With you 戦いを終えたクラウド一行は、コスタ・デル・ソルの別荘へ来ていた。 旅の疲れを癒すのと、祝勝会を兼ねたこの旅行を皆楽しんでいたが、 一人だけ浮かない顔をしている者がいた。 クラウドである。 彼は本当はティファと二人っきりで来たかったのだ。 これからどうするのかをティファと話そうと思っていたのである。 だが、流れで全員で行くことになり、クラウドは少し不機嫌になった。 もっとも、そのときはみんなで打ち上げのノリで行くのも悪くないかな、とも思ったし、 ティファと二人っきりになるチャンスはいくらでもあるだろうと考えたので 不機嫌といってもそれほどでもなかった。 クラウドの機嫌が非常に悪くなったのは、コスタ・デル・ソルに着いてからのことだ。 ティファ以外の仲間は、クラウドに気を使って(というかクラウドがどっか行け! と目で合図を送っていたのだが)2人を残し思い思いの場所へと出かけていった。 残ったクラウドは、ティファと二人で過ごそうと思ったのだが・・・。 「クラウド、私ちょっとジョニーのところに行ってくるね。 遅くならないようにするから」 それだけ言うと、ティファはジョニーの家のほうへ行ってしまった。 「お、おい!」 呼びとめようとしたが、聞こえなかったらしくティファはそのままジョニーの家へ入っていった。 当ての外れたクラウドは、しばらくその場で呆然と立ち尽くしていた。 「ったく、せっかく二人きりになったのになんなんだよ!」 そういう訳でクラウドはふてくされて、一人別荘でティファや仲間の帰りを待っていた。 ジョニーはティファのミッドガル7番街での知り合いだ。 7番街は爆破事故で多くの人が犠牲になったから、数少ない知り合いにティファが会いたいと思うのは 別に不自然なことではない。 ジョニーも、昔はティファに思いを寄せていたようだが、今はすでに結婚している。 その辺はクラウドもわかっていることである。 クラウドがこんなにイライラしているのは、ジョニーに嫉妬しているわけではないのだ。 この気持ちはいつか経験したことがあるような気がするけど、思い出せない。 原因不明のストレス解消のために、枕を壁に投げつけていると、玄関のほうで物音がした。 「ただいま。・・・クラウド、戻ってるの?」 ティファの声だ! 思ったより早くティファが戻ってきたことで、クラウドの機嫌は急速に回復した。 今ならまだ誰も戻ってきてないから、二人だけでどこかに行ける! ビーチにでも行こうと思って、クラウドはティファを誘いに部屋を出た。 ティファはキッチンにいた。 「あ、クラウド、ただいま」 「あのさ、ちょっと散歩でもしないか。ビーチにでも」 海が好きなティファなら、きっと喜んで賛成してくれると思っていたのだが、 予想外の答えが返ってきた。 「ごめん、ご飯の仕度しなきゃ」 「そんなの後でもいいだろ」 「でも、そろそろはじめないとみんなが帰ってきちゃうから」 だから、みんなが帰ってくる前のほうがいいんじゃないか。 クラウドはそう言おうとして、やめた。 そう思ってるのは自分だけみたいだから。 ティファは別に二人っきりになりたいとは思ってないみたいだから。 「どうしたの?言いたいことがあるのならはっきり言ってよ」 何かを言いかけてやめたクラウドを責めるような言い方だった。 「そんな言い方ないだろ」 「だって、この旅行が決まってから、クラウドずっと機嫌が悪いんだもん」 「・・・ティファのせいだろ」 「なんで、なんで私のせいなの?」 いつもだったら「ごめん、私なにかした?」と下手に出るティファだが、 思い当たる節が全くなかったため八つ当たりされたように感じて、つい強い口調になってしまった。 「なんでって・・・そんなの自分で考えろよ!」 いらついていたクラウドも、思ってもないことを口にしてしまう。 今の言葉でティファはカチンときたようだ。 「なによ、一人でイライラして、人のせいにしたりして!」 「ティファが悪いんだ!ティファが、昔からそうだから・・・」 「なに?」 「好きだとか、一緒にいたいと思ってるのは俺だけだから・・・。 小さいときから、ずっと俺はティファを見てたけど、 ティファの目には、俺は特別には映らないから・・・」 そう言ってしまうと、クラウドは恥ずかしくなってキッチンを飛び出した。 「クラウド!!」 ティファの叫ぶ声が聞こえたが、振り返ることなく別荘を出ると、ビーチまで駆けて行った。 夕暮れの砂浜には誰もいなかった。 クラウドは倒れこむように砂の上に腰を下ろした。 全速力で走ったために息が荒れていた。 しばらく休んで、胸の鼓動が静かになった頃には、クラウドの気分も落ち着いていた。 なぜ、あんなことをいってしまったんだろう? いくら自分が誰かを好きでも、相手が同じ気持ちだとは限らないことは子供だってわかるのに。 でも、嫌だったんだ。・・・そう、あの時みたいで。 子供の頃、ティファと仲良くなりたかったのに、みんなの輪に入って行けなくて、 一人外からティファの部屋の窓を見上げていたあの時。 ティファが窓から顔を出して「クラウドも一緒に遊ぼう」って言ってくれないかと期待していた。 でも、そう思ってたのは自分一人。外で遊んでいるときも、俺はティファの視界に入りたくて いつもみんなから少し離れたところにいたけど、誰も声をかけてくれなかった。 だから、ティファに認めてもらうにはどうしたらいいか考えて、ソルジャーになるために村を出た。 でも再会して、ティファに見せられたのは、自分を否定することで作り上げられた自分。 記憶がかみ合わないせいで、ティファをすごく不安にさせたみたいだった。 その後、本当の自分を取り戻すときには、ティファには本当に迷惑をかけたし、 情けないところばかりたくさん見せた。 そして、取り戻した本来の自分は、子供の頃とはあまり変わりがなかった。 だから、俺とティファの関係も、多分子供の頃のままなんだ。 俺の、単なる片想い。 これからも、ずっと一緒にいたいと思っているのは、俺だけ・・・。 「・・・クラウド」 ふいに、後ろからティファの声がした。 突然飛び出したクラウドを探しに来たらしい。 クラウドは、振り返らずに話し始めた。 「さっきは、ごめん。俺、この先ティファがどうするつもりか聞きたくてさ。 俺は・・・俺はこれからもティファと一緒にいたいと思ってる。 だから、ティファにも同じ答えを求めてしまってて・・・。 でも、ティファは全然そう思ってないみたいだから、悔しくて、悲しくて、 ついあんな風に怒ったりしたんだ」 ティファは、クラウドに近寄ると、隣に腰を下ろした。 夕焼け色の海を眺めながら、口を開いた。 「私はね、クラウドと特に一緒にいたいって思ったことはなかったの」 覚悟していたこととはいえ、ティファの口から直に聞くとやはりショックだった。 「そうだよな。こんな俺とじゃ一緒になんていたくないよな・・・」 半ば放心状態でクラウドは呟いた。 ティファはあわてて首を振った。 「違う違う!一緒にいたくないってことじゃないの。 あのね、クラウド。私達、幼なじみでしょ。 あんまり仲良くなかったけど、よくそばにいたよね」 昔のことをティファに思い出されるのが、クラウドは恥ずかしいので黙っていた。 「クラウドは大きくなって村を出て行っちゃったよね。 だけど5年前のピンチのときにはちゃんと来てくれた。 そのあとミッドガルで再会してからは、一緒に旅してた。 なんだかクラウドがそばにいるのが、当たり前のような気がしてたの。 一緒にいたいとわざわざ思わなくても、クラウドはいてくれたから・・・」 話しているうちに、ティファは自分の顔が火照ってきていることを感じていた。 夕暮れ時でよかったわ、と思った。 「でも、もう戦いは終わった。 この旅行が終われば、みんなそれぞれの場所へ帰っていくのよね。 考えてみたら、クラウドと一緒にいる理由もなくなっちゃうのね。 一緒にいることが自然なことだと思ってたから、気づかなかったの。 本当は、ちゃんとクラウドにお願いしなきゃいけなかったのに・・・」 「お願い?」 「私が最後の決戦の前の日に言ったこと覚えてる?」 「たくさんありすぎて、どのことかわからないけど、 ティファの言葉は全部覚えてるよ」 「みんなが戦う理由を見つけるために船を降りたとき、私は残ったよね。 『帰る場所、どこにもないから』って」 「ああ・・・」 「そのときは、近すぎて、当たり前過ぎてわからなかったけど、 今ならハッキリとわかるから。 クラウドの隣が、私の最も大切な場所なの。 だから、お願いしたいの。これからも・・・」 「ちょっと待った!」 肝心なセリフをティファに言われそうになり、クラウドは慌てて話を遮った。 「その先は、俺が言うから。俺があの時船を降りなかったのは、 ティファのいるところが俺の帰るべき場所だったからなんだ。 戦いが終わって、ティファが俺と一緒にいる理由はなくなったけど、 俺は自分の見つけた大切な場所へ帰らなきゃならない。 だから、これからも一緒にいて欲しいんだ」 その言葉に、ティファは笑顔で頷いた。 「私も、同じ気持ちだから。ちゃんと、これからのことももっと話そうね」 「そうだな」 それからずっと、二人は今までのことや未来のことを語り合った。 沈みかけていた夕日が完全に水平線の彼方に消え、満天の星空が広がり始めても、ずっとずっと。 ------------------------------------------------------------------------------------- 記念すべき1000HITを踏んでくださったtomoさんのリクエストです。 「何かの原因で痴話ケンカしてしまって、でも最後は仲直りして甘甘」ということでしたが クラウドが一人ですねて、怒って、告白して、走り去っていく・・・。 そして、最後は甘甘?むしろクラウドのベタ惚れっぷりのほうが恥ずかしいです。 戻る