キャンペーン・リプレイ

第 三十一話 「 音 色 仕 掛 け の 王 印 」 平成12年11月26日(日)

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 操兵戦が続いているころ、市場の中でもひと戦闘が起ころうとしていた。フィランディが戦っている間にオルゴールを破壊しようと暴れていたゼガ、キャドル率いる美少年軍団の前に、セフィロスが立ち塞がったのだ!。
「なんだ手前ぇは?!……たった一人で何をしようって言うんだ若僧……!!」
 キャドルの挑発にもセフィロスは動じることなく、
「それ以上やるのなら、俺を倒してからにしたらどうだ……?!」
 と、凄みを利かせて破斬槍を構えた。それを見たキャドルは、「何だこいつは……?!」と訝しがる。だが、ゼガは破斬槍を見た途端ニヤリと笑みを浮かべた。
「待て。こいつの噂は聞いている。確か、この辺りでは有名な槍使い……[蒼き神槍]セフィロス……!!。面白い……一度手合わせをしてみたかった!!」
 キャドルはその言葉に一瞬たじろいだが、すぐに嫌らしい笑みを浮かべると短剣を弄びながらこう言った。
「だが、いくら[神速]といっても、集団でかかれば……!」
「いや、一対一だ!!」
 そのゼガの言葉にセフィロス、キャドル、美少年は驚いた。
「お前達は集団でいたぶるのが得意じゃなかったのか?……」
 セフィロスの挑発とも取れる問いに、ゼガは余裕の笑みで答えた。
「それはこいつらだけだ!」
「何だと?!!」
 今の言葉に怒りを覚えるキャドル、美少年ズを無視してゼガは言葉を続ける。
「お前のような偉丈夫、集団で倒すにはもったいない。俺は実力を試すためにこの地に来たのだが……まさかお前のような大物に出会うとは思わなかったぞ……!」
 ゼガはそう言いながら、腰溜めに拳を構えた。
「セフィロス……お前には、俺の名を上げる[土台]になってもらう!。お前を倒せば、この辺りでは最強と呼ばれるだろうからな……その自慢の槍、へし折って見せよう!!」
「やれるものなら、やってみるがいい!!」
 キャドル、美少年が取り囲む中、セフィロスとゼガが対峙した。セフィロスは破斬槍を構え直した。それに対してゼガは腰の小剣を抜かずにそのまま拳を構えた。どうやら彼は実際には格闘家のようだ。おそらくは槍の間合を警戒して今は防御態勢を取っているのだろうか……。
 いや、狙いはそれだけでは無いようだ。ゼガはセフィロスに向けてこんなことを呟いた。
「お前には、槍の弱点を教えてやろう……!!」
 その瞬間、セフィロスが動いた。腰溜めに構えた槍を突き出し、そのままゼガに突撃を敢行したのだ。もし、これが決まればゼガは一撃の元に天に召されることになるだろう。だが、この格闘家はその瞬間を狙っていた。何とその槍を脇腹に抱え込むように押さえ込んだのだ!!。これでは、自慢の破斬槍は封じられたも同然だった。
 しかし、そう思ったのはゼガ一人だった。脇腹に抱えこんだと思っていた槍は、実際にはゼガの脇腹をまともに貫いていたのだ!。
「至近距離で敵に掴まれた槍は、何の……役にも……ごふっ!!」
 勝利を確信したような笑みでそう呟いたゼガは、血を吐いてそのまま絶命した。自分の身を犠牲にしてまでセフィロスに[槍の弱点]を講釈しながら……。
 この一瞬の光景にキャドルと美少年三人は唖然となってしまった。そしてそんな四人にセフィロスは鋭い目を向けて言い放った。
「次は誰だ……!!」

「おのぉれおのれおのれおのれぇ!……こうなったら、麿自らの手で手討ちにしてくれるでおじゃるっ!!」
 次々と部下が倒される様を見て激怒したフィランディは、自機を空中に飛ぶエルグラーテAZの下まで前進させた。それを見たクサナギは武器をオートカノンから御仁の太刀に切り替えようと操作する。空中ならばそれを邪魔されることはないと考えたからだ。だが……
「飛行装置がそちだけの専売特許だと思うなぁっ!!」
 この言葉にクサナギやミオは驚愕を覚えた。まさかエルグラーテ、ディノジェイラ以外にも飛行可能な操兵が存在していたなど……実際には、この機体に搭載されている飛行装置は固体燃料による使い捨てのもので、性能はエルグラーテのロケットモーターよりもかなり劣るものなのだが、それでも今の無防備な状態のエルグラーテAZにとっては厄介な状況には変わらなかった。いったいフィランディは何者から操兵を手に入れたのだろうか……。
「そうはさせないっ!!」
 だが、その行動は実行に移されることはなかった。ヴァネッサがフィランディの行動に咄嗟に反応し、ブラッティマリーに剣を抜かせてリグジェイラに攻撃を加えたのだ!。その一撃は装甲に阻まれて大した打撃は通らなかったが、それでもリグジェイラの飛行そのものを阻止することはできた。攻撃を受けたフィランディは余裕の笑みを浮かべてこう言った。
「そんな攻撃……避けられるものかぁ……!!」
 そしてその言葉の直後、悔しそうな表情に変わった。

 ゼガを倒したセフィロスにも次なる敵が待っていた。予想よりも早く美少年達が態勢を立て直してセフィロスを取り囲んだのだ。しかも厄介なことにセフィロスはゼガを倒した油断からか、この美少年達の素早い行動に反応し切れずに完全な防御姿勢を取ることができなかったのだ!。セフィロスはここで流派の技の一つ[真舞(しんのまい)]を試みた。この技は相手の攻撃を完全に[見切り]つつ、同時に複数回の攻撃を繰り出すという、まさにこの状況にぴったりのものだった。
 だが、ここで更なる攻撃がセフィロスを襲った。キャドルが美少年の援護(本当にその意思があったかどうかは別として)のために手にした二本の短剣を投げつけてきたのだ!。一本一本は大した打撃ではないものの、二本同時に受ければ致命傷となる場合もある。しかも、相手が手練れの短剣使いなら二本同時に急所を狙うことも可能なのだ!。
 真舞で見切れる回数には限度がある。セフィロスは四回の[見切り]を短剣三本と美少年一人に回してそれらの攻撃をすべて退け、残り二人の美少年の攻撃は普通に身を翻してかわそうとした。が、不完全な防御体制でそれをかわせる筈もなく、二人の小剣をすべて受けてしまった!。幸い一人目の攻撃は防具で弾いたものの、もう一人の攻撃は背中に直撃してしまった!!。だがその時、セフィロスの背中で何か金属のようなものが砕ける音がした。そしてセフィロス自身も攻撃を受けた筈なのにほとんど傷を負っていないことに気付いた。なんと偶然にも、今の攻撃は先の骨董市の店で購入した飾り物の剣に命中し、それによって打撃が相殺されたらしい。
「銀貨50枚に助けられたか……」
 そう呟いたセフィロスは、反撃の槍を振るい美少年のうち二人を一瞬のうちにその槍で打ち伏せた。残る一人も返す槍で蹴散らして、次に再び短剣を構えたキャドル目掛けて走る!。それに対してキャドルは手にした短剣を今度は投げずに、両腕を広げるように構えて「蒼き神槍」を迎え撃った!。だが、これはセフィロスを誘う罠だった。寸前でそれに気付いたセフィロスではあったが時遅く、キャドルは神速の槍が届くその前に宙に跳んだ!。しかし、セフィロスはキャドルを逃がすつもりはなく、その槍を飛び越えるキャドルに突き立て、この短剣使いを重症まで追い込んだ!。それでも、キャドルの執念は体が気絶するのを許さなかった。セフィロスの頭上を過ぎる瞬間、両手に持った短剣の間に仕込まれた綱線を彼の首に巻きつけ、その体を背負うようにそのまま着地したのだ……!!。

「つ……強い……だが、我らのフィランディ様のために、ここは負けるわけには……」
 戦闘が佳境に入ろうとしている時、ウォークマンデに突き飛ばされた美少年は、何とか機体を立ち上がらせてフィランディに加勢しようとした。が、彼の身にまたも不幸が訪れた。
「どいてどいてどいてえぇぇぇ!!」
 膝立ちのリグジェイラの後方に蒸気輪で爆走するウォークマンデが迫ってきたのだ!。別にミオにはぶつける意思はなかった。だが、不幸なことに、たまたまウォークマンデが軌道を変えたところにまたもリグジェイラがいただけのことだったのだ。そしてウォークマンデに再び突き飛ばされた美少年はまたも機体を立ち上がらせようとするが……
「往生際が悪いよ、あんた……!!」
 ミオはウォークマンデの鉄棍でその死人のような操兵に止めを刺した……はずだった。なんとこの局面でウォークマンデが均衡を崩したのだ!。
「こっ……この後に及んで仮面に嫌われてるぅーっ!!」
 一方、飛行の邪魔をされたフィランディはその怒りの矛先をヴァネッサに向けた。
「そっちがその気なら、まずはそちから片付けるでおじゃるっ!!」
「それはこっちの台詞だっ!!」
 先に動いたのはクサナギだった。クサナギはエルグラーテAZに御仁の太刀を構えさせると、そのままブラッティマリーに攻撃を加えようとしているリグジェイラの頭上に落下させ、その重量と落下エネルギーを乗せた一撃を見舞った!。が、フィランディの完全な防御姿勢と、美少年達の乗っていた機体よりも高い耐久力のせいで決め手となる程の打撃を与えることができなかった。
「調子に乗るなぁ!!」
 フィランディはそのまま鉄斬爪をブラッティマリーに突き立てた!。が、こちらも完全な防御姿勢と増加装甲によってやはり防がれる。しかし、ヴァネッサの反撃の剣もまた、リグジェイラの装甲の前に弾かれてしまった。
 攻撃力に限界を感じたヴァネッサは、ブラッティマリーの左腕部の盾を切り離した。回旋棍を装備させて得意の同時攻撃を繰り出そうというのだ。ところが、武器の換装と同時に攻撃を繰り出そうと慌てて操縦したために思わず武器を落としてしまった!!。結局ヴァネッサの行動は盾を失い、防御力を低下させるだけに留まってしまった。
 それを見たクサナギはエルグラーテAZを着地させ、爆砕槍の充填に入った。敵の頭目であるフィランディを倒せばこの戦闘は一気に決着がつく。クサナギはこの一撃でケリをつけるつもりだった。
 エルグラーテAZが着地したのを確認したフィランディは、リグジェイラの両腕部の鉄斬爪を展開、エルグラーテとブラッティマリーに対して同時攻撃を狙った。だが、駄々っ児が両腕を振り回しただけのような攻撃が命中する筈もなく、その鋭い筈の爪はただ、宙を掻き切るだけだった。

 操兵戦が有利に進む中、キャドルの仕掛けた綱線によってセフィロスが思いも寄らなかった危機に陥っていた。セフィロスは今、完全にキャドルの背に背負われる格好となっており、首に巻きついている綱線が自らの体重とキャドルの両腕の力で締めつけられ、徐々にではあるがセフィロスは体力と耐久力を確実に奪われていった。
 だが、危機的状況に陥っていたのはキャドルもまた同じであった。先のセフィロスの槍によって切り裂かれた傷は確実にキャドルを重症に追い込んでおり、しかも自分の今の行為はセフィロスのみならず、自分の体力をも奪っているのだ。それでもキャドルが立っていられるのは、一重に勝利と生への強い執着だった。
「どっちが先にくたばるか、勝負しようや……!!」
「もちろん、くたばるのはお前だっ!!」
 セフィロスは破斬槍の穂先付近を逆手に持ち、背中にいるキャドルに向けて繰り出した!。が、やはりそんな不安定な体制でしかも自分の視界外にいる相手に対してはなかなか命中するものではなかった。そしてその間にも、綱線はじりじりとセフィロスの首に食い込み、死への秒読みを着実に進めていた。
 その時、朦朧としかかったセフィロスに、避難を続ける人々から聞き覚えのある二人の女性の声が声援を送った!。
「お兄ちゃん!。負けちゃだめっ!!」
「兄さん!、ここで負けたら男が立たん!!」
 一人はセフィロスが途中で拾った迷子の女の子、もう一人は剣を売りつけた露店の少女の声だった。そして声援の声はもう一つ聞こえてきた。
「(……セフィロス様……!!)」
「何でここにいるんだぁーっ!!」
 それは、ここにいる筈もないレイムの声だった。実際それは幻聴だったのだろうが、それでもこれらの声に意識を取り戻し、セフィロスは再び攻撃を開始した。しかも今度は無理やり[繰り手]を使用、複数回の攻撃を繰り出そうとした。だが、この技は使うだけで余計な体力を消耗するという、この状況ではとても危険な賭けでもあった。
「最後に勝つのは、この俺だぁ!!」
 キャドルは精神力を振り絞って綱線を握る拳に渾身の力を込めた。それは体力をぎりぎりまで削っていたセフィロスをもう少しで重症に追い込もうとしていた。が、ここで数回に渡って繰り出された破斬槍の穂先のうち一つがついにキャドルを捕らえ、セフィロス以上に体力と精神力を使い果たしていたキャドルはその一撃に耐え切ることができなかった。
 綱線が緩んだ途端セフィロスはつんのめるように地面に倒れた。そしてキャドルは(俺はこいつを絞め殺したんだ!)といわんばかりの満足そうな笑みを浮かべて地面に伏した。

 操兵戦も終盤を迎えていた。武器を失ったヴァネッサは、攻撃手段をガトリング三基による集中射撃に切り替えた。一つ一つの打撃は少ないものの、三基を集中すればかなりのものとなる。いくら優秀な操兵でも無傷というわけにはいかないだろう。
 そしてほぼ同時にクサナギも行動を起こした。充填が完了した回旋爆砕槍をリグジェイラに向けて射出したのだ!。
「これでそなたは終わりだっ!!」
 爆砕槍の強烈な一撃とガトリングによる攻撃は、フィランディのリグジェイラを完全に粉砕した。
「フィ……フィランディさまぁーっ!!」
 残った美少年はボロボロの機体を立ち上がらせて主人の元に向かおうとした。が……
「しつこいよ、あんた!」
 と呟くミオのウォークマンデの鉄棍に操兵の後頭部をどつかれ、結局それが止めとなって彼の機体はようやく稼働停止に陥った。
 すべての戦闘がようやく終了した。だが、この狂った美少年はまだ自分の敗北を認めようとはしなかった。スクラップに成り果てた自分の機体の残骸を押し退けて立ち上がると、手にした拳銃をエルグラーテに向けて叫んだ!。
「まだ麿は負けてはおらんぞっ!!」
 パンパンと軽い音を立てて発射された銃弾は、エルグラーテ、ブラッティマリーの装甲の上でむなしく弾けるだけだった。
「どうしてみんな、麿の邪魔ばかりするのじゃあぁぁぁ!!」
 フィランディは気が触れたように笑いだし、弾がすべて撃ち尽くされても引き金を引き続けていた。それを見たザーフィはようやくアルシュバリエを立ち上がらせ、哀れな主人を見下ろすエルグラーテに向けて剣を向けた。
「若ぁぁ!!」
 そんなザーフィを見たクサナギは、太刀を収めて呟いた。
「もう、やめようではないか……」
 それを聞いたザーフィは一瞬アルシュバリエをエルグラーテに飛び掛からせようとした。が、すぐにその気が失せたのか機体を降り、力なくその場に両手をついて項垂れた。クサナギが初めて見る彼は、白髪の老人のようだ。
「ザイクバル家は……もうお仕舞いだ……」
 そこに人々の避難を支援していたレバスタンが駆けつけ、ザーフィを見て呟いた。
「あんなに髪が真っ白になって……苦労したのだろうな……」
 クサナギはフィランディとレバスタンを見比べ、思わず呟いた。
「あのような主人の元で仕えたために……何という悲劇だ。これが、[騎士道]というものなのか……」
 それを聞いたヴァネッサは心の中で、
「(……違う……断じて違う……!!)」
 と、同じ騎士として叫んでいた。
 そこにモ・エギとマリン、ゼノアがラフィル、メティア、メフィルを連れて一行の元に戻ってきた。クサナギを見るやモ・エギは自分の背中を見せて叫んだ。それは、すっかり焼けて背中を丸出しにしてしまった無残な服だった。傷そのものは完全に再生治癒してしまい痕跡すら残さなかったのだが、モ・エギは服そのものの方を気にしていた。
「あ〜あ……見てくださいこの服!。人間の街ではなかなか予備が手に入らないんですよぉ……!」
「そうゆうのはね、[誰かさん]に買ってもらいなさいっ!」
 ミオがクサナギに聞こえるように呟いた。
 そんな一行の元にラフィルが[黄昏の音色]を持ってやってきた。
「皆さん、ありがとうございました。これで王国は守られました!。でも、結局この[王印]は必要なくなってしまいましたが……」
 ラフィルはそう言って、[黄昏の音色]の鍵穴に自分が所持していた鍵を差し込んだ。そしてその鍵を右に回して蓋を開ける。すると、軽やかでかつ重厚な音色が奏でられ、同時に中に仕掛けられた幻燈器が蓋の後ろの鏡に[クレバラン王家の紋章]を写し出した。おそらくはこの反射した紋章を壁に当てるのだろう。
 だが、ラフィルの言う通りこの王印はもはや必要がなくなっていた。そう、問題のザイクバル家はこの騒動を起こした張本人としてこのアクラの町で裁かれるのだ。二度とクレバランには帰れないであろう……。要するに彼らは、自分達で自分達の首を絞めてしまったのだ。
「こんな結果になるなら、初めからこうしてればよかったんだ!」
 思わずセフィロスが叫んでいた。
 その後、町の復旧が始まった。だが、破壊されたのはほとんどが骨董市であり、それゆえに被害総額は尋常ではなかった。
「俺のシガラーキ返せっ!!」
「私のコクータ・ニを返してよっ!!」
 生き残ったフィランディ一味は町の人々の罵声を浴びながら連行されていった。その時、ゼノアがフィランディとザーフィに駆け寄った。
「あなた達はいったい誰からあの操兵を手に入れたんですかっ?!!」
 ゼノアの目から見たリグジェイラは唯の改造操兵ではなかった。彼としては何としてでもその正体を明らかにしたかったのだ。だが、彼らは既にその質問に答えるだけの気力を残してはいなかった。そう、敗北のショックと人々の罵声の中でほとんど廃人と化していたのだ。本当にそれだけの理由かどうかは定かではないが……。
 そんなこんなで一行が落ち着いたころ。ラフィル、メティア、レバスタンとメフィルはクレバランに帰国することになった。この件が片付いた以上、一刻も早く王位を継承し、国の混乱を収めなければならないのだ。
「皆さん、この度は僕たちの王国のみならず、この町の人々も救ってくださって、本当にありがとうございました。僕はあなた達のご恩に報いるために、立派な王としてクレバランを小さいながらも豊かな国にしていきたいと思いますっ!」
「そなたなら、立派な王になれるだろう……!」
 クサナギの言葉にレバスタンも言葉を返す。
「我が国にはまだまだ問題も多うございますが、何、殿下、いや、陛下なら大丈夫。きっと我が国をいい国にしてくれるでありましょう……」
「すいませぇ〜ん。もともとは私が王印を売ってしまったのがいけないんです〜……」
 メフィルの言葉にミオが、
「あんた、他にも古びた王錫とか、埃をかぶった王冠とか売っちゃっていないでしょうねぇ……」
 と、からかうように言った。それに対してメティアが、
「まぁ、王印があれば他のものはどうとでもなりますから……」
 と、助け船にならない助け船を入れた。そんな中、ラフィルはヴァネッサにこんな申し出をした。
「もし、あなたがよかったら、僕の国に来てはくれませんか?」
 だが、ヴァネッサはそれをやんわりと断った。
「私はあの方達に興味を覚えてしまったので……」
 そう言ってヴァネッサは一行の方を見た。そこでは、結局[依頼人]でありながら買い物を楽しめなかったことで落ち込んだゼノアをモ・エギが手に乗せ、そしてマリンがゼノアの肩に乗って慰めている光景が見えた。また、セフィロスの元には迷子の少女と露店の少女が駆け寄っていた。
「お兄ちゃんって強かったんだぁ!」
「私の銀貨50枚の剣、役に立ってくれましたか!!」
 そして町長から感謝の握手を受けているクサナギの近くでは、先のやくざ者が叫んでいた。
「あのガキが[英雄]クサナギヒコ……すると俺様は、[クサナギヒコを倒した男]!!」 
 このやくざ者は生涯、この[事実]を人々に語って聞かせたが、誰一人としてその話を信じるものはいなかったという……。
 そんな中ミオは、倒した操兵の残骸を集めて使えそうな部品を吟味していた。まるで、それ以外の何もかもが見えていないように……。
 そんなもの達を見ながらヴァネッサは心の中で呟いた。
「(……空を翔る操兵……巨大な少女と小さな少女……そしてとてつもない槍使い……いったいこの人達は何者なの……?!)」
 だが、ラフィルの前では表情には出さなかった。
「そうですか……では、何かの折に、僕たちの王国に来てください!。僕たちはいつでも歓迎します!!」
 そして新たなクレバランを作るためにラフィル、メティア、レバスタンとメフィルはそれぞれに礼を言って旅立っていった。そして一行も、町の人々に見送られながらライバへと帰還していった。


 いや、まだ終わってはいなかった。人込みの中でこの事件の一部始終を見ているものがいた。例の派手な半仮面の男と総仮面の人物だ。
「どうやら、あの様子では口封じの必要もなかったか……それとも、これもお前の仕業か……?」
 その言葉に、仮面の人物は何も答えなかった。
「まあいい。あの者達が正気に戻っても、何も分かりはしまい……それにしても……」
 半仮面の男は忌ま忌ましげに去り行く一行、特にエルグラーテに目をやった。
「あれが私の[開発]した操兵を二度に渡って破壊してくれたエルグラーテなる操兵か……いや、これで三度めか……」
 その時、外套に身を包んだ少年が半仮面の男の側にやってきた。
「あの機体は、僕にくれるんじゃなかったのかい?」
 その少年はクサナギと二度に渡って戦い、そして敗れたクロウ少年だった。そのクロウに半仮面の男は恭しく頭を下げた。どうやら立場的にはクロウの方が上のようだ。
「いいえ……あれはあなた様にふさわしい操兵ではありません……現にあのような結果に終わりました。そもそも、あなた様に献上したディノジェイラが負けたのは三対一の不利な戦いだからにございます。一対一なら、クサナギ如きに負けたりはしません……」
 その言葉にクロウは上機嫌になった。
「そうだね……あの時クサナギは、[数の暴力]に訴えたんだ。一対一なら僕はあんな奴に負けたりはしないよ……!!」
 言いたいことを言ったクロウはそのままきびすを返した。
「お帰りですか……?」
「僕はこんなところに長居するつもりはないからね……」
 その言葉を聞いた半仮面の男は自分も帰るための支度を始めた。
「では、私めも帰るとしましょう。必要なデータも取れましたし、破片や仮面を調べても何も分かる筈もありません、あれは、彼らの今日の勝利の[祝儀]ということで……」
 そして、この一見人目を忍んでいるようで実はとても目立っているこの[妙な]三人組は、人々の記憶に不思議な印象を残しながら去って行った。
「大体お前、派手だよ……!」
「これは私めの[趣味]ですので……」