プレゼント



今日は12月24日。クリスマスイブ。
寒冷地のニブルヘイムでは、ホワイトクリスマスなど珍しくもなんともない。
だが、子供達は今年も楽しそうに外を飛び回ってる。
(毎年ああやって遊んでよく飽きないな。ガキだぜ、まったく)
はしゃぎまわる同年代の子供達を家の中から眺めて、クラウド少年は心の内で毒づいた。
(雪はしょっちゅう降るし、クリスマスだって毎年来る。
 たかがそれだけのことに、あんなにはしゃいでバカみたいだ)
そんなことを考え仏頂面をしたクラウドを、後ろから呼ぶ声がした。
「クラウド、何やってるの?早く行きなさい」
振りかえると、先程まで台所で御馳走の準備をしていたはずの母が立っていた。
「母さん、早く行けって・・・?」
「子供会のクリスマスパーティー、もう始まってるんじゃないのかい?」
ニブルヘイムには村の子供会があり、ことあるごとにイベントがある。
ほとんどの子供はちゃんと出ているが、もちろんクラウドはそんなものに参加したことなどない。
ああ、あれか、と呟くと、母親に背を向けて答えた。
「いいよ、そんなの行かなくても」
(あんなやつらと一緒に遊ぶなんてごめんだ。行ったって、どうせ誰も俺に声なんか掛けて来ないし)
やる気無く答える息子を、母は腰に手を当てて見下ろした。
「あんたも少しは外で他の子達と遊んでらっしゃい。
 みんなと交換するプレゼントは母さんが用意しておいたから」
母親としては、友達の少ない息子のことが心配なのだろう。
それくらいのことは幼いクラウドも感づいていることだ。
あいつらの中に入っていくのは気が進まないが、母親を悲しませたくはない。
(行って、隅のほうで大人しくしてればいいんだ)
「わかったよ、行ってくる」
その返事に、母親はほっとしたようだ。
「行ったら、絶対楽しかったって言って帰って来るよ、きっと」
(それはどうかな)
クラウドは母の言葉に同意しかねたけど、口には出さなかった。


村の集会所に行くと、すでにパーティーは終わりに近づいていた。
テーブルの上の料理やお菓子もほとんど空になっている。
遅れてきたクラウドを気に留めるものは誰もいない。
(なんだ、もうすぐ終わりか。料理も無くなってるし、来て損したな)
クラウドは部屋の中をぐるっと見回した。
子供達が集まっているところを見つけると、クラウドは必ずある子を探す。
最近なぜか気になっている、隣の家のかわいい女の子。
(ティファ、来てないのか。つまんないな・・・)
もっとも、ティファがいたとしても、一緒に遊んだり出来るわけではないのだが。
それでも、遠くから眺めているだけでなんとなく嬉しくなってくるものなのだ。
クラウドはティファの顔を思い浮かべて、一人ぼーっとしていた。
そんなところに、ひどく耳障りな大声が飛び込んできた。
「はーい、それでは最後のプレゼント交換でーす。みんな、輪になって!」
司会役の大人が、マイクを持ってはしゃいでいる。
(ああいう子供といっしょになって騒ぐ大人にはなりたくないな)
クラウドは黙って輪を作りながら、心の中で馬鹿にした。
「はーいそれじゃあみんな目をつぶって。『きよしこの夜』を歌いながらプレゼントを回すのよ。
 歌が終わったところで手に持ってたプレゼントをもらえるのよ!では、さん、はい!」
そういうと司会役は誰よりも大きな声で歌い始めた。
(あ〜あ、やってらんないな)
もちろんクラウドは口パクだ。
「・・・ね〜むり〜たも〜お〜、い〜とや〜すく〜♪はい、ここでストップ!」
目を開けると、クラウドの手の中にあったのはとても女の子らしいピンクの紙袋だった。
(嫌な予感がするな・・・)
開けてみると、やはりそれは女の子に人気の着せ替え人形だった。
(男か女、どっちが受け取るかわかんないやつにこんなの持ってくるなよ・・・ )
料理は無い、ティファは来ない、女の子用のプレゼントが当たる。
今日はかなりついてない。
(バカバカしいや。早く帰ろう)
子供達が互いにプレゼントを見せ合うのを横目に、クラウドはさっさと外へ出て行った。


外は日が落ちかけ、かなり冷え込んでいた。
(あーあ、まったく時間のムダだったぜ)
クラウドは積もった雪を蹴ったりしながら歩いていった。
家の前まで来たときである。隣の家から、女の子が一人出てきた。
さっきクリスマスパーティーの会場で探していた、その子である。
突然の出会いに、クラウドは足が止まってしまった。
(ティファ、家にいたのか・・・)
目が合うと、ティファは妙なことを口にした。
「あれ、クラウド、クリスマス会に行かないの?」
もうクリスマス会はお開きになったというのに。
こっちこそなんでティファが行かなかったのか聞きたいところだ。しかし・・・
「今行ってきた」
なぜだかティファと話そうとすると、短い言葉しか出てこない。
「なんで帰ってきちゃったの?まだ始まってないでしょ?」
「もう終わった」
やはり、ぶっきらぼうな言い方になってしまう。
「え、クリスマス会は5時からでしょ?そんなはずないよ」
「・・・3時からだよ」
どうやらティファは時間を間違えていたらしい。
ティファはそれを聞いてびっくりしたようだった。
「ほんと?」
「15時から、っていうのを聞き間違えたんだろ」
自分でも、ちょっと冷たい言い方だと思った。
こんな言い方、したくてしているわけではないのだが。
「そっか、わたしが間違えちゃったんだ。あーあ、せっかく楽しみにしてたのに・・・」
ティファは本当に残念そうに呟いた。クリスマス会を楽しみにしていたのだろう 。
クラウドはティファにぶっきらぼうな言い方をしたことを後悔した。
だからといって、気の利いた慰めが口をついて出るほど器用ではない。
「じゃあね、クラウド」
肩を落としたティファは、家に戻ろうとしていた。
何とかしないと。そう思ったクラウドは手にもっていたもののことを思い出した 。
家のドアに手をかけたティファに、勇気を出して話し掛けた。


「・・・ティファ」
ティファは手を止めて振り返った。
「なあに、クラウド?」
クラウドは手にもっていた紙袋をティファに突きつけた。
クリスマス会のプレゼント交換で当たった着せ替え人形である。
「それ、やるよ」
「え?」
「俺は、いらないから」
それだけ言うと、クラウドは急いで自分の家へ入った。
ドアが閉まる直前、ティファの声が聞こえた。
ちょっと戸惑っているみたいだけど、気持ちのこもった声が。

「ありがとう」

確かに、そう聞こえた。


――― ありがとう ―――
クラウドの頭の中で、ずっとその言葉が聞こえていた。
思い出すたびに、頬が綻んだ。
「ほら、クリスマス会に行ってよかっただろ?」
ニヤつくクラウドを、クリスマス会が楽しかったからだと勘違いしている母親が 
言った。
「まあね」
クラウドはうわの空で答えていた。

また、ティファの「ありがとう」が聞きたい。

今度は、ちゃんとティファのために自分が選んだプレゼントを渡して。

いつか、きっと。




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3333HITのtomoさんリクエストのクリスマスネタ小説です。
なんとかクリスマスに間に合った〜、って感じです(汗)。
クラティの子供時代を書くのはこれが初めてですが、結構楽しかったです。


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