daybreak それは、星の歴史始まって以来の激動の年だった。 もしかしたら人類の、いやこの星の最後の年になっていたかもしれない。 自分が戦った敵の強大さを思い出す度、そう思う。 だが星は、自分達の想いを受け入れてくれた。 奇跡なのか必然なのか、いくら考えてももわからないだろうが、 諦めかけた新しい年は無事に明けたのだった。 そうして今、この年初めての夜明けを迎えようとしている。 「ティファ、もうそろそろだぞ」 そう言ってクラウドはティファがもたれかかって眠っている肩を少し揺らした。 だが彼女はわずかに反応しただけで、またすやすやと寝息をたて始めた。 「……初日の出が見たいって行ったの、ティファじゃないか」 クラウドは眠っているティファに文句を呟いた。 年末を皆で過ごすため、クラウド達はコスタ・デル・ソルの別荘へ来ていた。 2人きりで過ごすことも考えたが、やはりあの事件後初めて迎える年越しは皆で、 と思いこの旅行を計画した。 クラウドが中心になってこんなことを計画するのは珍しい。 皆で、新しい年が来ることを実感したかったのだ。 久しぶりに集まったせいか、それとも皆クラウドのように考えていたのか、 大晦日のパーティーは大騒ぎだった。 食事もお酒も、いつになくすすんでいた。 不安だらけだった年が終わり、希望に満ちた年が来る瞬間、 クラウドは、こいつらと出会えてよかった、と思った。 とはいえ、やはりいつかは二人っきりになりたくなるものだ。 ティファもそう思っていたらしく、初日の出が見たいから海岸に行こうと言い出した。 新しい年の、新しい夜明けを、ティファと見たい。 クラウドもそう思い、二人はまだ暗い中海岸へと出て行った。 砂浜に2人並んで座り夜明けを待っていたが、お酒を飲みすぎたせいだろうか、 ティファはクラウドの肩に頭を乗せて、いつの間にか眠ってしまったのだった。 「後で『何で起こしてくれなかったの!』って、怒るんだろうなあ…」 クラウドは一向に起きる気配の無いティファを見ながらそう言った。 「まあ、この空じゃ綺麗な日の出は期待できそうに無いけどな」 残念なことに、空は一面鈍色の雲に覆われている。雨が降らないのが不思議なくらいだ。 目の前に広がる海も、その色を映して暗くうねりを上げている。 新しい年の夜明けぐらい、もう少しいい演出をして欲しいものだ。 これではどちらかと言ったら『世界最後の日』みたいである。 「あの時みたいだな…」 クラウドは思い出しながら、一人呟いた。 そうしている内にやがて水平線の向こうから、わずかにオレンジ色の光が差してきた。 あまりにも弱々しくて、黒い波間に飲み込まれてしまいそうだ。 その光は鉛色の雲に反射し、赤黒い朝焼けを描いている。 不吉な空の色は、ますますクラウドにあの日のことを思い出させた。 最後の決戦を目前にして、ティファと想いを伝え合った夜明け。 あの時もティファは自分もたれて眠っていた。 昇ってきた太陽はかすかな光を二人に注いでいたが、メテオの暗い色に自分の居場所を奪われていた。 見上げると憂鬱になる空に、わずかにしか見えなかった光。 「ティファは眠ってたからきっと知らないだろうな。あの時の日の出を…。 それは決して美しい風景ではなかったけれど、それでも俺には希望の光に見えたんだ」 眠っているティファに話しかけるようにクラウドは言った。 「映画に出てくるような、輝いた朝日ではなかったけど、そう見えたのは…」 途中まで言いかけたとき、ティファが動いたので、クラウドはあわてて言葉を切った。 聞かれては恥ずかしいと咄嗟に思ったからだ。 だがティファは寝心地が悪かっただけなのか、頭を動かしただけでまたすやすやと寝息をたて始めた。 クラウドはほっと一息つくと、小声で続きを呟いた。 本当は聞いていていてくれてたらいいな、と思いながら。 「そう見えたのは……ティファがいてくれたからなんだ…」 新しい夜明けの光は、だんだんと輝きを増し、二人を照らし始めていた。 ------------------------------------------------------------------------------------- 春風さんリクエストの「クラティのお正月」小説ですが、どこが?って感じです…。 全然正月らしいおめでたさの無い地味な作品になってしまいました。辛うじて初日の出。 「あの日ティファの隣で見た朝日は希望の光に見えたんだよ」ってコンセプトは気に入ってて、 結構暖めてたんですが、如何せん文章力が追いつきませんです。 まあ久しぶりにクラティ小説が書けて楽しかったです。 戻る