キャンペーン・リプレイ

第 三十五話 「 彼 の 者 達 の 聖 典 」  平成13年4月22日(日)

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 その後、一行はその奇面衆の遺体をその場に埋葬し、その際に彼らの遺留品を調べた。その結果、この奇面達の持っている食料と水袋の量などから、やはり先の訊問通りに別動隊がいる可能性が浮上してきた。
 そんなこんなで一行がヒレル村に着いた頃には、すっかり朝になっていた。早速村長の家に赴いてみると、そこには村中の人々が集まり、悲しみの中で村長の亡骸を囲んでいた。そしてメテルが戻ってきたのを見ると、村人達はその無事を喜び、出迎えた。
「父さまぁ!!」
 メテルはアファエルに促されながら父の亡骸に駆け寄り、棺に縋り付いて泣き崩れた。その時、そこに一人の青年が歩み寄り、今にも倒れてしまいそうなメテルの体を抱きかかえた。
「あの……どちらさまで……」
 突然現れた青年にミオが何者かを尋ねると、彼はメテルの兄であることを名乗った。
「僕が村の集会に出かけている間に……まさかこんなことになるなんて……!!」
 メテルの兄は襲撃を受けた際に自分が家にいなかったことを悔やんだ。そんな彼にミオはとりあえずお悔みの挨拶を述べ、さらに再襲撃の可能性の警告を付け加えた。そしてミオはアファエルを連れ、早々とウォークマンデに戻った。その際聖典はアファエルがどさくさに紛れて持ち出したが、もともとそのようなものが村にあることなど知らなかった者達が大半だったために誰にも咎められることはなかった。
 その後、一行はとりあえず村のはずれに集合した。
「それにしても、奇面衆はなぜ、このような聖典を今更狙うのでしょう……こんな本など、どこにでもあるでしょうに……」
 ゼノアの疑問はもっともである。このゴンドア大陸において、印刷技術はかなり高い水準を持っており、そこそこ裕福な生活を送れるものならこのような聖典を手に入れることも容易なのだ。そしてゼノアの考えでは、たとえこの本が正教と凡教に別れる前の[古リダーヤ教]の聖典だとしても、中身はそうは変わらないと踏んでいたのだ。
 そう、ゼノア、そしてアルバートはこの聖典が[古リダーヤ教]のものだと予想していた。表紙などの造りが今のリダーヤのどちらとも若干ながら違っていたからだ。だが、それが当時からのものなのか、それとも現代の写本なのかは彼らでも(この場ではまだ)検討が付かなかった。だが、それはアファエルがあっさりと鑑定した。そして盗賊としての目利きと妖精族としての長寿による経験からアファエルは、その本が間違いなく千年以上古い代物であることを見抜いた。おそらく、相当保存状態がよく、そしてこの本がクメーラ王朝時代の失われつつある高い技術で作られているゆえにいまだに朽ちずに残されていたのであろう。
 一通りの鑑定を済ませたアファエルは、今度は表紙の鍵の解錠に取りかかった。その鍵は丈夫な造りではあったが、さりとて特に特殊なものでもないようで、アファエルが針先で鍵穴に細工をすると、それはあっさりと解けた。そしてアファエルは表紙を開いた状態でその本をミオに手渡した。
「私、難しい字は読めませんから〜」
 それはミオも同じだった。ミオはまるで[盥でも回すように]その本をゼノアに手渡した。そしてそのゼノアも、
「さすがにこの手の文字は……」
 と、やはり[盥でも回すように]アルバートに渡した。それを受け取ったアルバートは、さすがに学者らしくその本文に目を通した。そして
「メリア……ちょっと来てくれないか……」
「ちょっと!!」
 ミオが思わず突っ込みを入れる。そして結局、盥回しにあった聖典はメリアが読むことになった。
「えっとこれはぁ……ある種の宗教語ですね……多分、当時の変形文字の類いだと思いますがぁ……全部読みますか?」
「要約して」
「要約しても長いですよ」
 ミオのそっけない指示にメリアは、その本の厚さを示す。それは、ざっと見ても7リット近くはあった。こんなもの全部読んでいたら日が暮れた挙句に夜が明けても読み終わらない。そう感じたゼノアは、とりあえず捲ってみて、めぼしいところだけを拾って読んでもらうことにした。ところが
「あれ?確か以前見せてもらった時にはこの辺りで……あれ?……」
「どしたの?」
 字は読めなくとも挿し絵くらいは読めるだろうと横から見ていたミオは、何故か戸惑うゼノアを見てその理由を尋ねた。するとこの公証人はいつもの余裕な表情を少々曇らせ、こう言った。
「奇面衆に関する記述がないんです」
「?……あの数千年、創世の頃から戦ったとかいう相手のことでしょ?」
「そうなんです。私が以前見たリダーヤの聖典には確かに、[世界を滅ぼした元凶]として奇面衆の件が記載されていた筈なのですが……」
 ゼノアが以前見たのは近年に作成されたリダーヤ[正教]の聖典だった。だが、ゼノアは実は[古リダーヤ教]の聖典を見るのは初めてだった。そもそも古リダーヤ教については実は殆ど記録が残ってはおらず、工房都市組合の調査でもその全容が殆ど知られていないのが現状なのだ。そしてその聖典は現在では一部を除いて完全なものは現存していないと云われている。
 とりあえずゼノアは、メリアに[邪神]または[悪魔]などの項目を捜してもらうことにし、早速彼女は索引などを調べ始めた。が、いくら捜してもそういった内容を含む記述は一切見当たらなかった。
 それでもゼノアは、メリアになおも項を捲らせた。ひょっとしたら、正教のものとは違う形で記載されている可能性もあったからだ。長い歴史の中で聖典の内容が変化するということは十分ありえることだ。そして……
「なんだ……あったじゃないですか。えーと[だが、我々は希望を捨てることはない。偉大なる神は最後にその御手を差し伸べてくるだろう]……」
 メリアが見つけたのは、巻末のいわゆる[救いの予言]のようなものだった。が、問題はその文とともに描かれていた挿し絵に描かれている[光の使徒]の姿である。何とその使徒の顔に、だいぶ形が違うものの、明らかに奇面衆の面と思われるものを着けていたのだ!。一行は、しばらくの間その絵を見て沈黙していた。
 その沈黙を破ったのはアファエルだった。
「この人が神様って言う人?」
「そうみたいだね……」
「それじゃ、変なお面(奇面)かぶっているのは悪い人?」
「という話みたいですよ……」
「わけわかんないですぅ〜」
 ミオとゼノアの答えを聞いたアファエルはその場で頭を抱えて悩んだ。そして悩みついでにこんな質問をしてきた。
「で、神様って何をしてくれる人なの?」
「何もしてくれませんよ」
 ゼノアの迷いのない答えは、彼もまた無神論者であることを物語っていた。
「何でそんな何もしてくれない人を大切にしてるのでしょう〜?」
「祈ってれば何かしてくれると思っているんだよ、普通の人は……!」
 突っ撥ねるかのようにミオが答えた。
「[幸せな]人達なんですねぇ〜」
「幸せじゃないから祈るんだけどね」
 ミオのあまりにもそっけない答えにさすがのゼノアも言葉を挟んだ。
「いや、何もそこまで言わなくても……宗教にも精神的な効果もあるんですよ。だからさまざまな国家でさまざまな宗教が盛んなわけで……」
「確かに権力者にとっては都合がいいし……」
 ミオはもう止まらなかった。
「ミ……ミオさんにとって宗教って何なのでしょうかね?」
 あまりに毒が溢れるミオの言葉に、ふとゼノアは興味を覚えたが、
「気弱になった人間が縋る心の麻薬。そーゆー人を食い物にする反吐が出る悪徳商法。そして教義をタテに信じられない残虐行為に走る狂信者の温床……まだ聞きたい?」
「も、もう十分です!」
 ゼノアはこの質問を後悔した。どうやらミオは宗教に関して最低の印象を持っているようだ。その時、今まで黙って話を聞いていたアルバートがやっと口をはさんだ。
「そ……そろそろ遺跡に行ってみませんか?」
 その一言でミオは我に帰った。
「そ、そうだね。ここで話してても仕方がないし……とりあえず、聖典の中身はあとで詳しく読んで聞かせてくださいね」
 一行はここでようやくそれぞれ操兵に乗り込み、問題の遺跡に向かった。

 その遺跡は岩山の岸壁の間にある石窟寺院だった。それは以前見た姫盗賊の遺跡に似た感じではあったが、さすがに操兵が入れるほどではなかった。遺跡を目の前にしたミオはアルバートに話しかけた。
「アルバートさん、この遺跡の中がどうなっているか分かりますか?」
「そうですね……以前文献で調べましたところ……」
 アルバートはそう言って、数枚の資料を取り出し、さらにその中から一枚の地図のようなものを取り出した。それで見る限り中の部屋数はそれほど多くなく、造りも典型的な古い寺院で、特に代わり映えはしないという。
 一行はそれそれに武器を構えた。アルバートとメリアもふだんは使わないであろう銃を準備する。その中でミオは……
「鉈、ナイフ、長銃……照明弾……単発拳銃……それから……」
「やたら重装備ですねぇ〜」
「普段ならこんなもの持ってかなくて済むんだけど、今日はイーリスもセフィロスもクサナギもいないしねぇ」
 アファエルの指摘にミオは不安げに答えた。するとこの妖精族はいつものほえほえとした感じで言った。
「大丈夫ですよぉ。奇面衆なんてちょっと動けば転んじゃうし〜」
「……アンタの働きに、期待してるからね!」
 アファエルを見るミオの目は真剣そのものだった。
 程なくして準備を終えた一行は、遺跡の奥へと進んでいった。中はアルバートの文献通り単純な造りで、中央のホールを中心に、左右に伸びた通路がそれぞれの小部屋に続いていた。一行がそれらの部屋を調べながら奥に進むと、下に降る緩やかな階段があった。
「ちょっと明かりを貸してくれませんかぁ?」
 先頭を歩いていたアファエルの催促にゼノアの部下が永久ランプを差し出す。そしてアファエルは照らされた光の中で、階段にわずかな以上があるのを見つけた。それは、積もった誇りの中にある、数人の何者かが通ったと思われる痕跡だった。しかもそれは、明らかに音を消すための柔らかい布地の靴のものだった。
 一行はその足跡を追うように奥へと進んだ。階段は二人が余裕で並んで歩ける程度の広さで、両側の壁には何か壁画のようなものが描かれていた。こんな状況の中でも研究者としての血が騒ぐのか、壁画を見た兄妹は夢中になってその絵を観察、分析を始めた。
「この絵は、[神が与えし巨人]を描いたもののようですね。ここに描かれている古代装束の戦士が[巨人]で、どうやら異教徒達を追い散らしているようです」
 メリアの話を聞いたゼノアが
「その話が本当なら、古代のリダーヤは操兵に頼らなかったんですね……」
 というと、アルバートが
「この絵が操兵のことを指しているのかもしれません。確かに横の古代語には操兵とは一言も書かれてはいませんが……あるいは、以前樹界の遺跡で見たプレ・クメーラ文明の技術であれば、あのような[異形の巨人]のようなものが造れるのでしょうが……」
 ここでアルバートはかぶりを降った。
「ですが、この遺跡はせいぜいがクメーラ王朝前期のものです。それにここはリダーヤの寺院ですから、そのような科学設備があるとは……」
 その後、壁画の簡単な記録を取った一行が階段をさらに降ると、その一番奥と思われる部屋にたどり着いた。その礼拝堂と思われる部屋はどういうわけか、何の灯りもない筈なのに明るい光に照らされていた。それはまるで、神々しい太陽の光のようだった。
 その理由はすぐに分かった。実際にこの光は太陽の灯りで、吹き抜けになっている天井から差していたのだ。おそらくこれは照明効果と換気を兼ねたものであろう。
 遺跡はこの部屋で行き止まりになっていた。ここで一行はあることに疑問を持った。そう、今の今まで先に来ているだろうと思っていた奇面衆とまったく遭遇していないのだ。先の足跡が連中のものだとすると、確実に中にいる筈なのだ。たとえ奴等が隠行に長けているとしても、隠れる場所がなくてはいくらなんでも見つけることができる筈である。
 だが、そんな中でも姿を消すのが奇面衆である。一行はもう一度部屋を見て回り、影になりそうな部分やそれこそ天井まで捜した。が、それでも奇面衆を見つけることはできなかった。あるいは、既に目的を果たして立ち去ったのだろうか。
 アファエルは自分達以外の足跡を調べ、その痕跡を辿ってみることにした。それによって奴等の行き先が分かるかもしれないと踏んだからだ。そしてアファエルはその足跡が壁の一角で消えていることを突き止めた。しかもその壁は、ほかの箇所と比べて色が違っているように見えた。それはもし、これが隠し扉の類いなら、一度開けられた可能性があるということだ。
「多分これ、隠し扉ですよ、ほら……」
 アファエルが壁を軽く押すと、その壁は少しだけ動いた。どうやら、本当に隠し扉のようだ。一行が用心しながら全員でその扉を押し開くと、中にはさらに急な降り階段が続いていた。そしてその階段には、先ほどよりもはっきりと、数人分の足跡が残されていた。

「どうやら、当たりのようですね……」
 部下の一人が呟く。その隣でアファエルが聞き耳を立てた。すると、ガコン……キュオォォン……ガコン……と、何か機械が動いているような音を聞きつけた。これは、以前樹界の遺跡で聞いたものと同一のもののように思えた。
「これ……以前聞いた樹界の遺跡と同じ音ですよぉ……」
 アファエルの話を聞いたアルバートとメリアはやはり以前の遺跡を思い出して青ざめた。が、それを見たミオとゼノアは首を傾げた。
「そんな……ここはクメーラ王朝時代の古リダーヤ寺院です。あの時のような研究施設があるわけが……」
 不安に駆られて声を震わせるアルバートだが、ここでアファエルは彼を励ますようにこう言った。
「それを学会に発表すればすごいことになりますねぇ〜」
「その前に生きて帰れるかどうか……」
 なおも不安が拭い去れないアルバート。だが、アファエルはミオを指さして言った。
「大丈夫ですよぉ。ここにはミオがいますからぁ〜!」
「おいおい!……何の根拠があって……!!」
 ミオの突っ込みを無視してアルバートが歓喜の声を上げる。
「そうか!。ここには[あの]ミオさんがいるんだ!!」
「そうそう、ライバ一の[銃戦士]がいるんですよぉ!!」
「あの……ちょっと……」
 ミオはアファエルの[勘違い]に突っ込もうとしたが、全員がさっさと地下に降り始めてしまったためにその機会を逸してしまった。
 そんなこんなで地下に降りていくと、やがて小さな部屋にたどり着いた。その部屋には普通には扉のようなものはなく、代わりに床に金属性の蓋のようなものがあった。どうやらこれがさらなる入口のようだ。
 アファエルはそれを開けようとしたが、ミオに勧められて罠を調べてみることにした。もしここが本命なら、奇面衆が何らかの罠を張っている可能性があるからだ。そして程なくしてアファエルは扉そっと開き、その内側に仕掛けられていた鳴子の仕掛けを外した。どうやら自分達以外のほかの侵入者が来たことを感知するためのもののようだ。
 罠を外したアファエルは、その扉を完全に開き切った。軽い空気圧の音を立てて開いた扉の下は、やはり以前の遺跡と同様に光源不明の灯りに照らされており、上の遺跡と違ってやはり材質不明の壁に覆われていた。そして通路はまっすぐ下に伸びており、降りるためには備え付けの梯子を利用するしかないようだ。
 用心したアファエルが地下に向けて聞き耳を立てると、奥からは先ほどの機械音に混ざって、何かが戦っていると思われる剣撃のような音が聞こえてきた。しかもその中には、何か質量の大きなものが立てる独特の音もあった。
「何かが戦っているようですよぉ〜」
「何がです?」
「[ごーれむ]が一生懸命戦っているようですねぇ〜」
 その時、今度は一行にはっきりと聞こえるように「へああああぁぁぁ!!」と悲鳴のような音と何かがグシャッと潰れる音が響いてきた。
「今のは奇面衆の叫び声?……やだぁぁぁ!!」
 ミオが今の断末魔を聞いて悲鳴を上げる。そんな中、アファエルが、
「じゃあ、下に降りてみましょうかぁ〜」
 と言ってさっさと梯子を降り始めた。それに続いてほかの一行も、恐る恐る梯子に手を掛け、ゆっくりと降りた。
 1リート強ほど降りると、今度はまっすぐ横に伸びた狭い通路が続いていた。一行が周囲を警戒しながら長い通路を進むと、途中で左右に別れる広く、高い通路にぶつかった。先の戦闘の音は向かって左側から聞こえてきた。一行はアルバートとメリアをすぐに逃げられるように通路の奥に引っ込ませ、その上でその通路を覗き込んだ。
 その時、最初に顔を出そうとしたアファエルの足もとに何かが転がってきた。それは、奇面衆の血染めの仮面だった。
 奇面を見て一瞬茫然となったアファエルだが、気を取り直して覗きこむ。よく見ると、広い通路の奥に操兵より少し小さめの彫像がそびえ立っていた。そして何故かその像の周囲には奇面衆が数名ほど展開しており、しかもその何人かはまるで巨大な何かに踏みつぶされたかのように死んでいた。
 アファエルに促されてミオが覗き込むと、その像が何と突然動き出した!。像は軋み音を立てて群がる奇面衆を蹴散らしていた。それを見たアファエルはアルバートとメリアに身振りで、この施設から避難するように促し、二人はそれに従い、沸き上がる好奇心を押さえてその場から駆け出した。
 二人が逃げたことを確認したゼノアは、「何が見えるんです?」と、いつもの笑みのままミオの後ろから通路を覗き込んだ。そして[動く像]を見たゼノアはいつもの笑みを崩し、驚愕の表情で尋ねた。
「あれが……アファエルさん達妖精族が言っていた[ごーれむ]ですか?……」
 今のところ像は奇面衆と戦闘を続けており、一行の存在には気付いてはいないようだ。攻撃を受けている奇面衆はそれでも奥に進もうと、果敢にも像に立ち向かっていった。像は見た目と違ってそれほど頑丈ではないようで、奇面衆の手持ち武器で手傷を負わせることは可能なようだ。だが、その傷はわずかな時間で再生してしまった!。どうやら外観は違うが、この像は以前遺跡で遭遇した緑の巨人と同様の存在のようだ。
「ど〜しますぅ〜?」
 さすがに声を潜めるアファエル。
「両者共倒れ、は期待できないねー。あの神像は前にアンタやゼロ達が戦ったっていう緑の巨人みたいに傷がすぐふさがっていく様だし、さすがに奇面衆は真っ二つになったら終わりだし……」
 よく見れば、彼らが戦っている通路の先に巨大な扉が開いており、その奥に広大な空間があるようだ。どうやら奇面衆は不用意にあの扉を開け、中にいた守護者と戦闘に入ってしまったらしい。
「反対側にも扉がありますね〜こっちはまだ開けていないようですぅ〜」
 さんざん悩んだ末に、ミオ達は賭けに出た。奇面衆達が死闘を演じている隙にもう一方の扉を開けてしまおうというのだ。トラップの様な守護者が今の一体だけなら良し、もしもう一体出てきたら、誘い出して背後に余裕の無い奇面衆を囮にして逃げ出そう……。奇面衆に自我があれば、「卑怯者ぉ!」と罵られそうな作戦(誰が発案したかは言うまでもない)の元、一行は今のうちにとばかりに像とは反対方向の通路に駆け込み、そしてその奥の扉の側に駆け込んだ。扉は以前アファエルが遺跡で見た通りノブも取っ手もなく、どうやって開けたらよいのかまったく分からなかった。
「ちょっとアファエル、どうやってこの扉開けたのよ?!」
「確かぁ〜クサナギさんが分解して何かいじってましたよぉ〜」
 それを聞いたミオは大体理解し、扉の横の箱を手持ちの工具で分解し始めた。中はやはり複雑な電気回路のようなものが詰まっていたが、ミオは操兵の疑似技能回路を修理する要領でその配線を調べ、そして直結させて何とかその扉を開けることに成功した。
 幸いにも、扉の奥から現れた空間には守護者の姿はなかった。しかし、予想だにしなかった事態が一行を襲う。奇面衆との戦いを続けていた守護者が、相手を無視し、扉を開けたミオ達めがけて突進し始めたのだ!
「うそぉ!」
「ミオさんの予想大ハズレ〜ですねぇ〜」
「アファエルさん、笑ってる場合ですかぁぁ!!」
 一行は慌てて扉の奥に入り込んだ。そして全員が入ったのを確認したミオは先ほどつないだ線を外した。そしてゆっくりと閉じ始めた扉に滑りこむ。扉は巨人がたどり着く一歩手前で完全に閉じた。
 しかし安心は出来ない。一行は退路を断たれた形だし、外からは扉を押し破らんと守護者が扉を乱打し始めたのだ。