LOST=ARMS        作:ぐりむ


―――商人の集う国、トレヴァ。
街の中にはたくさんの店が並び、活気付いている。
だが、その中に、まったく元気のない男一人と、少し幼い顔の女性が一人。
男の名前はアイザック。女性の方はキルシェという。
彼らは実は・・・文無しだった。

「・・・腹へった・・・・」
「・・・うう〜・・・やっぱりあの依頼受けとけば・・・」
「確かに報酬はよかったけど・・・あんな仕事受けてたら一国を敵に回すぞ?」
「だろうね・・・はぁ・・・」
よっぽどやばい依頼だったらしい。

「貧乏って・・・辛いね・・・」
「言うな・・・大丈夫。きっとこの街なら依頼の一つや二つ・・・」
「そう言っていくつの街を渡り歩いたと思ってるの?」
「うっ・・・と、とにかく!早く仕事見つけないと本当に餓死しちまうぞ!」
「じゃあ色々まわってみましょう。」






















「・・・なんて薄情な街なんだ・・・」
「しくしく・・・」
二人はあらゆる店や、民家、果ては道行く通行人にまで声をかけて仕事をさがしたが・・・
結果は散々だった。

「いつから人間ってのはこんなに愛が足りなくなったんだ!?」
「今日もゴハン食べれない・・・しくしく・・・」
キルシェはうずくまっておいおい泣き出した。

「泣くなぁ!まだ諦めるのは早いぞ!」
「・・・え?」
「キルシェがその童顔を売りに夜の街であんなことやこんなことすれば・・・」
アイザックの顔面にキルシェの拳が飛んだ。

「おおおおお・・・・ぐ、グーで・・・・」
「くだらないこと言ってる暇があったら仕事探せバカ」
「いい考えだと思ったんだけど・・・・」
言いかけたアイザックは、キルシェに睨まれ黙りこんだ。

「はぁ・・・どうしよう・・・」
「一通りまわったしなぁ・・・・・ん?あれは?」
アイザックの視線の先には、怪しい集団に追われる少女の姿があった。

「・・・陰謀の匂い・・・仕事の匂い!」
言うが早いか、二人は少女のところへ向かった。






















「はっ・・・はっ・・・はっ・・・」
「逃がすな!追え!!」
ここで捕まるわけにはいかない。捕まったら全てが水の泡だ。
だが、連中はどこまでも追いかけてくる。
このままじゃ――――!!
少女の眼前に、大きな壁が立ちふさがった。
行き止まり―――引き返そうと思って後ろを振り向くと、そこには追手が待ち構えていた。

「ふっふっふ・・・追い詰めたぞ・・・」
少女は1歩後ろに下がった。だが、壁が邪魔でそれ以上下がることはできない。
乗り越えるのも、少女の身長では無理がある。絶体絶命だった。

「さぁ、おとなしく研究所へ戻るんだ。」
少女は首を振った。

「しかたない・・・なら・・・力づくで連れ戻してやる!」
その男達は、少女に向かって飛びかか・・・ろうとした。が―――

「待てい!」
突然背後から声が聞こえた。
彼らが振り返ると、そこには二人の人間がいた。
アイザックとキルシェ。その人達である。

「何だお前ら?」
「か弱い少女に乱暴しようとする悪党め!この俺が成敗してくれる!」
決まった、とアイザックは思った。だが、横からキルシェが、

「・・・アホ?」
あまりに冷たいこの言葉に、アイザックは泣き出しそうになった。

「アホは無いだろアホは!」
「だってアホじゃん。」
「うぐっ・・・・そうかなぁ・・・結構いいと思ったんだけどなぁ・・・」
「・・・なにがやりたいんだお前ら・・・」
二人の漫才に、連中も呆れかえっていた。

「おおっと、そうだった。まあその子を助けにきたわけだ。おっけぇ?」
それを聞いた途端、連中の表情が変わった。
よく見れば、連中はこの国の兵士の格好をしていた。
それを見てアイザックははっとなった。

(・・・な、なぁ?もしかしてまた国がらみのことか?)
(知らないわよ!このさい気にしてられないじゃない!)
(お前気づいてたんだったら言えよ!!)
(私はてっきりあんたも気づいているんだと・・・・)
(全然気づかなかった・・・し、しかたない。もう後には引けないし・・・)
二人がそんな話をしていると、兵士の一人が口を開いた。

「お前ら・・・何者だ?」
「へっ?」
「この子供がなんなのか知っているのか?まさか・・・隣国のスパイか!?」
二人はなんとなく嫌な予感がした。

「そうか・・・ならば生かしてはおけん!」
「うわぁ!やっぱりぃ!」
兵士達は二人に襲いかかった。

「うわわぁ!・・・・なんちゃって。」
「!!?」
アイザックの手にはどこから出したのか、巨大な剣が握られていた。
その剣をアイザックはたやすく振り回し、屈強な兵士達をなぎ倒した。

「ざ〜んねん。伊達になんでも屋はやってねえんだなこれが。」
「失業中だけどね。」
痛いことを言う。

「あ、あなた達は一体・・・」
「いやだからなんでも屋って言ってるじゃん。人の話聞いてねえな。」
「なんでも屋・・・・」
「貧乏だけどね。」
「さっきからうるさいなぁ・・・・」
「本当に・・・なんでもやってくれるんですか?」
その言葉を聞いて、二人は来た来た、と顔を見合わせた。

「そりゃもう!報酬さえ頂ければ!」
「お金は・・・今少ししか・・・・」
二人はあからさまに嫌そうな顔をした。

「・・・残念だけどお金がないと・・・」
「あ、でも!私の父は貿易商をやっているので・・・」
「とりあえず話だけでも聞きましょう。」
なんという変わり身の早さか。

「そういやまだ名前聞いてなかったな。」
「あっ、あの・・・ユーリって言います・・・」
「よろしくユーリちゃん。ではどこかで食事でもしながら・・・」
それが目的だったのか。























「へひふふへひひ?」
口いっぱいに食べ物を詰め込んだせいで何言ってるかわからない。

「はひひっへふはははふひはほ!」
キルシェも同じだった。二人は水を一気に飲み干した。
ユーリはその様子を唖然として見ていた。

「・・・ふう・・・久しぶりの食事だぁ・・・・」
「ほんと・・・幸せ・・・・」
二人はご機嫌だった。

「あ、あの〜・・・」
「あ、ごめんごめん。ええっと、生物兵器?」
「はい。トレヴァの城内に研究所があるんですが・・・その実験台にされているのが・・・・小さな子供なんです。」
「子供!?そいつは酷い話だな。」
「はい・・・各地でさらわれてくるらしいんです。」
「ということは・・・あなたもそうなの?」
ユーリは頷いた。

「じゃあお父さんは?」
「この街にいるはずです。私はこのことを伝えて、まだ城にいるみんなを助けてもらうために逃げてきたんです・・・」
「じゃあ俺らは何すりゃいいわけ?」
「・・・みんなを助けてください・・・」
「は?それは君のお父さんがやるんじゃ?」
「・・・それでも時間がありません・・・私が逃げたことであいつらはきっと研究のことがバレるのを恐れてみんなを・・・」
「なるほどね。」
「ずっと悩んでいたんです・・・父が動いてくれてもみんなが助からないかもって・・・お願いです!時間を稼いでくれるだけでもいいんです!」
「・・・まあ、今の俺らはお金さえもらえりゃなんでもするけどね。」
「じゃあ!」
「その依頼引き受けた。君はお父さんにこのことを伝えるんだ。追手がいるかもしれないから気をつけて。」
「私達の報酬のことも言っておいてね〜」
「は、はい!」
「さて・・・じゃあ行くか。」
「うん。」
「・・・作戦開始。」























―――トレヴァ城内
「ふう・・・意外と簡単に忍び込めたな・・・」
「油断しちゃ駄目よ。見つかったら大変なんだから。」
「わかってるよ。・・・さて、研究所はどこだ・・・?」
二人は慎重に城内を進んで行く。
途中何度か衛兵に見つかりそうになったが、なんとか研究所を見つけた。

「ここか・・・・」
アイザックは警戒して辺りを見まわしながら、研究所の扉を開いた。
そして、その中を見て、絶句した。

「こ、これは・・・・」
その光景は凄惨たるものだった。
ユーリと同じくらい、もしくはもっと小さな子供が、緑色の溶液のなかに入れられて眠っていた。
中には異形のモンスターまでいる。

「酷い・・・」
「・・・ちっ・・・確かにこりゃあ許せないな・・・」
「ええ・・・!アイザック、あそこ!」
キルシェが指差した方向には、檻に入れられた子供達がいた。
二人は檻に駆け寄った。

「みんな大丈夫か!?」
「・・・誰?」
「ユーリちゃんの友達よ。助けに来たの。」
「本当!?ユーリ逃げられたんだ・・・よかった・・・」
「さぁ、君達も・・・・」
「そこまでだ。」
突然背後から声が聞こえた。二人が振り返るとそこには初老の男と衛兵が立っていた。

「貴様らだな?脱走者捕獲を妨害した二人組というのは。」
「そういうあなたはどちらさまですか?」
「私はこの国の大臣だよ。もっとも・・・この国の実権は国王では無く、この私にあるがね。」
「へぇ・・・お偉いさまじゃないか。じゃあこの研究所もあんたが作ったってわけだ。」
「もともとは違う。知っているから乗りこんできたのだろうが・・・生物兵器を作ったのは私だ。」
「じゃああんたがいなくなればこの子達も助かるわけね。」
「はっはっは。そうだな。だが、それは不可能だ。お前らはここで死ぬのだからな。」
「いや、仮に俺らが死んでもユーリがいる。あの子がこのことを伝えて・・・!」
二人は目を見開いた。そこには衛兵に捕らえられた、傷だらけの少女がいた。
ユーリだった。

「ごめんなさい・・・・ごめんなさい・・・・」
「ユーリ・・・・」
「はっはっは!こいつの父親は単純だったぞ!金を握らせたら二つ返事で娘を売りおった!」
「なんだと・・・?」
「まあ当然か。あの男は1年前も娘を金で売ったんだからなぁ。」
二人は驚愕した。だが、一番衝撃を受けたのは、ユーリだった。

「お、お父さんが・・・・う、嘘よ・・・・」
「嘘ではない。あのころの奴は金に困っていてなぁ、あのままだったら親子でのたれ死んでたところを助けてやったんだ。逆に感謝してほしいものだ。」
「うう・・・うあ・・・うわぁぁぁぁ!!」
「はっはっはっはっは!!」
「そこらへんにしとけよこのクズ野郎。」
アイザックの声にはとてつもない怒りが感じられた。

「なんだと?貴様自分の置かれている状況がわかっているのか?」
「黙りやがれ。お前の声を聞いてると反吐が出る。」
「・・・貴様・・・命が惜しくないようだな・・・」
「あんたみたいな奴のことを腐れ外道って言うのよね・・・」
「・・・・殺せ。」
衛兵が二人に襲いかかった。
アイザックは何かぶつぶつと呪文を唱えはじめた。
その間にも衛兵はこちらに向かってくる。
街での時とは訳が違う。明らかな多勢に無勢。
だが・・・

「・・・LOST=ARMS・・・"SWORD"!!」
アイザックの言葉と共にその手に輝く巨大な剣が現れた。
その剣は、まるでアイザックの手足のようにその剣身を踊らせ、衛兵をいとも簡単に斬り裂いた。
悲鳴すら上げる間も無く衛兵はその命を絶たれた

「なっ!?」
残った衛兵も、キルシェに向かって襲いかかるが・・・

「LOST=ARMS・・・"SHIELD"!」
キルシェの言葉と共に、その体を包むほどの巨大な盾がキルシェの前に現れた。
その、もはや障壁と呼べる盾に衛兵の体が触れると、その身体は押しつぶされ"ぺしゃんこ"になってしまった。

「ぐえっ!」
声にならぬ声を発して絶命する衛兵を見て、大臣は恐怖に震えていた。

「さて・・・次はあなたの番ね。」
「き、貴様らは一体・・・・?ど、どこからそんな武器を・・・・?」
「LOST=ARMS。何もない空間に武器を作り出す、古代の失われた奥技さ。」
「LOST=ARMS・・・?」
「詳しく知る必要はない。お前はここで死ぬんだから。」
「ぐぐぐ・・・・」
大臣はあまりの恐怖に流れる脂汗を拭いながら必死に助かる方法を思考していた。

(どうする!?こいつらは本気で私を殺すつもりだ・・・こんなところで私の野望を終わらせてたまるか・・・・!!くっくっく・・・・)
突然肩を揺らして笑い出した大臣を、二人は不思議に思った。

「なんだ?とうとうイカれちまったか?」
「気持ち悪〜い・・・」
「くっくっく・・・やはり最後に勝つのは私のようだ・・・」
「??」
「ここは私の研究の成果が詰まった研究所なのだよ・・・そう、私の可愛い兵器達が!」
地鳴りが起こった。そして、研究所の奥から現れた。異形の怪物達。

「こんなもののために・・・あの子達を犠牲にしたのか・・・?」
「なんとでも言うがいい!!さあお前達!こいつらを殺せ!!」
「ウオオオオオオオ!!」
雄たけびと共に怪物は二人に突進した。

「・・・かわいそうに・・・こんな奴に利用されて・・・」
「せめて・・・救ってあげる。ごめんね・・・」
二人は同時に跳んだ。怪物は止まることができず、そのまま研究所を破壊していく。

「な!?なにをしている!?やめろ!私の研究が!!」
「ウオオオオオオオ!!」
二人は目を見開いた。怪物達の目には血液の涙が流れていた。

「・・・そうか・・・君達はそんな姿になっても、みんなを助けたかったんだな。」
「今までの悪行の報いだと思って・・・地獄で反省しなさい。」
「や、やめろぉ!!!」
「「LOST=ARMS・・・」」

「"AXE"!!」「"HAMMER"!!」
二人の手に握られた、巨大な斧と大鎚が振り下ろされ、
研究所も、怪物となった子供も、そして、大臣の野望も、消滅した。























「!?・・・・お、おお!ユーリ!無事だったか!」
ユーリの父親は娘が帰って来たことに白々しく喜んでみせた。

「・・・お父さん・・・」
「どうしたんだ?さあ、こっちへおいで!」
「おいおっさん。」
後ろで見ていたアイザックが父親を呼んだ。

「ん?なんだ君達は?そうか!君達がユーリを助けてくれたお方だな!?いやぁどうもありがとうございます!では約束の報酬を・・・!!」
アイザックとキルシェはユーリの父親を殴っていた。
無理もない。彼らには、父親のその態度一つ一つが酷く苛ついた。

「なっ!?なにをする!!」
「・・・ユーリの父親じゃなけりゃ・・・殺してるところだ。」
「ユーリちゃん・・・どうする?」
「えっ・・・?」
「こんな父親と一緒にいることないのよ?・・・私達と一緒にいかない?」
「な、何を言ってるんだ君達は!?ユーリ!こんなやつらの言うことなど聞いてはいかん!!」
「ちょっと黙ってろ。次なんか言ったら舌引っこ抜くぞ。」
アイザックに睨まれて父親は縮こまってしまった。

「ユーリちゃん・・・」
「・・・連れていってください・・・一緒に行きたいです!」
「よし!」
「ユーリ!何を言ってるんだ!」
「うるせえって言ってるだろ!!」
アイザックの怒号に圧倒されて、父親は何も言わなくなった。

「じゃあ行こうか。」
「はい!」
「次はどんなところかなぁ〜」
「そうだ、LOST=ARMSっていうの教えてくださいよ。」
「う〜ん・・・ユーリちゃんにできるかなぁ?」
「私頑張ります!」
「いいんじゃないか?教えてやれよ。」
「・・・しょうがないなぁ・・・厳しいわよ?」
「はい!!」
3人は笑いながら、トレヴァを後にした。
取り残された父親は、ただ呆然と立ち尽していた・・・・























―――花の都、フレーヤ
街には色とりどりの花が咲き乱れ、それを見にきた旅人で賑わっていた。
だが、そんな中でも元気のない顔をした3人組が街をうろついていた。

「・・・腹へった・・・・」
「・・・うう〜・・・やっぱりあのとき報酬受け取っておけば・・・」
「俺にだってプライドがある!」
「プライドが食べれたらいいのになぁ・・・」
「くだらないこと言うなよ・・・余計腹が減る・・・ユーリちゃんは大丈夫?」
「はい・・・なんとか・・・」
「ほら、ユーリちゃんはこんなに頑張ってるんだぞ!やっぱここはキルシェが夜の街で・・・」
アイザックの後頭部にキルシェの蹴りが飛んだ。

「おおおおお・・・・」
「あんたのがよっぽどくだらないこと言ってるじゃないのよ。」
「いい考えだと・・・いえ・・・なんでもありません・・・」
「あの〜・・・」
「ん?なぁに?」
「お二人おいくつなんですか?アイザックさんは20くらいだと思うんですけど・・・」
「すごいな、当たってるよ。俺20歳。」
「キルシェさんは・・・15くらいですか?」
「・・・彼と同い年よ・・・」
「えぇ!?嘘!?」
それを聞いたアイザックが隣で腹を抱えて笑っていた。

「あっはっはっは!!まあ間違うのもむりはないよ。こいつ背低い上に・・・くくっ・・・童顔だからさ。」
「アイザック・・・」
キルシェの背中に怒りのオーラが見えた。
やばいと思ったアイザックは、1歩、2歩、後ろに下がって・・・全力でダッシュした。

「待てぇ!!」
その後をキルシェが追う。二人ともとても人間のスピードとは思えない早さで街中を駆けていった。

「ちょっと待ってくださいよぉ!仕事はどうするんですかぁ!?・・・しょうがないなぁ・・・・」
追いつくのは無理だと思ったユーリは、一人で仕事を探しだした。
実はユーリは一番しっかり者かも知れない・・・・
酔ってしまうそうな花吹雪の中で、超人的なスピードで追いかけっこしている二人と、職を探す健気な少女。
貧乏と戦い、路頭に迷いながら、彼らの旅路は果てなく続く――――


おしまい


あとがき
十六薙さんページ開設おめでとう♪
と、いうわけで、バイト中皿洗いながら思いついた小説を送ります(爆)
喜んでもらえたら幸いですが・・・
話的には珍しく納得のいく作品だと思うのですが・・・まあ下手なりにね;;;
いつも通り駄文だったらお許しを。っていうか駄文だから勘弁して(死)
1日で書き上げたもんだから変なとこあったらごめんなさいってことで。
それでは、十六薙のホームページの繁栄を願って、乾杯!
(結局何が言いたいのお前?)
(いいじゃん。めでたいんだから)
ちょっと上遠野先生風に終わって見ました;;;