キャンペーン・リプレイ

第 三十三話「怨 恨 の 槍 は 雨 に 濡 れ て」 平成13年2月4日(日)

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「すみません……こういうことだったんですよ!」
 ザファルが眼鏡を動かしながら呟く。その言葉にレイムは、ようやくザファル、そしてここにいる[衛士隊]がすべて白面団の一員であったことに気付いた。そう、これははじめからレイム、いや、セフィロスを罠にはめるための策略だったのだ!。
 そしてそうしているうちに仮面の男はレイムに近づいてきた。
「この女か?……セフィロスが[惚れた]という女は……!」
 逆だ。レイムがセフィロスに[惚れた]のだ。どうやら噂は色々な形に変化しながら広がっているようだ。レイムは内心頬を染めながらも仮面の男に対して毅然とした態度でこう言った。
「あなたね!。セフィロス様を偽って暴れ回っているというのは……!!」
「……偽っているとは心外だな……俺は今まで[名乗った覚え]はないが……確かに、セフィロスらしい噂を流せば奴が出てくるとは思ったのは間違いないが……」
 いけしゃあしゃあと語る頭領に、レイムはなおも突っ掛かった。
「あなた……いったいセフィロス様に何の恨みがあるのですか?!」
 頭領は一瞬顔を強張らせたが、すぐに平静を取り戻して言った。
「まぁ、セフィロスに対する復讐はここに立ち寄ったついで、というところか……俺は別に復讐のためだけに動いているわけではない。[世の中を良くするため]に戦っているのだ!確かに、セフィロスは放っておけばいずれは我々の目的の邪魔になるのは確かだが……将来的には俺……私の前に立ち塞がるだろう。ここは奴が力を付ける前に倒さなければならないのだ……!!」
 この言葉はどちらかというと、レイムにというより周りの部下たちに聞かせるために語っているような感じがした。レイムにはそれによって、この男の目的がセフィロスに対する[復讐]しかないことを見抜いた。
 頭領はここで再びレイムに向き直った。
「安心したまえ……今は君に危害を加えるつもりはない。あくまで君はセフィロスを確実におびき出すための囮なのだ!……そして奴が来たら私は正々堂々と決闘を挑み、我々の、いや、世界の明日のための障害を取り除くのだ!!」
 そんな中、お弁当を入れた籠の中に隠れていたマリンがこの状況の中思案(というより途方)に暮れていた。
「どうしよう……雨は止んできたけど……今出ていくことはできないし……」

 そのころ、セフィロスも目的の村に付こうとしていた。そして雨が止み始めたところで他の一行もようやくセフィロスに追いつこうとしていた。
 先に村に入ったセフィロスはそこで奇妙な光景に出くわした。レイムが後ろ手に縛られ、銀髪の男と武装したものたちに囲まれてどこかに連れ去られようとしていたのだ。しかも、どう見ても野党の類いにしか見えない連中と衛士隊が一緒になってレイムを取り囲んでいたのだ!。
 セフィロスはとりあえず様子を見るため、距離を置いて尾行することにした。ここで飛び出しても銃が相手では多勢に無勢になるのが見えていたからだ。連中はどうやら村を出て、近くに見える森に入るつもりのようだ。が、セフィロスがそれを追おうとすると、森の中に何か金属性の巨大な突起物が見えた。どうやら中に操兵が潜んでいるようだ。
「操兵か?!……」
 ここでセフィロスは躊躇した。ここから先は森までは障害物や遮蔽物の類いがほとんどないのだ。さすがのセフィロスも、こちらを見ている操兵に見つからないように尾行する自信はなかった。が、ここで連中を逃がすわけには行かない。セフィロスは運に任せてラジュを進めた。 
 が、世の中そううまく行くものではなかった。操兵がセフィロスに気付いて動き始めたのだ。操兵はゆっくりと立ち上がり、森の中からその全身を現した。それは、四角い胴体部、両腕部に蟹のような鋏を取りつけた、ここいらでは全く見ない機体だった。どうやら、特注のカスタム機らしい……。
「何があった!?」
 蟹操兵が動いたのを見た頭領は中にいる操手に話しかけた。操手は右の鋏をセフィロスに向けてこう言った。
「来ましたぜ……!」
「早いな……さすが、[惚れた女]のこととなるとわかるということか……!」
 見つかったことでセフィロスは開き直り、その頭領の近くまで走り寄った。
「貴様か!……俺の真似をしているというか……名乗った奴だな!!」
「名乗ったつもりはないが……少々意識はしたかもしれんな……が、久しぶりだな……セフィロス!!」
 だが、当のセフィロスは目の前の男に(今のところ)見覚えはなかった。
「誰だお前は?!……俺はお前に逢った覚えなどない……!」
 頭領は特に怒りを見せるわけでなく被り物を取った。
「このような被り物をしているのでは、無理もないか……」
 その素顔は割と二枚目と言える顔だった。が、ちょうど目と鼻の間に横に伸びる痣があった。どうやらこれを隠すために仮面を付けていたようだ。それを見たセフィロスは鼻で笑って、「何だそれは……」と言った。それを聞いた頭領は激怒して叫んだ。
「貴様……どうやら[自分が犯した罪]を覚えていないようだな!……まさかかつての兄弟子の顔を忘れてしまうとは……!!」
 その頭領−エリフィス−は憎悪で歪んだ表情で呟いた。その名前を聞いたセフィロスはようやくこの目の前の[哀れな]兄弟子を思い出した。
「あぁ……あのときの[愚か者]の兄弟子か……てっきり逃げ出したと思っていたのだが……!」
「確かにあのときは[貴様の策略に嵌まり]、顔にこのような屈辱的な痣まで……そう……この俺の[薔薇色の人生]を目茶苦茶にしたのだ!!」
 セフィロスはその叫び声に、余裕の表情で答えた。
「生きていただけでも有難いと思え!。あのときはモップで勝負してやったが、今度は……!!」
 そう言ってセフィロスは、馬上のまま自慢の槍を構え直した。それに対してエリフェスは憤怒の表情で迎え撃とうとした。が、ここではっとなって我に帰り、やはり周りに言い聞かせるように高らかにこう言った。
「ま……まぁ、それは過去のことだ。そのような[小さなこと]に拘っていては、[世界を救う]ことなどできはしない。だが、どの道、貴様とは戦わねばならないのは確かだ。貴様はいずれ我々の前に立ち塞がり、清らかな明日を築く戦いの邪魔をするであろうからな……!!」
「それで俺と戦おうというわけか……雑魚共を引き連れて……!」
 セフィロスの挑発とも取れる言葉に、エリフェスは特に表情を変えずに答える。
「俺……私は正々堂々と戦いたい。日時は明日の夜!」
「逃げるというのか!」
「戦うにはそれに相応しい場所を選んでな……」
「人質を取って!……[正々堂々]と!!」
 まさに売り言葉と買い言葉とはこういうことだ。セフィロスの怒気の混ざった言葉にエリフェスはやはり周りを意識して宣言した。この様子からどうやら手下たちは、エリフェスの本当の[目的]を知らないようだ。
「彼女は[貴様が逃げ出さないための保険]だ!!」
 エリフェスはあくまでセフィロスを[自分よりも格下]であるように周りには見せようとしているようだ。
「だから、今やると言っているだろうが!!」
「待て!。今はその時ではない。明日の夜だ!!。何せ貴様もこの[愛する女]のためにドウドウ鳥を走らせ、体力を消耗している。そんな状態の貴様に勝利しても、仲間たちに示しが付かないのでな……!」
 エリフェスはどうしても今決着をつけるのを避けたいようだ。それに対してセフィロスは何としてでもここで決着をつけようとした。
「お前を倒すのに、大した体力は要らないさ!!」
「強がりを言うな!。肩で息をしているじゃないか……」
 セフィロスは別に肩で息をしていない。それでもエリフェスは余裕の表情で言葉を続けた。
「策を労する時間をやろうというのだ!」
「策を練っていないから、これから練ろうというのか……?」
 いい加減売り言葉と買い言葉に飽き飽きしたエリフェスはここで話を切った。
「ええぃっ!。ここで無駄話をしている暇はないっ!!。私はこれから忙しいのだ。ここで時間を喰っている場合ではないのだ……明日の夜。再びここで逢い見えよう。くれぐれも、逃げ出さぬように……!!」
「そっちがな!……それから、それまでは人質には手を出すな!!」
「無論だ。彼女は大切な[客]だからな……何せ、[貴様が惚れた女]だからな……!!」
「だめですセフィロス様!。奴等は絶対に何か罠を張って待ち構えています!!」
 レイムが縛られたまま叫ぶ。
「それは充分承知している……」
 セフィロスは再び余裕の笑みをレイムに向けた。
 その時、後ろのほうから操兵の足音が聞こえてきた。ようやく一行がセフィロスに追いついたのだ。状況を見た一行はすぐさまセフィロスの元に駆けつけた。
「何よあれ……見たことない操兵ね……」
 蟹操兵を見たミオが呟く。その隣ではクサナギが操手の技量を見極めようと、操兵の動きを観察した。
「何だ……あれは?!。あれほどの技量をもった操手はそうはいない……おそらく、この辺りでは五本の指に入るかどうかの技量の持ち主だ!。おそらく、あのデュークに匹敵するほどのものかも?!!」
 が、それに対してヴァネッサは違う答えを出していた。
「まぁ、あの機体に振り回されない程度の技量は持っているようね……」
 ……どうやらクサナギは相手の技量を見誤ったようだ。
 一方、ウォークマンデの中では静夜がレイムが人質になっているのを見て苛ついていた。そして何とかその側に行こうと操兵を観察しているミオを押し退け、適当なレバーを倒したのだ!。
「ちょ……ちょっと静姉ぇ!何するのよ!!」
 静夜の倒したレバーは上半身の姿勢を制御するもので、その誤操作によってウォークマンデは思わずお辞儀をしてしまった。ミオは何とか姿勢を整えようと機体を操作するが、それによってウォークマンデは前進してしまい、蟹操兵に向けて突進する形となってしまった!。それを見た蟹操兵は思わず「体当たりか?!」と身構えた。
「わたたたたたた!!」
 ミオは何とが機体を止めようとするが、静夜がさらにレバーを倒し、そして体を押されたミオがペダルを踏み込んでしまい……ウォークマンデは両腕を振り回しながらさらに突進を続けた!。一向に停止する様子のない操兵にかに操兵は思わず
「ひ……人質がどうなってもいいのか?!!」
 と叫ぶ。が、ウォークマンデからは「とーめーてーくーだーさーいー……!」と、静夜の悲鳴が聞こえてくるだけだった。
 とりあえず仲間を逃がすことを考えた蟹操兵は両肩から煙幕弾を発射!。破裂させて一行の視界を塞ごうとした。その煙はウォークマンデを中心に広がり、思惑通り一行の視界を完全に塞いだ。それでもセフィロスはエリフェスを逃がすまいとラジュを降り、流派の技[流]を駆使して移動、その煙の中に自らの身を投じた!。が、やはり煙に巻かれて方向感覚が狂い、結局出たのは蟹操兵がいる茂みだった。
「ラジュで追ったほうが早い、か……?!」
 セフィロスは再びラジュを呼んだ。呼ばれたドウドウ鳥は声を頼りに煙の中を突っ切り、セフィロスの前を一瞬通り過ぎそうになりながらもどうにかたどり着いた。
 一方、モ・エギの手の上に載っていたイーリスは煙を避けて森の中に入って行った。そこからエリフェスたちの逃走路に合流、先回りしようというのだ。そしてイーリスは程なくして、逃げ遅れた下っぱの一人を発見した。
「こんにちわ!」
 イーリスがその手に穂先刃を構えたままにこやかに笑みを浮かべて話しかけると、下っぱは驚き、振り向き様に手にした銃をイーリスに向けた。それを見たイーリスはその笑みを崩さずに、
「ふぅ〜ん……この距離で私とやる気?。私、イーリスっていうんだけど……!」
 と、脅しをかける。下っぱはイーリスという名に脅えながらも自分がまだ銃を手にしていることでいまだ戦意は失ってはいなかった。
「ふ……ふんっ!。こっちは銃だ!。刀だけで何ができる!!」
「あら?。この距離なら私のほうが速くて……よ!!」
 だが、この恫喝は下っぱをより自暴自棄にさせていた。目を血走らせた下っぱは、死に物狂いの表情で拳銃を構え直し、その銃口を目の前のイーリスに向けた。それに対してイーリスは素早く穂先刃を構え、その下っぱ目掛けて疾走した!。
 が、ここでイーリスは茂みの中の小枝につまづき、思わず出遅れてしまった!。それを見た下っぱはチャンスとばかりに拳銃の引き金を引く!。が、その銃弾はイーリスの頬を掠めただけに留まった。そして同時に繰り出されたイーリスの流派[紅]の技[斬]が炸裂!。[返し]による二の太刀は哀れな下っぱを斬り刻んだ。
 一方、蟹操兵は足もとにいるセフィロス、そして迫りつつあるエルグラーテAZ、ブラッティマリー、ウォークマンデ、そして紅葉武雷を牽制し、追跡を阻止しようとしていた。
「俺に手を出せば、人質がどうなるのかわかってんだろうな……!」
 蟹操兵は両腕の爪を鳴らして牽制するが、その恫喝にも動じずにそれでもセフィロスがそれでも追跡をやめず、そして三機の操兵と御仁が迫ってくるのを見た蟹操兵はますます焦りを募らせた。
「ほら来てみろ!来れるものなら来てみろ!!。俺が無事に帰れなかったらどうなるかわかってるだろうなぁおいっ!!。大体四対一とは卑怯じゃないか!!!」
 自棄になって叫ぶ蟹操兵を見た静夜は、何を思ったか今まで撃ったこともないボルトアクションを取り出し、ウォークマンデの天幕を開けて何と、蟹操兵の仮面にその銃口を向けて狙いをつけ始めた!。それを見た蟹操兵は
「だから、俺に何かあったらどうなるか……!!」
「大丈夫ですよー……静夜が撃っても、どーせ当たりませんからー!!」
 相変わらずほわわんとした表情で叫ぶ静夜に蟹操兵は唖然となった。その隙にセフィロスは操兵の脇を通り抜けてエリフェス達を追う。それを確認したミオは蟹操兵の気をこちらに向けるべく「まぁまぁ……」と静夜をなだめた。
 クサナギ、ヴァネッサ、モ・エギはとりあえずその場に待機した。今動けば、本当に人質に何かあるかもしれない上に、興奮した蟹操兵が何をしでかすかわからないからだ。
 が、そんな周りの心配を知ってか知らずか静夜は操兵の仮面目がけてその引き金を引いた!。そしてその弾丸はまさか本当に撃ってくるとは思わずに茫然としていた蟹操兵の仮面に吸い込まれるように命中した!。本来通常のボルトアクションなど操兵の装甲の前では何の効果もない。だが、命中した場所が仮面なら話は別だ。その一撃は仮面割りにこそならなかったが、一瞬だけ機体を停止状態に追い込むのに十分だった!!。
 この光景に誰もが一瞬茫然となった。が、その中で一番事実が信じられないのは静夜本人だった。
「ミオちゃん、当たっちゃいましたー……銃って、怖いんですねー……」
 何が起きたか一瞬理解できなかった蟹操兵の操手は大急ぎで、停止した自機の再起動に取りかかった。
「いまだ!!」
 クサナギは蟹操兵が停止したその瞬間をねらってエルグラーテAZを突進させた。そしてそれに習ってヴァネッサ、ミオもそれぞれの操兵で飛びかかる。唯の木偶の坊と化した操兵を押さえ込むのに大した時間はかからず、蟹操兵は成す術もなく取り押さえられた。
「いかに手練れの操手でも、起動前に取り押さえられれば手も足も出まいっ!!」
 勝ち誇るクサナギに蟹操兵の操手が叫んだ。
「そう思うんだったら、正々堂々操兵戦で勝負しろーっ!!」
「人質を取るような者の言うことかっ!!」
 クサナギの言葉の直後、静夜が弾の入っていないボルトアクションを操兵に向け、
「出てきてくださいー……撃ちたくないんですー……」
 と、悲痛な叫びを上げた。そしてその言葉に観念した操手は機体上部のハッチを開け、両手を挙げながら顔を出した。
「くっ!。こんなところに凄腕の狙撃手がいたとは……!!」