キャンペーン・リプレイ

第 三十三話「怨 恨 の 槍 は 雨 に 濡 れ て」 平成13年2月4日(日)

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 操兵戦が終結したころ。一足先に洞窟に突入したイーリスは、早速騒ぎを聞きつけた白面団一味の出迎えを受けていた。最初こそは威勢よく出てきた下っぱだったが、イーリスの姿を見るや「ひぃ!」と思わずしり込みしてしまった。それに対してイーリスは何食わぬ顔で、
「大変!。敵がすぐ側まで来ているわ!!」
 と、下っぱたちに呼びかけた。すると下っぱたちは動転したのか、(それともイーリスが怖くて避けるためか)「そうかっ!外かっ!!」と叫んで洞窟の外に出ていってしまった。
 下っぱたちを見送ったイーリスは、そのまま洞窟の奥へと入っていき、マリンから聞いた通りの通路を通ってレイムの閉じ込められているはずの部屋へと向かった。そして、そこにたどり着いてみると中のほうから剣激の音が響いてきた。騒ぎに気付いたレイムが混乱に乗じて見張りの一人を倒して剣を奪い、もう一人の見張りと戦っているようだ。さすがは(見習いとはいえ)近衛隊というべきか……。
 だが、一人目を倒したまではよかったが、続く二人目との戦いは押されぎみだった。それを見たイーリスは、その下っぱの背後に迫り袈裟掛けに斬り付けた!。その光景はレイムの視点から見ると下っぱの胴体から刀の切っ先が[生え]、そのままざっくりと胴体を切り刻むというすさまじいもので、レイム自身それが助けに入ったものだと気付くのに時間がかかった。
「お……お見事です……」
 レイムはやっとの思いでそれだけの言葉を絞り出した。
 そのころ、イーリスから逃げた下っぱは更なる脅威と出会った。それは、静夜とともに一足遅れて洞窟に入ってきたセフィロスだった。下っぱたちは「ホントにいた!」と驚き、静夜が「こんにちわー……」と挨拶をする。が、それより早くセフィロスは槍を突き出した!。その一撃は相手を倒すまでには至らなかったが、それでも戦闘不能にするには十分であった。
 続いて静夜もあらかじめ練気していた気闘法を手にした銃に込め、その銃把でもう一人の下っぱをおもいっきり殴りつけた!。が、それは大きくはずれ、銃把は地面を大きく抉るだけに留まった。その光景を見た下っぱは「ひぃっ!!」と叫び、その場から逃走した。それを見たセフィロスはそれを特に追うことはしなかった。
「ま……外は外の連中がやってくれるだろう……」
「そうですねー……セフィロス様は愛するお方の元に急がなければなりませんから……はい。早く行きましょう!」
 セフィロスは静夜の言葉に頭を抱えながら洞窟の奥に向かった。
 その洞窟の奥では、一足先に合流していたイーリスとレイムが厄介な相手と遭遇していた。この隠れ家の主であるエリフェス、そして鈴音だった。エリフェスはこの突然の奇襲に激怒し、叫んでいた。
「もう奇襲を掛けてきただとぉ!……そうだよ……あいつはそういう奴なんだよっ!!」
 その時、そのセフィロスが姿を現した。それを見たエリフェスは激しい憎悪を乗せた目付きでその仇敵を睨みつけた。
「セェ〜フィィ〜ロォ〜スゥ〜……!あれだけお膳立てしたというのに、貴様はあえてこういう道を選ぶか……それならば、人質がどうなっても!!……て、あれ?」
 ここに来てエリフェスはようやくイーリスとともにいるレイムに気付き、間の抜けた表情になった。それを見たセフィロスは一言「馬鹿め……」と呟いた。
「あの時はモップで許してやったが……今度は見逃すわけにはいかんな……!」
 そのセフィロスの言葉に静夜が反射的に、
「あのー……殺しちゃだめですよー……」
 と注意する。やはり医者として人死には避けたいようだ。それに対してセフィロスは「努力する……」とだけ呟いた。
 そんな中、イーリスは余裕の笑みを浮かべてエリフェスにこう言った。
「ところで、その仮面の下の素顔、見せて下さらない?」
「見せてやろう……セフィロスが屍になったその後で……!!」
 どうやらエリフェスはどうしても素顔を見せたがらないようだ。そして今まで後ろで黙っていた鈴音に向かってこう呟いた。
「わかっただろう……セフィロスとはこう言う男なのだ!!」
 そのあまりにも身勝手な言葉にセフィロスは思わず
「人質を取っておいて今更何を……!」
 と目を細め、静夜もそれに相槌を打つ。そしてイーリスが、
「そこの鈴音さんとやら、普通は自分を愛する人を救いに行くというのが人情というものでしょう……!」
 と鈴音に訴え、静夜も
「愛する者を守るためにはこういう行動に出るのが普通なのではないかとー……」
 と語りかける。その言葉にセフィロスは一瞬闘志を失いかけ、
「どこで話が変わったんだか……」
 と呆れ返って呟いた。そんなセフィロスに静夜が言った。
「一対一の戦いなんですか?」
「それを望んでいるんだろう……?」
 そのセフィロスの言葉に答えるようにエリフェスは、苦い表情になりながらも槍の鞘をはずして地面に投げ捨てた。本来なら人質を取った状態でいたぶるのが予定だったが、こうなっては後には引けない。もし、ここでこの勝負を受けなければ間違いなく部下の信頼が失われるだろうから……。
 そこにイーリスが挑発の言葉を投げかけた。
「どうします?予定通り戦って、無様な姿を曝します?」
「……無様な姿を曝すのは……貴様だぁ!!」
 エリフェスは叫びながら破斬槍を繰り出してきた!。しかもそれは常人の二倍の速度で突き出してくる!。その攻撃はセフィロスの鎧を貫き、重症とは行かないまでもかなりの怪我を負わせた。それに対してセフィロスも反撃とばかりに流派の技[森舞]を繰り出した。この技は数回の槍の攻撃に離脱のための蹴りを加えたものであり、すべてが決まればエリフェスとて無事で済むはずがなかった。
 が、その攻撃は決まらなかった。いや、通常ならば決まったのだが、すべてが直前で読まれ、かわされたのだ!。そう、エリフェスもまた流派の技[真舞]を使っていたのだ。この技は相手の攻撃を見切る[真]の上位に当たる技で、見切りと同時に攻撃も繰り出すというものだ。さすがは(腐っても)セフィロスと同門の槍使いということもあって、簡単には勝たせてはくれそうにはない……。
 それでもセフィロスは諦めずに攻撃を続けた。そして甲斐あって鋭い一撃がエリフェスに命中した!。それは普通ならば間違いなく絶命しているほどの威力だった。が、エリフェスはなおもそこに立っていた。そしてその理由は破れた外套が脱ぎ捨てられたときにわかった。エリフェスは大きめの外套の下に超硬質セラミック性の胸鎧を着こんでいたのだ。さしもの武繰の技も、これを貫くのは容易ではない……。
 必殺の一撃が通じなかったセフィロスは思わず躊躇し、エリフェスに後れを取ってしまった。そんなセフィロスに対しエリフェスは[月]と呼ばれる返しの技を繰り出し、かつての弟弟子をいたぶった。それはまるで、以前の模擬試合のときの再現にも見えた。
 鈴音はその勝負をじっと見つめていた。もし、セフィロスかその一行が何か卑怯な振る舞いを見せたらすぐに介入するつもりだったが、今、目の前で繰り広げられている決闘は確かに[エリフェスが望んだ]正当なる決闘だ。それゆえに鈴音は頭領の名誉を傷つけないためにも、飛び出して加勢したいという気持ちを抑えていた。
「エリフェス様が……あのような敵に負けるはずがない……!」
 それは一行の側にいたレイムも同様であった。ただし、レイムは加勢したいという気持ちは最初から持ってはいなかった。そう、どんな敵が出ようとセフィロスが決して負けることはないと信じているのだ。
「セフィロス様……頑張って!!」
 セフィロスは必死に敵の攻撃を[真]の技で見切り続けた。が、エリフェスはなおもセフィロスの先手を取って攻撃を繰り出してくる!。そしてそのうちの一撃を避け切れず、今度はセフィロスが手痛い一撃を食らってしまった!。それでも何とか倒れずに済んだセフィロスが反撃の槍を繰り出すが、鎧の一番固い部分に命中してその打撃は弾かれてしまった。
「ふ……貴様の槍など、当たりもしなければ貫きもしない!。そう、これが本物の実力の差だ!!」
 エリフェスは防御を鎧に委ねた体捨剣術に切り替え、攻撃一本に絞って槍を振るった。それに対してセフィロスはこのままでは勝てないと考え、確実な打撃を狙って[月]を繰り出した!。その最初の一撃は鎧の角で弾かれた。が、二撃目は油断をしてがら空きになっていた脇腹に命中、勝利への執念を込めた槍の穂先は鎧の継ぎ目を貫いてエリフェスの体に到達した!。そしてその一撃でエリフェスは槍を取り落とし、そのまま地面に崩れ落ちた……
 今の渾身の一撃はエリフェスを瀕死に追い込んだ。それを見た鈴音が「エリフェス様ーっ!」と側に駆け寄ろうとした。が、それより早く動いた者がいた。静夜だった。静夜はすぐさま虫の息のエリフェスの側に寄り、早急に応急手当をした。そして幸運も手伝ってエリフェスはとりあえずは持ち堪えることができた。
 静夜の応急手当が功を奏して息を吹き返したエリフェスは、立ち尽くすセフィロスに向けて恨みの言葉を吐いた。
「俺は……この日のために……セフィロスに復讐するため[だけ]にここまで来たというの……に……!!」
「……え?!」
 その一言を聞いた鈴音は一瞬凍りついた。
 その時、操兵を降りたクサナギ、ミオ、ヴァネッサが洞窟に入ってきた。そしてすべてにケリが着いたことを確認するが、ここにある人物がいないことに気付いた。そう、レイムを罠に嵌めてここまで連れてきたあのザファルだった。それに気付いたクサナギと静夜が洞窟の奥にあるもう一つの出口に向かったものの、既にその姿を確認することができなかった。
 そんな中、鈴音はエリフェスの言葉が信じられずに錯乱していた。
「嘘……ですよね……エリフェス様は倒されたショックで混乱しているのよ……そう、立ち直れば、またゴンドアの明日のために……!」
 そんな鈴音にイーリスが諭すように、セフィロスから聞いたかつての[モップ事件]を話し、もともとそれが原因でこんな事件が起きたことを語って聞かせる。
「そう、そんな自分の悪行の逆恨みで復讐するような男にまだ着いていく気?」
「そんな……エリフェス様は[卑劣な罠に嵌められて追放されたって?!……じゃあ、今まで[輝く明日のため]と信じて戦ってきた私たちっていったい……?!!」
 そんな鈴音の言葉を聞いたクサナギが憤慨してエリフェスに詰め寄る。
「そんな逆恨みのためにそなたは……多くの人を巻き込んだというのか!!」
 それに対して静夜が「一応怪我人なのですから……」とクサナギを嗜める。が、エリフェスは自棄を起こしたのか、それとも精神が錯乱したのか、とんでもない言葉を口走った。
「別に村がどうなろうが、蓄えがどうなろうが、[ゴンドアの明日]がどうなろうが知ったことではない!……俺はただ、どんな手段を使ってでもこいつに復讐したかっただけだぁ!!」
「そなたのその考えが何人の人々を巻き込んだと思っているのだ!!」
 エリフェスとクサナギのやり取りを見た鈴音は茫然となって呟いた。
「……私は……こんな人のために、幾人の人を手に掛けてしまった……そんなことをしてまで求めた物っていったい何だったの……?!」
 そんな鈴音にイーリスが、
「償う気があるのなら、この道何らかの方法があるでしょう……とりあえず、これ以上悪事を重ねないことが一番だけど……」
 と声をかける。そしてミオ、静夜も、
「ま、惚れた相手が悪かったんだよ。今度はもう少しましな男を探すんだね」
「セフィロス様みたいな……」
 と、それぞれに慰めの言葉をかけ、そして意味ありげにレイムのほうを見た。そんな視線に気付かずレイムは、戦い終わって佇むセフィロスの元に駆け寄っていた。
「セフィロス様ーっ!!」
 二人はもう少しで触れ合う距離に立っていた。が、それ以上は近づかなかった……というよりは近づけなかった。それを見た静夜はおもむろにレイムの背中を押した。文字通り[背中を押された]レイムはそのままセフィロスにぶつかった。そしてセフィロスはそんなレイムをやさしく受け止めた。
「お怪我は大丈夫ですか……」
「大丈夫だ……これしき……」
 心配するレイムに特に表情を変えずにセフィロスが答える。そんな様子に静夜が、
「そうですよねー……レイム様のために負った傷ですもの、平気ですよねー……」
 と茶々を入れると、レイムがセフィロスを見て、
「そんな!……私のために……」
 と再び心配そうな顔になった。
 そんな中、クサナギはやはりザファルを逃がしたことを悔やんでいた。それはセフィロスも同じだったが、あれから時間が経っていただけにもはや追いかけても無駄だろう。静夜が鈴音に彼が立ち寄りそうな場所を訪ねるが、特に思い当たるところはないという……。が、その時、
「お探しの[眼鏡蟷螂]はこの人ですか?」
 というモ・エギの言葉が洞窟内に響いた。入口を見てみるとモ・エギが中を覗き込んでいた。そしてその手には、青ざめた顔のザファルが摘みあげられていた。一行が中の事態を収拾しているうちにマリンが発見、モ・エギが捕らえたのだ。巨大な指に摘まれ、一行の前に引き出されたこの哀れな不正役人は、もはや言葉を話す気力が残ってはいなかった。
 外では逃げ遅れた下っぱたちを蟹操兵が追い詰めていた。
「どうだ!。これが[正義の力]というものだ!!」
 現金な態度に一行が呆れ返っていると、蟹操兵の操手は、
「い、いやぁ……[依頼を受けた]以上は……それに、これは[正義の戦い]だし……」
 と、バツが悪そうに呟いた。
 そのころ、洞窟の中ではレイムが静夜の助けを借りてセフィロスの応急手当をしていた。そんな彼女にセフィロスは一言、「ありがとう……」とだけ呟いた。
 それから数刻が経ち、一行は知らせを受けてやってきた[本物の]衛士隊に、捕らえた白面団を引き渡した。その中には、両腕を縛られた鈴音の姿もあった。そんな彼女をみたヴァネッサが思わず衛士の一人に声をかけた。
「あの……この人を私に預からせてはくれないでしょうか……鈴音さんは騙されていただけなんです……!」
 が、というより当然衛士は首を横に振った。
「裁きが終わるまで、それは出来ません。大丈夫。裁判官は事情を汲み取ってくれます……」 
 その鈴音が馬車に乗る直前、ヴァネッサに向けてこんなことを言った。
「結局、私も……目的を見失ってしまいました……」
「生きていれば……見つかりますよ……」
 今のヴァネッサが、寂しそうに笑みを浮かべる鈴音に掛けてやれる言葉はこれだけだった。そんなヴァネッサに鈴音は深々とお辞儀をし、そして衛士隊の馬車に乗せられてこの場を後にした。
 後に聞いた顛末だが、セフィロスにかけられた疑いはもともとザファルが一人で騒いでいただけのものであったので、白面党一味が捕らえられた時点で解けた。
 捕らえられたエリフェスはその後に静夜の[点決を打つ]治療によって癒され、思ったより早く裁判を受け、その結果、ザファルとともにカストール牢獄に護送されていった。が、ほとんどの白面党員が捕らえられた中で蟹操兵の操手だけは、ちゃっかり一行の仲間の振りをして難を逃れた。そして差し出された報奨金を、
「いや、俺は[正義のため]に当然のことをしたまでだ……」
 といって受け取らず、ライバから逃げるように旅立っていった。
 その中で、一行が一番気になった鈴音は、さすがに女性ということもあったのでカストール牢獄送りは見送られたが、それでも強制労働の刑そのものは免れることができず、ライバに程近い強制農場に送られることになったという……。
 数日後。レイムから今までの経緯をセフィロスは診療所の寝台の上で聞いていた。話を聞いても特に表情を変えないセフィロスに、レイムはこんなことを言った。
「セフィロス様……ずっと旅を続けていらっしゃるようですが……そろそろ落ち着いてみませんか?。あなた様の腕でしたら、士官など容易いでしょうに……」
 だが、セフィロスはその言葉を遮った。
「いや、俺などまだまだだ……エリフェスにも苦戦したし……あんな奴は一瞬でかたを付けられなければならないんだ……」
 その言葉にレイムは、浮かない表情でセフィロスにこんなことを訪ねてみた。
「セフィロス様は……どこまで強くなるおつもりですか……?」
「先は……見えてはいない……」
 遠くを見るような目で天井を眺めているセフィロスに、レイムは思い切って、
「それでは……その旅に私も同行しては……いけませんか……?!」
 そういった瞬間、レイムの顔が紅潮した。それを見たセフィロスは、一瞬戸惑いの表情を見せた。
 実はこのとき、そんな二人の会話を静夜が部屋の入口前で、イーリスが隣の部屋で、そしてミオが外からモ・エギの手を起重機代わりにして壁の向こうからこっそりと聞き入っていた。そんな静夜を注意しようとヴァネッサがやってくるも、差し出された聴診器の誘惑には勝てず、結局自分も仲間入りしていた。
 外ではそんな光景をクサナギとマリンが呆れ返りながら眺めていた。が、マリンは肩をすくめて呆れながらも結局はミオの側に飛んでいって……残された「良識人」はクサナギ一人となってしまった。
 部屋の中では、レイムがその思いを破裂させないように自分の気持ちを遠回しな言葉にして言った。それに対してセフィロスは静かにこう返した。
「危険な旅になるぞ……」
「構いません!」
 遠回しな言葉とは裏腹に、レイムの決意は固かった。それを見たセフィロスは、静かにこう返した。
「君には……ここで待っていて……欲しいんだ……」
「え?」
 今のセフィロスの言葉に一瞬レイムは思わず聞き返した。
「今はまだ……答えは出せないが、必ずここに戻ってくる。まだしばらく俺は旅を続けるかもしれない……だが、此処には最後に必ず戻ってくる……」
 その言葉を[行き着くところは自分の元]と解釈したレイムは胸がいっぱいになった。実際には[レイムのところ]とは一言も言ってはいないのだが、それでも彼女は今の言葉が嬉しかったのだ。そして思わず半身を起こしているセフィロスに抱きついた!。
「私はその日を……いつまでもお待ち申しております……」
 レイムはしばらくそうしていたが、やがて恥ずかしさのあまりに飛び退くように離れ、そして慌てて部屋を飛び出していった。
 レイムが部屋から駆け出して、ようやく一息つこうとするセフィロスだったが、そんな暇はなかった。突如壁にひびが入り、そしてがらがら崩れ出したのだ!。そう、今の盛り上がりにモ・エギが建物に体を寄せすぎ、思わず壁を破壊してしまったのだ!!。それを見たセフィロスは一瞬凍りついた。
 壁を壊したモ・エギは手の上に乗せていたミオを「ハイッ!」と部屋に下ろした。そして建物から離れると「クサナギさん、行こ!」と言って呆気にとられた表情のクサナギを抱き上げ、そそくさと診療所を後にした。
 その直後、静夜が「往診の時間ですよー」と、素知らぬ顔で入ってきた。そしてイーリス、さらにはばつが悪そうな顔でヴァネッサも入ってきた。そんな破廉恥な面々を見たセフィロスは……怒りに震わせた手で槍を掴んだ!。
「……貴様らあぁぁ!!」
 診療所の中からは怒号とともに振り回される槍の斬撃と、逃げ惑うものたちの悲鳴が轟き渡った。