キャンペーン・リプレイ

第 三十一話 「 音 色 仕 掛 け の 王 印 」 平成12年11月26日(日)

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 まず、クサナギが人込みをかき分けて市場の中に入っていくと、目の前で二人の男が派手に喧嘩を繰り広げている光景が飛び込んできた。別にオルゴール探索に関わることではなかったが、かといって放っておくわけにはいかなかったクサナギは、喧嘩を止めるべく二人の間に割り込んだ。
「止めないか!。大の男がみっともない!!」
 だが、興奮した男達はクサナギの声も耳に届かずに喧嘩を続けていた。クサナギは「うるせえッ!。引っ込んでろ!!」との言葉に怒り、
「止めろと言っているのがわからないのか!!」
 と、自分もその喧嘩の中に飛び込んでいった。が、ここでやはりクサナギの[不幸癖]が災いし、ものの見事に吹っ飛ばされてしまった。
 別の場所では、ヴァネッサとラフィルがやはりオルゴールを捜して人の往来の中を歩いていた。その時、ラフィルが一人の女性を指さした。
「ヴァネッサさん、あれ……!」
 その声にヴァネッサもその女性を見てみると、彼女は何か箱のようなものを抱えていた。そしてそれは、[黄昏の音色]に非常によく似ていたのだ。女性は人込みの中に入っていった。二人は人込みをかき分け、すぐさまその女性に追いついた。そしてその正面に回り込んでそのオルゴール(らしきもの)を観察してみた。が……
「違うみたいです……」
 それは確かに[黄昏の音色]によく似ていたが、実際にはオルゴールですらなく唯の古い木箱だった。結局人込みの中に投げ出されただけの格好になった二人は、再びオルゴールを捜し始めるべく手近な露店に入っていった。その店の中では一人の体格のよい男がお付きの美少年達とともにオルゴールを物色していた。その男を見た瞬間ラフィルの顔が強張った。
「あの男!……フィランディの用心棒のゼガです!!」
 ゼガは慣れない手付きでオルゴールを手に取り、それが[黄昏の音色]かどうかを確かめようとしていた。ラフィルが遠目で見た限り、それは間違いなく別物ではあったが……。それを確認した二人は、ゼガと美少年達が自分達に気付く前にその店からそっと立ち去った。
 一方、自分達の敵となるべきものと遭遇していたのはヴァネッサだけではなかった。ミオは人込みの中で不意にこんな声を聞いていた。
「ええい、まだ見つからぬでおじゃるか?!……全く、なぜに麿がこのような人込みの中を自分で歩かなければならぬのか……?!!」
「申しわけありませぬ、若。ただ今、部下のもの達が懸命に探索しておりますので……」
 ミオがその方向を見ると、そこには数人の美少年と一人の老騎士を連れた、これまた危険な目付きをした美少年が人込みの中を嫌々歩いていた。アクラに来る途中でメティアに聞いていた特徴からそれがフィランディ・ザイクバルその人である、と感じたミオはそのもの達を尾行することにした。
 幸い、フィランディ達はまだミオの顔を知らないこともあり、その尾行は上手くいくかと思われた。が、ここに思わぬ障害が待っていた。なんとミオの前を狙ったかのように、ごつい集団の人込みがワラワラと横切り、それによってフィランディ達を見失ってしまったのだ!。
 そしてミオの不幸はこれだけでは終わらなかった。
「おっとご免よ……!!」
 人込みに残された形となったミオに一人の若者がぶつかり、彼はそのまま再び人込みの中に消えていった。この時、ミオがはっとなって自分の財布を取り出してみると、それは無事だったのでとりあえずほっとした。だが、いざ中を開けてみると……
「無い……?!」
 確かミオは骨董市に来ることを考えて、財布の中に少量の小銭とともに一枚ほど金貨を入れていた筈だった。が、それがものの見事になくなっていたのだ。今、財布の中に残されているのは銀貨65枚だけになってしまった。
「プロの仕業だ……うがーっ!!」
 同じころ、適当な店を覗いたセフィロスは自分達同様にオルゴールを捜していると思われる一団を見つけた。美少年達を伴った禿げ頭のその男は、オルゴールを乱暴に掴み上げては「違うっ!!」といって乱暴に放り無げ、それを美少年の一人が慌てて受け止める、ということを繰り返していた。
「あの……ですからいったい何をお探しで……?」
 おどおどしながら一団に話しかける店番を無視して、男は美少年達を連れて店を後にした。それを見たセフィロスは、
「あいつ等を尾行した方が早そうだな……」
 と、早速行動を開始した。すると、今度は男達がさらに別の集団と合流するのが見えた。それは、ミオが先ほど見失ったフィランディとザーフィの集団だった。
「まだ見つからぬでおじゃるか……!。全くそち達はやる気があるのでおじゃるか?!」
 禿げ頭の男キャドルは、その日の光に反射して輝く頭頂を布巾で拭きながら苦笑いで
「それが、さっぱりでして……」
 とさらっと答えた。そのやる気の無さそうな態度にフィランディは激怒し、公家訛で叫び散らして叱責する。その度に周囲の人々はぎょっとなってその集団に目をやったが、すぐさまその目を逸らして見ない振りをしていた。
 やがてキャドルはフィランディと別れて次の店に入っていった。それを見たセフィロスもまた店に入る。だが、そこでキャドルは不意に素っ頓狂な声をあげて驚愕した。
「何じゃこりゃ?!。同じオルゴールが九つも有りやがる!!」
 そうなのだ。この店には同じ型のオルゴールが九つも存在していたのだ!。仕方なくキャドルは一つ一つ調べ始めた。が、すぐに埒が明かなくなってこの店のオルゴールをすべて買い取り、全部をフィランディに見せることにした。が、提示された値段のあまりの高さに仰天し、店員に「高いっ!!」と怒鳴りつけた。
「そりゃ仕方ないです……この数では……」
「せめて、こんだけになんねぇか……?!」
「十分の一なんて無茶ですよ!!」
 キャドルと店主のやり取りの中セフィロスは、オルゴールには目もくれずに何か槍もしくはそれに代わりそうなものを捜していた。オルゴール探索は奴等に任せて自分は相手が見つけたそれを横から奪い取ろうというつもりなのだ。意外と悪どく、そしてせこいやり方だった。が、そんな気持ちで捜し物をしても見つかるものではなく、結局見つかったのは、今にも折れそうな物干し竿だけであった。
 ヴァネッサ、ミオ、セフィロスがそれぞれにオルゴール探索を続けているころ、ゼノアはゼノアでオルゴール捜しを続けていた。彼は別にこの事件に関わる必要はなかったのだが、話を聞いてしまった以上放っておく訳にもいかないと感じたのか、とりあえず目についた店でオルゴールを捜して回っているのだ。
 その時、遠くの店から騒ぎ声が聞こえてきた。気になってそちらの方を見てみると、モ・エギが一件の露店を覗き込んでいるのが見えた。本来モ・エギもオルゴール捜しをしていたはずなのだが、やはり彼女にとっては小指ほどの大きさの小箱の区別などつく筈もなく、ついつい目につくものに目が行ってしまうのだ。
 モ・エギは悲鳴をあげる店員の悲鳴に構わず桐箪笥を抱え上げ、それを開け閉めしたりして品定めをしていた。
「良いですね、この木箱……小物入れとして棚に飾っておくのにいいかも……」
「箪笥は棚に飾るものじゃありませえぇぇんっ!!」
 そんなモ・エギを見上げているゼノアの元に、何故かふて腐れた表情のマリンがやってきた。
「おや、どうしたんですかマリンさん?」
「私……[銀貨50枚]なんだって……」
 とある露店を冷やかしていたマリンは、ほかの客に人形か何かと間違われた。その際マリンはわざと人形の振りをして客と店員を驚かせようとした。店員はマリンを見て訝しがったが、客が「いくらか?」と聞いてくるのでとりあえず値踏みして、適当に値をつけた。
「まぁ……こんなんじゃ銀貨50枚がせいぜいってとこでしょうね……」
 その言葉が終わらぬうちにマリンは「ムッキーッ!!」と叫んで暴れ出し、店の中を目茶苦茶にして飛び去っていった。それを見た店員と客は死ぬほど驚いていた。
「と、いう訳ですか……」
「どーしてこんな可愛い妖精が[銀貨50枚]なの?!。マリンだったらもっともぉーっと、高いのにぃーっ!!」
 体全部で怒りを表現するマリンに対しゼノアは、掛けるべき言葉に迷っていた。
 そのころ、クサナギは新たな脅威に立ち向かうはめになっていた。
「だから、私は何も盗ってはいない!」
「いいや!。俺は確かにあんたが小物の一つをくすねるのを見たんだ!!」
 ほうほうの態でようやく喧嘩を止めたクサナギは、次にとある露店で万引きを発見、それを見事に捕らえた。その際、礼を言う店の主人からにオルゴールらしい物が向かいの店にあると聞き、すぐさまその店に向かったのだが……。今度は自分が万引きと間違われてしまったのだ!。
「だから、私が何を盗ったというのだ!!」
 その騒ぎは店の外にまで聞こえ、大勢の見物客を集めた。そしてその中には、ヴァネッサとラフィルの姿もあった。
「ヴァネッサさん、何事でしょうあれは……?」
「関わらない方が良いと思うけど……」
 二人の姿は、店主と良い争いを続けていたクサナギにも見えた。メティアから聞いていた王子の特徴と一致する少年の存在が気になったクサナギはがなりたてる店主を無視してそちらの方に向かおうとした。
「おいっ!。よそ見をするな。俺との話は終わってないんだぞ!!」
「うるさいっ!。大体私がそなたの店から何を盗ったというのだ?!」
 クサナギの問いに主人は胸を張って答えた。
「それはだな!……あれ……すまんっ!。あんた何も取ってないっ!!」
 そう。主人は自分の商品が何も盗られていないことにようやく気付いたのだ。その主人の無礼な態度を徹底的に嗜めたクサナギは今度こそヴァネッサとラフィルの方に向いた。
「僕たちに用事があるみたいですが……」
「あんな疑われるような人に関わらない方が良いわ!」
 クサナギが近づこうとするや二人は人込みの中に紛れるように逃げ出した。それを見たクサナギは「待ってくれ!」と追いかけるが、二人の巧みな逃走に完全に撒かれてしまった。しかもたどり着いた先ではさっき止めた筈の喧嘩がまた再燃していた。仕方なくクサナギはまたも仲裁に入った。
 別の場所では、セフィロスが先の店での探索を諦めて次の店に向かおうとしているキャドルの追跡を続けていた。人込みを巧みに利用した追跡にさしものキャドルも気付くことはなかった。が、そんなセフィロスの足をしっかと掴むものがあった。当然気になってその足元を見てみると、一人の小さな女の子が涙をいっぱい浮かべた瞳でセフィロスを見上げていた。
「グスッ……お母しゃんとはぐれちゃったの……」
 その言葉を聞いたセフィロスは、彼にしては珍しく狼狽した。実はセフィロスはこの手の少女の涙に滅法弱かったのだ。仕方無くセフィロスは追跡を諦め、泣いている少女を市場の入口にいるレバスタンとメフィルの元に連れていった。
「おや、どうしました?」
 セフィロスは少女をレバスタンに預けると、
「こいつが付いてきた。親を捜してやってくれ。じゃ……」
 と言って再び市場に向かっていった。突然の出来事にレバスタンはどうしたらよいのかわからなくなり、仕方なくメフィルに少女の親を捜させることにした。
「では、行ってまいります……」
 メフィルは少女の手を引いてやはり市場に入っていった。そして、自分も迷子になったのかしばらく出てくることはなかった。
 ヴァネッサとラフィルを見失ったクサナギは、巡り巡って自分を万引きと間違えた先の店に戻ってきた。無駄と思いつつクサナギが店の主人に改めてオルゴールについて尋ねてみると……。
「オルゴールですか?……あぁ、それなら、今朝方、他所の店に売っぱらっちまいましたよ。まだ、この骨董市にいる筈ですが……」
 一方、クサナギの追跡を振り切ったヴァネッサ、ラフィルも手掛かりを見つけていた。なんと偶然立ち寄った露店の一つが、クレバランでメフィルから[黄昏の音色]を買い取った骨董商が出している露店だったのだ!。
「ヴァネッサさん、この店です!」
 ラフィルは喜び勇んで店の中に入った。主人はラフィルの顔を知っており、話は簡単に済むと思われた。が……。
「すみません……オルゴールはもう違う骨董商に売ってしまったんです……その骨董商は多分、西の方に露店を出している筈です……!」
「行きましょうヴァネッサさん!!」
 ラフィルはヴァネッサの手を引いて早速西の市場に向かった。そしてその途中……
 この日はミオにとっても最悪の日になっていた。
「掏摸、酔っぱらいの次は……ヤクザ……?!」
 フィランディを見失い、金貨を掏られて茫然となっていたミオは、人込みの中で酔っぱらいに絡まれた。それは何とか退けたものの、今度は厳ついヤクザ者がミオの肩にぶつかり、因縁をつけてきたのだ。
「ねぇちゃんどうしてくれるんだ?俺の肩、骨折しちまったかもなぁ……治療費払ってくれるんだろうなぁ!。何なら、体で払ってもらったっていいんだぜ……!!」
「あたしとぶつかって言う台詞か?!。そのガタイで……!!」
 その下品な言葉を聞いたミオは、地面に蹲ると瞳に涙を浮かべてのの字を書き始めた。
「アタシに体で払えって?。アタシを見てそんなこというなんて、あんた[そっちの気]があるわけ?。全く、掏りに金貨取られるわ、酔っぱらいに絡まれるわ、こっちに来てから碌なことないんだから……挙げ句の果てにはこんな少女趣味のやくざに絡まれて……鳴々、なんて薄幸のアタシ……!!」
「おい、ねぇちゃん……?!」
 半泣きのミオはやくざ者を無視してぶつぶつと呟き続けた。が……。
「おい……何、目に唾つけてブツブツ言ってんだよ……!!」 
「……バレた?」
「……なめとんのかワレェェェェ!!」
「やかましいわっ!!」
 ヴァネッサとラフィルは偶然そんな光景に出くわした。
「大変ですヴァネッサさん!。少女がやくざに襲われていますっ……助けなきゃ!!」
 ラフィルはヴァネッサの手を放すと、今にもいたいけな少女(ラフィルにはそう見えた)を襲わんとしているやくざの前に敢然と立ちはだかった!。一方ミオは、メティアから聞いていた特徴と一致する少年が自分のためにやくざに立ち向かってくれている姿に茫然となっていた。
「やめろーっ!。この子は泣いているじゃないかーっ!!」
 どうやらラフィルはミオが泣いていたと本気で思っているようだ。突然現れた少年に一瞬戸惑ったやくざだが、すぐに気を取り直すとラフィルに向かってドスの聞いた凄みのある声で怒鳴りつけた。
「なんだこのガキャ?!。叙事詩の主人公みたいに助けられると思っているのか!!」
 その言葉にカッとなったラフィルはガムシャラにやくざに突進した。が、月並みの少年と比べても育ちの遅いラフィルが巨漢のやくざ者にかなう道理はなく、襟首を捕まれてあっさりと持ち上げられ、地面に叩きつけられようとしていた。それを見たミオとヴァネッサが急いで助けようとした、その時……。
「止さないか!その子が可哀相ではないか!!」
 ご存じクサナギだった。彼は決まってこういう場面に現れるのだ。それを見たラフィルは顔を輝かせて叫んだ。
「さっきの[万引きの人]!!」
「ちなみに私はやってない!。その話は後だ……ともかく、子供を掴み上げて放り投げるなど。大の大人がやることではないっ!!」
 クサナギの言葉にこちらもカッとなったのか、やくざはラフィルを放すとこの元王子に向き直った。
「だったら、手前ぇから叩きつぶしてやるよ!!」
 それは呆気ない結末に終わった。クサナギは拳を振り上げて向かってくる男に対して自分も構えを取った。クサナギの素手戦闘技術は以前よりも鋭さを増してきており、やくざ者風情の動きなど手に取るように見えていた。クサナギはその[止まって見える]拳を紙一重で回避しようとして
「…………!!」
 そのまま星になった…………。クサナギは避けられる筈の拳に自ら向かっていくように直撃を受け、宙に舞ってそのまま地面に仰向けに倒れた。そのあまりに意外な展開にミオ、ヴァネッサ、ラフィル、そして殴った当のやくざ者までが茫然となった。
「何しに出て来たんだあいつは……?!!」
 偶然通りかかったセフィロスが呟いた。
 暫しの沈黙が解け、やくざ者は憑き物が落ちたかのように、
「……きょ……今日のところはこれで勘弁してやろう……!」
 と、ありったけの気力を振り絞って言い放つと、昏倒しているクサナギに一瞥もくれずに去っていった。それを見たラフィルは申しわけなさそうな顔でクサナギの側に寄った。
「あぁ、僕たちのためにこんなになってしまって、なんとお詫びを申し上げたら……?!」
「ちょっと違うような気がするけど……」
 ミオがさりげなく突っ込みを入れたその時、一行同様ラフィルとオルゴールを捜していたメティアがこちらに気付いて駆け寄ってきた。
「王子!。ご無事でしたか……!!」
「…メティアではないか!。レバスタンとメフィルは一緒なのか……?!」
 ラフィルが王子だと知ったヴァネッサはその場で再び茫然となった。それを見たラフィルは今まで謀っていたことを素直に詫びた。
「すみません……自分の身分は不用意に教えるな、と教えられていましたので……」
 まぁ、これは当然のことだろう。むしろ焦っていたとはいえ自分達の身分を見ず知らずのものに明らかにしたレバスタン等の方が問題なのだ……。ともかく、ラフィルとメティア、レバスタン、メフィルは無事に再会できたことを互いに喜び合い、そして王子を無事に守り通したヴァネッサに改めて礼を述べた。
 合流した一行はそれぞれに自己紹介を済ませ、今後の対策を練った。ラフィル一行の再会は果たしたが、肝心のオルゴールはまだ見つかっていないのだ。そんな中ミオは一人ヴァネッサにこんなことを尋ねていた。嬉しそうな笑みを浮かべて。
「あの……どんな操兵に乗っているんですか……?!」
 …………。
 一行がそんな会話を続けているころ。セフィロスは単独でオルゴール探索を続けていた。そしてその途中、再びフィランディ一行と出会った。彼らは相変わらず集団であちこちの店を回っては、それぞれの店を困らせながらオルゴールを捜しているようだ。
「えぇい、これも違うっ!。いったいオルゴールはどれでおじゃるか……?!」
「お客様……ここにあるのは全部オルゴールでございます……」
「五月蝿いでおじゃる!。麿の捜しているのはこのような紛い物ではないっっ!!」
 セフィロスはとりあえずフィランディを無視して違う店に入った。ここで彼らを追跡したところで、手元に武器がない段階で相手がオルゴールを入手したとしてもそれを奪い取ることができないからだ。ここは何としてでも相手より早く武器かオルゴールを手に入れる必要があった。ところが、ここでもセフィロスは[女難]に逢った。天幕の入口をくぐったところで一人の14〜5の少女がいきなり泣きついてきたのだ。
「兄さん!兄さん……!。一つも売れないこの店を見て哀れだと思いませんか、ねぇねぇねぇ…………!!」
 そのいきなりの[不意打ち]にセフィロスはタジタジとなった。
「何でもいいですから、一つ買ってあげてくださいな……!!」
 仕方なくセフィロスは何か買うことにし、それを少女に伝えた。すると彼女は喜々として掛け軸などを取り出してきた。それを見たセフィロスは慌てて、
「それじゃない!。もっと違う、そう武器は無いか……?!」
 と叫ぶと、今度は飾り立てられた剣を取り出してきた。一応武器らしいものであったのでセフィロスはそれを購入、銀貨50枚ほどを支払った。その価格は通常の長剣の二倍近く。しかも、買ってから気付いたのだがこの剣には刃が付いていなかった。
「無駄な金を使ってしまった……」
 嘆きながらセフィロスは、落ち込みながらも再びオルゴール探索を始めた。その時、先の店を出たフィランディ一行とまたも遭遇し……、彼らの会話を漏れ聞いて驚愕した!。