
|
そして深夜。ようやく操兵同士の試合の時刻がやってきた。もともと参加者の少ない上にやはり見た目が派手という事もあって、目玉として最後に持ってくるようだ。 「さぁ、いよいよ操兵戦!。そしてこちらも大物同士の対決です!!」 司会の叫びに観客が沸き上がる。 「今度は同じ名前同士の対決はないだろうな……」 [蒼き神槍]と戦わされたセフィロスが呟く中、クサナギは自機エルグラーテAZの中で自分の名が呼ばれるのを待っていた。 「さぁ、最初の試合は何と、あの名高い[名勝負]の再現!クサナギヒコの操兵ファルメス・エルグラーテと……[紅蓮の狩人]イリューディア!!」 その名を聞いた観客は今まで以上の歓喜に湧いた。が、その中でもやはり「どっちも偽物だ……」と呟く冷めたものもいた。 その名を呼ばれたクサナギはエルグラーテAZを闘技場中心へと歩ませた。そして[かつての宿敵]であるデュークが現れるのを待った。 果たして、闘技場のもう一つの出入り口から漆黒の操兵が出現した。が、やはり…… 「ハニ丸様!。負けたらめーなのー!!」 静夜の声援にクサナギは操手槽の中で頭を掻いた。 そして試合が始まった。クサナギはエルグラーテに刀を構えさせながら、目の前でやはり剣を構える[紅蓮の狩人]に話し掛けた。 「……デューク……そなた、操兵を改造したのか?それとも変えたのか?」 「……本気で言っているのか?……クサナギ……」 クサナギのとても冗談とは思えない一言にセフィロスは呆れ返った。が、そんなセフィロスとは裏腹にクサナギは相手が別人などとうに見抜いていた。そう、操兵も操手も本物と比べて格が低い事など、いまや無類の実力者であるクサナギにとって見抜く事は容易いのだ。まぁ、以前の[蟹操兵]のような例外もあるが……。このクサナギの問いは、むしろ彼なりの相手への挑発だった。 「……貴様……本物を知っているのか……」 案の定、相手操手は予想通りの答えを返してきた。そんな中、静夜がミオを真似てこんな事を叫んだ。 「[クサナギーっ!。いつも通りの失敗がなければ大丈夫だからねーっ!!]……だったと思いますー」 その叫びを聞いた[紅蓮の狩人]は操手槽の中でニヤリと笑った。 「……なるほど……本物がこんな試合に出てきたという訳か……何か訳在りか、それとも悪党の気配でもかぎつけて来たのか……」 その時、静夜が再び叫んだ。 「ハニ丸様ーっ!。負けたらもーちゃん取られちゃうからめーなのー!」 「……なるほど……そういう事か……」 納得した[紅蓮]は言葉を続けた。 「伴侶を賭けた戦いか……だが、そんな事情などどうでもいい。俺はお前を倒せば有名になる。好い機会だ……」 「ならば、別に[紅蓮]を名乗る必要などないではないか!」 呆れ返ったクサナギの言葉に[紅蓮]は「本物が来るとは思わなかったからな……」と、余裕タップリに返した。が、そうは言ったものの内心では勝つ自信は全くなかった。やはり相手が悪い。そもそも実力があれば最初から人の名を騙ったりしなかったろう……。 (……よしっ!) [紅蓮]はこの場で最善の戦術を決め、操兵をかがませて地面に片腕を着かせた。 「……どうやら貴様相手では、最初から[奥の手]を使わざるを得ないようだな……」 「奥の手?!」 クサナギはエルグラーテの盾を構え直し、防御姿勢を取らせて相手の出方を待った。相手の姿勢から判断して、突進の類いかあるいは背中の隠し武器か何かを警戒したのだ。そんなエルグラーテに対し、[紅蓮]の操兵は今度は両腕、そして両膝を地面に着け、そのまま頭を垂れてこう言った。 「…………参りました!」 ………………。 「……すまん……俺も自分の操兵は壊したくない……」 呆気にとられたクサナギと観客を他所に[紅蓮]の操兵は立ち上がり、闘技場を後にしようとした。そしてその際エルグラーテに振り返り、鋭い目付きでこう言った。 「……今回は引き分けにしておいてやる!!」 その一言の直後。観客、そしてエルグラーテはそのままずっこけた。 クサナギの次はハリーの試合だった。 「クサナギと当たれば手っ取り早かったのだが、ま、モ・エギさんと当たらなかっただけ良しとしよう」 そう呟いたハリーは自機[ハーキュリーローズ]を闘技場中心に進ませる。このハーキュリーローズはリナラの三剣士メリエンヌの操兵マリアローズと同じ、ヴィクトーバ操兵工房作の特注機だ。その派手な古クメーラ調の騎士風の外観に惑わされがちだが、この操兵は機体内部そのものもかなり改造が加えられており、性能的にも侮れないものだった。 そして試合はハリーの一方的に有利な形で展開した。彼の腕は口先だけではないようで、相手が量産型のアルキュイルだったとしてもあっさりと勝利したその操縦技術と剣の技は認めざるを得なかった。 試合の後、ハリーはクサナギの所にやってきた。 「貴様の試合振り(?)見せて貰った。なるほど……クサナギの名は伊達じゃなかったというわけだな」 ハリーは新調したてのロングブーツによって伸びた身長でクサナギを再び圧倒、見下ろしながら呟いた。が、そんなハリーのブーツに静夜がまたも蹴りを入れ、そしてあっさりと砕け散る厚底ブーツ。 「ぐわぁっ!……おのれ靴師、手を抜いたな!!」 毒つくハリーはやはり静夜の仕業と気付かなかった。だが、今度は学習したのかすぐに背嚢から予備のブーツを取り出し、履き代えた。そしてすぐにクサナギに向き直って言葉を続けた。 「ともかく、貴様はさまざまな伝説を打ち立てた。それは認めよう。だが、決して私には勝てない。何故なら!」 ここでハリーはビシッ!とクサナギを指さし、直後にその指を自分に向けた。 「私の方が[カッコいい]からだ!!」 が、その言葉に静夜が思わず突っ込みを入れる。 「違いますよー。[もーちゃんのことを愛している]思いの強さでしょうー」 「それならば尚の事私の方が!。大体こんな埴輪のどこがいいんだ!!背だって私の方が高いし……」 その言葉にクサナギは思わずハリーの足元の高い踵を見る。 「見るなっ!。人と話をする時は、ちゃんと人の顔を見るんだ!!」 「そうですよー。人と話をする時はちゃんと目線を合わせないとー……」 静夜はハリーの頭を押さえ、クサナギの目線と合わせようとする。 「背たけで威圧感与えちゃだめー」 「今は威圧感を与える場面ですっ!」 「そうゆうのはめーなのー」 当のクサナギを無視して静夜とハリーの漫才が続いた。 「なんなんだこのお嬢さんは……まぁ、私に惚れるのはわかるが、私はあくまでモ・エギさん一筋なのだよ……」 髪をかき分けて気取るハリーに、静夜は思わずセフィロスにこう言った。 「せっちゃん。蹴っちゃっていいですかー」 「どうぞ」 セフィロスのその一言と同時に静夜は三度ハリーの踵を蹴った。今度は一撃で割れる事はなかったが、しっかりと皹が入り、いつ割れてもおかしくはなかった。が、当のハリーは皹が入った事までは気付いたのだが、またもそれが静夜の仕業である事に気付く事はなかった。 「この町に来てから、妙に頻繁に靴が割れるが……まぁいい。勝負はどの道決まっている。クサナギ、お前はせいぜい負けた時の言い訳でも考えておくんだな……私はモ・エギさんへの愛の告白の言葉を考えるのに精一杯なのでね!」 その言葉にまたも静夜が割り込んだ。 「じゃあ、ハニ丸様も告白の言葉を考えなきゃめーなのー」 「私はモ・エギから告白も受けたし、私もちゃんと返した!」 恥ずかしい事を言わせるなとばかりに真っ赤になって叫ぶクサナギに、静夜はさらにこう言った。 「じゃあ、指輪作って渡さなきゃだめなのー」 その時、帰りかけていたハリーが立ち止まった。 「そうか……指輪か!!早速注文してこなければ……」 ハリーは足早に闘技場を後にした。もっとも、深夜に近いこの時間に町に戻っても開いている店などないのだが。 そんなハリーを見た静夜はクサナギにも指輪を作るように促した。その言葉にクサナギは戸惑ったが、「もーちゃん取られてもいいんですかー」という静夜の言葉にクサナギはしぶしぶ了承した。別に指輪を作る費用をけちっているわけではない。クサナギとしてはあまりそういった[物]で思いを伝える事に抵抗があるだけだ。 ハリーが立ち去った後も操兵の試合が続けられ、そしてこの日の最後はモ・エギの試合だった。 「……軽く済ませてきますね」 それだけを言ったモ・エギは軽い足取りで闘技場に向かった。クサナギとしても特に心配はしていない。今日の試合を見る限りでは、操兵の方はハリー以外には特に強敵と言えるものはいなかったし、大体このような裏試合にそうそう名だたる操兵乗りが参加する事などめったにないのだ。 だが、それは甘い考えだった。モ・エギの前に立ちはだかった赤い操兵を見たクサナギ、静夜、そして観客席を飛び回っていたマリンと、さらには当の対戦相手であるモ・エギは驚きを隠せなかった。そう、その操兵は以前妖精族の森で遭遇したクロウの操兵ディノジェイラだったのだ!。 「……まさか、こんなところで逢うとはねぇ」 ディノジェイラの操手槽の中からクロウが話し掛けてきた。その声を聞いた静夜は呑気にも 「あ、あの時の[おちびちゃん]だー。頑張ってねー」 と、軽く応援した。が、クロウは今の静夜の言葉に過敏に反応した。 「誰だ!。今[おちびちゃん]と言ったのは……名前を言えっ!!」 どうやらクロウは自分なりに背が低い事を気にしているようだった。だが、静夜はそんな恫喝に脅える事なく堂々と名乗り出た。 「はーい静夜ですー。名前がわからないのでおちびちゃんですー」 「僕の名前はクロウだ!。覚えておけ!!」 「じゃあ、クロウ様頑張ってねー。あの時道を教えてくれたお礼に精一杯応援しますー」 そう、以前静夜は彼に道を教えてもらった事があったのだ。 [様]がつけられた事で途端に気を良くしたクロウは、落ち着きを取り戻してこう言った。 「なんだ……僕にもファンがいるじゃないか……」 ……案外単純だった。だが、このままで済まないのは味方であるはずの静夜が(さまざまな意味で)敵であるクロウを応援したのを目の当りにしたモ・エギであった。 「あのー……私の立場は……」 「もーちゃんはハニ丸様の応援があればいいでしょー」 そんな静夜の無責任な言葉にモ・エギは思わずハニ……クサナギを見る。そのモ・エギの縋るような視線にクサナギはただ黙った頷いた。まぁ、彼らしいといえば彼らしいか。だが、そんな事でもモ・エギには十分で、再びやる気を取り戻し、そのクサナギの思いに応えるかのように頷き返して兜をかぶった。そして試合開始の合図と同時にモ・エギはディノジェイラ目がけて突進した!。 この勝負、クサナギはモ・エギの勝利を確信していた。確かにディノジェイラは強かった。が、それは本来の能力である変形機構とそれによって可能になる砲撃能力を使用しての事だ。最初にクサナギと戦った時からさして操縦技術に成長のないクロウでは、モ・エギに勝つ事は無理と考えたのだ。 ところが、勝負は予想外の展開を見せた。突っ込んできたモ・エギに対してクロウは、ディノジェイラの右腕をその御仁姫に向けて突き出した。そしてその行動にモ・エギが警戒する前に何と、その腕を射出したのだ!。飛び出した鍵爪付きの腕はそのままモ・エギの甲冑紅葉武雷の腕を掴んだ。そしてその爪が関節の隙間に食い込んだ!。 「くっ!」 モ・エギはすぐにその爪を振り解こうとした。ディノジェイラの腕は本体と鉄線で結ばれており、それはモ・エギを自分の元に引き寄せようと凄い力で引っ張っていた。モ・エギはその爪から離れようと必死にもがいた。だが 「……無駄だよ!」 その一言と同時にモ・エギの体に一瞬激痛が走った!。 「きゃっ!!何、今の……?!」 「さすがの御仁も[圧電晶]の生み出す強力な電気には耐えられないだろ!!」 [圧電晶]とは、このゴンドアに希少ながら存在する特殊な水晶の一種で、通常の水晶よりも高い圧電効果を得る事ができる。まだ実際の利用方法は工房都市などで研究中なのだが、最近ではこのような形で相手に断続的な電気ショックを与える、というような使用方法も考えられてはいた。が、今まで実際に使用された例はなかった。 実際にはこのような劇的な効果は生まないのだが、モ・エギにとって不幸だったのは運悪く今の不意打ちによって電極のついた爪が見事に間接の隙間に食い込んでいたことだ。そのため生身に直接電撃を受けるはめになってしまった。 ともかく、今のショックで力の抜けたモ・エギに、クロウは立ち直る暇を与えることなく断続的に電撃を浴びせ続け、その結果モ・エギは耐え切れずにそのまま倒れてしまった。 「ま、こんなものか……」 得意気に闘技場を後にするディノジェイラの後ろ姿を見た静夜は思わず 「いじめっ子ー……」 と呟き、応援した事を後悔していた。 「……負けちゃいましたぁ……」 駆け寄ってきたクサナギにモ・エギは、少しだけ微笑んで呟いた。彼女の無事に安堵しながらも 「……まさか、クロウが試合に出ていたとは……」 クサナギはこの裏試合が唯で終わらない事を予感した。 初日の試合が終わって翌日。昼過ぎになってようやく目が覚めた一行は、静夜に誘われてモ・エギのところに行こうと町に出た。 「……ところでハニ丸様、指輪の予約はされたんですかー」 「……え……」 唐突な静夜の問いにクサナギは返す言葉が思いつかなかった。大体ついさっき起きたばかりでまだ考えてもいなかったのだ。そもそもここは宿場町。そんな指輪などを作ってくれるような店などあるのだろうか。それ以前に、単純に考えても通常の五倍もの大きさ(体積にして125倍)もの指輪を作ってくれる職人なんているのだろうか。 そんな事を考えながら町を歩いていた時、表通りの装飾屋にハリーがいる事に気付いた。彼は店の主人と何か言い争っているようだ。 「何故だ!。何故私の言う通りの指輪が作れないのだ!!」 「できるかボケェッ!。こんな宿場町の店でそんなデカイ指輪なんか作れるかぁっ!!」 やはり無理なようだ……。 「……仕方ない。指輪の件はライバに戻ってから考えよう」 今の光景を見たクサナギがそう言うと、またも静夜が口を挟んだ。 「じゃあ、指輪のことはもーちゃんに内緒にしておいた方がいいですかー?」 「……ま…まぁな……」 クサナギの詰まりながらの答えに静夜は何も言わず、意味深にニコニコしていた。 そんなこんなで町を歩く一行。だが、そんな平和な時を引き裂く出来事が不意に一行を襲った。 「……何かいる……?!」 その気配を感じ取ったのはクサナギ一人だった。その敵意ともいうべき気配のした方を向いた瞬間クサナギは、一行目がけて飛んでくる小さな針のようなものに気付いた!。 「危ない!!」 だが時既に遅く、その吹き矢から放たれた毒針をかわす事ができたのはその不意打ちに気付いたクサナギと小さな身体のマリンだけだった。 「くっ!」 セフィロスは傷口から染み込む毒の痛みに必死に耐えた。が、もともと(意外にも)身体がそれほど頑強でない彼にとってはかなりの苦痛だった。 その横では、やはりセフィロス同様に毒針を受けた静夜がこちらは冷静に毒消しを取り出し、自分の傷口に擦りつけ、セフィロスにも同様の処置を施した。幸い毒の効果はそれほど強くなく、初期治療も間に合って毒は立ち所に効力を失った。 「誰だ?!」 クサナギがとっさに針の飛来した方を向くが時遅く、既に賊の姿はなかった。そんなクサナギを見た静夜、セフィロスもクサナギに倣って辺りを見渡した。 「……あ、セフィロス様、屋根の上に誰かいますー」 静夜の指摘を受けたセフィロスが反射的にその二階建ての建物の屋根を見ると、何者かが建物の後ろ側に隠れる様が見て取れた。それを見たセフィロスは反射的に走り出し、その建物の裏側に回った。そして程なくセフィロスは、裏通りのバラックの屋根を伝って逃げて行く人物を発見した。 「いたぞ!。こっちだ!!」 それだけを叫び、追うセフィロス。それに続いてクサナギ、静夜も追いかける。だが相手は屋根の上。その下までは追いつくが、相手が上を走っている以上追いついたとはいえない。かと言って、登り口を捜していたらその隙に逃げられてしまう。 「俺が上から行く!。二人は下から奴の退路を断ってくれ!」 セフィロスはそう言うと、走りながらも瞬間的に[気]を練り上げ、その気を自分の足元に向けて放出、その勢いで空中に舞い上がった。流派の技[翔]で一瞬にして屋根の上の飛び乗ったセフィロスを見た賊は驚いた素振りを見せつつ振り向いた。そしてその顔には、ご存じ奇面衆の奇面が。 「……また貴様等か?!」 セフィロスは破斬槍を構え直し、間合を詰めるべく屋根の上を走り出した。それを見た奇面の男は逃げ切れないと悟ったか再び吹き矢をセフィロスに向けた!。 「またか!」 セフィロスはとっさに身構えを防御姿勢に改め、その甲斐あってか飛び出した針はセフィロスの肩を掠めるだけにとどまった。衣服には毒と思われる液体が付着していた。 吹き矢を回避したセフィロスはその姿勢から破斬槍を繰り出した!。そしてその一撃をまともに受けた奇面はそのまま屋根から落下、槍による致命傷と落下による後頭部激突により、悲鳴を上げる暇なく絶命した。 その光景を目の当りにした静夜は、目の前で散った命に哀れみを感じた。が、どのみち助けたところで奇面衆は(洗脳を解かない限り)自害するだけである事を以前の戦いで思い知った静夜はすぐに気持ちを切り替え、冷静に遠目から観察した。やはり以前の戦いで(蟹操兵が)自爆して果てた事から来る警戒だった。そして何も起きないのを確認するとおもむろにクサナギを呼んだ。 「……こんなところまで奴等が……」 ようやく追いつき、静夜の視線の先に倒れている奇面衆を見たクサナギは、厳しい表情で呟く。 「奴等の目的は何なんだ……」 その時、辺りに人々のざわめきが聞こえてきた。どうやら今の音を聞きつけた野次馬達が集まってきたようだ。ライバならいざ知らず、自分達のでないこの土地で騒ぎを起こしたくない四人はすぐさまこの場を立ち去った。その直後、死体を見つけたもの達がそれぞれに騒ぎ立てた。 「ぉおい、誰か倒れて……って、何じゃこいつはぁ?!」 「けったいな面を着けとるなぁ……」 そんな騒ぎを聞きながらとりあえず表通りに出た一行は、すぐさま静夜の勧めで薬屋に立ち寄り、消費した毒消しの補充をしようとした。が、あいにくその店には在庫がなく、夕べの試合の後ということもあってか、傷薬の在庫も切らしていた。 その後一行は本来の目的だったモ・エギのところまでやってきた。貸しガレージの中では夕べの試合が夜遅くであったためか、一行の先の騒ぎなど露知らずといった感じでモ・エギが眠っていた。一行が声をかけると、モ・エギはゆっくりとその巨体を起こした。 「……あ、おはようございます……」 夕べの試合の負けがショックでよくは眠れなかったのか、少々寝ぼけているモ・エギを見た静夜はおもむろにこんな事を言った。 「もーちゃん、良かったですねー」 「何がです?」 急な話にモ・エギは首をかしげながら聞き返す。が…… 「えーとえーと……う〜ん……」 「だから……何です?……」 静夜の勿体ぶった態度に不安になったモ・エギがさらに聞き返すが、 「……ごめんね……今は何も言えないのー」 と、結局はぐらかされてしまった。 そのモ・エギの狼狽える様子に、そもそもの原因を作ったクサナギはどう答えたら良いのかわからなかった。 そんな中、ここでようやく静夜はモ・エギに先の奇面衆襲来の件を伝えた。が、モ・エギはそれほど驚きもせず、夕べの試合を思い返した。 「そうですか……あのクロウ少年の操兵が試合に出てきたのを見た時に嫌〜な予感はしたんですけどね」 その後、一行は奇面衆の目的について議論したが結論は出ず、そのまま夕方を迎えてしまった。仕方なく一行は再び試合場へと赴いた。 |