二人の夏休み クラウドが仕事から帰ってきたとき、ティファは誰かと電話をしていた。 「・・・え、本当?嬉しいな。・・・・・・そうかな? ・・・・・・じゃあ、そうなったら連絡するね。 ・・・・・・うん、またね」 受話器を置くと、帰って来たクラウドに気づき、嬉しそうに微笑んだ。 「おかえり、クラウド。今、ユフィから電話があったの」 「ああ、今の電話はユフィからだったのか。それより、俺の話聞いてくれよ。 今回の仕事が早く片付いたおかげで、明日から3日間休みが取れたんだ」 「本当?今年の夏はもうお休みが取れないと思ってたのに」 「どこかに行きたいんだけど、急だからホテルは取れないと思うんだ。 だから、コスタ・デル・ソルの別荘で・・・」 二人きりでゆっくり過ごさないか、と言うつもりだったのだが、 「じゃあ、私ウータイに行きたい!」 瞳を輝かせたティファに遮られてしまった。 「ウータイ?」 「そう。さっきユフィが休みが取れたら遊びにおいで、って」 「うーん」 せっかくの休みを二人っきりで過ごそうと思っていたクラウドには、あまり嬉しくないお誘いだ。 「ウータイでは夏に大きなお祭りをやるんだって。せっかくだから行こうよ」 なぜだかティファはすごく行きたそうにしている。 (ユフィにはしばらく会ってなかったしな。よく電話はしてるみたいだけど、 きっと会いたいんだろうな。ティファが喜んでくれるなら、ウータイでもいいか。) 「・・・よし、じゃあウータイに行くか」 「ありがとう!私、ユフィに電話してくるね」 嬉しそうに電話をかけるティファを横目に、クラウドは呟いた。 「ユフィに邪魔しないようきつく言い聞かせないとな・・・」 二日後、二人はシドに送ってもらいウータイに着いた。 「ティファ〜、クラウド、久しぶり〜っ!」 「暑いのに相変わらず元気ね」 涼しいニブルヘイム違い、ここはかなりの暑さだ。 その上、祭りを控えた人々の熱気がすごい。 「来たばっかりで悪いんだけど、お祭りの準備手伝ってくれない?タダで泊めてやるからさ」 どうやらキサラギ家が祭りを取りしきっているらしい。 「いいわよ。何すればいい?」 「ティファはアタシと堤燈の飾り付けをやってくれる? クラウドはオヤジがお神輿を出すのを手伝ってやってよ。 んじゃ、お祭りが始まる時間になったらここに集合ってことで。じゃ」 ユフィは勝手に決めると、ティファの手を引いてどこかへ行こうとする。 冗談じゃない! 「おい、ユフィ!ちょっとこっち来い!」 「な、な、なんだよ」 クラウドはユフィの首根っこを捕まえて、ティファには話が聞こえないところまで引きずっていった。 「おい、俺はティファと二人でゆっくり過ごすつもりで来たんだぞ!」 「わかってるよ。アンタの考えてることなんてアタシにはバレバレだって。 ジャマはしないって約束するからさ、今だけお祭りの準備手伝ってくれよ。 このお祭りにはキサラギ家の威信がかかってるんだよ」 「・・・邪魔しないって約束するんだな?」 「もっちろん!アタシも次期当主としていろいろ大変なんだって。 だから頼むよ。祭りが始まったら二人にしてやるから」 「わかったよ」 「ありがとー!オヤジは五強の塔の方にいるからよろしく」 しぶしぶながら塔のほうへと歩いていくクラウドを確認すると、ユフィはティファに言った。 「さ、クラウドもあっち行ったし、早くアタシの家に行こう」 「うん」 二人はユフィの家の中へ消えていった。 日も暮れてきて、いよいよ祭りが始まった。 クラウドは先ほど約束した場所でティファを待っていた。 「遅いな・・・」 それもそのはず、手伝いを早々に切り上げたクラウドはだいぶ前から待っているのである。 太鼓をたたく人や踊る人を見たりしていたのだが、だんだん飽きてきた。 それにしてもウータイが総力をあげた祭りだけあって、規模はかなりのものである。 出店の数もかなり多い。 「・・・金魚すくいでもやるか」 クラウドが出店の方へと歩きかけたとき、後ろからティファの声がした。 「クラウド、お待たせ」 振り返ったクラウドは、ティファを見て驚いた。 「どうしたんだ、その格好」 「ユフィが着せてくれたの」 はにかみながら浴衣姿のティファが答えた。 紫の地に花柄の浴衣に、赤い帯を締めている。 浴衣に合わせて上げた髪が新鮮だった。 「おかしい?」 「そんなことない!すごく似合ってる。何て言うか・・・その・・・キレイだよ」 照れている二人の横でユフィが言った。 「ね、ティファ。アタシが言った通りだったじゃん」 =おとといの電話= 『でさ、今度お祭りをやるんだよ。だから遊びに来ない? そうだ、お祭りのときに着る浴衣あげるよ。うちにいっぱいあるからさ』 『え、本当?嬉しいな』 『ティファ絶対浴衣似合うと思うんだよね。きっとクラウドも似合うって 言ってくれるよ』 『そうかな?』 『アイツ惚れ直しちゃうって。だから、もし休みがとれたら電話くれよ』 『じゃあ、そうなったら連絡するね』 『休みが取れるといいね。電話待ってるよ』 『うん、またね』 「じゃ、邪魔者は退散するからどうぞごゆっくり」 そう言うとユフィは忍者らしく音もなく消えていった。 「よし、出店でも覗くか。お、ソースせんべいか、うまそうだな」 邪魔者がいなくなって意気揚揚のクラウド。 「私、わたあめが食べたいな」 「じゃあ、わたあめの屋台を探すか。それにしても広いな」 人ごみの中、はぐれないように手を繋いだ。 浴衣に下駄という歩きにくい格好をしたティファを気遣って、 クラウドはいつもよりゆっくりとしたスピードで歩いた。 出店をまわって物を食べたり、金魚すくいや射的をしたり、見世物をみたりしているうちに、 だいぶ時間が経った。 ゆっくり歩くように心がけたものの、なれない格好で長いこと歩き回ったせいで、 ティファは結構疲れたようだ。 「どこかで座って休むか」 「うん」 クラウドはティファの手を引いて、五強の塔の方へと向かった。 五強の塔の周りは祭りの喧騒が遠く、人気がなかった。 「石段に座ったら浴衣が汚れるかな」 「洗えば大丈夫よ」 二人が腰を下ろしたとき、塔の裏手あたりから花火があがった。 二人は振り返って花火を眺めた。 祭りのラストを飾るものらしく、色も種類も様々な花火が惜しげもなく次々と打ち上げられていった。 「・・・キレイだね」 「・・・ああ」 花火に照らされるティファの顔を見つめながら、クラウドはこの瞬間がずっと続けばいいのに、 と思った。 そうしてしばらく二人で花火を眺めていたのだが、クラウドはまわりに人がいないことに気付くと、 ある決心をした。 「・・・ティファ」 「なに?」 自分の方をを向いたティファに、キスを――――――――― しようとしたのだが、その瞬間何かに気づいたティファが呟いた。 「・・・ユフィ?」 「え!?」 クラウドが振り返ると、茂みの中にそれらしき影か見えた。 「おい、待てユフィ!」 「げっ!!」 ユフィは逃げようとしたが、それより早くクラウドが捕まえた。 「邪魔しないって約束だったじゃないか!」 「ジャマしないって約束はしたけど、のぞかないなんて言ってないもんね。 あーあ、もう少しでいいところだったのに」 「それはこっちのセリフだ!」 「やっぱりクラウドもそう思ってたのか。もー、クラウドってばこんな人気のないところに 連れ込んだりしてやらしー!」 「ち、違う!ここに来たのはティファが疲れたからだ!」 怒ったクラウドと、それをからかうユフィ。 一人残されたティファは二人を見てクスっと笑うと、小さく呟いた。 「あーあ、もうちょっとだったのになっ」 ------------------------------------------------------------------------------------- 700HITを踏んでくださった春風さんのリクエスト「二人の夏休み」です。 どこかへ出かけたのでも、家でのんびりしたでも何でも良いのでかわいくてラブラブなものを、 と言うことだったんですが・・・ラブラブ?皆さん消化不良のご様子(特にクラウド)。 夏休みといえば夏祭り、そうだティファに浴衣を着せよう!ということでこんな話にしました。 浴衣特集の雑誌を見て、柄とか色々考えたんだけど、浴衣の柄を文字で表現するのが 難しくて、結局どんな柄なんだかわかんない説明になってしまった・・・。 戻る