三人の約束 「う〜ん、気持ちいい」 草原の香りを乗せたそよ風に髪を揺らし、エアリスが笑う。 「30分したら出発するからな」 「は〜い」 ジュノンへ向かう途中の一行は、見晴らしの良い小高い丘で一度休憩を取ることにしたのだった。 「ね、ティファ、こっち来て」 丘のふもとの茂みのそばでエアリスが小さく手招きする。 「どうしたの?」 「いいものみつけたんだ」 そういうとエアリスは小さな赤いものをティファの手の上に載せた。 「・・・野いちご?」 「そう、さっき生えてるのを見つけてとっておいたんだけど、 全員分なかったから他のみんなにはナイショ、ね。甘いものはやっぱ女の子のものだもんね」 「ありがとう!私、いちご大好き」 「私も〜。果物の中で一番好きかも」 「あ、おいしいおいしい。この野いちごでタルトとか作りたいな」 「ティファお料理上手だもんね。もう1個食べる?」 ポケットから野いちごを一個出す。 「うん、食べたい・・・あれ、エアリスの分は?」 「三個しか見つからなかったの。これはティファにあげるよ」 ティファはあわてて首を振る。 「ううん、エアリスがとってきたんだからエアリスが食べてよ」 「遠慮しない遠慮しない。ティファが喜んでくれて、私今すごくゴキゲンなんだから」 「・・・でも」 控えめなティファの態度にエアリスはうーん、と呟くと 「じゃあ、こうしましょ。いつかティファは私に野いちごのタルトを作ってご馳走して。 これで決まり!ね、約束」 そう言って自分の小指をティファの小指に絡ませた。 「うん、約束するわ・・・じゃあ、いただきます」 「どーぞ、召し上がれ。約束、絶対よ」 「大丈夫、絶対忘れないから」 二人は笑って指を切った。 約束の儀式が済むと懐かしそうにティファが言った。 「指切りなんて久しぶりだな」 「クラウドにピンチのときは助けに来てもらう約束をしたとき以来?」 「えっ・・あの・・その」 真っ赤になったティファを見て、エアリスはくすくすと笑った。 「もう、かわいいな〜ティファは。でも、羨ましいな、そういう、約束」 「エアリスだって、クラウドとデートの約束したんでしょ」 「あれはボディーガードのお礼。約束のうちに入らないわ。 私もなんかそういうロマンチックな約束、頼んじゃおうかな」 エアリスが無邪気にそう言うと、話題の人物が丘の上から下りてきた。 「エアリス、ティファ、そろそろ行くぞ・・・。 何だよ、エアリス、俺の顔じっと見て・・・なんかついてる?」 「・・・うーん、いいのが思い浮かばないわ。 いいわ、また今度にする。行きましょ、ティファ」 「う、うん」 状況の飲みこめないクラウドは首を傾げたが、二人はお構いなしに先へ行ってしまった。 (エアリス、一体どんな約束をするつもりなのかな・・・) そのことが一日中気になっていたティファは、夜遅くベッドに入ってからもなかなか寝付けなかった。 (エアリスって、知り合ってすぐに打ち解けられる明るくていい子だし、 クラウドが気になってるとしても無理もないよね・・・。 実際、クラウドはデートの件OKしたんだった・・・) たまらなくなって寝返りを打つ。 (デートにさらっと誘えるくらいだから、きっと約束をお願いするのも、 思いを伝えるのも堂々とできるんだろうな。 エアリスはきっとクラウドのこと好きなんだよね。そして、多分クラウドも・・・) いたたまれなくてティファはまた無意識に寝返りを打った。すると突然、 「ティファ、もしかして起きてるの?」 エアリスが隣のベッドから声をかけてきた。 「・・・・・」 なんであの時、寝てるふりをしたのか、未だに自分でもわからない。 とある休息日、ハイウインドの台所でティファは野いちごのタルトを作っていた。 匂いをかぎつけてクラウドが入ってくる。 「うまそうなタルトだな」 「まだ食べちゃだめ!これはエアリスのケーキなの」 クラウドが不思議そうな顔をする。 今日は、忘らるる都であの悲劇が起こってから初めて迎えるエアリスの誕生日だ。 「私、前にエアリスと約束したんだ。野いちごのタルトをご馳走するって。 でも、エアリスがいなくなる前に作れなかった。今日はエアリスの大事な日だから・・・」 「そうか、今日はエアリスの誕生日だ」 自分の誕生日も忘れてしまうクラウドは、ティファに言われて初めて気がついた。 「ティファ、ちょっとデッキに出ないか」 「うん」 二人は連れ立って階段を上がった。 デッキは風が強いが、その分自分が今空を飛んでいるという実感が沸くので、 ティファは結構気に入っている。 お気に入りの理由はもう一つある。 クラウドは大事な話をするとき、必ずティファをここに呼び出すからだ。 今日はここで何の事について話すか、もう察しがついていた。 エアリスとクラウドが交わした約束のことだろう。 (今なら、何を聞かされても、きっと大丈夫。 エアリス、あなたに少し近づいたかな。私、強くなったでしょ) 叶えてあげたい。それがどんな約束でも。 そう思ってティファはクラウドの言葉を待っていた。 「・・・あのな、ティファ、俺も実はエアリスと約束したけど果たせなかったことがあるんだ。 ずっと前、コスタ・デル・ソルの運搬船にこっそり乗り込んだとき、 いつか俺が飛空艇に乗せてやる、って約束したんだ。けど・・・」 (そうだったんだ、エアリス。私もあなたと一緒に飛空艇に乗りたかったよ・・・!) 「どうしたら叶えられるかな、エアリスとの約束」 クラウドは真剣に悩んでいるようだった。 「・・・ふふふ」 「なにがおかしいんだよ」 「クラウドったらやっぱり気付いてないのね。鈍感なんだから!」 「なんなんだよ、一体」 「エアリスとの約束を果たす方法、教えて欲しいんでしょ?こっちこっち」 訳がわからないといった表情のクラウドを、デッキの端まで引っ張っていく。 「手すりから身を乗り出して」 言われた通りにするクラウド。 吹き付ける強い風に目を細める。 「これでいいのか?」 (やっぱり、クラウドってばわかってないみたい) 小さく笑うと、ティファは真面目な顔になって話し始めた。 「あのね、エアリスを感じることってない?」 「それってどういうことだ?」 「闘ってるとき、あ、エアリスも闘ってるって感じることがあるんだ。 嬉しいとき、悲しいとき、楽しいとき、いろんな瞬間に、 なんかうまくいえないんだけどエアリスと感覚を共有してる気がするの。 だからきっと、私達が風を感じてるとき、エアリスもきっと風を感じてる」 「・・・」 「私、エアリスが死んだとき泣かなかった。パパやママの時と違ったの。 消えて無くなるって感じが全然しなかった。 時々、エアリスが、全部終わったらまた会えるよ、って言ってる気がすることがあるの。 死んだらもう二度と会えないってよくわかってるはずなのに、私もまた会える気がするんだ」 「ティファ・・・」 「だから、最後まで闘い抜こうよ。途中で逃げ出したり、あきらめたりしないで、 全部終わらせてエアリスにまた会おう、ね」 クラウドは優しい顔をしていた。 エアリスにも見えているだろう、とティファは思った。 「わかった、約束しよう・・・三人で」 「うん!」 −絶対、だからね− 強い風の中、二人は確かにその声を聞いた。 ----------------------------------------------------------------------------------- エアリスの飛空艇の約束を叶えてあげたくて作りました。 復活はナシ、と考えていたのでこんな話になりました。 ちょっとこじつけか〜、って感じですが、エアリスとティファの友情は書けたかな。 エアリスは、ゲーム本編でクラウドの夢の中で「全部終わったらまた会えるよ」って言いますが、 クラウドだけじゃなくティファにも伝えてたと思うんですよね。 ティファは、エアリスが星に帰らずに共に闘っている事に気づいていたと思います。 きっとすぐそばにエアリスの存在を感じることがよくあったのではないでしょうか。 たぶん、再会を一番信じていたのはティファじゃないかな。 戻る