キャンペーン・リプレイ

第 三十六話 「 裏 試 合 へ の 誘 い 」     平成13年5月6日(日)

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 試合場の賭博場では、昨夜の試合を元に客達が早速今日の試合の予想を立てていた。その中でも一番人気はやはりクサナギとセフィロスのようで、それを聞いた静夜が二人にその事を話した。
「では、ハニ丸様もせっちゃんも頑張ってくださいー。どうやらお二人に人気が集中しているみたいですしー」
「いや、たぶん静夜もだろう……」
 セフィロスの言葉に静夜は一瞬何を言われたかわからず、そして昨夜の自分の試合を思い出して
「だって、昨日の方は手加減してくださったんですよー」
 と、反論する。が
「……今日はオレ、昨日の静夜って女の人に賭けるぞ!」
「そりゃ、そうだ!あれだけ強かったんだから……」
「…………あれ?」
 周囲の言葉に静夜は戸惑いを隠せなかった。
 そんな静夜を応援するもの達の中には年端も行かない子供達もいた。そして本物の彼女が側にいる事に気付いた子供達は喜んで側に駆け寄ってきた。静夜は久遠を見せたりしてかまいながら、
「灯真も大きくなったら、こういう風になるのかなー」
 と、故郷に置いてきた我が子を思い出していた。
「どしたの?静夜」
 側を飛んでいたマリンが話し掛けると、静夜は
「マリンちゃんも静夜の家にくる?ー」
 と唐突に聞いてきた。するとマリンは笑顔で
「うん!マリン静夜の子供見たいーっ」
 と無邪気に答えた。が、本音は……
「(……親が親なら……ううん、きっと子供はまともだよ……ね……)」
 …………

 そうこうしている間に試合が進み、やがてセフィロスの出番となった。
「……今日も[蒼き神槍]って事はないだろうな」
 一抹の不安を抱えながらも試合に臨むセフィロス。だが、今日の試合は勝手が違っていた。
 試合の相手は小柄な小剣使いベガス。昨晩の試合においては身のこなしの軽さをもって相手を翻弄していたなかなかの使い手だったが、それでもセフィロスの人気には及ばず、賭け率はセフィロス有利であった。
 そんな試合場の様子を貴賓席から眺めていた半仮面の男が、頃合を見計らって立ち上がった。
「……観客の皆様。どうやら皆様にはこの試合の結果が見えているようで、不満もある事でしょう。そこで……」
 男がそう言って右腕をあげると、試合場にもう二人の戦士が入ってきた。
「どうせなら、この四つどもえの戦いの中で、蒼き神槍が生き残るかどうかを見て見ようではありませんか!」
 これは事実上三対一だ。三人の戦士は明らかにセフィロス一人を目標にしているのだ。
「三対一とは卑怯ではないか!」
 クサナギが観客席から叫ぶ。が、男は意に返さず、
「蒼き神槍の名に敬意を払ったまでの事……」
 と、不気味な笑みを浮かべる。そして当のセフィロスも「依存はない」と強気の返事を返した。 そんな中、三人の戦士はそれぞれ、一人は星球棍、もう一人は数本の短剣をジャグリングしながら間合を取り、セフィロスの隙を伺い始めた。
「試合開始……!」
 半仮面の男が手を挙げて宣言し、それと同時に短剣使いが手にした短剣のうちに本をセフィロスに向けて投げつけてきた!。セフィロスはそのうちの一本をかわしたが、もう一本をかわす事ができない!。だが、幸い着こんでいた防具の固い部分に命中し、その短剣はあっさり弾かれた。
 反撃とばかりにセフィロスは一気にケリをつけるべく、流派の技[流舞]を繰り出した。その槍は短剣と小剣で受け止めようとしたベガスの脇腹を貫き、そして続く攻撃は隣に展開していた短剣使いにもおよび、その一瞬の攻撃で二人は地に伏した。
 二人が一瞬で倒される光景を目の当りにした星球棍使いは一瞬茫然となったが、すぐに気を取り直すと急にセフィロスに背を向け、試合場を後にしようとした。
「……今日のところは、貸しにしといてやる!!」
 それだけを言い残して……。
 茫然となったのは観客も同じだった。何せ今の出来事はものの数秒のうちの事だったのだ。誰もが一瞬にして二人が倒された様を見て我が目を疑っていた。さすがに半仮面の男も一瞬「馬鹿な……」と呟いたが、すぐに気を取り直し、
「……ま、これも予想範囲内……だ。蒼き神槍の名は伊達ではない、という事か……」
 と嘯いた。

 ひとしきり拍手が鳴り響いた後、続く試合は静夜の出番だった。対戦相手はトランバキア製の超硬質セラミック甲冑に身を包んだ重戦士。セフィロスの見立てでは賭けは成立しないものと思われた。だが
「じゃ、行ってきますー」
 トボトボと試合場に臨む静夜に、思った以上の声援が集まった。
「いくらものすごい拳でも、あのセラミック甲冑に通じるのだろうか……」
「大丈夫!あのお姉さんなら絶対勝つよ!!」
 その子供の声援を受けた静夜はその子に向けて手を振り、そしてさりげなく気をわずかに練り上げた。どうやら子供の声援が静夜にやる気を起こさせたようだ。それでも静夜は見かけはいつもの調子を崩さずに試合場の中心へと歩み寄り、既に準備を整えている重戦士と対峙した。
 重戦士の前に立った静夜はいつもの調子でにっこりと微笑んだ。が、それに対し重戦士は油断する事なく間合を取り、凄みを効かせた声で言った。
「……なるほど……あんた、[気を練る]事もできるのか……観客の目を騙す事はできても、俺の目を誤魔化す事はできん。あんた、やはり相当な使い手のようだ……」
 どうやら重戦士は静夜の実力を見抜いていたようだ。それに対し静夜は特に慌てるでもなく、
「殴られたら痛いですからー。お母さんが、怪我をしないように習っておけって……」
 と、笑って見せた。
「護身用に気闘法とは、大層な故郷(おくに)だ。確か、羅 諸国連合のどこかに[何とか護身術]とか云う武術があるとか……」
 重戦士は手にした戦斧を構え直し、面の下に笑みを浮かべて言葉を続ける。
「……面白い。武繰使いとは一度、相手したいと思っていたのだ!」
 その言葉を聴いた静夜は一瞬、「(参りましたー)」と言ってしまおうかと思った。が……
「(大丈夫!あのお姉さんなら絶対勝つよ!!)」
 というさっきの子供の言葉を思い出し、再びやる気を奮い立たせた。
 そんな静夜を目の前にした重戦士は、大型盾を前面に突き出し、完全防御の構えを見せた。それを見た事情を知らない観客が野次を飛ばすが、重戦士は気にした様子はなかった。
「……何を言われようが、俺は全力であんたを倒す!。そうしなければこっちの身が危ないからな……」
「全力でやるんですねー。わかりましたー……」
 静夜は重戦士の言葉にため息まじりに答えた。
 試合が始まった。重戦士は盾を前面に突き出し、間合を詰めるべく静夜に向けて走り出した。静夜はその重戦士の動きに合わせ、絶妙なタイミングで回し蹴りを繰り出した!。
「無駄だ!!」
 重戦士はその蹴りを構えた盾であっさりと弾き返した!。が、静夜の蹴りはそれだけでは終わらない。静夜は立て続けに後ろ回し蹴りとさらなる回し蹴りを繰り出したのだ!。 
「こいつ、三倍の早さで攻撃してきた!!」
 南雲護身術の技の一つである[散弾脚]を不意に受けた重戦士はその攻撃を防ぐ事ができず、その後ろ回し蹴りは盾の防御をくぐり抜けて鎧の薄い後ろ臑に直撃、無敵のはずのセラミック甲冑を貫く激痛を重戦士に与えた!!が、それでも重戦士は倒れる事ない。どうやら致命傷には至らなかったようだ。こちらはこちらで人並み外れた体力と生命力だ。
「何という蹴り……これが武繰か?!」
 驚愕しながらもそこは歴戦の強兵、重戦士はすぐさま体勢を整え、再び斧と盾を構え直す。それに対し静夜はあのような凄まじい蹴りを放った直後にもかかわらず、いつもの調子を崩さずに
「次行きますからねー」
 と、すっとぼけたように言い放った。
「……簡単にはやらせん!」
 重戦士は盾を寄せて身体を隠し、その裏で斧を身体と水平になるように構えた。そしてそのまま身体を回転させ、静夜に向けて横振りに斧を振う!!。が、それを読んだ静夜は身体を沈め、相手の斧が届く前の一瞬のうちにその間合の奥、すなわち突き出された盾の内側に入り込んでしまった!。これで斧の攻撃は封じられた。しかし、
「やるな!。だが、まだだ!!」
 戦士はその勢いを止める事なくそのまま斧を振った!。柄の部分で殴ろうというのだ!。が、やはり決定打とはならず、静夜は楽々その一撃を受け流す。そしてその状態のまま静夜は重戦士の鳩尾に向けて拳を突き出した!このまま相手を気絶させようというのだ。それに対して重戦士は、余裕の表情で受け止めた。
「無駄だ!鳩尾の部分は厚めに装甲が張ってあるからな!!」
 そんな重戦士の言葉に静夜は、黙ったまま拳を強く押しつけた。
「無駄々と言っておろうに!……ぐっ?!」
 静夜の腕を降り払おうとした重戦士は、不意に鎧の下の鳩尾に強烈な痛打を感じた。南雲流護身術の技[想いの拳]による[気]の衝撃が鎧を[徹して]重戦士に強烈な打撃を与えたのだ!
「武繰、おそるべし……だが、まだだ!!」
 気絶しそうになるのを堪えた重戦士は、その体勢では不利と判断してその場から離れようと、静夜をつき飛ばそうとした。が、それよりも早く静夜は重戦士の懐で次の行動を起こしていた!……そしてその瞬間、重戦士は何が起きたか理解せぬうちに地面に倒されていた。静夜の投げ技が決まったのだ。
 相手を倒した静夜は、重戦士が起き上がってくる前に再び[気]を練り上げた。次の一撃で決めるつもりのようだ。余裕の戦いのようだが、もし相手の斧が決まれば一撃で沈むのは静夜の方だ。彼女も必死だった。
 相手が立ち上がるのを見計らった静夜はさらなる技[涼めの舞]を繰り出した!地面に叩きつけられた衝撃から立ち直り切れなかった重戦士は回し蹴りに続いて肩口に落とされた左踵の一撃を避ける事ができなかった。が、それでも地に伏する事がなかったのは、ひとえにセラミック装甲のおかげだろう。逆を言えば、その装甲がなければ、通常であれば一撃で相手を屠る事ができる一撃……もはや人間業ではない。
「……こ、このままでは終わらん!せめて一太刀!!」
 重戦士は自分の気力すべてを振り絞って大きく斧を振った!そしてその強烈な振りは間違いなく静夜に直撃した!!……はずだった。
「……な……なんだとぉ!!」
 渾身の斧は静夜の手刀であっさりと受け流されていた。技の一つ[双つ螺旋]。相手の攻撃を受け流し、打撃をそのまま返す、いわゆる返し技だ。さすがにセラミック装甲を貫くだけの打撃を返すまでには至らなかったものの、自慢の斧が素手であっさり流された光景に重戦士は衝撃を隠せなかった。
 静夜は狼狽している重戦士に向けて今度は散弾脚を放った!その蹴りは重戦士の斧を叩き落とし、その時点で静夜の勝利は確定した。
 重戦士は兜を脱ぎ、差し出された静夜の握手を遮った。そしてそのまま静夜と目を合わせる事もせずに試合場を後にした。
(……やはり[人を越えた力]とは勝負にはならん、か……)
 どうやら重戦士は静夜の中に、とてつもない[力]を感じ取ったようだ。そしてそれは、普通の人間にとってはもはやおよびのつかないものとなりつつある事に、果たして静夜は、いや、同様の[武繰]を使うイーリス、セフィロスは気付いているのだろうか……。
 そしてそれは、観客も感じ取ったらしく、しばしの間試合場を沈黙が覆った。が、一人の少年の、
「やっぱりあのお姉ちゃんが勝った!……すごいや!!」
 という一声が再び観客の声援を呼び寄せた。
「終わりましたー」
 そんな人々の思いを知ってか知らずか、あっけらかんとした笑顔で帰ってきた静夜をクサナギ、セフィロス、そしてマリンとモ・エギが出迎えた。もともと静夜に素質を感じ取っていたセフィロスと、以前実際に目の当りにしたマリンは別として、クサナギとモ・エギは今の戦いに呆気に取られていた。
「……静夜……そなたいったい、何者なのだ?!」
「唯の医者ですー」
 クサナギの困惑の問いに静夜はこれまたあっけらかんと答えた。
「……でも、この事はミオちゃんには内緒にしてくださいねー。出ないと、めーなのー」
 そして試合光景を見ていた半仮面もまた、驚愕の表情となっていた。が、すぐに平静さを装うように呟いた。
「……ふ……これはとんだ隠し玉だ。まさか、南雲流護身術の継承者まで見られるとはな……どうやらあれは[正統]のようだが……」
 半仮面の男は武繰についてもかなりの知識を持っているようだ。
「本来ならば、我が操兵の運用試験が目的、奴等に関してはおまけのつもりでいたが……」
 ここで男は不気味にほくそ笑んだ。
「……これは、予想外の収穫だ……」

 試合が明らかに不穏な空気に包まれていく様子は、今までの流れから一行にも確実に感じ取れていた。しかし、だからといってこちらからは何も仕掛ける事はできない。ここはしばらく試合を続けて様子を見るしかなかった。
 そしてその他の試合が何ごともなく終わり、やがて操兵の試合、クサナギとエルグラーテに出番がまわり、呼び出しに従ってエルグラーテAZが試合場の真ん中に立ったその時、またしても気品席の半仮面男が立ち上がった。
「……皆さん。次なる試合ですが、こちらも多少趣向を変えてみました……」
 半仮面はそう言うと、おもむろに試合場所の変更を告げた。
「ここではちょっと狭すぎるので……」
 指定された場所は試合場の外、だだっ広い荒野だった。周りにはここが大昔の街の跡である事を示すかのように朽ちた建物が所々に立っていた。
「……皆様、この美しい月明かりの廃墟の街の中で、あの[英雄]クサナギヒコがどのような戦いを繰り広げるのか、じっくりと楽しんではいかがでしょうか!」
 半仮面の芝居がかった言葉に観客が歓声を上げる。そんな中、荒野に佇むエルグラーテの操手槽の中のクサナギは油断なく辺りの気配を探っていた。こんな場所に引っ張り出した以上、何らかの罠が張ってあるだろう。
 やがて、クサナギの前に対戦相手が姿を現した。それは……
「やっと決着を着ける時がきたか……!!」
「……そなたは?!」
 そう、ハリー・チャックの操兵ハーキュリーローズだった。ハリーはハーキュリーローズに剣を掲げさせると、試合場の操兵用の入口から見ているモ・エギの方に機体を向けた。
「……この勝利ををあなたに!!」
 そんなハリーにモ・エギは、困惑の笑みを浮かべて鼻の頭を掻いた。そしてクサナギは、おそらくハリー自身は陰謀そのものには加担していないと確信した。だが、対戦者が「グル」でないとしたら、あの半仮面はいかなる企みを企てているのだろうか。
 そんな中、臨時の観客席に移ったセフィロス、静夜、マリンと久遠は何か試合場から不穏な空気、というより[匂い]が伝わってくるのを感じた。
「ひょっとして、これ……」
 そう、それは火薬の匂いだった。
 ここで半仮面の男が再び立ち上がった。
「皆さん。この試合は少々派手に行こうと思います。聞くところによると、両者は[結婚相手をめぐって戦っている]とか……。まさにそれは[恋の炎]!これからお見せする[灼熱地獄]を越えるほど燃え上がる事でしょう……」
 今の[灼熱地獄]という言葉に観客が動揺した。そんな中、静夜が半仮面の方に向かってこんな事を叫んだ。
「しつもーん。観客の安全は保障されているんですかー?」
「多少のスリリングがあった方が、観客も喜ぶというもの……」
「おいおいマジかよ!!」
 半仮面の不気味な笑みに観客が騒ぎ出す。そんな様子を気にせずに半仮面は言葉を続ける。
「安心してください。観客席に爆弾など仕掛けてはおりません。」
「でも、大砲が飛んでくるんですねー」
 静夜の続く言葉に半仮面はとぼけたように答える。
「大砲?そんな無粋なものは使いません……[花火]ですよ、は・な・び!」
「と、いうわけで……皆さん逃げましょうー!」
 静夜の叫びと同時に観客達が我先にと客席から逃げ始めた。
「もーちゃん、観客逃がすの手伝ってー」
「わかりました!」
 そんな中、試合場のハリーは特に動じる事なくハーキュリーローズをエルグラーテAZに向けて進ませる。
「……何がどうなっているのかはさっぱりだが、とにかく私はお前に勝つ!……たとえどんな火炎地獄が……[火炎地獄]?」
 ここでハーキュリーローズの歩みが止まった。さすがのハリーもこれから何が起こるのか把握しつつあるようだ。
「このような状況で、まだ戦うつもりか?!」
 クサナギの問いかけにハリーは戸惑う。が、それでも彼は再び操兵を進ませた。
「関係ない。私はモ・エギさんのために……こんな灼熱地獄などよりも熱く燃え(萌え?)て見せよう!!」
「……だめだこりゃ……」
 クサナギは仕方なく、エルグラーテに大太刀を構えさせ、ハーキュリーローズを迎え撃った。
「いくぞぉ!!」
 ハリーの叫びと同時にハーキュリーローズが剣を構えて突進してくる。クサナギはあえて動かずにその攻撃を受け流すべくエルグラーテに防御体勢を取らせた。エルグラーテのそんな様子にハリーは構わず操兵に剣を突き出させ、突撃をかけさせた!。
 が、その行動はあっさりと中断させられた。試合場のちょうど観客席の反対側に位置する町の遺跡の影から四発のロケット弾が飛来したのだ!。その火を吹く筒の内三発はエルグラーテに、そして残る一発はたまたまエルグラーテに接敵しようとしていたハーキュリーローズに向かっていた!!。
「いくぞぉぉ!……ぉおっ?」
 飛んできたものが一瞬何だかわからずにハリーは戸惑った。が、それが功を奏し、ロケット弾は動きを止めたハーキュリーローズの前を通過して行く。そしてはずれたロケットはそのまま観客席に直撃しようとしていた。
「あぶない!」
 モ・エギはとっさに客席の前に踊り出た。モ・エギはそのまま立ちふさがって食い止めようというのだ。そしてロケットはそのままモ・エギに命中、紅葉武雷の装甲の上で破裂した!
「きゃあぁぁぁ!!」
 その打撃のほとんどが装甲で防がれたものの、中に伝わった衝撃は相当なもので、モ・エギは思わず悲鳴を上げる。が、辛うじてその衝撃に耐え、倒れる事は何とか免れた。
「モ・エギーっ!!」
 クサナギはハリーに構わずモ・エギの元に駆け寄ろうとする。が、三発のロケットがエルグラーテに向けて迫ってきていた。
「く……!!」
 クサナギはすぐさま両肩部のガトリングを展開させてロケットを撃ち落とそうとした。が、
「ああ、もちろん[飛び道具は禁止]なので……」
 と言う半仮面の言葉にクサナギは思わず怯み、すかさず盾による防御に切り替えた。そして三発のロケットの内一発はエルグラーテの足元に、そして残る二発は辛うじて掲げた盾に命中、機体への直撃は何とか避ける事ができた。本来既に[卑怯な手]で試合妨害をした半仮面の言う事など聞く必要もないのだが、そこはクサナギ、つい思わず[ルール]に従ってしまったのだろう。
 ロケットの攻撃を耐えたクサナギは今度こそモ・エギの元に駆け寄ろうとした。が、そこにこんな状況にもかかわらずハリーのハーキュリーローズが剣を構えて向かってきた!
「クサナギーっ!」
「ハリーかっ?!」
 クサナギはエルグラーテに再び防御姿勢を取らせ、大太刀でハーキュリーローズの剣を受け止める。そのクサナギの操縦技術にハリーは思わず舌を巻く。
「なるほど、やはり腕は立つようだな!だが、私は貴様に勝っているものが三つある。わかるか!!」
「なんだ?!」
「一つは!……美しさ。もう一つは!……背の高さ。そして最後は……」
 ここでハリーは拡声器の音量を最大にして叫んだ。
「モ・エギさんに掛ける[愛]だぁ!!」
「…………」
 ここで自分の言葉に酔いしれ、それによってモ・エギの事を思い出したハリーは、
「モ・エギさん、大丈夫ですか?!」
 と、エルグラーテを放っておいてすぐさまモ・エギの方に掛け寄ろうとした。が、クサナギはそれより早くエルグラーテをモ・エギの前に寄せ、再び盾を構えて次のロケットに備えた。
「エルグラーテの陰に隠れるんだ!」
「はい!」
 そんな光景に妬いたハリーが思わず叫ぶ。
「それは私の役目だ!」
 が、そんなハリーの叫びは、再び発射されたロケット弾の爆音に遮られた。今度は六発。そのうちの二発が無防備にも背中をさらけ出していたハーキュリーローズにものの見事に命中した!
「ぐわぁっ!」
 致命傷にはならず、起動停止にも陥らなかったものの、ハーキュリーローズはその衝撃でうつ伏せに倒れた。それを見たクサナギは
「もう試合などと言ってはいられん!」
 と、すぐさまガトリングを展開、迫るロケットに向けて掃射した!。が
「こんな時に?!」
 轟音を立てて発射されるはずだった96式回転機関銃は急な切り替えのためか弾詰まりを起こした!そしてロケットの内二発はそのままはずれたものの、残る二発がまともに命中、少なからず損傷を与えた。
「しばらくミオの点検を受けていなかったからな……」
 呟きながらもクサナギはエルグラーテを立て直す。そんな様子に半仮面は勝ち誇ったように叫んだ。
「見ろ!クサナギはガトリングを使った。これで反則負けが決まったぞ」
「撃ったわけじゃないだろうが!」
 そのセフィロスの抗議に半仮面は耳を貸す事なく言葉を続ける。
「使おうとしただけで十分成り立つのだよ。よかったなハリーとやら。これで[愛を掛けた戦い]はそなたの勝利だ!」
 その言葉にさすがのハリーも声を荒げた。
「ふざけるな!私にも戦士としての誇りがある。こんな形の勝利など望んではいない!!」
 その言葉にクサナギも思わず感心する。
「なるほど……そなたの戦士としての心は本物というわけか」
「言っただろう!私が貴様に勝っている最後の一つは[愛]だという事を!!」
「…………」
 一瞬の静寂の後、観客席から静夜が二人の操兵乗りに向かって叫んだ。
「あのー、そんな事よりもこの砲撃を止めてきてくださいなー」
 その言葉に反応したクサナギとハリーはそれぞれの操兵を砲台があると思われる町の遺跡に向けて走らせ、モ・エギもそれに続いた。