Butterfly Lovers




シドの結婚式も無事終わり、クラウドとティファは帰途についていた。
ティファは胸にシエラさんからもらったブーケを大事そうに抱えている。
何を考えているのか、時々笑みがこぼれている。
半歩先を行くクラウドには気づかれないようにしているのだが・・・。
そんな二人をこっそり見守っている人達がいるのだ。
「もう、ティファったら幸せでとろけそうな顔しちゃって」
「とか何とか言って今までずっと心配そうに見てたくせに」
エアリスはからかってくるザックスにちょっとふくれてみせた。
「だって、あの二人ずっとすれ違ってばっかりなんだもの。同じこと考えてるのに」
「おまえが俺ひとすじだったらあの二人もこんなに遠回りしなくてすんだんじゃねーか?」
その言葉にエアリスは口を尖らせた。
「なによ〜、自分こそわたしと一緒にいても他の女の子のこと見てたりするじゃない!
 だいたい、一番最初に出会った時だってナンパしてきたんだったわ」
「俺はかわいそうな花売りから花を買ってやっただけだぜ?」
「宿舎に財布忘れた、とか言ってお金の代わりに映画のチケットで買ったわよね?」
「ああ〜、ま、来るほうも来るほうってことで。1ギル払われるより得しただろ?」
「ほんっとむかつくわ」
エアリスはぷいっと横を向いた。

実験サンプルとして、自分に注目を向ける相手はいくらでもいた。
そんなエアリスが、はじめて自分から興味を向けたのがザックスだった。
マイペースな彼女が唯一巻き込まれてしまう相手。
彼に対しては、励ます必要も、明るく振舞う必要もなかった。
ただいるだけでよかった。それは、すごく楽だった。
なにより、一緒にいると自分が特別であることを忘れることが出来た。

「なんだったっけ、あのときの映画」
ザックスが聞いてきた。悪かった、とか、機嫌直せよ、とは言わない。
「ほんとにマイペースなんだから・・・」
「ん、何か言った?思い出した?」
エアリスはあきれてため息をついた。
「女好きのくせして乙女心がわかってないんだから・・・」
ぶつぶつ呟いたが、怒ってはいない。
いつものことだからしょうがない、といったところだろうか。
「ええと、あのとき見た映画は『Butterfly Lovers』だったわ」
ザックスは思い出したようだ。
「ああ、それだ。おまえ、見終わった後大泣きだったよな」
「いやだ、覚えてたの!?」
「気ィ強そうなくせにボロボロ涙こぼしてたから、かわいいとこあんだなーって」
こういうことを照れもせずに言う奴なのである。
そばにいると、怒ったり、笑ったり、どきどきさせられたりする。
気がつけば、抜け出せられないほどはまっていた。
音信不通になってからも、ずっとずっと待ちつづけた。
生きてめぐり逢える日を信じて。だけど・・・。
「・・・初めて二人で見た映画が『Butterfly Lovers』なんてね。
 運命の暗示と言うか、皮肉と言うか、ねえ。わたし達にぴったりすぎるわ」
また出逢えてよかった。でも生きてるうちに幸せになりたかった。
みんなと幸せになりたかった。みんなに「わたしの彼よ」って自慢したかった。
ティファやクラウドとダブルデート、なんてしてみたかった・・・。
「おいおい、湿っぽくなるなよ」
めずらしく表情を曇らせたエアリスに、ザックスは明るく話し掛けた。
「あの映画、俺達にぴったりだと俺も思ってたんだぜ。サブタイトルがついてたよな。
 あれってまさに俺達のことだって。えーっと、たしか・・・」




「どうした、ティファ?」
クラウドは急に歩みを止めたティファを振りかえって訊ねた。
「・・・誰かに見られてるような気がしたの」
二人はあたりを見まわしたが、誰もいない。
「気のせいかしら・・・あら?」
ティファの目線が小さな映画館のポスターのところで止まった。
「『Butterfly Lovers』、リバイバル上映するのね」
「何、それ。どんな映画?」
「5年以上前の映画よ。仲を引き裂かれた男女が死後、蝶になって添い遂げるって話だったわ」
「生きてるうちに幸せになれなかった二人かあ・・・」
色々あったけれど、こうしてティファと一緒になれたことは何にも代え難い幸せだ。
悲しいことはたくさんあったけれど、ティファとだから乗り越えられた。
もし今二人の仲を引き裂かれたら、自分はどうなるだろう。
実際、プロポーズを断られて家出した数日間は、人生で最も空虚な時間だった。
大切な人と、生を共にすることが出来て本当に良かったと思った。
「明日、見に来ようか」
クラウドはティファに提案した。
「クラウドが映画見ようか、って言うなんてめずらしいわね」
ティファはちょっとびっくりしたようだ。
「サブタイトルが気に入った。俺達にぴったりだな、って」
「え、サブタイトルって・・・あ!」
答えがわかったティファは顔を赤くした。
「『永遠の恋人達』、まさに俺とティファのこと―――――」
「もうっ、クラウドったら!」
ティファは持っていたハンドバッグでクラウドの背中を軽くたたいた。
だが何を思ったのか急に大人しくなり、クラウドに問い掛けた。
「ねえ、クラウド。今日シドとシエラさんが永遠の愛を誓ってたけど、それとは逆に、
 この映画みたいに死んじゃった後に結ばれるってことあるのかな」
誰のことを考えてティファがそう言ったのか、クラウドにはわかった。
クラウドも、そうであることを願いたい。でも、死んだ人間は星に帰るのだ。
唯一希望があるとすれば、あのときライフストリームを導くエアリスを感じたことだが・・・。
「悪いけど俺は地獄の底までティファについていくから、そのつもりで」
無責任な答えは出せないと思って、冗談でかわしてみた。
「それじゃ私が地獄に落ちるのが決まってるみたいじゃない!」
ハンドバッグを振り回すティファとよけるクラウド。
攻撃をうまくかわしてティファを捕まえると、クラウドは自分の胸に抱き寄せた。
「永遠なんて存在しないかもしれないけど、でも俺はティファのことを愛してるから。永遠に」
ティファはクラウドの顔を見上げた。目が合った。
「・・・私も、永遠なんてありえなくても、クラウドのことを永遠に愛するからね」
そうして、しばらく見つめ合っていたが、やがてどちらからともなく唇を重ねた。
神や、誰かに誓うのではない、自分たちへの誓いのキス。



†††病める時も、健やかなる時も、死が二人を別つまで††† では、死が二人を別たなかったら 死によって二人がめぐり逢ったら そんなことがあると思いますか? ”わからないけれど、いかなる次元においても切れない絆がここにあります”
------------------------------------------------------------------------------------- ぎゃっふーん!!!愛してるだの永遠だの自分的NGワード連発小説第2弾です。 はじめはティファがクラウドの背中バッグで殴ったところで終わってたんです。 なのに音楽合わせたら長さが足りなかった。で、付け足してたら・・・あああ・・・。 最後、クラウドとティファはわけわかんないこと言ってます。「永遠なんかなくても、永遠に」って。 説明しますと、普段人間って結構簡単に”永遠”って口にするじゃないですか。 でも神も天国も信じない私にとっては、どーも納得がいかんのですよ。で、かってに自己解釈。 「永遠というのが、自分の生ある限りのものでしかなくても、永遠を誓います」 ・・・まだわかりにくいですね。つまり、永遠が限りあるものだと知っていても、永遠を誓うよ。 この世のすべてのものに限りがあるとわかっていても、限りない愛を約束しよう、というわけ。 うっわー、はっずかしー!!つまりですね、すべてのものに限りがあると思っているにもかかわらず、 限りないと思ってしまえるものこそが永遠だぞ、と。だめですね、うまく説明できませんね。 もっときちんと説明しろ!とおっしゃる方はメールなり掲示板なりでお願いします。 で、一番最後の”わからないけれど・・・”と答えているのはティファです。 さっき天国なんか信じてない、と大見得切った私ですが、死んだことないんでよくわかりません(爆) まあティファもそこは同じだろうというわけで、「死後の世界があるかどうかわからないけど、 あっても無くてもクラウドとの絆は切れません」・・・ダメ、もう私ぶっ倒れそう。 さて、曲の話に移りましょう。前の2作と違って、この曲を知っている人はあまりいないでしょう。 作中にも出てきた、映画『バタフライ・ラヴァーズ〜永遠の恋人達〜』のテーマ曲です。 この『バタフライ〜』は中国の昔話『梁山伯と祝英台』が元です。内容はティファの説明した通り。 『梁山伯と祝英台』は中国版ロミオとジュリエットと言われ、中国伝統芸能の題材に使われています。 中国の楽器・二胡の曲『梁祝』が、『バタフライ〜』のテーマの元になっています。 また『梁祝』をヴァイオリン協奏曲にしたのが『バタフライラヴァ−ズ・ヴァイオリンコンチェルト』 別名『梁祝協奏曲』。これ、ほんといいです。私の好きなヴァイオリン協奏曲ベスト5に入ってます。 メンデルスゾーンとはってますよ(笑)。興味を持たれた方はぜひ聞いて見てください。 そう言えば長野オリンピックでフィギュアスケートのルー・チェンがこれでフリーを滑ってました。 あの演技は素敵でした。見事銅メダルに輝きましたし。 映画もよかったですね。前半の生き生きした二人と、後半の引き裂かれた二人の描き方がうまかった。 大きいレンタルビデオ店の香港映画コーナーにあります(新宿TSUTAYAにはあった)。 監督はたしかツイ・ハークで主演はニッキー・ウーとチャーリー・ヤンです。 MIDI付き小説を書こうと決めたとき「主よ、人の望みの喜びよ」を使うことは決めてました。 で、曲に合わせてあの話を考えたときに決めたのです。 「ここで迷うティファを書いたら、続きで結論を出すティファと、それを見たエアリスを書かねば」 で、話を決めてから曲を選んだのですが、なんかもうこの曲しか浮かばなかったです。 選んだときにはこんなことを書くことになろうとは思いませんでしたが・・・。 コテコテなものを書くとフォローが大変ですね。随分長い後書きになってしまいました。 ですが、ようやくMIDI3部作を完結させることができました。よかったよかった。 恥ずかしながらもいろいろ思うところを書けたような気がするので、やって損はなかったかな。 戻る