〜続・日曜日〜

 

「ひえ〜。いたい出費だなあ…。」

 心なしか薄くなってしまった財布の中身を見ながら、藤田君がレストランから出てくる。それを出迎える眼鏡をかけた少女。

「当たり前や!あんだけ待ち合わせの時間に遅れといて!これですんだだけでも感謝してほしいぐらいや!」

「ひゃ〜。もう勘弁してくだせぇ、お代官様〜。」

「…ほんまにそう思てるんか?」

 おどけて謝る藤田君の姿に思わず口元が緩んでしまいそうになる…が、何とかこらえて怒った顔をそのまま持続させる。ここで甘い顔を見せると、調子に乗りすぎて今日の遅刻の件などすっかり忘れてしまいかねない。そこらへんはしつけの出来てない子供と同じなのだ。

「ははは…。お?あそこになんか人が集まってる。いってみようぜ、委員長!」

 ちっ、逃げられた…。そう思いつつ藤田君がいこうとしている場所を見ると、確かに人がたくさん集まっている。何かあったのだろうか?

 

「…と,言うわけで,眼鏡というのはこんなにいいものなのです!」

 人ごみの真ん中でひたすらに熱弁する眼鏡をかけた少女。まわりの人間も真面目に聞いているものは当然のごとくなく、もはや奇異の目を向けるだけになっている。…私の横にいる藤田君を除いては。

 はじめ、まだ人ごみの中心が見えず、声だけ聞こえている状態のときは「眼鏡屋の勧誘かな?」と思っていたのだが、目の前の人が一人、また一人と去っていき、やっとの事でその声の主が見えたとき、その予想は簡単にくつがえされた。

「…なのですから、コンタクトレンズなんてもってのほかです!」

 あいかわらず熱弁を振るう少女。眼鏡をかけているだけなら何の問題もないのだが、宗教家が着ているような白いローブ、怪しげなネックレス、そして後ろにある「眼鏡をかけて幸せになろう!」の垂れ幕…。もはや眼鏡屋の勧誘と思う材料はどこにもなかった。

「眼鏡をかけていると根暗に見えるとか、お堅く見えるとか言うのはもう昔の話です。ですから…。」

 少女の熱弁は相変わらずで、止まりそうもない。ふと周りを見てみると、さっきまでいたたくさんの人もほとんど帰ってしまったらしい。その場に残っているのはもう私と藤田君ぐらいになっていた。

「な、なあ藤田君。もうまわりに人もおらんようになったし…そろそろ帰らへん?」

 相変わらず真剣な顔をして聞いている藤田君。どう考えても私の声が聞こえている様子はなかったので、服の袖を引っ張って、もう一度聞いてみた。

「なあ…。帰ろって。」

「ん?なんで?まだ話終わってないみたいだぜ。」

「終わるも何も…。こんなん聞いてたって面白くも何ともないやんか。」

「そうかなぁ…。俺は結構面白いんだけどなぁ…。ま、いいじゃんか。もうすぐ終わりそうだし。聞いていこうぜ、委員長!」

「で、でもなぁ…。」

「い、委員長!?」

 藤田君が喋り終えるのとほぼ同時に飛んでくる素っ頓狂な声。声のしたほうに目を向けてみると、さっきまで自分の世界に入っていた、眼鏡をかけた少女が、すごい勢いでこちらのほうに近づいてくるのが見えた。

「い,今委員長って言いませんでした!?」

 眼鏡の奥にある瞳をきらきらと輝かせながら藤田君に迫る少女。さすがの藤田君もこれには驚いたらしい。一瞬ビクッっとしたのが傍目からでもわかった。

「こちらの女性に言いましたよね!?委員長、って…。」

「へ?ああ、言ったけど…。」

 そう藤田君が答えるのとほぼ同時に、彼女の瞳と体はこちらに瞬時に移動してきた。その移動スピードは人のものなの?と言う疑問が一瞬だけ浮かんだが、次に彼女が言った言葉のほうが衝撃が強かったため、やはり一瞬でその疑問は消し飛んでしまった。

「も,もしかして、保科 智子さんじゃないですか!?」

「え?そ,そうやけど…。何で知ってるの?」

「私たちの世界では、「委員長=保科智子」は当たり前です!それに保科さんを知らない人なんて、私たちの世界には存在しませんよ!」

 私たちの世界って何?なぜ委員長と私がイコールなの?なぜ私を知らない人がいないの?いろいろな疑問が私の頭の中を駆け巡る。一方、これっぽっちの疑問も抱いていないであろう目の前の少女は目からウルウルと涙を流し、手を自分の胸の前で組むことにより、「私、感激です!」という事を一生懸命表現している。

「…藤田君。」

「すげぇな、委員長!そんなに有名だったなんて知ら…。」

「逃げるで!!!」

 私はのんきに感動しようとしていた藤田君の手をさらうように握ると、そのまま走り出した。後ろから「あっ!待ってください!」とか言う声が聞こえてきたような気はするが、聞こえてない事にした。

「お、おい、委員長…。」

「ええから、はよこの場所からはなれるんや!いくで!」

 

 夏のような日差し、相変わらずうるさい街中。私はそれにたえることは出来る。でも、私は異次元空間にたえれらるほど強くはない。しばらくこの商店街に来る事はないだろう。

 『こんな日曜日は早く終わってほしい』切実にそう思う智子であった。

 

〜END〜

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 なんか書いている途中、自分もわけわからなくなってきました(^^;

 まあ、さらっと流して読んでくださるとありがたいです(^^;