キャンペーン・リプレイ

第 三十一話 「 音 色 仕 掛 け の 王 印 」 平成12年11月26日(日)

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 さて、骨董市に気もそぞろなゼノアに急かされ、クサナギ一行は翌朝早くに出発した。ライバからアクラまでは何もなければ三日ほどで到着する筈だ。それぞれゼノアは馬車、セフィロスはヌクヌク改めラジュ、ミオはウォークマンデ、そしてクサナギは慣らしも兼ねてAZ装備のままのエルグラーテ、モ・エギはいつもの紅葉武雷といった出で立ちだった。
 だが、出発してみると何故かウォークマンデの動きがおかしいことが分かった。クサナギが外から見た感じでは、まるで操縦とワンテンポ遅れて動いている、といったようなぎこちなさが見えるのだ。ここのところ操縦技術が向上しているミオがそんな操作をするとは思えないのだが……。原因はミオの操縦ではなく、仮面とミオの同調不良にあった。実はこのウォークマンデには今、以前戦闘で撃破して入手したアルキュイルの仮面が使用されていたのだ。増加装甲の重量増加によって低下した機動性を補うためにより格の高い仮面交換したのは良いのだが、どうやらこの仮面の自我には自分の元の機体を破壊した操兵に装着されたことに不満があるようだった。
(……ナゼニワレハコンナキタイニソウチャクサレテイル……)
 ミオはそんな反抗的な波動を放つ仮面に謝り、宥め透かしながら必死に機体を操縦していた。
 そんな中、ミオはウォークマンデに便乗していたマリンの服装が気になった。確かマリンには何着かの着替えはあったが、それはすべて彼女達独自の文化の香りがするものであった筈だ。が、今マリンが身に付けているものは明らかにトランバキア風の旅人の服だった。気になったミオはマリンに服のことを尋ねてみた。
「似合うでしょーこれ。近所のお姉さんが作ってくれたの。恥ずかしいから名前は言うなって……[狐]みたいで怖そうな感じだったけど、とっても優しい人だったよ!」
 ……トランバキア風の服……近所の[狐のお姉さん]……ミオは聞いたことを後悔したくなった。
「自分はこういう可愛い服は着られないけど、マリンを見たら何だか急に作りたくなったんだって……」
「自分で着る気だったんかい……」
 ルシャーナの意外な趣味に、ミオは半ば呆れ返っていた。
 意外と言えば、一行の少し先には偶然にも阿修羅が街道を一人歩いていた。奇面衆探索の旅に出てからどのくらい経っただろうか……今のところ特に際立った情報は入らなかったが、それでも彼女は今日も手掛かりを求めて(というよりは姉ヴィシュヌが怖くて)旅を続けていた。その旅の途中、阿修羅の歩いている前方から不意に剣劇の音が聞こえてきた。見ると数人のチンピラが一人の女性を集団で襲っているようだ。襲われている女性はどうやら剣士のようで、その手に剣を構えて果敢にも立ち向かっているようだが、やはり多勢に無勢、劣勢に追い込まれているようだ。
 これは放ってはおけないと考えた阿修羅は、一本の棍に繋がった十二節棍を振り回しながらその現場に近づいた。
「何だ?……このアマ……」
 棒が風を切る音に気付いたチンピラが一斉に阿修羅に振り返った。
「アマ!。今、私とのことをアマって呼んだわね……!!」
 阿修羅は十三節棍を左手に持ち替え、おもむろに腰の二連装拳銃を抜き、天に向けて撃ち放った!。それを見たチンピラ達は自分達が飛び道具をもっていないことに気付き、全員で相談を始めた。そして少ししてその結論を出した。
「ま……まぁ、きょ……今日のところはこのくらいにしてやる。運が良かったな!。野郎共帰るぞ。こんな奴等を相手にしている暇はねぇんだ!!」
(だったらやるなよ……!)
 そんな阿修羅の心の中の突っ込みを尻目にチンピラ達は悠然と十歩ほど離れ、そしてその直後に一目散に逃げ出した。
 チンピラがいなくなった後、阿修羅は女性剣士の元に駆け寄った。彼女は腕に怪我を負っているようだったが、それでも剣を収め、阿修羅に向いて丁寧な物腰で礼を言った。
「助けて頂いて誠に忝く思います……。本来ならあのような者達を相手にするのは造作もないのですが、なにぶん多勢に無勢、危うく追い詰められるところでした」
「ま、以後気をつけなさいね……で、どうしてあんな奴等に追われていたのよ……?」
 阿修羅の問いに女性剣士は、名乗りを遅れたことを詫びつつ、事情を話して聞かせた。彼女の名はメティア。西方にある小さな国[クレバラン]から、王子、執事、侍女とともにあるものを求めて旅を続けているという。
 その時、阿修羅は不意にメティアにこんなことを尋ねた。
「ところであなた、[奇面衆]って知ってる?!」
 メティアはその急に思い出したかのような突然の質問に戸惑い、かぶりを降った。どうやら奇面衆の噂はクレバランまでは届いてはいなかったようだ。そして代わりにメティアは、長い髪の少年を知らないか、と阿修羅に尋ねた。はぐれてしまった王子のことらしいのだが、その詳しい特徴はラフィルそのものだった。しかし、今の阿修羅はそんなことを知る由もなかった。
 とりあえず阿修羅は得意の気功術でメティアの怪我を治癒した。その神秘的な力に彼女は驚愕し、感謝した。
「あなたは僧侶様であられるのですね……!」
 とてもそうは見えなかった、と言うような物言いに阿修羅は一瞬むっとして、
「私、僧侶に見えませんか……?!」
 と、自ら墓穴を掘るようなことを呟いた。その時、遠くの方から一人の[いかにもな]初老の執事と[そのまんま]の眼鏡をかけた侍女が二人の元に駆け寄ってきた。
「メティア殿、無事であらせられるか?!」
「メティア様、大丈夫ですか〜……!」
 その二人の出で立ちに阿修羅は半ば呆れ返った。この人達はずっとこの格好のまま旅を続けて続けていたのだろうか……。
 阿修羅がそんな[非常識な]人達に改めて旅の目的を尋ねようとした時、街道から操兵の足音が響いてくることに気付いた。見ると、久方振りに見る新造古操兵ファルメス・エルグラーテ(AZ)と見たこともない操兵(ウォークマンデ)、そして紅葉武雷着装のモ・エギがこちらに向かって歩いてくるのが確認できた。
「クサナギだ……何か嫌な予感がする……」
 懐かしい顔ではあったが、彼に関わるとたいてい何かしらの事件に巻き込まれる。そう感じた阿修羅はメティア等三人とともにその場を立ち去ろうとした。
 一方、街道を進んでいたクサナギ達も前方に阿修羅ほか三人がいるのが確認できた。
「あれは阿修羅ではないか……」
 クサナギの言葉にセフィロスも反応した。
「本当だ……なんか久しぶりだ。でも、あんなところで何をやってるんだ……?」
「三人の男女を逃がしている……これは何かあったに違いないっ!!」
 相変わらずの早とちりでクサナギは、エルグラーテを大急ぎで阿修羅の元に向かわせ……なんだかんだで一行は阿修羅と合流した。ゼノアの馬車の荷台で再会を喜ぶ中、阿修羅は不意にミオに詰め寄り、おもむろにその顔を引っ張ったり抓ったりした。
「あなた、ホントにミオ?。本物なら、もっと操縦が上手かった筈だけど……」
 どうやら阿修羅はウォークマンデの同調不良の動きをミオの操縦技術低下と考えたようだ。その言葉にセフィロスは、
「偽物とは知らなかったぞ、誰だ貴様はっ!!……て、こんなものじゃなかったか?アイツの操縦……」 
 と、意地悪なことを言った。
「セフィロスゥ〜……レイムのことで苛めたからって、何も仕返ししなくてもいいでしょうがぁ!!」
 ミオの反論をよそに、一行は女性騎士メティア、執事レバスタン、侍女メフィルから彼女達の事情を聞いた。それによると、彼女達の国クレバランではある問題が起きているという。それは、王位継承を巡る問題だった。
 現在クレバランには二人の王位継承権をもつものがいる。一人はクレバラン王家の王子ラフィル。本来であれば正当な血筋を持つ彼が継ぐのが当然なのだが、それには一つ問題があった。それは、年齢的な問題だった。ラフィルは現在12才。この国の法律では王子が成人を迎えていない場合、親戚筋から王を選ぶことになっているという。
 ところが、その王位継承権を持つもう一人である筈の親戚ザイクバル家の当主フィランディには色々と問題があった。彼は大変な遊び好きで執務を全く果たさず、家の財産をかなり食いつぶしてしまっているというかなりの浪費家だった。しかも危険で残忍な性格と、人格的にも問題が多すぎるのだ。
 フィランディが王位に着けばクレバランの将来は非常に暗いものとなる。そのことを危惧した大臣達はそれだけは阻止するべく、さまざまな思案を巡らせた。そして会議の結果、大臣達は国に昔から伝わる[習わし]に頼ることにした。
 その習わしとは、王家に代々伝わるオルゴール[黄昏の音色]に隠された[真の王印]を[真なる鍵]を用いてそれを印すこと。この行為自体は簡単だった。何せ[黄昏の音色]は王家所蔵の宝物。[真なる鍵]は王子ラフィルが肌身離さず所持している。そもそも[真の王印]とはオルゴールに内蔵されている幻燈器によって投影されるという単純なカラクリで、[真なる鍵]はその仕掛けのスイッチとなっているのだ。 
 ところが、これでラフィルの即位が叶ったも同然となった矢先にとんでもない事件が起きた。それは……。
「私が手違いで、[黄昏の音色]を骨董屋に売り払ってしまったんですぅ〜……!!」
 突然シュンとなったメフィルの言葉に一行は一瞬唖然とし、そして開いた口が塞がらなくなってしまった。いくらなんでも王家所蔵の宝物を売り払ってしまうとは……。メティアの補足によると、実際にはザイクバル家の間者に騙されてやったことなのだが、その事実に気付いて城の者が骨董屋に出向いた時には、既に相手は市の立つアクラの町に向けて旅立った後だった。
「そこで王子が私とレバスタン、そしてメフィルとともに骨董屋を追って旅に出たのですが、その途中ザイクバル家の妨害にあって……」
 ザイクバル家としては今更そんなオルゴールが出てこられては困る。本当なら王子そのものに消えてもらうのが一番なのだが、この状況下でそれを実行すればまず間違いなく自分達が疑われ、立場が危うくなってしまう。しかし、代わりにオルゴールを処分すれば王子は王位継承権を主張することができなくなり、大臣も王位をフィランディに与えざるを得なくなる筈なのだった。ここは何としてでも探索を妨害してくるだろう……。
 実際、今までザイクバル家はさまざまな妨害を仕掛けてきた。中には操兵を使った直接的なものもあったが、それらはメティア達の奮戦で何とか退けてきた。が、その戦いの中で彼女の操兵も使用不能になってしまったのだ。そしてさらに、その戦いの中でとうとう王子ラフィルともはぐれてしまったという……。

 実は同じ話を、街道を進んでいるヴァネッサもラフィルから聞いていた。だが、その話は[国の王位継承権]ではなく[貴族の家の財産権]に巧みにすり替えられていた。ラフィルはこの後に及んでもなお、自分が王子であることを隠すつもりだったようだ。まぁ、それは確かに賢明な判断ではあった。ヴァネッサが何者だかまだわからないということもあった上、信用できる相手だとしても要らぬ気遣いをかけることになるからだ。

 話し終えたメティアは暗い表情のままではあったが、それでも力強く、
「でも、王子は若いながらもしっかりしたお方です。きっと自分なりに目的地に向かっている筈です……!」
 と、自分に言い聞かせた。そんな女傑騎士に阿修羅は、励ますように一行を指さしてこう言った。
「大丈夫!。そういうことはこの人達がみんな引き受けてくれるから……!!」
「[おおごと]にしてな……」
 その時、今まで黙っていたレバスタンがセフィロスの呟きを無視して一行に詰め寄った。
「それは本当でございますか?!」
 阿修羅は改めて一行を一人ずつ紹介した。だが、しばらく会ってなかったせいか、セフィロスとレイムが婚約していたり、クサナギとモ・エギの恋話が結婚話に誇張されていたりと、静夜の夫である吟遊詩人が広めたような[歪んだ]内容となっていた。
「俺はまだ婚約なんかしてないぞ!」
 今の話に納得できないセフィロスが叫んだ。そしてクサナギの名前を聞いたメフィルが驚いた。
「クサナギ様って……ひょっとして、[御仁姫の婿になった]のか[御仁姫を嫁にもらった]のかどちらが正しいか今論争になっているという、あの……」
 そんな会話の中、馬車は街道の別れ道に差しかかった。その時、阿修羅は不意に馬車を飛び降りた。
「あ、阿修羅様、どちらに行かれるのですか?!。まだ何もお礼をしていないのに……!!」 
 メティアの叫びに阿修羅は、笑みを返しながら答えた。
「私はまだ、奇面衆探索の任務があるから……じゃ、後はよろしく!」
(というより、「おねえちゃん」から逃げたいんでしょうが……)
 ミオの心の呟きを知ってか知らずか、阿修羅は外套を翻してまるで誰かから逃げ出すかのように一行の元を離れていった。皆は阿修羅との再会を祈りながら、彼女の後ろ姿に向けて手を振った。ただ、最後にセフィロスとゼノアがこんなことを呟いた。
「旅をしているという割には、ライバの周りをうろちょろしているだけのようだが……」
「やっぱりクサナギさん達と旅をすると、何か事件が起きますね……」
 阿修羅と別れた一行はその後、再びラフサへの道を進んだ。

 一行、そしてヴァネッサがそれぞれに街道を進んでいるころ、アクラ近くの荒野ではフィランディとその一味が怪しげな人物と会話をしていた。
「なんと素晴らしい操兵でおじゃるか!。このような機体があれば、どんな敵でも蹴散らせるでおじゃるよ!……そちは本当に、この操兵を麿にくれると申すのでおじゃるか?!」
 フィランディの驚喜の声に、少々派手な外套ととてもきらびやかな仮装用の半仮面を着けた長身の男とその傍らの顔を完全に覆う仮面と黒い外套で体を覆った人物が恭しく頭を下げる。その二人の背後には、見たこともない、全体的に丸みを帯びた装甲で全身を覆った操兵が全部で三機も並んでいた。
「もちろんでございます、次期[国王陛下]……私どもは、貴方様のような[真の]王位を継ぐ御方に合力すべく参上したものでございます」
「その言葉、まことに信じても良いでごじゃるか?!」
「もちろんですとも……では、我々はこれにて失礼いたします。何かあったら、部下を通じて連絡いたしますので……それでは、この操兵の力をどうぞ存分ににお使いください……」
 男が去った後、フィランディは喜々として中央の赤い機体に乗り込み、お付きの美少年達も残る二機の黒い機体に乗り込んだ。その光景を長年ザイクバル家に仕えている老騎士ザーフィは懸念の表情で見つめていた。
「本当に、あのような仮面の男を信用して良いのだろうか……?」
 あの仮面の男は一月ほど前から自分達に接近し、借金の一部を立て替えたり、この度の計画の準備もしてくれている。だが、それがあの男にとってどんな利益があるのか、ザーフィにはそれが気掛かりでならなかった。
 しかし、今はそんな[動機不純な行為]でも頼りにする外はなかった。確かに自分達はメティアの操兵を行動不能に追い込んだが、その代わり自分達の操兵もかなり手酷くやられてしまい、残る操兵はザーフィのアルシュバリエだけになってしまっていたからだ。それにしても、このような操兵を三機もそろえられる仮面の男とは、いったい何者なのだろうか……。
 その時、斥候として放っていた美少年の一人が戻り、町の様子を報告した。が、フィランディはその報告に眉を潜めた。
「武器が持ち込めない?!。おのれ……麿の名をもってしてもだめでおじゃるのか?!!」
「若……ここは外国でござります……」
 憤慨するフィランディをザーフィが嗜める。そんな二人をよそに、二人の傭兵がそれぞれに呟いた。
「俺は武器なんか要らないがな……」
「武器なんか、簡単に[隠せる]がな……」
 傭兵の一人は腰に下げていた小剣をはずし、拳に厚手の革の手袋をはめた。どうやら、本当の得意分野は格闘戦のようだ。そしてもう一人の小柄の傭兵は分銅付きの鋼線を袖口に隠した。こちらは暗器使いらしい……。

 武器持込禁止の規則は町に着いた一行、そして反対側の門に着いたヴァネッサも知ることになった。この町では普段からこの規則が適用されているのだが、骨董市の日はそれがさらに拡大され、すべての武器、操兵が町への入場を禁止されるというのだ。
 操兵の場合は仕方がない。その巨体が歩き回るだけで大変な振動が発生し、貴重な品々に多大な影響を与えてしまう恐れがあるからだ。
「十年前にも、貴重な磁器が倒れて、大変なことになりましたよ……」
 嫌味にも絵だけが残されていたそれは大変素晴らしい作りのものだが、高さが約半リート弱、台の幅が10リット前後と大変細長いものでしかも、上部部分の重量がやや重いという、まさに「倒れてください」と言っているようなものだった。
 その話を聞いたミオは思わずモ・エギを見上げた。ここはライバのほど近くということもあって、町の衛士も御仁姫来訪にそれほど驚愕はしなかったが、やはりこれほどの巨大な少女となると入場許可を出すことをためらっていた。 
「わ……私は操兵ほど重くないし、なるだけ静かに歩きますから……」
 結局、モ・エギの必死の言葉に衛士が折れ、条件つきで入場が許可された。
 だが、武器が持ち込めないということは変わらない。これでは、万が一敵と遭遇、戦闘になった場合はかなり厄介なことにならないだろうか。
「でも、それはザイクバル家の者達も同じ条件の筈。ともかく、私は王子を捜します。あなた達はオルゴールの方をお願いします」
 メティアは一行にそれだけを言うと、人込みの中にその身を投じた。そしてレバスタンとメフィルはオルゴールが発見された場合の確認役という形で市場の入口に残ることになった。その時、レバスタンが一行にこんなことを言った。
「私めがこの度の手掛かりを得るためにある骨董屋に聞きましたところ、何でも[黄昏の音色]と同じような型のオルゴールは質こそ違えど、かなりの数が出回っているそうで、区別するためには私めか王子が見ませんと……」
 要するにこの市場には似たようなオルゴールがかなりの数存在することになる。その中からたった一つを捜すのは大変なことだった。一行はとりあえず、手分けしてオルゴールのありそうな店を梯子して廻ることにした。
 一方、ヴァネッサはヴァネッサで何とか武器を持ち込もうとそれなりに工夫を凝らそうとした。町に入場する直前彼女は、両袖に回旋棍を忍ばせた。この武器ならばおそらくは楽に隠し通せると考えたのだ。ところが世の中は上手くいかないもので、取り調べを受けた際に両腕を上げた時、思わずその中の棍をものの見事に落としてしまい、しかもそれを衛士に見られてしまったのだ!!。
「いや〜変わった武器を使ってますねぇ……はい、これ預り証です!」
「ヴァネッサさんなら武器がなくても大丈夫ですよ……!」
 ラフィルの励ましを受けながら、結局ヴァネッサもすべての武器を預けて市場に入った。
 武器を預ける際の珍騒動はクサナギ一行も似たようなものだった。ミオは体中からさまざまな武器を取り出し、それを次々と衛士に預けた。
「鉈と短剣と単発長銃、あとは二連装単発拳銃かな……」
 ガチャガチャと投げ渡される武器を見て呆れ返りながらも衛士は、おもむろにミオにこんなことを尋ねた。
「とてもそうは見えないが、君はもしや猟兵……?」
「[護身用]です!!」
 だが、衛士は気付かなかったが、ミオはこのとき煙幕弾を数発隠し持っていた。あからさまに多量の武器を預けることで目くらましにしたのだ。身体検査の過程で一瞬女性係員に発見されかかったが、何とかその目論みは通り、結局見つかることはなかった。そんな時、その光景を見たセフィロスがこんなことを呟いた。
「あ[女性]か……」
「セフィロスぅ〜!」
 そんなやり取りの中、側ではモ・エギが紅葉武雷を脱ぎ、七枝刀と大鉈を衛士の前に「はい!」と置いた。
「その武器は操兵駐機場に預けてください……!」
 …………ともかく、どうにか市場に入った一行は、それぞれに別れてオルゴール捜しを始めた。