キャンペーン・リプレイ

第 三十一話 「 音 色 仕 掛 け の 王 印 」 平成12年11月26日(日)

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 同じころ。一行は今まで得た情報を出し合い、オルゴールがありそうな店を絞り出して早速そこに向かった。ところが、ついたその店はなんと瓦落多の山で埋もれており、オルゴールを捜すどころか中に入り込むのでさえ苦労させられるほどの場所だった。
 それでもクサナギは何とか瓦落多のような骨董品を倒さないように店に入り、主人にオルゴールの所在を尋ねた。すると……
「あぁ、そのオルゴールなら今しがた買われましたよ。ほら、そこを歩いている紳士に……」
 それを聞いた一行は主人に礼を述べ、すぐさまその紳士の後を追った。そして紳士に追いつくやすぐにそれが本物かどうかを確認した。
「間違いありません……本物の[黄昏の音色]です!!」
 ラフィルがそれを本物と断定するや、クサナギはすぐさま紳士を呼び止めた。
「待ってくれ!そのオルゴール、私たちに譲ってはもらえまいか?!。それは私たちにとって大事な品なのだ!!」
 クサナギは紳士に自分達の身の上を全部話して聞かせた。ここは本来なら押さえ目に話した方が良かったのかもしれないが、それでは誠意が伝わらない、とクサナギとラフィルの朴念人コンビ(ミオ主観)は考え、すべてを話すことにしたのだ。紳士は[王家の大切な宝物]という言葉に一瞬胡散臭さを感じたが、二人の真剣な眼差しに押され、
「わかりました。それほどのものでしたら……お譲りしましょう」
 と、さして未練無くオルゴールをラフィルに譲ってくれた。

 その後、レバスタンからオルゴールの代金を受け取って去る紳士を見送った一行は、今後の相談に入った。[黄昏の音色]が手に入った以上、もはやここに長居は無用だ。後は一刻も早くクレバランに帰り、王位を継承すればすべては丸く収まるのだ……。
 だが、セフィロスが大急ぎで一行に戻ってきた時に、一行はこの事件が簡単には終わってはくれないことを知った。セフィロスは一行に先のフィランディ一行の話していたことを聞かせた。それは、このような内容だった。
「えぇい、もう我慢がならんでおじゃる!。まだるっこしい捜し物などもうやめじゃ!!。オルゴールなど麿の手でこんな瓦落多市諸共すべて粉砕してくれるでおじゃるわっ!!!」
 それを聞いた一行はフィランディの無茶苦茶な行動にすっかり呆れ返った。そんなことをすれば立場が悪くなるのは自分達の方であることに、なぜ気付こうとしないのだろうか……。
「だが、放っておく訳にはいかない。このままではこの骨董市がやつらに蹂躙されてしまう!!」
 クサナギの言葉と同時に、遠くの方から数機の操兵の駆動音が聞こえてきた。そしてヒュルヒュルとロケット弾のような音が聞こえ、それがこの町の塀に命中して大爆発を起こした。それと同時にフィランディ達の怪操兵[リグジェイラ]三機が一斉に雪崩込み、人々を恐怖と混乱の中に陥れた!!。
「ふ……ふははははは!。こんな瓦落多共など、この麿がみぃんな、踏み潰してやるでおじゃる……!!」
 拡声器越しに聞こえてきたその言葉に、一行はすぐにそれぞれの操兵、武装を整えて迎え撃つことにした。この様な狂人を捨て置くわけにはいかない……。
 フィランディの狂った言葉に、後からアルシュバリエで追いかけてきたザーフィが慌ててそれを諫めようとした。
「お待ちください若っ!。ここは外国ですぞ!!。こんなことをしてしまっては、我らの立場が!!!」
 だが、この狂った若はお付きの言葉に一切耳を貸さなかった。
「ここのものを皆殺しにすればすべて済むことだ!。それに麿が王位に着けば、すべてはしたい放題でおじゃる……!!」
 操兵の足下では、ゼガとキャドルが残りの美少年を引き連れていた。
「最初からこうすりゃよかったんだ……!!」
 キャドルのボヤキを聞きながらゼガも答える。
「ホントにここまでやっていいのかよ……?。まぁ、俺は暴れられればそれでいいんだがな……」
 そして美少年達も口々に、
「すべてはフィランディ様が偉大な王になられるため!!」
 と、恥ずかしげもなく叫んでいた。
 部下の声援を受け、リグジェイラは露店を踏み潰しながら市内へと侵入してきた。辺りでは骨董商の悲鳴が飛びかっている。
「わぁ!。俺のコイマ・リーの皿がぁ……!!」
「私の舞千と怒流屯の壺が……!!」
 人々はそれぞれに大切な骨董品を抱えながら逃げ惑った。
「これが奴の本性ですっ!。こんな奴に国を乗っ取られたら、大変なことになりますっ!!」
「あんたの国許はどーしてあんな奴を放ったらかしにしていたのよっ!!」
 ラフィルの叫びに思わず叫び返したミオは、すぐさまウォークマンデに乗り込んだ。
 一方、新造古操兵ファルメス・エルグラーテAZを起動させたクサナギの元にゼノアとマリンを連れたモ・エギが駆けつけてきた。
「クサナギさん!、私たちは町の人の避難を手伝いますっ!」
「そうしてくれっ!。私たちは奴らを食い止める!!」
 その時、同時にブラッティマリーを起動させようとしていたヴァネッサがモ・エギを見て一瞬悲鳴をあげそうになった。
「なんて巨大な少女なの……?!」
 どうやらヴァネッサは御仁を見るのは初めてのようだ。
「大丈夫。モ・エギは私たちの[仲間]だ!」
 クサナギはヴァネッサを安心させるためにモ・エギを紹介した。だが、次のマリンの言葉にクサナギとモ・エギは思わず顔を赤らめた。
「[妻]じゃなかったの?」
 とにかく一行は素早く武器を取り戻し、それぞれの操兵を起動させるとすぐさま市内に赴き、暴れるフィランディ一味の前に立ち塞がった。
「ははははは……すべて燃えてしまえぇぇぃっ!……て、何者でおじゃるかそち達はっ?!!」
「これ以上、町を破壊させる訳にはいかないっ!」
 クサナギの叫びにフィランディは嘲りを含んだ笑みで答えた。
「どこの田舎剣士かは知らぬが、そち達は麿に逆らうつもりでおじゃるか……?!」
 取り巻きの美少年達も一斉にがなり立てる。
「貴様達!。ここに居わすお方を誰と心得ている!!」
「クレバランにその人有りと謳われた美しく尊きお方、[次期国王陛下]フィランディ・ゼス・ザイクバル様に有らせられるぞっ!!」
「頭がたかぁい……!!」
 だが、一行は特に何の反応も示さずに沈黙していた。それに腹を立てた美少年が思わず叫ぶ。
「こらっ!。ちょっとは驚けっ!!」
 それに対してクサナギも、
「確かクレバランの次期国王陛下といえば、それはラフィル殿下ではなかったか……?!」
 と、強気の返事を返した。
「こ奴らは少し勘違いをしているようでおじゃるなぁ……何を根拠にそのような[戯れ言]が言えるでおじゃるか!!」
 その言葉にラフィルは、[黄昏の音色]をフィランディに見えるように高く掲げた。だが、それを見たこの狂った美少年の表情は変わらなかった。
「そんなもの……壊してしまえば無いも同じじゃ!!王子の肩を持つ者共など、すべて皆殺しにしてくれるでおじゃるっ!!」
「何という卑劣漢……!!」
 クサナギはカッとなってエルグラーテAZを前進させようとした。が、足下にいたセフィロスが叫んだ。
「おいっ!。町の中で戦闘を始める気かっ!!」
 それに続いてゼノアも叫んだ。
「クサナギさんっ!。あの手の奴はちょっと挑発すればすぐに付いて来ますよっ!!」
 その言葉に冷静さを取り戻したクサナギは、まずは敵を町の中から誘い出すための行動を開始した。まずミオが「相手が王家って名乗るならそれを利用したら?」と助言すると、それを受けたクサナギはエルグラーテAZに御仁の太刀を引き抜かせ、フィランディの操兵にその切っ先を向けて高らかに名乗りを挙げた。
「そなたのような[下賤な]者に名乗るつもりはなかったが……!。我が名はクサナギヒコ・ディス・グラーテ!!。グラーテ王国の王子なり!!」
 クサナギはここではあえて[元]をつけなかった。そうすることで自分が[王家のもの]であることを強調し、フィランディを挑発できると考えたのだ。が、そんなクサナギの名乗りを聞いたフィランディは全く気に留めた様子もなく、
「おい。グラーテの谷という国など、聞いたことあるでおじゃるか……?!」
 と、取り巻きの美少年達に問いかけた。それに対して彼らは口々に、クサナギを罵るようにこう言った。
「いいえ。聞いたことなどございませんが……!」
 しかしその時、ザーフィがアルシュバリエをフィランディのリグジェイラに近づけて叫んだ。
「若!。クサナギヒコといえば、あの噂の[ライバ救国の英雄]!。とても若では勝ち目は……!!」
「黙れっ!。あの[仮面の男]がくれたこのリグジェイラは素晴らしい操兵でおじゃる!。あんな汚らしい操兵などに負けはせぬわっ!!」
「だぁれが汚い操兵だってぇーっ?!!」
 今のフィランディの言葉を聞いたミオは完全に頭に来た。そしてエルグラーテAZを押し退けてウォークマンデを前進させた。
「どんなに操兵が良くたって、中に乗ってる操手が[ヘボ]じゃしょうがないのよっ!!」
 拡声器最大にして叫ばれたその言葉に今度はフィランディがカッとなった。そしてさらに次のクサナギの言葉が拍車をかけた。
「止せミオ。このような者をまともに相手にしてはかえってこちらが[変]になる……!」
「そうよね!。こっちが[疲れる]だけだものね……帰ろうクサナギ……!」
 フィランディの堪忍袋の緒が音を立ててぶち切れた。
「おのぉれおのれおのれおのれぇぇぇ!!重ね重ね無礼な奴!!。いいだろう……それならば麿の操兵の実力、たっぷりと[ここで]見せつけてやる!!」
「ここじゃなぁい!!」
 思惑通りに敵が町から出てくれないことに苛立ち、ミオが思わず叫ぶ。だが、ここまで来れば挑発そのものは楽であった。フィランディはクサナギの
「ならば表に出て、正式な[決闘]をしようではないか!!」
 と言う言葉に乗せられ、手下すべてを引き連れて町の外の荒野へと出た。一行もそれを追い、やはり町の外に出て戦闘態勢を整えた。
 一方モ・エギとマリンは町の人々を何とか戦闘から遠ざけようと誘導する。そんな中、ゼノアはフィランディ達の操兵の正体が気になった。
「何でしょう、あの機体は?……唯の改造機では無さそうですね……」
 彼らの操兵[リグジェイラ]は全体的に丸みを帯びた装甲で覆われ、その背には外套で隠されているが、何か箱のようなものを背負っている。そして一番目立った特徴は物を掴むための手首が全く見当たらず、代わりに何か発射口のようなものが四つほど確認できたことだった。
「ガトリングやマシンキャノンは構造上無理がある筈だから、何か破砕鎚のような物が隠されているのでしょうね……それ以外の武器としては、両腕の格納式鉄斬爪くらいのものか……」
 そんなゼノアの思案を他所に戦闘が始まった。リグジェイラとエルグラーテの距離は約10リート。相手は様子見のためかとりあえずは近づいて来ない。クサナギはエルグラーテに盾とオートカノンを装備させる。距離があるうちに先制をかけておこうというのだ。が、動きそのものは敵の方が早かった。そしてそれによって、リグジェイラの背中の箱の正体も発覚した。
「粉々に砕け散るでおじゃる!!」
 三機のリグジェイラは一斉に外套を切り離し、背中部の箱をせり起こした。それはすべて六連装ロケット砲、しかもそれは各ニ基ずつ装備されていた。ロケットはそれぞれエルグラーテ、ブラッティマリー、そして人々を避難させているモ・エギに向けて発射された!!。
 だが、フィランディのロケットは発射されることはなかった。発射装置の不調か、あるいは火薬の不良かはわからなかったが、とにかく不発だったのだ。暴発こそはしなかったものの、これで彼の操兵のロケットが使用不能に陥ったのは間違い無い。そしてブラッティマリーを狙った攻撃も、ヴァネッサが取らせた回避運動によって全弾が外れてしまった。
 しかし、モ・エギは自分に向けられたロケットを回避することができなかった。いや、やろうと思えば簡単に回避できるのだが、今それを行えば避難している人々の中にロケットが飛び込んでしまうのだ。ここはあえて受けるしかない。そして六発のロケットはモ・エギの背中に全弾命中した!。
「きゃあぁぁぁぁ!!」
 モ・エギは悲鳴をあげつつも人々を庇い、倒れないようにその攻撃に耐えた。実際その負傷はかなりのものだったが、その受けた傷そのものは時間が経てば再生してしまうので問題はなかった。が……
「ふ……服が燃えちゃううぅぅ!!」
 別に燃えていることで再生能力が低下してしまうわけではない。モ・エギが気にしているのは服そのものだ。彼女は服の予備をほとんど持っていない。ここでそれが燃えるということは大変なことなのだ。
「よくもモ・エギをっ!」
 背中についた火を必死に消すモ・エギを見たクサナギは、彼女をそんな目に合わせた美少年に怒りを覚えた。そしてロケットモーターを始動させてエルグラーテAZを飛翔させ、展開した砲とロケットをリグジェイラに向けて一斉に発射した!。その怒りを込めた砲撃はリグジェイラの装甲を砕き、さらには駆動系にまで被害を与えた。機体自体はまだ稼働してはいたが、操手槽内部ではあまりの衝撃と痛みに美少年がのたうちまわっていた。
「ぼ……僕の顔がぁーっ!!」
「なんじゃとっ!。それではそちの[価値]がなくなるではないでおじゃるかーっ!!」
 その悲鳴を聞いたフィランディは怒りのあまり叫ぶ。そんな[若]を諫めるためにザーフィがアルシュバリエで近づき、そのまま背中から押さえ込もうとした。
「若!。もういい加減になさいませ!!」
 だが、このトチ狂った当主は腹心の必死の言葉に耳を貸さず、「どけっ!!」と叫ぶと背中部にしがみついているアルシュバリエを突き飛ばし、空中に飛び上がったままのエルグラーテに近づくために前進を開始した。
「操兵が……空を飛んだ……?!」
 エルグラーテAZの飛行は敵ばかりでなく、ヴァネッサをも驚かせていた。まぁ、短時間とはいえ空中に飛び上がれる操兵は今のところはエルグラーテくらいのものだから(最近はディノジェイラのような[例外]もいたが)、驚くのは無理もないが……。
 だが、関心ばかりしてはいられない。相手にロケット砲がある以上、まごついていたらこっちがやられる。そう考えたヴァネッサは自機にも砲撃態勢を取らせ、迫り来るリグジェイラのうちもう一機に狙いを定めた。そして両肩部、両脚部にそれぞれ装備された四連ロケット砲と頭部、胸部に装備されたガトリングガンをこちらも一斉に撃ち放った!!。
「なんて大袈裟な装備だ……!!」
 美少年が思わず呟いたが時既に遅し。その反撃のロケットとガトリングの雨はリグジェイラの頭上に降りそそぎ、この哀れな操兵は装甲と腰の骨格すべて砕かれ、完全に沈黙した。
 エルグラーテの攻撃を受けながらもまだ動いている方のリグジェイラは、今の光景を目の当たりにして気が狂わんばかりに叫んだ。どうやら(というよりは当然)彼らはまともな実戦は初めてのようで、しかも良い機体に乗っていることもあってか余計に格の違いを見せつけられた形となったので無理もなかった。だが、後ろには怒りに興奮する主人がいるのだ。ここで逃げる訳にもいかなかった。
 自棄になった美少年はリグジェイラを突進させた。そして両腕の鉄斬爪を展開させ、そのままブラッティマリーに格闘戦を挑もうとした。
 が、そうはさせまいとしたものがいた。ミオのウォークマンデだった。彼女はエルグラーテ、ブラッティマリーが戦闘を続けている間ずっと、新装備[蒸気輪]のための蒸気充填を続けていたのだ。この蒸気輪は以前ディノジェイラに装備されていたものを転用したもので、蒸気の力で鉄輪を回転させ、それによって高速走行を可能にしている。しかも元のワークマンデはディノジェイラよりも軽量のため、走行時間が若干長くなっているのだ。 
 だが、一見便利なこの機能にもまだ問題はあった。高速走行時は機体が不安定になるために操縦性が一気に落ちるのだ。両肩部に増加装甲を装備することで安定性を保ったが、それでも重量増加による機体の敏捷性の低下は避けられなかった。そして他にも、走行時の方向転換が難しいことや、延長されたといっても不安定な走行時間など、まだまだ問題が残されていたのだが……。
「さあて、無事に動いてちょうだいね……!」
 ミオは深呼吸して起動レバーを引き、駆動版を思い切り踏んだ。そしてそれに答えるかのようにウォークマンデはものすごい急加速で前進を開始した!。
「うっひゃあぁぁぁぁ!!」
 ミオは衝撃に悲鳴をあげながらも、必死にウォークマンデを操作してそのままリグジェイラに向けて機体を突っ込ませた。そして擦れ違い様に鉄棍を振り回し、そのまま敵機を押し倒すように叩きつけた!。美少年は一瞬何が起きたのか理解できず、そしてその状態のまま機体は地面に倒れた。だが、まだ機体は生きていた。(あんなでも)主君に忠実な美少年は何とか機体を立ち上がらせようと必死になった。