愛の夢 うまくいってると思ってたの 例えば、自分の誕生日さえ忘れちゃうクラウドが、私の誕生日をちゃんと覚えててくれたこと 「おめでとう、ティファ」って、ちょっと照れくさそうにプレゼントをくれたの それは、すごくかわいいオルゴール。流れてきたのは『愛の夢』 「ティファは音楽が好きだろ。俺、音楽のことはさっぱりわかんないけど それはなんとなく良い曲だって思ってさ。気に入ってくれるかな?」 もちろん!すごく嬉しかった。だってね、この曲はピアノの曲だけどもともとは歌曲で 歌詞がついてるの。『愛し得る限り愛せ』っていう詩が。 だから、クラウドがこの曲を選んだってことは 私がクラウドのことを、愛せる限り愛すことを望んでくれてるのかな?なんて考えてみたり でもクラウドは多分曲の意味なんて知らないよね なんて、本当はそんなことより、クラウドが私の誕生日を覚えていてくれたことが一番嬉しかった でも、もう、そういう幸せを手に出来ないと思ったのうまくいってると思ってたんだ 今年のティファの誕生日、俺の気持ちを伝えたかったんだけど 指輪を渡すのは恥ずかしいし、まだ早いかなって思った 店員に色々相談してみたら、このオルゴールはどうかって勧められた 俺はよく知らないけど、『愛し得る限り愛せ』っていう詩がついてるらしい 音楽好きなティファならわかってくれるかなって期待してそれにしたんだ 渡した時、そのことについてはティファは何にも言わなかったけど すごく喜んでくれてたから、もしかしたら伝わったかな、ってひそかに思ってた まあ、伝わってなかったとしても、その笑顔が見れれば十分だ そういう小さな幸せを大事にしながら、これからもずっと一緒にいたいと思ってたんだ それはティファもきっと同じだと思っていたのに・・・理由も言わずに、クラウドのこと突っぱねちゃった 最低だね。だから、出ていこうと思ってた でも、先にいなくなったのはクラウドの方 やっぱり、怒ってるよね。あんなことした自分が嫌になった ううん、自分が嫌になったのはそれだけじゃない エアリスのことを考えたら自分だけ幸せにはなれないと思ってた だから、これでいいはずなのに ずっと、ずっとクラウドのことばかり考えてる 明日は、シドの結婚式。きっとクラウドも来るはず そう考えたら、自分から突き放したくせに、クラウドに会いたくて仕方ないの なんだか私、ずるいよね・・・あの日のこと、仲間に話してみたんだ みんなは「ティファはエアリスのことがあるから断ったんだろう」って言った 自分だけ幸せになることは出来ないと思う、そういう子だ、って 確かにエアリスが死んで、俺達が生き残った エアリスが守ってくれなかったら、俺達も、この星も終わりだった だからこそ、俺はこの先の道を精一杯生きていこうと思ったんだ そのためには、俺にはティファが必要なんだ ティファには、そういう俺の気持ち伝わってなかったのかな?シドの結婚式当日、クラウドはシドの控え室で手伝いをしていた。 ティファはシエラの控え室で手伝いをしているはずである。 「ふーっ、俺様にはいつもの服のほうが落ち着くぜ」 白いタキシード姿のシドがそわそわした様子で言う。 本人は気に入らないようだが、こうしてみるとなかなか男前だ。 「・・・馬子にも衣装」 「ん、クラウド、なんか言ったか?」 「いや・・・、その、結婚式を挙げるのあんなにいやがってたのに、今日は大人しいから 観念したのかと思って」 「けっ」 照れ隠しのいつもの口癖をいうと、クラウドに背を向けて話し始めた。 「シエラはよう、どんくせえんだけど落ち着いたやつなんだ。 そのあいつが昨日の晩、眠れないって言い出したんだ。 嬉しくって、どきどきするって、それで眠れないんだって。 俺は、シエラがそんなに式を楽しみにしてたなんて知らなかった。 結婚式なんかやんなくたって、伝わるべきもんが伝わってりゃいいと思っていた」 シドは話をきると、ふーっと大きく息を吐いた。 これから先は、一度しか言わねえからな、とでもいうように。 「けどよ、たまには形にしてやらなきゃなんねえってこと、昨日初めて気づいたんだ。 形あるものや、言葉や形式に頼りすぎんのもよくねえけど、何もなきゃないでまずいってことだ。 おめえだって、今回ティファが出て行くなんて言い出さなきゃ、 いつプロポーズまでこぎつけられたかわかんねえだろ。 いつも『ティファになら伝わってるはずだ』で片付けてたんじゃねえのか? 確かによ、ほとんどの場合において伝わってるさ。おまえらならな。 でもよう、言葉にすることになれてないから、こういうすれ違いが起きちまったときに、 自分の気持ちを伝える言葉がなかなか出てこねえんじゃねえのか。 言葉に表すのは照れくさい。俺だって苦手だ。だけど・・・だからよう・・・」 言葉が見つからないのか、もどかしそうに煙草に火をつける。 しばらく口篭っていたが、やがて突然シドは顔を真っ赤にさせて振り返った。 「畜生!てめえいつまで俺様にこんな恥ずかしい話させるんだ!!わかったんならとっとと シエラの控え室まで行って来い!!」 「は?」 「は?じゃねえ!式が始まる前に話をつけなきゃ、ティファがブライダルブーケを 受け取れねえだろ!!ちったあ考えろ!!」 シドが長々とこんな話を聞かせた理由がようやくわかったクラウドは、力強く頷いた。 「ありがとう、シド」 「けっ、さっさと行けよ」 まだ顔を紅潮させたシドは、火をつけた煙草でドアを指した。 クラウドがシエラの控え室からティファを連れ出したとき、いつもの笑顔はなかった。 そんなティファの顔を見るとやっぱり笑わせてあげたい、と思う。だから一緒にいたいのだ。 「・・・ティファが何を考えてたのか、みんなに聞いてわかったよ。 エアリスのこと、だろ」 ティファはうつむいてだまったままだ。 「俺達、エアリスがいたから今こうしてここにいられるんだよな。 でも、エアリスは死んでしまった。だから、俺決めたんだ。一生懸命生きていこうって。 エアリスの命を無駄にしないように。それから、もう誰も失わなくてすむように 何かあったら、絶対みんなを守ろうって。みんな大切な仲間だから。 でも、ティファに関して言えば、それだけじゃダメなんだ。 守りたい、幸せにしたい、愛したい、そういう一方通行の想いのほかに、 笑って欲しい、優しくされたい、愛して欲しいっていう願いがある。 そういうたくさんの想いが、色んな行動のもとになってるんだ。 だから、俺がこの先、生きていく上で、ティファは一番大切な人なんだ」 自分でもこんなにはっきり想いを確認するのは初めてだった。 想いを言葉にするのは、相手に伝えるためだけじゃないことにクラウドは気づいていた。 ティファがゆっくりと口を開いた。 「私は、あの日本当に自分一人では幸せになれないと思ったの。 クラウドにこたえられないっていったのも本当の気持ちだった」 ティファの瞳にうっすらと涙が浮かんだ。 「でも、実際クラウドがいなくなったら、寂しくて、一緒にいたくて仕方なかったの。 あの時の気持ちは本物だったのに、こうしてみるとクラウドにもエアリスにも 正直じゃなかったような気がして・・・。だからどうするべきかずっと考えたの。 クラウドの言ってくれた事、エアリスのこと、全部切り離した自分の気持ちはどうなのか。 それが自分の出すべき答えだって思って。そして、答えを見つけてきたから、聞いて」 ティファは、クラウドのを目をしっかり見つめた。 「クラウドは、私にとって一番大切な人。 私が、愛せる限り愛するから、ずっとそばにいてください」 答えを聞いて、クラウドは何も言わずティファを抱きしめた。 笑顔の戻ったティファの目から、さっきのものとは違う涙がこぼれ落ちた。 ------------------------------------------------------------------------------------- 『愛の夢』はリストの曲です。『愛し得る限り愛せ』という詩がついているというのは 本当です。甘い調べがさすがロマン派!といった感じです。フジ子・ヘミングさんのCDとか 聞くとこの曲の良さがわかると思います。 しかしこの小説、「愛する」なんて自分的NGワード連発で、書いてて恥ずかしさのあまり 転げまわった。あと前半のクラウドの部分読みにくいですね。 三部作と言うことで、もう1篇ある予定です。いつもと趣向の違うのを予定しているのですが さてさてどうなることやら。 戻る