けたチンピラは短剣を突き出し自棄になって突っ込んだ。が、ヴァネッサは軽く身を捻ってその攻撃を回避すると、チンピラはそのまま地面を転がってその場から消えた。 「あ……兄貴……?」 「逃げた……ずるいぞ!!」 おいてけぼりを食らった残るチンピラは、毒づきながらもヴァネッサに立ち向かうことなくその場から逃走した。 「おかげさまで助かりました。なんとお礼を申しあげたら良いか……」 少年は丁寧な物腰でヴァネッサに礼を言った。感じからするとこの少年、このような裏路地に住んでいるような感じがしない。服装などからは旅をしている、というような感じが見受けられるが、それにしてはこのような年端もいかない少年が一人旅、というのは少々引っかかる。 ヴァネッサが少年に話しかけようとした時、少年の方からこんな話が切り出された。 「あの……助けて頂いた上で何ですが……もし出来たら、僕の旅の手助けをお願いできませんか……?!」 この言葉に戸惑うヴァネッサに構わず少年は自らの身の上を語って聞かせた。少年の名はラフィル。彼は[とある国の貴族の家柄]だというのだが、その家が現在、相続の問題で揉めているのだという。 「父が亡くなって僕が家督を継ぐことになったのですが、その家が今、悪い親戚に乗っ取られようとしているのです!」 ラフィルの話によると、その親戚の家の当主は非常に我儘な性格で大変な浪費家、もし彼に家を預けたらとんでもないことになるという。だが、家督を継ぐ筈のラフィルは若干12才。このままでは家督がその問題の叔父に当たる18才の親戚の当主に移ってしまうのだ。 「そこで僕が家督を継ぐ方法として、家に古くから伝わる習わしを利用しようと考えたのです。この方法なら、悪くても、叔父にだけは家督を継がせないで済むと思ったので……」 ラフィルはそういって、両手に抱えていた小箱の蓋を開けた。その中には小さな金色の鍵が一つ入っていた。 「この鍵を、家に代々伝わるオルゴールに差し込んで開けることで、中に隠された家の印が現れるそうです。これを僕が所持している限りは、叔父が家を継ぐことはありません。でも……」 ここでラフィルの表情が暗くなった。 「そういえば、そのオルゴールはどうしたの?。それがあれば、家は安泰なんでしょ?。なのに何で、こんなところを旅なんかしてるの?」 ヴァネッサの疑問に、ラフィルは暗い表情のまま答えた。 「肝心のオルゴールが家に無いのです。手違いで外に流れてしまったのです……!。その後の調査で、それが骨董品としてアクラの町の骨董市に出るらしいということがわかったので、僕はそこに行ってみようと思ったのです。そしたら、あのような者に狙われるようになって……」 それがおそらくは叔父の差し金だろうことは予想できる。大方、オルゴールが流出したのも叔父の差し金だろう。彼らはどうあっても、ラフィルの家を乗っ取りたいのだろう。だが、それはそれで腑に落ちない。彼らにとってこの少年の家というのはそれほどまでに魅力があるのだろうか……。 「そこでお願いですっ!。僕と一緒にアクラに行ってください!。連れの者と途中の戦いではぐれてしまい、僕一人ではどうにもならないのですっ!!。今は大したことはできないけど、お礼は後で必ずしますっ!!」 必死に嘆願するラフィルの表情に戸惑いながらも、ヴァネッサはとりあえず仕事と武者修行をかねてそれを引き受けることにした。どの道、ここまで聞いた以上は引っ込みがつきそうにもなかったのだが……。 話がついた二人が路地裏から出ようとした時、表通りから騒ぎ声と同時に何やら物々しい音が聞こえてきた。ヴァネッサが様子を見てみると、通りの真ん中を一機の操兵が何かを捜すように歩き回り、その中で人々が逃げ回っているのが確認できた。そして、ヴァネッサはその寄せ集めの再生機と思しき操兵が何を捜しているのかすぐに見当がついた。 「どこだ……さっきのガキと女はっ!!」 操兵の中から拡声器を通じて聞こえてきたのは、さっきヴァネッサがコテンパンにやっつけたチンピラのダミゴエだった。その操兵の足もとでは、二人の手下が慌てふためいて叫んでいた。 「兄貴〜!。ここまでやっちゃったら俺達唯の悪党じゃないですか〜……!!」 「うるせぇ!。俺たちゃとっくに悪党なんだよっ!!」 チンピラは自棄になって叫びながらも操兵を確実にヴァネッサ達の方向に向けた。それを見たヴァネッサはその無茶な行動に呆れ返りながらも、自機ブラッティマリーがある駐機場に向かった。どのみち生身では相手にならないのは確かだから……。 ヴァネッサが起動準備を終え、ブラッティマリーを立ち上がらせると同時にチンピラの操兵が姿を現した。そして目の前の重武装操兵を見たチンピラはその装備差に思わず叫んだ。 「ひ……卑怯だぞ!。そんなすげぇ武器持ち出しやがって!。よ……よし、こうしよう。俺はあんたに[一人の操兵乗りとして]そのガ……少年を賭けて決闘を申し込む!!」 その光景に呆れ返る手下と市民を他所に、チンピラの操兵は棍棒代わりの鉄骨を構えてブラッティマリーとの間合を詰めた。それを見たヴァネッサはブラッティマリーに回旋棍を片方だけ構えさせた。 「あなたには、これで十分……!!」 先ほどの戦闘(喧嘩)の際にヴァネッサが回旋棍を両腕に構えたのを知っていたチンピラは、この目の前の操兵の態度に激怒し、声にならない雄叫びをあげて操兵を突進させた。周りでは既に兄貴を見限った手下達による無責任な賭が始まった。が…… 「さあさあ、あっちの赤い操兵が勝つか、それともそっちのスクラップが負けるか、賭けた賭けたぁ!!って、だぁれも賭けやしねぇか……」 既に結果が見えているような賭に乗るようなものは誰一人としていなかった。 闇雲に突進してきた操兵は途中思わずつんのめり、そのまま均衡を崩した。それを見逃さなかったヴァネッサはすぐさまブラッティマリーを前進させ、開いた左胴に回旋棍をたたき込んだ!。その一撃は再生機の装甲を粉砕し、さらに衝撃が操縦系に損傷を与えて機動力を低下させた。が、それでもチンピラはせめて一太刀とばかりに操兵に棍棒を振るわせた!。しかし、その攻撃をヴァネッサは軽く回避、再びブラッティマリーに回旋棍を構えさせると、そのまま返して今度は操兵の右胴に直撃させた!!。その一撃が結局止めとなって、操兵は仰向けに倒れていった。 「あ〜ぁ……やっぱり負けた……」 「俺、絶対あんな悪人にはならないぞ……!」 兄貴の不甲斐ない姿を見た手下はそれぞれに悪態をつく。だが、実はそんな暇などなかった。操兵はそんな二人目がけて倒れてくるのだ!。慌てて逃げるが時おそし、操兵は大音響を立てて倒れ、バラバラに吹き飛んだ。その飛び散る部品の中に三人のチンピラが混ざっていたことは言うまでもない……。 「やな感じィー……!!」 ……………。周囲の人々はこの呆気ない決闘の勝者であるヴァネッサのブラッティマリーに戸惑いながらも拍手を送った。この場合、勝者が強かったのか、敗者がただ弱かったのかが判断できなかったからだ。が、その中でラフィルだけは純粋にヴァネッサの勝利に惜しみない拍手を送っていた。 「すごいや!……なんて強い操兵なんだろう……!!」 少年ならではの純真さと言うべきだろうか……。そんな拍手を受けたヴァネッサは操手槽の中でいまだ戸惑っていた。 「本当に、引き受けて良かったんだろうか……」 それでも、一度引き受けてしまった以上断るわけにもいかないヴァネッサは、そのままラフィルを連れてアクラの町に旅立っていった。町までは操兵で三日ほど。今行けば、骨董市が始まる数日前には町に入れるだろう。だが、その間にもラフィルを狙う刺客が襲ってくるかもしれない。油断は禁物である……。 案の定、町から出ようとするブラッティマリーを見送る人々の中に怪しげな人物が混ざっていた。外套の頭巾で隠れているものの、その隙間から覗かせる顔は非常に美形だった。が、その表情は怒りに歪んでいた。 「麿の邪魔をするとは、渡世人の分際でなんと恐れ多いことか……!。だが、[王印]は麿のものでおじゃる!。そして、[王国]も我がザイクバル家の……そしてこのフィランディ様のものでおじゃる!!。逃がしはせぬぞ、[王子]……!!!」 公家訛で言いたいことを言った美少年は、人目も憚らずにその場で高笑いをした。その狂ったような笑い声は部下が止めるまでずっと、街角に響き渡った。 所変わって、ご存じライバの街。ジュウコーの工房では、ミオ、セフィロスがエルグラーテの背部のアサルトザックを見て驚いていた。そしてミオはクサナギに入手の経緯を尋ねたが、 「あぁ、これはとある仕事で貰ったものだ。出所は言わないことになっている……」 との下手な惚けかたにすっかり呆れ果てていた。そこに久方振りにゼノアが工房に姿を現した。彼は最初こそいつものように飄々としていたが、やはりAZ仕様のエルグラーテを見てあんぐりと口を開けた。そしてはっと我に返るとクサナギに向き直った。 「く……クサナギさん、戦争にでも行くんですか?!って、そうじゃない、いったいこの砲をどうしたんですか?!」 「これには色々あって……ま、今後の戦いには必要になるかも知れないが……」 クサナギの言葉にミオが思わず 「こんなんで撃ち合わないでくれる……?」 と、またまた呆れ返った。そしてこの装備が[貰い物]だと聞いたゼノアはさらに驚愕した。 「も、貰ったって……でもこの零式試作自動装填砲はまだ工房都市匠合の中でも秘匿技術の一つとされているもので、しかもこの型は行方不明になっている十基の内の一つなんですよ!」 いったい何処で!と血相を変えて詰め寄ったゼノアだったが、クサナギは老人との約束を堅持しつづけた。 「出所は聞かないでくれ……」 その言葉にゼノアは、 「そう言われると、余計聞きたくなりますが……良いでしょう。あなたが使うのでしたら、問題はないでしょうから……」 と、諦めたようにため息をつき、元の飄々とした表情に戻り、そして今度はミオのワークマンデに目を向けた。 「そういえば、あなたのワークマンデもだいぶ改造されましたね……上半身の増加装甲といい、脚部の怪しげな装備といい……」 ミオは以前ディノジェイラに破壊されたワークマンデを修理する際、機体を大幅に改造していた。その中でも特に目立った改修は脚部の新装備[蒸気輪]だった。これは蒸気兵装の応用装備の一つで、蓄えられた蒸気を開放することで脚部の走行用の車輪を回転させ、通常の2〜3倍の走行速度を得るというものだ。ミオはこの蒸気輪を破壊したディノジェイラから回収、その上で改良を施していた。 「ま、この前ぶっ壊されたことへの腹癒せで付けてみたんだけど、バランス取るのに手間どって……安定板をゴテゴテ付けたら、結局増加装甲になっちゃったよ」 ちなみにミオはこの機体に新たに[ウォークマンデ]と名づけていた。 そんな中、クサナギはその話ついでに工房の奥に転がっているディノジェイラの残りの残骸をゼノアに見せた。 「この機体の出所を調べてほしいのだ」 ディノジェイラの機体を見たゼノアは直感的に、それが以前のディノガウラと同型列の機体であることを見抜き、ミオからこの機体の筋肉筒が彼の操兵と同様の現象を起こしたことを聞いてさらに確信した。 「分かりました、この件はさらに調査を進めるとして……あ、そうそう……」 ここでゼノアは急に話題を変えた。 「実はあなた方にちょっとした仕事を依頼したいと思っていたのですよ……!」 「また何か事件か……?!」 クサナギの言葉に思わずミオがコケる。いくらゼノアの依頼だと言っても、すべてが事件だとは限らないだろうに……。 「いや、そなたの依頼は時として、事件がらみであることが……」 クサナギは必死にその場を取り繕うとしたが、この言葉がかえってゼノアを傷つけたのか、こんな言葉が帰ってきた。 「クサナギさんにだけは、そんな言葉は言われたくないですな……」 これにはクサナギも返す言葉がなかった。確かにこの[元王子]はつまらない用事で出かけたにも拘らず、よく何かしらの事件に巻き込まれることが多いのだ。 少し経って、落ち着いたゼノアは依頼内容を話し始めた。 「ま、今回は別に事件ではないんです。ここから三日ほど行ったところにアクラという町があって、そこで近々骨董市が開かれるんです。私は実は骨董の趣味がありまして、ぜひとも行ってみたいんですが、私個人の理由で部下達を護衛にするわけにはいかないので……」 その時、ずっと一行の会話を聞いていたモ・エギがその話に加わってきた。 「骨董市には興味ありますね……私も家が出来たばかりなので、何か飾りになるものが欲しかったところなんです……」 「モ・エギの……家……?」 セフィロスが一瞬疑問の声をあげ、そしてすぐにあることに思い当たった。そういえば、久しぶりにライバに戻ってきた際、街の門の近くに巨大な縦穴式住居がそびえ立っていたのを見たような気がする。ひょっとしたら、それがモ・エギの家なのだろうか……。 ひょっとしないまでもそれがモ・エギの家だった。操兵用の外套に使われる布で覆われたその縦穴式住居は街を訪れた人々を大いに驚愕させた。そんな人々に門兵達は笑って「気にするな」とだけ呟いているという。さらに入口には人間用の表札があって、それには[危険はありませんが、見学の際は所有者に断ってからにしてください。見世物ではありません]と書かれていた。 結局、一行は骨董市の見物を兼ねてその用心棒の仕事を受けることにした。セフィロスも旅から戻ってきたばかりなのだが、どうせすることもなかったのでそれを受けることにしたのだが、ミオはそんな槍使いにこんなことを言った。 「ま、ここにいるとレイムがやってくるし……ね!」 それを聞いたセフィロスは内心かなり焦ったが、それを隠すように、 「別に逃げたわけではないが……」 と呟いた。が、ミオがすかさず「じゃ、連れてこようか?」と言うと、セフィロスは、 「さて、行くか……」 と、きびすを返してその場を誤魔化した。 その時、クサナギの頭の上で昼寝していたマリンが起き出し、 「マリンも連れてってくれるんだよねー……?」 と、言った。どうやら一行の会話は聞こえていたようだ。が、それを見たゼノアがここでパニックを起こした。そう、彼はマリンを見るのは初めてだったのだ。 「へあぁぁぁぁ!!。く、クサナギさん、頭の上に背後霊が……背後霊がぁ!!」 どうやら、非科学的なことを信じない筈のゼノアも[霊魂]に関しては例外のようだ。それを聞いたマリンは、 「マリン、オバケじゃないもん……」 と、すっかり落ち込んでしまった。その後、クサナギから今までの経緯を聞いたゼノアはようやくマリンについて納得した。 「なるほど……アファエルさんの親戚でしたか……」 「間違ってはいないと思うが……」 その時、ミオはセフィロスがマリンを見て平然としていることにようやく気付いた。さすがセフィロス、と感心していたミオだが、次の 「今まで見ない振りをしていたのだが……幻聴ではなかったのか……」 という言葉に苦笑を隠せなかった。 一方同じころ、アクラの街に向かうヴァネッサは、道中ラフィルからより詳しい事情を聞かされていた。 「僕には執事と侍女、そして仕えてくれている騎士が道連れとして付いてきていたのですが、途中、ザイクバル家の刺客に襲われ、散り散りになってしまったのです……それでも何とかここまで旅を続けていたのですが、テラーセであのような者達に襲われ……」 ラフィルは実際、かなり良い家の生まれだろうことがわかる。その証拠にここまでの旅費は全部彼が払っているのだ。さすがに操兵の維持費までは無理だが、それでも二人分の(それもかなり良い)宿代を払ってもその懐が全然痛まないのだ。悪くてもラフィルはよほどの上級貴族の出なのだろう。ザイクバル家がその当主の座を欲しくなるのがわからなくもなかった。 「でも、みんなとはきっと目的地で逢えると僕は信じています……!!」 純真そうな瞳を向ける少年に、ヴァネッサは少々戸惑った。 「ま、大丈夫ですわ。きっと逢えます……」 とりあえず言葉は返したヴァネッサだが、実際その心境は複雑だった。 (何か、とんでもないことを安請け合いしちゃったような気がする……) |